放たれた一条の光は深淵の闇から亡霊を呼び起こす。
「あっ、あれはなんなんだ!」
ナヤンは戦慄した。それはビーム・ライフルではない、ましてただのメガ粒子砲でもない。もっと違う超越した何かだった。
「コロニーレーザーか?あの威力は半端じゃない。」
コロニーレーザー、ナヤンがそう思うのも仕方ない。実際に見たことはナヤンはない。
過去にティターンズの艦隊を消し飛ばした禁断の兵器。将兵の間でこの名をしらぬ者はない。それほど恐れられているのだ。今回の光線はムサカを消し飛ばしすべてを無に帰した。まさしくその名に恥じぬ働きと言えた。
「あの護衛機の多い様子、あれが隊長機と見た。あれさえ倒せれば…」
ナヤンはフットペダルを踏み込んだ。急加速するジェガン。目標の機体はすぐはっきりと見えるようになった。機体から大きく突き出したキャノン。機体本体もとてつもなく巨大である。ガンダム試作3号機デンドロビウム、かつて登録そのものを抹消された機体がそこにあった。
「ちょっとマジかよっ!」
ルードは機体の制御に四苦八苦している。そもそもMAヴァル・ヴァロの戦術の基本は一撃離脱にある。そのための高加速とメガ粒子砲であるしミサイルだ。クローもあることはある。しかし近接戦闘に向いているとはとても言えない代物だ。
「いた!本体だ。よくもやってくれたなっ」
ヴァル・ヴァロの放ったメガ粒子砲は戦艦をも撃ち抜く威力だ。ただしそれは長充填の必要な代物だ。そもそもは対艦攻撃向けの扱いずらい。
「兄さん」
ルードは確かに微かな声を聞いた。懐かしい声だ。
「ニーナなのか?応えてくれ!俺だっ、 ルードヴィッヒ・デュバルお前の兄貴だ! 」
ルードはもはや何もみてはいない。取り憑かれたようにフラフラと進んだ。
「お前は誰だ?何故私の名前を知っている?」
返事は信じられないものだった。そしてビームガンを打ってきた。
「な、ぜだ?なぜなんだぁ!」
四方八方から押し寄せるファンネルをギリギリで避けながら叫ぶ。量産型キュベレイ、人を人と思わぬ業の集大成のようであった。
「ちくしょう、このままじゃあマズいぜ」
ナヤンは毒づいた。武装も性能も何一つ有利でなかったからだ。ナヤンのジェガンは色々とカスタマイズされていた。しかしジェガンの域を越えてはいない。故にミサイルはすでにうち尽くされていた。
「がら空きなんだがな」
背後に周りこんだナヤンはビーム・ライフルをドウ、ドウと撃つ。しかし球状のバリアすなわちIフィールドに阻まれて何一つ命中してはいなかった。デンドロビウムはギュルギュルとその大きな体を回転させる。
「嘘だろっ」
ナヤンは信じられなかった。ルードのヴァル・ヴァロでも向くことのできない位置である。
「惜しむらくは機体の性能よな。そして志を持たぬ者に俺は負けはせん」
大型ビーム・サーベルを突きつけファティマーは言う。
「おとなしく降参しな、もうミサイルもねえだろ」
事実である。もはやナヤンに打つ手はない。しかしナヤンはこの事を認める訳にはいかなかった。認める事はすなわち愛しい人を失うにほかならず、それは自身の精神の楔を取るのと同義である。
「あいつら使い道があるかもしれないな」
マラサイに乗りながらミリウスは考える。ミリウスは連邦軍の内偵としてネオ・エゥーゴに潜入している。ここいらで取り込んでおこう。そうミリウスは心の中で思う。そしてマラサイを動かしナヤンのジェガンの後ろにビーム・ライフルを突きつける。触れるようになったことで接触回線が開く。
「こちら、連邦宇宙軍所属ミリウス・バーグマン。そちらをナヤン・ヨークとお見受けしますが間違いないか?」
ナヤンは驚いた。突然連邦軍の男が尋ねてきたからだ。とても信用できるはずなかった。
「それを俺が信用するとでも?」
当然の切り返しをするナヤンは疑念の心でいっぱいだった。
「ふう、仕方ありませんね。私の上司はコウ・ウラキ中佐だといえば信用に足りますか?」
ナヤンは衝撃を受けた。ウラキ中佐はナヤンの元上司だからだ。
「よしわかった。それで俺にどうしろと?」
とりあえず内容を聞くことにした。
「投降してください。」
「ふざけるな」
ナヤンは怒った。ナヤンの心情をミリウスが理解していないようだったからだ。
「今回の積み荷の中身は高性能のMSという情報が入っています。これを奪ってしまいましょう。そしてウラキ中佐達もこの艦隊を尾行しているはずです」
ナヤンは迷った。しかし決断するに充分な材料はあった。
「俺の目的はフウカを助けることだ。それ以外どうでもいい。」
運命は動きだす
書き方を変えてみました。どうも田前義親です。もうそろ折り返しかなってところです。どうか最後までお付き合いください。