「はぁ・・・、疲れたな」
まだ使い始めて日も浅い厨房で俺は溜息をついていた。
開店4日目。いつも通り客が大勢来店したのに対し、
店員0厨房係0俺1の状態で接客した俺は疲労困憊だった。
しかし時間は許してくれない。すぐに明日の準備に取り掛かるとした。
俺の名前は「結鍵 零(ゆいかぎ れい)」
喫茶店「零元堂」の店主を務めている。といっても立ち上げたばかりなので店員は皆無、気軽にやろうと初めた所、予想以上に客が来た為、絶賛困惑中なのである。
しかし午後下がりの今は珍しく一段落ついた。
「カウンターでも清掃するかな....あとそれから...」
このチャンスを逃すわけには行かない。直ぐに作業に取り掛かろうとした..ハズだった。
「よーマスター!今日も美味しいお茶頼むぜ!」
布巾を持ってカウンターへと踏み出そうとした瞬間声を掛けられた。俺が振り返ると、いつの間にか2人の少女がテーブルに腰掛けていた。
(せ、せっかくのチャンスタイムが・・・)
零は拳を強く握り苛立ちを感じたが、この少女が来た事に比べればまだ些細な事だった。
「ま、また君か・・・魔理沙君」
それもその筈、男口調の声の主はこの店の常連客兼無賃飲食の常習犯。霧雨魔理沙その人だった。
・・・無賃飲食なのになぜ常連客かって?
この少女の決まり文句は大体「今度払うからツケといてもらえるか?」である。どう考えても払う気はないのは分かっているが、俺はタダの人間に過ぎないので、強気に出ると彼女の自慢のマスパで店ごと消されかねない。だからそれをただ受け入れるしかないのだ。
「マスター、私はいつものコーヒーとブッシュドノエル。で、霊夢は?」
「んー茶はさっき呑んだしなにか他のがいいわねー・・・あ、カステラある?」
不貞腐れ顔の俺を尻目に、2人は淡々と注文してきた。
一緒に座っているのは魔理沙の友人だろうか。
まあ魔理沙の友達なんてどうせろくでもないやつだと思いったが、口には出さず
「で、ではカフェオレなんていかがでしょう?苦くもないので飲みやすいと思いますよ。」
と適当にメニューを促した。
「いいわね。じゃそれでお願い。」
メモに注文を書き、厨房に戻ろうとしたら魔理沙が
「マスター!こいつは初めての客だからタダだよな?」
魔理沙が満面の笑顔で話しかけてきたのでこちらも満面の笑顔で「ああ、勿論だ。」と言葉を返した。
(ただしオマエはタダじゃないけどな!!)
俺の心の叫びが、天まで届いた気がした。・・・届くといいなぁ。
--その僅か10分前の事ー-
「あなたがこの騒動の首謀者ですね?」
黄泉の桜が咲き乱れる白玉楼。それに到達するべきして連
なる石階段。その入口へと向かおうとする男の前に、銀髪ボブカットの少女が立ち塞がった。
見れば容姿は十代半ば、腰と背中には刀を携えており、そのまわりに一つの白い物体が浮かんでいた
「・・・何の話だい?私はここの主に用があるんだ。そこを退いてくれるかい?」
紙巻の煙草を吸いながら、黒い革ジャンを着ている青年はとぼけたように少女へ返答した。
「いいえ、私があなたを切り捨てるまでどくわけには行きません。」
そう言うと少女は、腰に納刀していた刀を握り、居合切りの姿勢を見せた。
(この小娘、見覚えがあるぞ...確か白玉楼の庭師だったか...?)
男が首をかしげていると少女は告げた
「私は白玉楼の半人半霊の庭師兼剣士。魂魄妖夢と申します。わが主の命により、貴方を断ち切ります!」
「やれやれ...あまり疲れたくないのだがな...」
男はそう呟くと左手を革ジャンのポケットから出した。
その瞬間左手に亀裂が走り、手中に「ヒビ」が広がった。
その光景はまさに、
それを見た妖夢は、数m先に立っていた男からただならぬ妖気を感じとった。どす黒く、ギラギラした雰囲気だった。
(こ、この殺気は一体...)
半人前の妖夢ですら察知できるほどの殺気。全身全霊から、危険信号が鳴り響く気がした。
この男と関わってはいけない。と・・・
「...まあいい」
男は左手をゆっくりと上げ、妖夢へ突き出しこう切り出した。
「私の原点を目視できるか?小娘」