東方畢竟訖 〜in Other Worlds. 作:LOORUME
一話目 鏡刻塔のこの頃
ここは鏡源郷でも幻想郷でもない。言うなれば、両世界のスキマ。
今は、ウチと紫と、デカだけがここに居る。
「ここで二の足を踏んでいても、何も出来ないわ。さあ、帰りましょう」
「はい!」
紫はスキマを開いた。
「ああ、ウチは鏡源郷に行くよ」
「鏡映さんは何か用事で?」
「うん、ちょっと、やんなきゃいけない事がね」
そう、まだウチにはまだ仕事が残っている。
印を結び、人差し指で空間を縦に斬ると、その線が光った。そして、紫で言うところのスキマが、開いた。
「じゃあ、幻想郷の方は頑張ってね」
「はい!」
「そっちもね」
デカと紫に見送られて、光のトビラをくぐり抜けた。
その先は、地底湖。鏡源郷にトンボ帰りしてきたのだった。
♢
異変解決から数日。事態の収拾も大方終わり、博麗神社では宴会が行われていた。
霊夢たちが準備をしていたのも数時間前。手つきは手慣れたもので、友人たちと手を合わせながら着々と進めていた。
口では面倒くさいとは言いながらも、手をちゃんと動かしていたあたり、彼女も宴会が楽しみなんだとは思う。準備と後片付けが面倒なだけで。
とまあ、宴会の準備の様子を覗き見してたわけだけど、退屈な上に趣味が悪い。もう二度とはやらないだろう。
長年友人はやっているけど、紫の趣味のことはきっと理解できまい、と思った。
閑散としていたいつもの境内は、今日だけは賑やかなものになっている。
飲み食らう妖怪、そこに混ざる人間、負けじと胃に物を詰め込む神、食べ物を一瞬で食べ尽くす幽霊、同じ勢いで酒を消費していく鬼、それに憚りながら取材をする天狗、境内を盛り上げる騒霊、飛び回る妖精、独酒には目もくれず、本を読み耽る魔法使い、高飛車な天人、自慢し合う吸血鬼。
本当に、色んな奴が来ている。
ところでこの異変について、ウチは何か功績を挙げたということはない。そういうのは全部デカが
なので今回の主役は主に三人。異変の犯人、ティラ・カンカルと真砂
三人及び不押火のれん、水胤由菜、重合叶喜が境内の中心で色んな人から酌を受けている。
さて、それは別にいいのだ。ウチはあそこに紛れられるほど、何もやっていないのだから。
それよりも、ウチは一人の友人の居場所へ向かった。
主役の円からは外れ、独り縁側に座り、目前の光景を眺めているスキマ妖怪。八雲紫のところにだ。
「やあ、紫」
「あら、あの日以来ね。何かしてたの?」
あの日、つまり両世界のスキマで別れた日だ。もっとも、ウチにとってはまだ数時間前しか経過してないわけだが。
「……聞きたい?」
「聞かせたいようね」
「聞きたい?」
「はいはい、聞いてあげるわよ」
ゆかりんが
▼-▼-▼
トンボ帰りした先の鏡源郷。そこは、つい先ほどまで居た地底湖、船の上の甲板だった。
到着するとすぐに、不意に声をかけられた。
「あれ、帰ってきたんだ」
不押火のれんだ。振り返ると、三角座りの彼女がいた。
「うん、ちょっと話があってね」
「お姉ちゃんに、よね? わっち、面倒なのは嫌いなの」
それは、紫と汀が話している時の事を思い出せば、何と無く理解できる。
しかし、だ。
「悪いけど、全員収集だよ。真砂汀、不押火のれん、水胤由菜、重合叶喜を集合させてくれないかな」
最高の笑顔で言ってあげた。
ウチの威圧に一瞬仰け反ったかと思えば、ひっ、と返事をしながら洞窟を出て行った。
たぶん、彼女は約束を反故にする事も無いだろう。例え彼女が逃走したとしても、ウチは鏡源郷の管理者だ。必ずひっ捕まえる。
実際、彼女は約束通り、四人を甲板に集めてくれた。
一人だけ船内で気絶していた汀には、のれんが水をかけて起こした。だから一人だけびしょ濡れだ。
「こんなに集めて、何か用かしら」
濡れ汀が、長い髪から水を滴らせながら尋ねてきた。
ちなみに、四人はウチの前で一列になって、正座している。
「用というのは他でもない。あんた達、ウチの鏡源郷をあんだけ荒らしたよね? 向こう数百年、責任取ってもらうよ」
ウチはにっこり笑顔だ。だからこそ、それには裏がある。
四人は今から何をされるのかを悟ったようだ。絶望的な表情へと変化し、そして。
地底湖内に、断末魔の叫びが反響した。
▽-▽-▽
「っていうことがさあってさ」
鏡源郷で数時間前の出来事である。つまり自動的に、彼女らは不眠で宴会に参加している。まあ、そのくらい頑張ってもらわなきゃ困る。
「え、で?」
「うん?」
紫が話の先を急かしてきた。
「いや、あのね、結局どういうことを罰にしたわけ?」
「ああ、それね。向こう数百年、鏡刻塔で働いてもらうことにした」
「うわぁ……」
「うわぁって何さ。ゆかりんも同じようなもんでしょ?」
「藍のこと? あれは根本的に違う、式よ」
「ふぅん、そんなもんかねぇ」
♢
斯くして、鏡刻塔の仲間に四人加わることになった。
ウチ、つまり八岐鏡映、ハニエル、ピサース・ミラルは元より、真砂汀、不押火のれん、水胤由菜、重合叶喜が。
なにせ、鏡刻塔には空き部屋が沢山有り余っている。丁度、たった三人で持て余していたところだ。
彼女らには色々仕事を手伝ってもらうつもりでいる。まあ、たった数百年の間だから辛抱してもらおう。
……本音は、仕事量を減らして、楽をしたいだけなんだけど。
次回も、一週間くらい後の更新になると思います。ご了承ください。