月下の流星   作:田前義親

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第10話

「撤退だと…バカなぁ!」

 

ウラキは通信する。そして怒鳴り返す。

 

「上の決定だ。従え。そもそも中佐の身分で艦隊指揮できるだけでもありがたいと思え。」

 

「お前達はそうやって弱者を切り捨てるのだな」

 

「何とでもいえ」

 

そこで通信は途絶えた。

ニヤニヤとウラキを見るファティマーにウラキは睨み返す。

 

「ま、そういうこと」

 

「くっ、全軍、撤収せよ。」 

 

弱々しい声でウラキはいう。戦闘は中止された。リゼルはMA形態になり帰投し、ジェガン、ジェスタもそれに倣った。

 

「ウラキ中佐、俺達も艦隊に合流しても宜しいですか?」

 

ナヤンは問う。今後の道筋を。

 

「問題ない。むしろ参加して欲しい。戦力は多い方がいい。」

 

そのことを聞き終えると、くるりと向きを変え、ステイメンに向き直った。

 

「俺は必ず助けに来る。待ってろよ」

 

それだけいうとナヤンはデルタプラスをWR形態にして飛び去った。

 

「往生際の悪い男だ。」

 

ファティマーはそう感じただけだったがフウカは違った。

 

「助けに来る」

 

その言葉がこだましていた。すると突然胸が苦しくもがきだした。パイロットスーツヘ手を突っ込み呻く。

 

「発作か。仕方ないな」

 

ファティマーは懐から注射器を取り出しフウカの首筋に突き刺す。

 

「あっ!あぁ…ナ…ヤン」

 

ビクッと体を震わせた手を上方ヘ突き出したフウカはバタリと倒れた。それと同時にファンネルも行動を停止した。

「ファンネルを全部回収して撤収せよ。」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

『起きてよ。今日は花火を見るんでしょう。』

 

目をこすりながら少年は見上げる。

 

 

『なんなんだその変な格好は』

 

少女はくるりとターンして袖を振る。

 

『エヘヘ。これ、浴衣っていうんだよ。花火を見るにはこれを着なさいってさ』

 

『誰が言ってたの』

 

『父さんが言ってたの』

 

少年は明らかに頬を朱くしていたがそれを隠すように答える。そんな甘い日は続かない。

 

『離せー。離せって。俺は必ず、お前を助けに来るからなあー!!』

 

黒色の服を着た屈強そうな男が4人と同じく黒色の服を着た神経質そうなメガネの男がいた。実は黒服達には他にも3人味方がいたがナヤンによって顎を砕かれた奴が1人、ナイフで刺されて呻いている奴が二人という状況だ。

メガネはいう。

 

『こいつはなかなかの身体能力だな。これも《強化》するかな』

 

そして俺は十年後連邦軍の新人少尉として戦場にたった。

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

「全く情けない男だな」

 

「返す言葉もない。」

 

ルードの返事にナヤンは自嘲気味に笑う。次の瞬間、ナヤンの頬に衝撃と激痛がはしる。ルードがナヤンを蹴り飛ばしたのだった。壁にもたれるように座っていたナヤンは立っていたルードの足が丁度頬の位置であった。

 

「何すんだ!」

 

「馬鹿やろうー!お前は《誓い》を破るクソ野郎か?」

 

ルードは倒れたナヤンに乗り掛かり、馬乗りになる。そして、もう一発殴った。

 

「そしてその女はどうなった?」

 

「わからん。俺がフウカに惚れ込む理由はあの少女の面影があるからだと思っている。」

 

「お前は随分勝手だな。このことは彼女には話したのか?」

 

「いいや。そしてその機会ももうない。」

 

「お前は何にも分かってない。」

 

 

「はあ!なんだって!」

 

ナヤンは上体を起こし、ルードの胸ぐらをつかむ。

 

「お前に、お前に何がわかるってんだ。」

 

ルードはグイッと顔をナヤンの前に突き出す。

 

「わかるにきまってんだろう!俺はその話をフウカから聞いたんだ。そして、その男の子はナヤンだって言ってたんだ。わかったか!このヘタレ!」

 

ルードは言い切った後、もう一発殴った。ナヤンは呆然として何も動けなかった。

 

「俺はニーナを救うべくネオ・エゥーゴを潰しに行く。そして、クリスに真実を問い詰めるんだ。一緒に来ないか、ナヤン?」

 

真っ直ぐな瞳とニカッと笑う顔。そこから感じられるのは、世界さえも変革しかねない強固な意思であった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「そうか。それがお前達の答え…か。」

 

コウは司令室でナヤンとルードの言葉を聞き、目を閉じ、考える。

 

「大佐、俺達は最早連邦がどうなろうが関係ないのです。俺達は手の届く範囲を守る、ただそれだけなのです」

 

ナヤンとルードは深々と頭を下げる。今まさに土下座せんとする勢いは本気であるとわかる。

 

「認めてあげたら、この子達も本気のように見えるわ」

 

「ニナ、一応艦隊の指揮権は僕にあるのだけど……」

 

コウの反論にはどこか力がない。

 

「もしかして、断るの?私にデルタとバイアランを修理、改造しておけと命令したのはどの大佐だったのかしら。」

 

ニナの目はつり上がり問い詰めるように見える。

 

「グッ、今言わなくても。まあいい。ネオ・エゥーゴは潰しに行かないと不味い状況なんだ。しかし、連邦軍の腰抜け共はそんな僕達に援軍を送るどころか攻めるなと命令する始末。そこで、相談だ。戦時階級として、ルードを中尉にナヤンを少尉として雇う。傭兵でも良いのだが余りほめられたものでないからな。」

 

ウラキからの提案に一理ある。傭兵など後々潰しても問題ないからだ要するに「軍人じゃないから」ということだ。しかし懸念すべきこともある。

 

「そもそも俺達はもう軍人じゃないのですが?」

 

ルードのいうのは当然だ。

 

「それは偽造するのさ。今回の戦闘で死んだ兵士を二人ほどちょいちょいとね。」

 

キースは人差し指だけを立て、チッチッチッと指をふる。

 

「それは……戦死したその方々のご家族はどうなさるのでしょうか?」

 

ルードの発言にキースは今までの飄々とした表情からキッと真面目な表情になる。

 

「勿論伝えられん。俺達は軍隊なんだ。適当な戦闘で戦死にする。あいつらには悪いがな。」

 

「「何から何までありがとうございます。」」

 

ナヤンとルードは揃って頭を下げる。

 

「まあ、頑張ってくれることがあいつらのための供養になるだろうさ。気楽に行こうぜ」

 

「私の整備する機体なんだから絶対勝てるわ」

 

「期待しているぞ」

 

三者三様の返事をもらい、ナヤン、ルードは執務室を後にする。

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