東方畢竟訖 〜in Other Worlds. 作:LOORUME
BGMは
キャラ崩壊注意です。
幻想郷・YY月20日 15:00、霧の湖上空。
BGM:『鏡花水月なる麒麟 〜Hidden Paladin』
いよいよ始まりました。お待たせ致しました。
「弾幕ごっこ…。まあいいけど、あなたに私を倒せるのかしら」
ティラが薄ら笑いながらそう言った。あまり舐めないでいただきたい。
「倒します」
格闘はしないけど、無意味に両手で手刀を作って構えた。
これでもミギワちゃんを倒せて…なかった。あれは勝ちに数えないだろう。
というか彼女、紫様でもティラに敵わないとか言ってなかったっけ。わたしなんかに倒せるのだろうか。
いや、大丈夫、わたしの後ろには九人も居る。
玉砕覚悟の四文字が刻まれた兜の緒を締め直した。
「いい度胸だよ、全く。《即刻効果の
ティラがため息を吐いた。それと同時に放たれた第一スペルカード。
どんな攻撃が来るか分からないから、早いうちにスペルブレイクをしようか。それが出来なくても妨害くらいはできるはずだ。
通常弾幕をバババッと撃ち放つ。
そこそこの密度の弾幕が、ティラに襲いかかる。しかし彼女は動かない。
その弾幕が跳ね返り、そっくりそのまま帰ってきた。わたしの弾幕がわたしを襲う。
ビックリして、咄嗟に横に飛んだら、なんとか免れる事ができた。弾幕に
どうやらこれ、攻撃すればするほど自分が追い込まれるスペカらしい。逆に言えば、攻撃しなければ何も起こらない。
とどのつまり攻略法は、スペル無効化までの時間、待ち続けることだ。
そうして三十秒ほど待ち、相手をただ睨みつけていると、気の抜けるような音がした。効力切れだ。
「まあこれは飽くまで序の口だからね」
「まあ確かに。このくらい見極めればどうってことないですね。まさか、これで自爆するとも思ってないでしょう」
試しに皮肉ってみたら、青筋立てて目見開いて睨まれた。目茶苦茶こわい。
真っ黒な瞳が不気味だ。
「……《天まで昇る
ティラ二枚目のスペルカード。宣言した声は、彼女出せうる最大限低い声だろう。威圧感がハンパじゃない。
湖面から突き出し、天を刺すように現れたのは先ほどの黒い龍。
何故、彼女は変化していないはずだ、と思ったが違った。よくよく見てみれば、それは龍ではなく黒い弾幕の塊。
それが列を成し、龍となって、とぐろを巻き、四散した。弾幕の速度はとても速い。避けるにはかなり骨が折れる。だが。
逆接的に言えば、頑張れば避けられる。そう、ガッツだ。全神経を集中させれば、これほど容易いことはない。
迫り来る弾幕を、ひらりひらりと翻りながらグレイズする。弾幕が通り過ぎた時の、風切り音も心地良い。
「ちっ、しぶといね」
渋い顔で、ティラがそうぼやいた。
それはアンタだ。何時間弾幕に耐え続けたと思ってんだ。
そして、こちらも逃げ続けるばかりでは芸が無いし面白くもない。反撃だ。
相手の弾幕は黒く、量もかなり多い。ならばカモフラージュのために、弾幕を黒くしてみました。
密度はさすがに勝らずとも、それが逆に効果的だと思う。当たる直前まで知覚しづらい…と思う。
しかし不安な気持ちを吹き飛ばすかのように、効果は劇的に現れた。
「っ! 被弾1よ」
「この調子でもう一発、行っちゃいますか。恋境《ラヴ・バリアー》」
言わずと知れた二つのスペルカード。その二つが合わさった時、どのような爆発を起こすのか。とくとご覧あれ。
まず球状になったお札が壁となり、ティラの逃げ道を全て塞いだ。段々と集束し、彼女一人の身長とちょっとの長さを保って、停止した。
「何をするつもりだ?」
「見てれば分かりますよ」
わたしの胸元で、光がばちばちと弾ける。いわゆる
こうして雷光が増していく間も、ティラは身動きがとれない。
数秒後、充分な力が溜まった。それを全てティラに向けて、撃ち放った。マスタースパークもどきだ。
が、それでは全くの不可能弾幕になってしまうので、直撃する直前でお札の壁が消えた。
マスパは直線に突き進み、湖に着水して水飛沫を上げた。
どうだろう。一応避けることは可能だが実際に、しかも初見では無理だと思う。このスペカは悪質な初見殺しということか。
とにかく、ティラさんの被弾数は2ということで.…。
これは意外と、イケるんとちゃうか?
「小癪な真似をしてくれるね。お前」
マスパと共に着水したのかと思えば、そうでもないらしい。彼女の纏っているローブが濡れた様子はない。
…というか、本当に被弾したのか?
「危なかった。もう少しで、ね」
当たっていないらしい。
「……しぶといですね。やっぱり手加減してちゃ駄目ですね」
口だけの仕返しを、鼻で笑い飛ばされた。ティラの広角がつり上がってきた。だいぶ頭に
「五月蝿い 黙れ 喋るな 息するな。お前は鼻から相手にならない。お前と土俵に合わせてやっているんだ」
「ああ、はい。貴方の残念な国語力が露見しましたね。怒りすぎですよ」
火に油。焼け石に油。蛞蝓にも油。関係ない。
いきなりの人格崩壊に怯えてしまったが、わたしは言葉を続ける。
「少しは頭を冷やして冷静になってください。《その
わたしのスペルカード。宣言のすぐ後、目下の湖面に波紋が揺れ立つ。伝播する波の水面下には、巨大な影が揺れ動く。
そしてそれは、姿を現す。鯨型の超巨大弾だ。
大口を上げて天へ跳ぶ姿は、先ほどの龍にも劣らない。
口の行く先は、ちゃんとティラが居る位置にしてある。だがまあ、さすがの彼女も避けないわけにはいかない。
ということで、彼女はゆっくりと迫る鯨を尻目に、元いた場所から余裕を持って移動していた。
だが、さすがにそれだけでは終わらない。
青い鯨は空中で分解・拡散し、細かい弾幕となって広範囲を襲った。それはまるで豪雨の逆再生。避けられないだろう。
そして着弾。今度はしっかりと、その瞬間を目撃した。
ティラ、スペルカードはあと一枚。残機も一個だ。対してわたしはスペカが同じく一枚。残機は三個。
私の方が有利と言える。
が、ここで安易にスペルカードを使用してブレイクされてしまえば、残スペル切れで、全て水泡に帰す結果となってしまう。そのため自然と慎重な弾幕ごっことなってしまう。
だがそれはティラも同じ。むしろ彼女の方がリスクは大きい。
チャンスは幾らでもある。その隙をついて、勝利を導こう。
そこから数分間、通常弾幕のみで攻撃しあった。その間にわたしは二度も被弾してしまった。昼飯が冷めてたのがいけなかったんだ、きっと。
これで勝率は五分五分。どうなるかわからなくなった。
「まさかお前、勝敗は五分五分とかって思ってるんじゃ?」
「……」
ギクリ。図星だ。
「ふざけるなよ。私の勝利に決まっている」
しかし、罵詈雑言が酷い。わたしのメンタルは崩壊寸前の所まで来ている。
思う権利くらいあってもいいと思うんだ。
「自惚れるな。これで決着をつける。《
どうやら彼女は本気らしい。ならばわたしも、真っ正面から避けきってやろうじゃないか。
正真正銘、ラストスペルカードが発動した。
四匹の黒い龍がティラの後方から現れ、順番にわたしに食らいついてきた。もちろん避けた。
避けると、今度は分身を一匹増やし、合計五匹で襲いかかってきた。吃驚したがちゃんと避けた。
…なるほど、これは早急にティラを倒さないと窮地に追い込まれるタイプのスペカだ。
龍たちの隙をついて、ティラに弾幕を撃ち放つ。見えないバリアに遮られ、阻まれた。………あれ?
なるほどなるほど。これは、つまり耐久するしか道は無いらしい。
そうやって龍の突撃を躱していくうちに、龍がとんでもない数になっていた。
最初は、一回一回の突撃の間にで待機時間というか休憩することができた。
だが今では三十匹を超える。休む暇なく龍の突進を捌かなくてはならない。
集中力を研ぎ澄ます。反射を直感で。もはや龍が何処から来るのか、というのも見なくなった。
目に入ったら避けるし、見えなくとも背中で感じれば避け得る。
だが、そんな集中力もいつかは絶対途切れる。その瞬間が、やってきてしまったのだ。
「あっ」
咄嗟に口から漏れ出でたるは情けない声。右方向から、黒い龍が口を広げて、わたしを食いちぎろうとせんと襲いくる。
これがあれか、走馬灯というやつか。
今なら牙もじっくり観察できるし、歯肉も…うわ、エグい。
眼光はただ一点を目指して。わたしを睨み続けている。
たぶん、次の瞬間にわたしは食い千切られる。彼女のことだ、相当怒っていたし、手加減することもあるまいし。
自分で煽って自爆する。なんとも滑稽じゃないか。笑えない。
それにしても長くないか。いくらなんでも走馬灯───。
爆音が鳴り響いた。スペルカードブレイクの、あの快音だ。
その瞬間に黒龍は散り散りになり、風に乗って消えて行った。
……ということは何だ。勝ったのか? わたしが、ティラに?
「クソぉ! 覚えていろよ、お前! いつか絶対! お前を!」
「はいはい、少しお黙りなさいな」
今にでも襲い掛からんばかりのティラを、紫様がスキマからにゅっと現れて止めに入った。
「あなたの負けよ。ティラ・カンカル」
「待てよ。お前、名前は何と言う!?」
ティラが、わたしを指さしながら喚き散らす。
「………立見 田華です」
「立見か。そうか立見か。覚えてろよ。絶対───」
「五月蝿い子はしまっちゃいましょうね」
わたしへの宣言の途中で、ティラはしまっちゃうオバさんにボッシュートされた。
「しかし、とんでもないのに目を付けられたわね」
駆けつけた霊夢が背後から話しかけてきた。
「そうですね…。二度と会いたくないですけど」
苦笑しながら返した。
だがこれで、やっと両世界に平穏が、安寧が訪れる。
異変後は宴会が執り行われ、少しずつ空気も落ち着いて行くことだろう。
わたしが知るものとはちょっと違う幻想郷。その魅力を存分に味わってやろうじゃないか。観光の再開だ。
鏡源郷での異変時、弾幕ごっこで戦い合った相手。彼女らとも交流を深めれば仲良くなれるかもしれない。
原作キャラはそこには居ないけど、だからどうしたというのだ。彼女らは彼女らで、立派な妖怪。そこになにか違いがあるというのだろうか。
兎に角、この世界は可能性に満ちている。何が起こるか、起こすかも自分次第。不幸な体験もまた一興、だ。
「ところでデカ」
「はい?」
霊夢さんが笑みを浮かべながら向きなおった。
「こういう時、なんて言えばいいのかしら」
「……ああ」
明らかに何かを期待した眼。その何かとは。
「畢竟、此れにて一件落着!」
本編はこれで終わりですが、もちろん後日談などは続きますよ。
ですが、同時進行で中編も書いておりまして、そちらを優先させて頂きます。なので、次の畢竟訖の更新は遅くなります。すいません。
中編が完成したら見てくださいね!