東方畢竟訖 〜in Other Worlds.   作:LOORUME

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遅れてすいませんでした。




三話目 記憶跳び

 

BGM:『虚ろに煌めく有象無象』

 

「行くわよ。スペルカード一枚目、転落《今もまた、今でもまだ》」

 

 さあ始まったぞ、と気合を入れる。

 左上方から砂粒のように降り注ぐのは黄色い小弾。勘のみで回避するのは至難の技だが、よくよく見ればパターンがあるようだ。

 一点を中心に右回転していれば、逆に弾のほうが避けているのではないかという錯覚に襲われるほど。

 コツを掴めばすぐ楽勝。お返しに通常弾幕を撃って被弾させてやった。

 

 敵でありハツラツとした快い印象を受ける少女───水胤(みずたね)由菜(よしな)はスペカ使用回数と着弾回数がそれぞれ一回。わたしの方に分があると言える。

 ……あれ、なんで彼女の名前を知っているんだろう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。……どういう能力の持ち主だ?

 

「なんだか理解できないって顔をしているね。勝ったら説明してあげるよ」

 

 弾幕の衝撃に耐えきってみせた由菜は、クスリと笑いながら声をかけてきた。その耐久力、華奢な見た目と言えどさすが妖怪と言ったところか。

 

 やはり妖精と妖怪は違う。もう一度気を引き締め直し、相手にスペカを発動した。

 

「恋曲《マスタースパーク》」

 

 参考にしたのは魔理沙さんのスペル。東方で一番有名だと言っても過言ではないだろう。ちなみに実際に見たことは無い。

 爛々と輝く極太の光線が由菜を襲う。津波のように噛み付くそれは、しかし、ひょいと躱されてしまう。

 

「こわいこわい。でもね、単調なレーザーじゃ簡易に回避できちゃうよ」

「よくよく見てみて」

「……!!」

 

 そう、あくまで恋符は参考。つまりアレンジを加えてみたのだ。

 由菜の傍を高速で通過した後、ある程度まで進んだら折り返して再度彼女をホーミング。レーザーの跡も残り、折り返しも数度続く。そして星屑の弾幕もおまけでついてくる。

 それはまさに星を振りまく龍の飛翔。掻いくぐるのは難しいだろう。

 

「うわっ」

 

 弾幕の効果は覿面。彼女はあと残り一度でもピチュったら撃破だ。ここで、ちょっとした好奇心から、インタビューしてみることにした。

 

「どうですか?わたしの弾幕は」

「なかなかピリ辛だね」

「弾幕に味ってあるんですか?」

「【辛さ】も舌の痛みだから、たぶん同じようなものだよ」

 

 そうなのかなあ。同じかなあ。

 

 

 あと一度でも被弾したら負けだというのに、彼女はいたって澄まし顔だ。なにかしら作戦があって、そこからくる余裕なのか。はたまた諦めか。どちらにせよわたしは絶対に勝ってやる。

 敵に意識を集中し直すと、ちょうど最後となるであろうスペカの宣言をしていた。

 

「油符《最初から、最後まで》」

 

 

 瞬く間、空気が入れ替わったのかと錯覚した。相手の雰囲気が変わったのだ。

 どこか飄々とした雰囲気は吹き去り、改めて超然としているようでもあった。

 

 由菜から発せられたのは幾つかのクナイ弾。空中をふわふわと漂っているのも束の間、残像を残してわたしに刃向かってきた。

 私が元居た場所に弾道が集中するので、横に体をチョンと翻す。

 続いて先程と同じようにクナイ弾が発射される。同時に、最初に避けた弾幕が後ろで跳ね返り、縦横無尽に突き進む。

 

 結果的に、弾幕の密度が増した。

 ランダムな方向から回りを通過する大量の弾幕と、定期的にわたしを狙うクナイ弾数本。

 

 火力ばっかり強くて、回避能力はまるっきり初心者なわたしにこのスペカはキツかった。

 

「くっ。何コレ理不尽!」

 

 弾幕は跳ね返ってどこから向かってくるか予想がつかない。ついたとしてもそんな脳内演算能力は無い。

 勿論、前や横ばっかりじゃなく、後ろや上からも弾幕が来るわけで……。

 

「いてっ」

 

 油断していた。その一言に尽きるだろう。わたしは、弾幕ごっこで初めて被弾してしまったのだ。

 涙目で相手を睨んで、決着をつけることを決意した。

 

「《反魂蝶 八分咲き》」

 

 とどめには幽々子様のラストスペルを。時間の経過と共に本数が増えていくレーザーと、赤と青の蝶弾幕、そして赤い大玉弾幕が周囲を巻き込んで広がっていく。

 幾らか耐えたがそれもあまり続かない。免れ得ぬ決闘の終わり。由菜は、六波目のレーザーに巻き込まれ、墜落していった……。

 

 そしてわたしは、勝った。

 

 

 記憶を整理しよう。

 

 燃え盛る妖精、ピオリ・フィーリアとの弾幕ごっこのあと、彼女から少し情報を貰った。

 曰く洞窟の場所はとある山だとか。指で指して示してくれた。方向ではなく確定的な場所なので、だいぶ有益な情報だった。

 そうして彼女と別れ、山へと飛んで行った。

 そこからだ、記憶が無いのは。何というか、スキップされたというか。そしていつの間にか、弾幕ごっこをしていた。

 

 あと一つ、疑問が残っている。それは、何故妖怪であるはずの由菜が動けるのか、ということだ。それも含めて、尋ねてみよう。

 

「どうですか、調子は?」

「……大丈夫。さ、聞きたい事は何でも聞いてくれ」

 

 墜落した彼女が落ち着くまで、木陰で寝かせていた。ふっと起き上がるとこちらに向き直り、準備万端だとでも言うように微笑んだ。

 

「そうですね。ではまず、あなたは何の能力の持ち主なんですか?」

「……【起結を転じて承とする程度の能力】。出会えば順当にするはずだった挨拶も、転じちゃってすぐ弾幕ごっこを始めたのさ」

「…なるほど。何となく、わかりました」

 

 活発そうな反面、彼女は面倒くさがり屋なのかもしれない。わかるわかる。

 

「では、あなたは何故動けているんですか?」

「…それは、自分を見ればわかるんじゃないかな」

 

 自分、わたしを?……ああ。

 

「まだあなたは、鏡源郷の住民ではない」

「そう、先日来たばかり。勿論、この異変の黒幕と一緒にね」

「黒幕とは、誰なんですか?」

「洞窟の中…いや地底湖に行けば分かるよ」

「地底湖」

「そう、船が浮かんでいるんだ」

 

 山の、洞窟の、地底湖に浮かんでいる、船。

 

「その名も、プロベレビウム号だよ」

 

 目的がより明確になった。東方には珍しく敵の本拠地が横文字。プロベレビウム号。どのような経緯でそんな場所に来たのか。

 

「どうしてわざわざ地底湖に?」

「…それは知らないよ。黒幕に聞いて」

「ふむ……」

 

 まあ、隠れるのには最適な場所だろうけど…この異変でわざわざ敵を弱体化させたのに、いつまでも引きこもっていたら意味が無い。何かしら理由が、もしくは拘りがあるのかもしれない。

 

「ま、ここらへんで勘弁しますかね」

「うん、じゃあ適度に頑張ってね」

「応援なんかしちゃっても良いんですか?」

「良いの。何となくだけどね」

 

 そんなものなのだろうか。首を傾げながら手を振って振り返り、飛び立とうとした。そこで、あることに気づく。

 

「そういえば、【起()を転じて承とする】能力ですよね?」

「うん」

 

 背中で話しかける。

 

「弾幕ごっこに負けても、またやり直せるんじゃないですか?」

 

「……負けが決まっているのに転じたってしょうがないじゃない」

 




曲は、緋子望(ひしもち)さんと、きさらぎさんの合作です。名前を勝手に出してすいません。
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