東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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二話目 芽生える新たな関係

 宴会だ。呑めや唄えや騒げや踊れ。呑むも馬鹿、唄うも馬鹿。同じ馬鹿なら等しく踊り狂え。老若男女もいい顔で。

 ……ところでこの境内には女しかいない。見れば華々しく、また、姦しい。老若がどのくらいかはこの際気にしないでおこう。

 

 朝から霊夢に準備を手伝わされて、結局終わったのは夕方。その頃にはかなりの人数が集まっていた。

 準備と言っても色々ある。食器の準備から酒の手配、食べ物の調理。まあわたしはあまり料理が上手なほうではないから、出来上がった料理を運ぶだけだった。

 

 そして今、博麗神社の境内は妖怪達で埋め尽くされている。既に豪快ないびきを立てて仰向けに寝る妖怪も少々、まさに杯盤狼藉のありさま。

 

 その中心には、わたしが紅い顔で酒を飲んでいる。カナちゃん(重合 叶喜)からお酌され、返杯と乾杯。ぐいっと一口で飲んでげらげらと称え合う。なかなか楽しいもんだ。

 

「あっちの方はどうなの?」

 

 わたしに負けぬくらい赤ら顔のカナちゃんが、曖昧すぎる質問を投げかけてきた。

 

「あっちって、なぁに?」

 

 さすがに抽象的すぎたので聞き返す。

 

「あっちって言ったらあっちよ。で、どうなの。男の一人や二人、目ぇ付けてるの?」

 

 ……前会った時、恋話(コイバナ)するほど親しくなったかと聞かれれば微妙だが、彼女が仲良くなろうというなら応えねばなるまい。

 しかし、何故この話題になったかは不明だ。

 

「今ん所はいないけど……」

「だと思った」

 

 わたしの返事がくすりと笑われた。ちょっとムッとしてしまう。

 

「どういう意味?」

「いやいや、いい人を紹介しようってだけよ」

 

 ますます意味が分からない。二度会っただけでするべき話の内容だろうか、これは。

 

「まあそう(うたぐ)らないでよ。その人がね、最近私に付き纏って来て五月蝿いのよ」

 

 なるほど。

 面倒な蝿をわたしに押し付けようって魂胆か。そうはさせない。あと蝿は言いすぎた。

 

「で、その妖怪さんは恰好いいの?」

「お、食いついた」

「そりゃね、興味が無いでもないから」

 

 これでも女の子だ。年上だとしても(顔と性格が良ければ)会ってみる、ということをしてみるのも良いかもしれない、と思ってみたり、みなかったり。

 

「顔は……うーん。そうね、上の中ってところかしら。決して悪くはないわ」

「あら」

「あと妖怪じゃなくて人間よ」

「あらあら」

「ま、だから迷惑してんだけどね」

 

 そうか、恋をするなら人間ではなく妖怪の方がいいと。寿命の差だとか、思考の違いとかそういう理由だろう。

 

 ……わたし的には、そういう儚い二次創作も嫌いじゃないのだが。…なんでもない。

 

「そうね。気が向いたら、行くかも」

 

 とりあえず、適当に返事して濁しておいた。

 と、ここで一旦話を切り替えることにした。

 

「んでんで、相談なんだけどさ」

「なに?」

 

 懐疑の心を浮かべた顔で伺うカナちゃん。

 

 「ここ一週間、博麗神社に泊まってるんだけどさ…。いつまでも居座ってたら邪魔じゃないかな、っていう」

「うーん…」

 

 カナが顎に手を当て、目を瞑って考察し始めた。

 

「……それって、デカの気持ちの問題だよね?」

「そう、だね。そうかもしれない」

 

 言うとおりだった。ほとんど何もしないで数日間ぐうたら過ごすのは正直、居心地が悪かった。霊夢がどう思っているかより、わたしがどう感じるか、だ。

 

「つまりデカは今、新しく住まう家が欲しいと」

「あと出来れば就職の斡旋も……」

「うーーん、そうねぇ」

 

 夢にまで見た懇願の楽園、幻想郷とはいえ、生きる努力もしなくては。

 しかし、カナの返事はあまりよろしくなかった。

 

「私も、ここに来たばかりだからねぇ……」

「あーそっか」

 

 確かに、異変中にわたしやカナちゃんが身動きとれたのは、そういう理由があったからだ。

 

「……まあでも、鏡映様には聞いてみるよ」

「あぁ、ありがとう。…って、鏡映()?」

 

 私でさえ、紫様の友人である彼女をさん付けなのに。カナと彼女の間に何が起こったのだろうか。

 

「ああ、仕えさせられてんの。呼び捨てでも笑って許してくれるんだけどね、従事するならやりきらないと」

「へえー」

 

 カナちゃんは結構律儀な性格な人らしい。さて、明日からは朗報を待つとしようか。

 幻想郷と鏡源郷の時間差の関係で、速攻で報せが来るかもしれない。

 

 指し詰め話に一段落ついたところで、もう一度乾杯した。

 

 一献、また一献と飲み進めていく内に、縁側に座る三人組を見つけた。

 

「ちょっとごめん」

「ああ、いってらっしゃい」

 

 カナちゃんに一言断って、わたしは立ち上がった。

 

 

 ♢

 

 

「ちぇぇぇん!」

 

 酒を呑む鏡映さん、一緒に酌み交わす紫様。その横で肉料理を頬張る橙に、わたしは抱きついた。

 

「うぐっ。ひっ? 誰この人!」

 

 悲鳴を上げる橙。

 

「デカよ」

 

 冷静に返答する紫様。

 

「ちぇぇぇぇぇん!」

 

 それと叫ぶわたし。

 

「そういうことを言ってるんじゃないです! 助けてください!」

「大人しく抱かれてなさい。念願だったのよきっと」

 

 涼しい顔の紫様。分かってらっしゃる。

 紫様と初めて出会った時にも言ったが、橙は好きなキャラ上位を争う。ケモ耳とか尻尾を触るのが、まさに念願だった。

 あと普通に動物も好きだ。

 

 縁側に腰を落ち着けたら、橙を膝にのっけて撫でまくる。ああ快感。

 橙は涙目になりつつも、撫ぜられ続けるうちに心地よそさそうな声を上げた。にゃーとか、うにゃーとか、甘い声だ。

 

 そしてある時、今までざわざわと煩かった話し声が、どっと一体化して歓声になった。

 

 なんだなんだと、今まで見続けていた橙から目線を外し、顔をあげると……。

 

「またあの子は…。酔うとすぐにアレなんだから」

「そ、そうなのかい? それは少し困りもんだねえ」

 

 紫様がぼやき、鏡映さんがそれに驚いて反応する。

 

 わたしが顔を上げた先、空中には、裸体を曝け出す八雲藍(スッパテンコー)が飛んでいた。

 体型は、悔しいが圧倒的に負けている。ボンッキュッボンっていうか、ボォンッッ!キュウゥッ!ボカァァン!だ。ダイナマイトボディとは正にこれ。

 

 藍さまの露出癖は、本当に在りました。在ってほしくなかったです。

 この場にいるのが女性だけで本当に良かった。

 

 衝撃的な場面に呆気を取られ、しばらくポカンとしていたら新たに歓声が上がった。

 

 その方向を見ると、裸の伊吹萃香がいた。そしてこう叫ぶ。

 

「こりゃ負けてらんないねぇ!」

 

 負けててください。お願いですから。

 藍さまとは対照的に、萃香の肉体は寸胴鍋。しかしその腹筋、胸筋は幼女のそれとは思えないほど強靭であった。実際幼女ではない。

 

「あーあ、何してんの、あの子」

 

 今度嘆息を洩らしたのは鏡映さんだ。のちに聞いた話だが、萃香は鏡映さんの娘らしい。なんと、驚きだ。

 まあそれはいいのだ。

 

 脱衣した二名はついに弾幕ごっこを開始してしまった。しかも結構な低空で撃ち合ってるもんだから、普通に呑んでる人らにも被害が及ぶ。

 被弾した人の理性なんてとうに酒で吹き飛んでるからこりゃ乱闘間違い無しだ。やったね。わたしは離れたところで見守っていよう。

 

 と、ダムが決壊して暴動が始まるかというタイミングで霊夢が全員にお札を貼って気絶させた。流石博麗の巫女さんだ。

 

 死体みたいに寝転がる奴らの山を見回し、境内の中心で霊夢はこう呟く。

 

「片付けが、面倒ね……」

 

 心底そう思っている声だった。わたしも手伝わされるのだろうか。面倒だね。

 

 生き残った数人が残った博麗神社に、少し冷たい風が吹いた。

 太陽が登りはじめた空に、雀の鳴き声だけが虚しく響いた。

 

 白む空 飛ぶ雀の子 最上川

 立見 田華

 




 お久しぶりです、滅茶苦茶遅れてすいませんでした。
 何故か筆が思うように進まず、こんなに時間がかかってしまいました。言い訳はこれくらいにして、宣伝させてください。

最近公開した中編『夏とともに逝け。(全7話)』
齢六十を越して不治の病を患ってしまった博麗霊夢が、残された五ヶ月間を過ごす物語です。是非、ご覧になってください。

次回は、なるべく早く更新できるよう頑張ります。(キャラ紹介なんでつまらなくなりそうですが。まあ、興味がある方はどうぞ。次々話からは普通の後日談になります)

最後に、最上川に特に意味はありません。
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