東方畢竟訖 〜in Other Worlds. 作:LOORUME
これからはなるべく更新速度を上げていきますので、何卒よろしくお願いします。
さて、元三話であるオリキャラ紹介は、規約違反になるので活動報告に移動させていただきました。
今回は、「為す術無し」の伏線回収とも言えます。しかしそれを読み返さなくてもいいどころか、本編を飛ばしてこの一話だけでも短編として読めるくらいの勢い、だと思っています。
(前書き長ったらしい)
暇だ、そう思い始めたのがキッカケだ。
竹細工も一通り極めたし、竹炭も焼き飽きてきた。あと輝夜も焼き飽きた。
ならば新しい趣味を探すしかないと、人里に繰り出して来た次第だ。
今度は何を造るか、大体目星をつけていた。
それは、陶磁器だ。
釜さえ作ってしまえば火力はどうとでもなるし、粘土も幻想郷のどこかにあるはずだ。無ければ、鏡源郷に行けばいいと、いつも通り楽観的に考えていた。
しかしよしんば今のまま作業に移っても、きっと良い物は仕上がるまい。
何故なら、技法を模倣するにも、その元となる一品が無いからだ。つまり、お手本が必要だ。
その焼き物は、人里で買おうと決めていた。幸いにも軍資金は、竹細工の数々を売った時に手にいれてる。
不死ゆえ飲食もしなくていいので、あまりお金の使い道が無かったのだ。ここらでパーッと散財してみるのもなかなかオツではないかと。
里の入り口から大通りまでの道程をゆっくり歩み進めていたところ、慧音にばったり会った。
二言三言会話していたら、食事に誘われた。まあ断る理由も無いので大人しく従うことにした。
食べに行ったのはおでん屋。そこで幾つかつまんだ後、物足りなさを感じて団子屋に立ち寄った。
その時に異変に巻き込まれ、結局数日間が身動きがとれなくて陶磁器はお預けとなった。
そして数日後、今度こそ手本となるべき焼き物を買いにいくぞ、と大通りに向かう途中、またもや慧音に呼び止められた。
「ああ妹紅。奇遇だな」
「奇遇なのか? デジャヴなんだが」
前会った時はお昼時で、今は早朝だ。昼飯に誘われて、その先でトラブルに見舞われることは無いと自分に言い聞かせつつも、虫が嫌な予感を報せまくっていた。
「呼び止めたって事は、何か用があるんだろ?」
だからこそ、不安要素は可能な限り早く取り除くべき。いやなに、成るべくして成って、なるようになるのだから、どうなったって問題は無い。
「ああ。実はな、一度私の代役で教鞭をとってもらいたくてな」
やっぱり聞くんじゃなかった。正直なところ、面倒臭くてたまらない。
決して子供が嫌いなわけではないが、何というか、まあ、アレだ。
「そこまで嫌な顔をしなくていいだろ……」
「ち、ちがう。嫌っていうか、慣れないんだよ。そういうの」
しどろもどろになりながらも、必死に説明する。慧音に誤解して欲しくないのは、決して子供は嫌いじゃないということ。
「むしろ好きっていうか…」
「なんだ、なら良いじゃないか」
「はい……」
良いそうです。
♢
思いついたら吉日ということで、即日の体育の授業ですぐ先生役をやるということに決まった。
きちんと管理された木製校舎の背中に面する、広いとも狭いとも言えない広場。体育の時、慧音はいつもここで授業しているらしい。
このくらいの広さでも、生徒は十数人程度だから狭くはない。大丈夫だ。
そんな校庭、校舎側の日陰で、体育座りする子供達の前には、二人の大人が立っていた。
「名前は知っていると思うが……彼女は、特別講師の妹紅先生だ」
「ああ、よろしく」
慧音先生の紹介の流れに乗って、挨拶をすると子供達の元気な返事が帰ってきた。
「よろしくお願いしまーす!」
こうやって書くと正常だが、実際はそんなんじゃなかった。もっとこう『あいぇよーしくおえあいしゃぁぁぁーーっすぅ!!』みたいな。元気の域を飛び越えて、もはや狂気だ。
圧倒的な声量に気圧され、心持ち後退りする。
「お、おう。よろしくな」
子供との情熱の差を、思い知らされることになった。
今日は、子供でもできる最低限の護身術を教えることにした。子供は、力よりも集団性。
「じゃあまず、これは武術の基本となることだが───」
思えば、子供だった頃は最早、幾百年前か。今だって見た目は少女だと言われれば、実際そうなのかもしれない。
「皆も知っての通り、私は不死身だ。けど皆は違う。無茶は出来ない、有限の命だ。だから───」
が、心は違う。数百年という厚い壁は、層は心を築き上げると共に幼い心を遠くさせた。
「教えるべき事はまだまだ沢山ある。でもま、今日教えた事さえ覚えておけばだいぶ変わってくるもんだ───」
今日は全てを取り払った純粋な気持ちを、少しは思い出せたかもしれない。
「最後にもう一つ、これが究極の護身術なんだが、危ない事には頭を突っ込むな。手を出すな。足を踏み入れるな、以上だ」
ああ、そう思うともっと創作意欲が湧いてきた。情熱が噴き出した。
そうして、慧音の代理教師は無事に終わった。なかなか刺激的な体験が出来た午前だったんじゃないかな。有難いことに、惜しみの声を受けながら校舎から退散した。
慧音からもらったバイト代を、元から持ち歩いていた軍資金をいれてある赤い袴に押し込んだ昼頃。
大通りに向かって、再三歩き始めた。
♢
「ごめんくださーい」
「いらっしゃい。おや、妹紅ちゃんかい」
暖簾をくぐると、白髪を生やした小太りの老人が奥から出迎えてくれた。
「あれ、名前、知ってるの?」
この老人とは一度も会ったことがない。初対面だ。
にも関わらず、名前と顔とを憶えられているのには、何かしら理由があるはずだ。
「そりゃね、よく道端で上白沢先生と話しているのを見るからね。それに、その髪と格好は遠目でも忘れないよ」
「ふうん」
確かに、慧音と私の組み合わせは、人里なんかではかなり目立つのだろう。
注目されて当然だ。……博麗神社の宴会とかではそこまで目立たないのにな。
この分だと、里のほとんどの人間に名前を知られているのだろうか。なんだか急に行動し辛くなったな。
「まあいいや。で、いい陶器がないかなって探しにきたんだけど」
気にしなくてもいいのではないだろうか。私がどうしようと文句を言われる筋合いは無いし、そもそも言わせない。
要件を口に出しながら、店内を見回した。
多少埃の被った、私が入れるくらい大きい壺があったり。
中身は見えないが如何にも貴重そうな物が仕舞われてると思しき箱があったり。
売り物ではなく、おそらく雰囲気を出すことを目的とした、インテリアとしての煤汚れた掛け軸があったり。
花を活けれそうな長細い陶器があったり。
日常的に使えそうな急須があったり。まあ様々だ。
全体的なイメージとしては、汚い。壁はヤニでぬりたくられたみたいな色をしてるし、天井は陰から悪い妖怪でも出てくるんじゃないかってくらい深淵を潜ませている。
正直、物を売る店として、管理方法はそれでいいのかと問いたくなる。 しかしこの店が店として成立している以上、客が必ず来ているはずだ。
つまり何が言いたいのかと言うと、別に汚くても私は気にならないということだ。
買った商品が汚れてても、洗えばいいだけだし。ただ、それだけだ。
「陶器ねぇ……正直、あたしゃ骨董品に詳しくないからねぇ」
……なんなんだこの店は。こちらも正直になるなら、段々フォローしきれなくなってきたぞ。
「まぁそんな怪訝な顔をしなさんな。陶器だね? この棚に置いてある物は全部そうだよ」
そう言って老人は、店の奥にある一つの棚を指差した。それで仕事を終えたとでも言わんばかりに、売り物であるソファにどっかり座って、大きなため息を一つ吐いた。
「……」
そろそろ苛立っても仕方がないだろう。が、私も何百年も生きた人間だ。こんなところで関が切れては、不死人が廃るというものだ。
特に気にした様子は表に出さず、指さされた棚へ向かった。
…蜘蛛の巣が張っていた。その蜘蛛の巣に埃がかかっていた。気にしない。
「……この、棚にある陶器、全部ください」
そう言うと老人は、ぎょっとした顔になった。
「い、いいのかい? かなり値が張るよ?」
「大丈夫」
お金の元になった竹細工は、たった数ヶ月や数年間だけ造ってたというわけじゃない。
それこそ数十年間、ずっと人里に販売し続けていたのだ。しかも材料費、人件費はゼロ。
その合計金額は、軽く豪邸を建てられるほど莫大なものになっていた。
よほど有名な美術家による高価な作品でなければ、焼き物の十個くらいなんでもないのだ。
とはいえ、合計金額に軽く引いたのはここだけの話だ。
大きく膨らんだ風呂敷を背負って店から出た。
老人はソファに座り、私は買った陶器を風呂敷に包んでいる途中、なんと慧音が入店してきたのだった。
定期的にちゃんと仕事をしてるか見張りに来ているらしく、今日は客の私に包装を任せているところを見て怒っていた。
老人はもちろん正座で説教。ちょっとはスカッとした。
後に聞くと、老人は親が他界してからの二十年間ろくに店の管理もせず、親の遺した財産でだらだら過ごしていたそうな。
慧音の努力も虚しく、彼は一向に店の立て直しを始めない。いつか、老人が店を変えたいと思うならその時は、慧音は協力すると言っていた。
はたして、老人は今後どうなるのか。私の知ったこっちゃない。
家に向かって飛翔した。
♢
「お邪魔するぞー。って、うわっ」
家の入り口から慧音の驚く声が聞こえた。誰であろうか。慧音である。
驚くのも無理は無い。この家は今、沢山の焼き物で埋め尽くされている。
作り始めてから数ヶ月、まだ失敗作しか出来ていない。……が、しゃがむ私の前で焼かれているこの試作は、成功しそうな気がする。
「おーい妹紅、いるなら返事しろー」
「いるよー。それより慧音来なよ。出来上がりそうなんだ」
さてさて、どうなることやら。