執務室を出たナヤンとルードは歓喜に震えていた。思うことは展望のできた未来。考えうる最善策だ。(ありがとうございます。閣下。)二人は改めて恩義を確認するのだった。そして、ニナに言われた改造されたデルタプラスとバイアランを見るべく、MSデッキへと向かった。
衝撃はMSデッキの入口付近で起こった。
「お前達のせいでヤンは死んだんだ!」
突然殴りつけられ、壁に頭を押さえつけた。そこにはロンド・ベルの兵士が3人ほどいて、1人がルードの頭を押さえている。
「てめえ、何しやがる!」
ナヤンはその兵士に体当たりし吹き飛ばす。
「てめえじゃねえ!俺はフランツ。階級は少尉!お前達のせいでヤンは死んだんだ!あいつには新婚の嫁がいたんだっ!」
フランツはナヤンに右ストレートを放つもかわされたので左アッパーを打つ。体術はかなりの出来であった。
「保護された分際で偉そうに!」
「名前持ちがなんたってんだ!」
残りの2人も飛びかかる。1人はルードが蹴り飛ばし、壁に激突する。残った1人はナヤンが右手を掴み、腹に膝蹴りを入れる。
「グッ!ぬうぅ」
「カハッ、ここまでとは」
2人は呻きながらよろよろとなっている。
「この野郎、こうなったらぁっ!死ね!」
フランツはナヤンに向け銃を構える。
ナヤンとルードは気を取られていて反応が遅れた。
「そこまでだっ!」
大きな声が響きわたった。見るとアングリフとキースが仁王立ちで立っていた。
「艦内で喧嘩など言語道断」
アングリフは鬼のような形相で睨んでいた。
「しかし、こいつらは、」
なおも抵抗し、反論しようとするフランツらであった。アングリフの睨みにより押し黙る。どうにかしてここを切り抜けようとする意志が見え見えである。
「こいつらは少尉と中尉の位をもらってるよ。まあ、戦時階級だけどね。これがどういう意味か、わかるかい。そして、これを進めたのはコウだ。もう、言いたいことはわかったね。」
ここにいるのは連邦に対し、反抗的な奴が多い。そのため、コウに対する信頼と忠誠は凄まじいものがある。
「けど、信じられない君たちの気持ちもよくわかる。そこでどうだろうか、シュミレーターで模擬戦をしてみるのは。ここでの因縁、しっかりと晴らすといいよ。」
フランツらは目を輝かした。実はフランツらはロンド・ベルの中でも精鋭である。
「了解しました。」
フランツは渡りに船だと思った。この生意気な奴らを叩きのめすいい機会だと。
「ナヤン達もそれでいいよね」
「ご温情、感謝します。」
深く一礼する。
「相変わらずの堅物ぶりだねぇ。まあ、いいや。さてシュミレーターへとレッツゴー!」
キースは陽気な声を上げた後、軽やかなステップを踏んで、シュミレータールームへと向かう。ナヤン達もその後に続いた。
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「フンっ。コウ大佐やキース少佐はあいつを過大評価し過ぎだ。俺が化けの皮を剥いでやる。」
フランツは心中で苛立ちながら闘志を燃やしていた。そして、向かいに座ろうとするナヤンを睨み付けた。
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「レベルは一流なんだがな。やはり実戦経験が少なすぎる。」
顎に手をあて、悩ましそうにキースは言う。
「無理もありません。あいつらはまともな戦争を一度もしておりませんからな。自分だって、ほとんど戦わず、後詰めがほとんどでしたけど。」
アングリフは答える。
「まあ、月下の流星の実力、特と拝見させて貰うかね」
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今回の機体はナヤンがジェガン、フランツはリゼルというハンデを持っていた。最も、ナヤンのデルタプラスに乗った時のデータが少ないというのが理由であったが。そこで、連邦のデータベースに残っていたジェガンが使われたのだった。
「バカにしやがって。叩きのめしてやる。」
そのことがフランツには我慢ならなかった。
「それでは、初め!」
フランツはリゼルをWR形態にすると、一直線にナヤンへと迫った。
「フランツは性格はあれだが、腕は一級品だ。どうする?ナヤン。」
キースは不敵に笑う。フランツの腕は充分に信用出来るものであるからだ。
「くたばれ!」
フランツはビーム・ライフルを撃つがナヤンは僅かに機体を動かすのみで全く当たらない。ここからもナヤンの技量が見て取れる。
「認めてやるよ。貴様のロンド・ベル入団をな。」
ナヤンを通り抜けたフランツはMS形態に差し戻した。いや、正確には差し戻そうとした。
「変形の部分にシールドを差し込みやがった!なんて奴だ。」
変形部分に差し込んでいるシールドは強力な変形しようとするリゼルの力にへし折れそうである。
「見ろ!俺の力を!何が月下の流星だ。俺こそ、その名を語るにふさわしいわ!」
フランツは勝利を確信した。ロング・ビーム・サーベルを生成し、斬りつける。
「甘いな。詰めが。」
差し込んだシールドに着けられた二連ミサイルランチャーから2つミサイルが発射された。
「フンっ!その程度の攻撃、弾き返してくれる!」
スチャっとフランツはシールドを構える。
「それが甘いというのだ」
ナヤンのはなったミサイルは普通ではなかった。パンっという音と共に物凄い閃光が画面一杯に広がる。フランツはシールドを構えていたが、頭のカメラは無防備であった。
「なんだと!そこからそんなものが……」
フランツは驚愕した。そして動きが一瞬止まった。
「動きは止めたものが負けさ」
次の瞬間後ろへまわりこんだナヤンはビーム・サーベルを引き抜き、コックピットへ突き刺した。
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「圧巻ですね。その名に恥じぬ働きとはこのことです」
アングリフは誉める。戦術、戦闘力、共に一流であるとはっきりと証明されたのだ。
「まっ、これくらいしてもらわないと困るけどね~」
キースは当然だというように手をヒラヒラと振る。
「認めるか?」
ナヤンはがっくりと膝を着くフランツに手を差し出して立つ。
「クソッ!俺達は良くも悪くも実力主義だ。これに従い、俺はあんたを認めるよ」
そうやって差し出した手を掴んだ。
「他のみんなはどうする?ルードとでもやるかい?」
キースはぐるりと見回す。誰も動こうとはしなかった。
「では、これで終わり!これからがんばろうぜ!」
「「「「はっ」」」」
全員が敬礼した。
「何が終わりだってぇ~!」
「「「「!!???」」」」
全員が固まった。不動の姿勢で指一本動きはしなかった。そこには鬼があった。そして『死』があった。
「モっ、モーラ。い、一体何の用だい?」
キースが勇気を振り絞り答える。
((((勇者だ))))
みんなの心が一つになった。
「あんたらが来るって言うから待ってたのにちっともこないから迎えに来てやったんじゃないかっ!」
「「「ももも、申し訳ありません!」」」
「わかったらさっさと行くよ。駆け足。」
「「「はっ!」」
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こうしてナヤン達の新たな戦いがはじまった。