東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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三話目 あなたの知らない幻想郷

 ふむ、本日は晴天なり。寝床の蚊帳をくぐっての障子を開いて外を見てみると、爽やかな晴天の空であった。まさに、飛行練習日和だろう。

 昨日の熱い談義の際中、それとなく聞いてみたら恐らくはわたしでも空を飛べるだろう、とのことだった。これは、やりがいがあるではないか。

 

「あらデカ、起きたのね」

「はい、お早うございます」

「待っててね、紫を叩き起こしてくるから」

 

 霊夢なら本当に叩いて起こしそうだ。むしろ足蹴にしてそう。

 少し練習をしてから朝食を摂るそうで、これで飛べれば正に朝飯前というやつか。願わくば早く空を飛べるようになり、幻想郷を観光できますように。

 なんて祈ってても仕方が無いから紫様の指導のもと、境内で練習を始める事になった。

 

 

「ふああ…。じゃ、練習始めるわよ〜」

 

 扇子で大きく開かれているであろう口を隠しながら紫様が言う。なんというか締まらない。

 

「むにゃ。まずは、イメトレよ」

「はあ」

「飛ぼうと思わない。浮こうと想ったほうが良いわよ」

「ははあ」

 

 だそうだ。浮く、ね。

 目を瞑り、水中をイメージする。何もしがらみが無く、音も遮断されたわたしだけの世界。どこまでも透明で、見渡す限り純粋で純水な水中を。

 目を開けてみた。いつもより、目線が高い気がする…?

 

「5センチね」

「え、今飛んでるのわたし!?って、あ」

「あら」

 

 イメージをやめたら、飛べなくなってしまった。でも5センチだから大丈夫。

 

「貴女、ある意味怖いわ。飛べるようになるのが、早すぎる」

「あはぁ、そう言ってもらえると嬉しいです」

「でも、まだ重いわ。貴女は何をイメージしたのかしら?」

「水中、ですけど」

「それね。水中じゃなく宇宙をイメージしなさい」

 

 確かに、水中だと浮けても圧力がかかってしまう。それに対して宇宙は…ほぼ気圧がゼロだったか。覚えてない。それにしても、確かに言われてみれば水中より宇宙空間の方が浮きやすそうなのは想像に難くない。ということで。

 ここは宇宙。火傷しそうなほど冷たい空間。音も完全にカットされ、汚れた空気など何処にもない。故に、穢れた地球の自分を解き放てる。わたしはくるくると空間を彷徨い続ける…。

 目を、開けてみた。

 

 空中をくるくると回りながら移動していた。

 

「1メートルね」

「え?あっちょ、今イメージやめたらっ…ぎゃふん」

「あらあら」

 

 1メートル上の空中からうつ伏せの状態で落とされる。かなり痛かったし怖かった。地面が迫ってくるなんてトラウマ並だ。次は成功させる。

 

 それから、小一時間ほど練習した頃だろうか。わたしは完全に空を飛べるようになり、アクロバットもお茶の子さいさいだ。誰かと一緒に編隊飛行をするのもいいかもしれない。さとりさんあたりだったら心を読んで合わせてくれそう。

 そんな時、ついにタイムリミットが来た。霊夢からのご飯の報せだ。

 

「ご飯よ、ってデカも飛べるようになったのね」

「はい、紫様の指導のお陰です」

「うふふ、嬉しいことを言ってくれるじゃない」

「昨日から思ってたんだけど『紫様』って…デカも呼び捨てでいいんじゃない?」

「いえ、紫様にそんなことは決して」

「紫、洗脳したの?」

「まさか。普通に、慕ってくれてるのですわ」

「怪しいわね」

 

 まあ、怪しいのも当然だ。なんせ会う前からゆかりんの言う所の『慕って』いたのだ。むしろ霊夢の事も慕っていたかもしれない。

 いや、そんな事はどうでも良いのだ。今は霊夢の作ったご飯だ。境内から建物の中の茶の間に移動する。卓袱台の上には三人分の食事が用意されており、今すぐにでも食べ始められるようだ。今すぐにでも食べ始めたい。

 

「霊夢、あなたも成長したのね」

「はあ、いきなり何よ」

「いやね、客人にご飯を作らせる事も無くなったんだなあ、ってしみじみ思ったのですわ」

「む、昔の事よ。今はそんなことしないわよ」

「どうだか」

 

 なんていう会話で焦らされたけど、無事食事は始まり、何事も無く終わった。だったらいいな。

 

 食事中、我らが二人目の主人公の、霧雨魔理沙が箒に乗ってやってきたのだ。境内の石畳を抉るかの如く超高速で着地。そして急ブレーキ。実際に、石畳に少しヒビが入っていた。

 

「霊夢〜、まだメシ食ってるのか?早く弾幕ごっこしようぜ〜」

「あーはいはい。わかったから、食べ終わるまで待ちなさい」

「【腹減り鳴りしは(さむらい)の恥】、ってやつだな」

「そんな諺あったかしら」

「無いぜ、私が今作った。いいから早く食べ…って、おろ?」

 

 魔理沙は、(おそらく)30代になってもひたすら研究熱心で、ひたむきに弾幕ごっこと向き合ってるようであった。いや、あれ?魔理沙が、年をとっていない?霊夢と同い年には、到底見えない。

 

「紫と、誰かさんだな。初めまして、魔理沙だ。よろしくだぜ」

「立見田華です。こちらこそよろしくお願いします。とりあえずデカとでも呼んでください」

「わかったぜ、デカ。敬語なんて固っ苦しいから、今すぐにやめてくれりゃあ万々歳だぜ」

「わかった。魔理沙」

 

 だそうだ。いかにもフリーダムな魔理沙らしい。てなもんで二日目にして三人目の原作キャラと知り合えた。次はどんなキャラと会えるのか、楽しみで仕方が無い。

 

 

 食事も食べ終わり、魔理沙と霊夢が表で勝負をつけている。それをお茶を飲みながら観戦することになった。

 初めて見る弾幕だから、美しくて感動した。と、言いたいところなんだけど、如何せん光源が大量に飛び交う訳だから、眩しくて仕方が無い。左手で遮りながら見る弾幕ごっこ。あゝ、なんと趣に欠けることか。

 

「綺麗でしょ?」

「そ、そうですね…」

 

 やっぱり、慣れが必要みたいだ。幻想郷って厳しい。

 ところで、なんだが。何故魔理沙は年をとっていないのだろうか。少なくとも霊夢と同じ──恐らく30代──になっててもいいはずなのに。見たところ20代前半ってところだ。そんな疑問をゆかりんにぶつけてみた。

 

「あの、紫様。なんで魔理沙は年をとっていないんです?」

「ああ、魔理沙は捨虫の魔法をつかったのよ」

「捨虫…?」

「そう、ほぼ不老不死になる魔術よ。彼女は魔女という種族になることを決めたようね」

「…そうなんですか」

 

 何となく、彼女は普通の人間の魔法使いのままで頑張って欲しかったが、そんなものだろうか。こう、努力で霊夢を越す、みたいなストーリーを見たいわけよ、わたしは。でもでも、この世界はあくまでこの世界であって、わたしの知っているだけの、或いは望んでいるだけの幻想郷はただの押し付けにしかならない、ということか。いや、こんなに難しく考える必要はないはずなんだけど。気楽に楽しもう。

 

「ところで、デカ」

「なんですかー紫さまー」

 

 目前の弾幕に集中せず、意味の無い事をずるずる考えすぎて少し疲れた時に、話しかけられた。

 

「飛べるようににもなったみたいだし、色々と見て回らないかしら?貴女のことだから、幻想郷のだいたいのことは知っていると思うわ。だから、今日は貴女の知らない幻想郷を、見てみてはどうかしら」

「いいんですか?」

「勿論よ」

 

 さっきまで考えていた事なんて吹っ飛んだ。なんせ幻想郷だ。どれだけ見ても見きれないに違いない。

 ということで、レイマリのお二人にはご退場してもらって、ゆかりんと二人でわたしの知らない幻想郷へ行くことになった。

 

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