AKABAKO   作:万年レート1000

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記念すべき100話だけどみじかめー。
ここで区切らないと滅茶苦茶長くなりそうなんですね。


『最悪』のダークファルスたち

「成る程ね……」

 

 惑星リリーパ・採掘基地周辺。

 

 その上空で、ダークファルス【若人(アプレンティス)】は苦虫を噛み潰したような表情で呟いた。

 

 眼下には、採掘基地――という建前でアークスによって建築された、『ダークファルスの力を押さえ込む塔』。

 

「あれで、あたしの力を封じていたわけか……忌々しい」

「うっばっば、気がついたあたしに褒美のキッスをしてもいいのよ?」

 

 まるで恋人のように腕を組んでいる(組まされている)【百合(リリィ)】の言葉を無視して、【若人】は踵を返して採掘基地へと背を向けた。

 

「? あれ、アプちゃん何処行くの? 襲撃すると思ったのに」

「勿論するわよ。でも、その為には準備しないといけないのよ」

 

 即、数億に及ぶダーカーを量産できた全盛期ならいざ知らず。

 

 今の【若人】にそこまでの力は無い。

 相手は仮にも百年以上ダーカーと競り合っている集団だ。

 

 万全の準備をして挑まなければ、苦戦は必至だろう。

 

「とりあえず、二億体くらいかしら。襲撃を始めるのはそれくらい眷属を量産してからね」

「ふぅん、意外と慎重なのね」

「冷静、と言ってくれないかしら。戦力分析くらいできるわよ」

 

 言いながら、空間を転移し二人は採掘基地付近の洞窟へと足を踏み入れた。

 

 雨風を防げるし、目立たないし、ダーカーを量産して隠しておいても発見され辛い場所だ。

 

「ここがいいわね……それじゃああたしは眷属を増やすのに集中するから邪魔しないでね」

「後ろからそっと抱きつくくらいは邪魔にならないよね?」

「洞窟に入ってきたらぶっ殺すわ」

「えーっ!?」

 

 理不尽だー! 横暴だー! と意味の分からない抗議を完全に無視して、【若人】は洞窟内へと入っていった。

 

 まさか後ろから抱きつくどころか、洞窟内に入ることすら禁じられるとは……忠告を無視することは可能だが、嫌われたくは無い……。

 

「はぁー……仕方ない、そんなに時間は掛からないだろうし、どっかで適当に時間潰しを……」

「じゃあさ、ぼくたちと遊ばない?」「それなら、わたしたちとお話しない?」

 

 不意に聞こえた声に、【百合】は立ち止まった。

 

 両手に茜色の剣を作り出しながら、ゆっくりと振り返る。

 

「…………貴方たちは……」

「くすくす」「くすくす」

 

 背後に居たのは、二対一体のダークファルス。

 左右対称に付いている髪飾りがトレードマークの、双子。

 

 ”ダークファルス【双子(ダブル)】”。

 ダークファルスの中でも、『最悪』と評される悪魔のような子供たちである。

 

「……誰だっけ?」

「ぼくたちは、ダークファルス【双子】」「わたしたちは、ダークファルス【双子】」

「うば、同族か……」

 

 同族、という言葉を【百合】が発した瞬間、【双子】は意味深な笑みを深くした。

 

 その小さな体躯に見合った、無邪気さを感じさせる笑みだというのに、

 

 とても邪悪なものに見えるのは、ダークファルスが持つ特性からか。

 

「ふふふ、同族だって」「くすくす、同族だって」

「……?」

「まあ、確かに同族と言えなくもないかなー」「うんうん、同族同族」

「……うば、何その言い方……まるであたしの正体を知っているみたいな……」

「「知ってるよ?」」

 

 声を揃えて、【双子】は言った。

 

 その言葉に、さしもの【百合】も目を細める。

 

「知りたい? ねえ、知りたい?」「知りたいよねぇ? 記憶喪失なんでしょ? 教えてあげよっかぁ」

「いや、別に」

「だよねー、知りたいよねー……え?」「……え?」

「あたしのことなんてどうでもいいよ。それよりさ」

 

 それよりさ、と。

 【百合】は心底どうでもよさそうに話題を移した。

 

 『あたしのことなんてどうでもいい』という言葉が、

 生物としてどれほど異常なのかということにも気づかずに――否。

 

 ――気にせずに。

 

「貴方たち、そっちが男で、そっちが女であってる?」

「?」「……?」

 

 【双子】を交互に指差しながら、【百合】は言った。

 

 ダークファルス【双子】は、二対一体のダークファルス。

 その見た目は、その名の通り双子のようにそっくりな少年少女の姿だ。

 

 そう、少年少女。

 片方が男の姿で、片方は女の姿なのである。

 

「……ダークファルスに男女の概念は……」

「そういうのいいから、見た目とあと『生えてる』か『生えてないか』だから」

「…………」「…………」

 

 この欲望に忠実な感じ、まさしくダークファルスであるといわざるを得ないだろう。

 

 呆れながら、【双子】は頷いた。

 【百合】の見立ては正解だったようだ。

 

「そっか」

 

 【双子】の反応を見て、【百合】は小さく頷いて――――。

 

「じゃあ死ね」

 

 ――瞬間。

 茜色の刃が、【双子・男】の身体を貫いた。

 

 心の臓を、深々と。

 

「がふっ――」

「男が、あたしの視界に入るんじゃあない」

 

 怨念の籠もった視線で、【百合】は【双子・男】を睨む。

 

 先ほど投げた右手の剣を、再度生成。

 今度は両手を振るって二本の剣を投擲した。

 

 が。

 

「おっとっと」

 

 ばくり、と。

 【双子・女】の左腕から顕れた大きな『口』が、【百合】の剣を『食べて』止めた。

 

「うばっ……!?」

「やれやれ、野蛮だねぇ、まるでアークスみたいだよ」「いたた……酷いな、痛いじゃないかー」

 

 身体を貫かれたというのに、【双子】は平気な様子でにたにたと笑う。

 

 痛みは感じているようだが――流石はダークファルスということだろう。

 

 この程度では、屠れない。

 

「どうする? もうやっちゃう?」「そうだねぇ、やっちゃおうか。向こうも、やる気満々だし」

「…………」

 

 【百合】の背後には、数えるのがバカらしくなってくる程の剣が大量展開されていた。

 

 その全ての切っ先が、ダークファルス【双子・男】の命を狙っている。

 

「じゃあ、始めちゃおうか」「それじゃ、始めよっか」

 

 【双子】が互いの手を取って、くるくると回る。

 闇が混ざり合って、溶け合って、やがて一つの形になる。

 

「化け物同士の!」「殺し合い!」

「「骨の髄まで、喰らいあっちゃおうよ!」」

 

 ダークファルス【双子】の戦闘形態――ファルス・ダランとファルス・ダリルが顕現した。

 

 グロテスクな模様をした細長い矮躯と、片腕に付いた大きな口が特徴的な人型戦闘形態である。

 

「うばー、変身した……」

 

 こうなると、折角可愛かった【双子・女】も台無しだ。

 残念そうに【百合】はため息を吐いて、剣を構える。

 

 ダークファルス【双子】vsダークファルス【百合】。

 

 最悪と呼ばれるダークファルスと、ある意味最悪なダークファルスの闘いが、誰にも知られぬまま始まった。

 




ついに、気づいてしまった。
EP2入ってからマトモに戦闘してないじゃないですかー!

【双子】vs【百合】とか丸々カットする気満々だったけど描写した方がええんかな……。

このままじゃただ女の子たちがイチャイチャしたり、シリアスっぽい何かをしてるだけのお話になってしまうじゃないか…………あれ? 最初はそのつもりで始めたような……。
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