ゲームの方は半ば引退状態なのですが(ストーリーしかやってない)、これを機に再開しようかなぁ。
P・SPECに載ってたローニンとかいうAISプロトタイプを出したくてしょうがないけどP・SPEC買った人にしかネタが通じないんじゃないかという不安。
イズミとハル。
彼女らの同期生に、その二人の名を聞いて良い顔をする者は存在しない。
片や、一見森林の中で静かに水面を揺らす泉のようでありながら、その内情は苛烈にして熾烈。
片や、春のように温かで、春のように明るく、そして春のように頭がパーな自由オブ自由、テキトー少女。
真面目でキレやすいイズミと、
不真面目で自分の行動を邪魔されるとキレるハルの相性は、当然のように悪かった。
そして何よりも最悪だったことは、二人の実力が拮抗していたことだろう。
それも、研修生の中では頭一つ分抜きんでる形で、拮抗していた。
研修生で、彼女らの喧嘩を止められるものがいなかったのだ。
数えきれないほど喧嘩して、何度も暴行事件を起こして、何度も何度も研修所の備品を破壊した。
誰が呼んだか二代目ゼノとゲッテムハルト。
二人は素行不良で数多の減点を喰らいながらも、その優秀さと運でギリギリ及第点に達し、余り物をくっつけたような適当さでペアを組まされ、現在。
修了試験当日。
二人は仲悪く、ナベリウスの森林を踏みつけるように黙って歩いていた。
「…………」
「…………」
死ね死ねと言い合っていたら、ヒルダさん(オペレーター)に怒られたが故の無言である。
目を合わせることも、互いの存在を確認することもなく、二人は進む。
二人とも、目を離した内にはぐれてしまったのならそっちの方が都合が良いと言わんばかりの態度である。
「…………ところでハル。念のため確認ですけど修了試験のクリア条件……憶えているわよね?」
少しして、イズミは眼鏡をくいっと指で押し上げ、デューマンの証たる左目の赤い瞳と右目の青い瞳をハルに向けた。
そう。
イズミはイオと同じ、デューマンなのだ。
病的なほど白い肌、控えめに伸びる角。
『エーデルゼリン雅』と呼ばれる儀礼用にすら見えるほど整った装飾の施された戦闘服に、知的な眼鏡としめ縄のような太い三つ編みはまるで学級委員長のようである。(勿論彼女は学級委員長だったことなんて一度も無いが)
「あ? 何? 忘れたの?」
「そんなわけないでしょう、ただの確認よ。今世紀稀に見るアホなアナタにクリア条件を無視して突っ走られたら私が困るもの」
まあでも憶えているようで一安心、と。
イズミはホッとするようにその貧相な胸に手を置いた。
「ボクがそんな大事なこと忘れるわけ無いだろ? 森林エリアのボス、『ダーク・ラグネ』を倒すんだっけか」
「違う! ぜんっぜん違う! 討伐対象はザ・ウーダンだし、ダーク・ラグネは森林エリアのボスじゃない!」
「えー? でもボク、ラグネを倒す気満々なんだけど? ザ・ウーダンなんて雑魚じゃ燃えないんだけど?」
「アナタが燃えるかなんて関係ないのよ……」
「ボクはダーク・ラグネを倒すために生まれてきたと言っても過言ではない!」
「過言すぎる!」
本当にただノリで喋っている――というかノリで生きているのだろう。
ハルは即座に前言撤回するように「あ、でもファング夫妻とも戦ってみたいなー」とか言い出した。
金髪のショートヘアー、藍色の瞳。
慎ましい胸もあって少年的な印象が強く前面に出ているが、長い睫毛と柔らかそうな唇がハルの少女らしさを辛うじて醸し出していた。
服装も『アクティブキャミ影』と呼ばれるボーイッシュな印象の動きやすさ重視の服であることも、彼女の少年らしさを強くしているだろう。
「ああもう……アナタがラグネに殺されようがファング夫妻に嬲られようがどうでもいいけど……今だけは自重してくれない?」
「自重なんて言葉はお母さんのお腹の中に置いてきた!」
「今すぐ取り返してきな――っと」
お喋りは終わりのようだ。
前方から、エネミーの出現を感知。
草木を掻き分けて、原生種の団体様がご到着のようだ。
「がるる……」
「ぐるる……」
「ガルフルか……結構数が多いわね」
出てきたのは、ガルフルと呼ばれる狼型エネミーだった。
鋭い牙と爪、俊敏な動きが厄介な原生種だ。
だがイズミとハルは突然の敵にも、怯むことなく武器を構える。
これくらいの敵なら、シミュレータで何度も戦った相手だ。
「別に、怖かったら下がっててもいいんだぜ? イズミ」
「この程度で怖がっていたら、アークスになんてなれないわよ。黙って戦いなさい」
イズミは、ダブルセイバーを。
ハルは、ナックルを構えた。
どちらも支給されたばかりの初期武器である。
まあ尤もそれは研修生であるため当然だが。
「初実戦なのに、黙ってなんてられねえよぉおおおおおお!」
「あ、もう! ……全く……」
合図もせずに飛び出したハルに、イズミはため息を吐いた。
上手いことガルフルの凶牙に首を噛み切られて死なないかなと願いながら、イズミもガルフルの群れへ走り出す。
「がるぅぁあ!」
「ダッキング……」
イズミの願望通りハルの首筋を狙った噛みつき攻撃を放ったガルフルの牙を、しかしてハルは軽くかわした。
「ブロウ!」
そして、重たい拳をガルフルの横腹に叩き込む。
分厚い毛皮と強靭な筋肉を持った原生種といえど、その拳は重たかったようでガルフルは数メートル吹き飛んだ。
「チッ」
舌打ちしながら、イズミは跳ぶ。
背中を鞭のように反って、空中でダブルセイバーを振りかぶり――
「サプライズダンク!」
着地と同時に、全力でダブルセイバーをガルフルへ叩きつける!
「ぐぎゃぁっ!?」
ガルフルはたまらず悲鳴をあげ、ドロップアイテムを残し消滅した。
よし、研修で鍛えた技は実戦でも通じる。
そう確信したイズミは、次の敵を倒そうと顔をあげて――。
――ハルに横っ腹を蹴っ飛ばされた。
「ぐはっ!?」
「あ!」
しまった、やってしまった! と言いたげな顔をしたハルの顔を視界に捉えながら、イズミは吹き飛んだ。
まあ吹き飛んだといってもただの蹴りだったので一メートルほど転がっただけだったが、それでもあまりに理不尽すぎるダメージに、イズミはハルを睨み、叫ぶ。
「な、なんのつもり!? 事と場合によらずぶん殴るけど理由だけは訊いてあげるわ!」
「ごめんごめん、つい、その、なんていうか……」
「…………」
「蹴れそうだな、って思ったら、無意識に蹴ってた」
「ぶっ殺してやるから首を出せ」
理由なんてなかった。
ていうか言い訳すら出てこなかった。
「やっぱりまずはアナタから処理した方がよさそうね……」
「理不尽な暴力がボクを襲う! ちょっとイズミ! ふざけてないで真面目に戦いなよ! これは修了試験なんだよ!」
「ここまで見事なブーメランは初めて聞いたわ……まあでも確かにその通り」
今は修了試験。
自分たちの一生に関わる大事な大事な試験なのだ。
ただでさえ目を付けられているというのに、これ以上の問題行為を起こすわけには行かない。
「仕方ないわね、やり返すのは後にしておいてあげるわ」
立ち上がりながら、イズミは言う。
眼鏡の位置を指で直して、ダブルセイバーを構えた。
「今は、喧嘩している場合じゃないものね」
「お、物分りがいーねー」
「当たり前じゃない。この状況で喧嘩なんてするわけがない……今から始まるのは一方的な虐殺よ」
言って。
イズミはハルに飛びかかった。
ガルフルの群れなんて完全に無視した、ハルへの攻撃行動だ。
しかしハルは当然のようにその行動を読んでいたのか、すぐさま迎撃態勢を取った。
地を蹴り、カウンター気味の一撃を狙う、攻撃的な迎撃態勢。
「死ねパツキン貧乳ぅううううううううう!」
「そっちが死ね貧乳眼鏡ぇええええええええええ!」
ダブルセイバーとナックルが、振り上げられる。
しかして、剣撃と拳撃が交差することは、無かった。
またもヒルダさんにお叱りの言葉が放たれたから――ではない。
一匹のガルフルが、唐突に二人の間を縫うように走り抜けていったからだ。
「…………え?」
「あん?」
ピタリ、と二人の動きが止まった。
その走り抜けたガルフルは、二人に構うことなく遥か彼方へと駆け抜けて行ってしまったのだ。
否、その一匹だけではなく、あと数匹居たガルフルも完膚なきまでに姿を消していた。
「逃げた……? 私たちから?」
「いや、これはどちらかというと…………」
ずしん、と。
地鳴りが一つ、鳴った。
「こいつに『喰われる』お仲間を見て、脱兎の如く逃げ出したってことじゃないかな」
ずしん、と。
もう一つ、地鳴りが鳴った。
「……うわ」
最後にもう一度だけ地鳴りが響いて、そいつは赤い瞳を光らせた。
蜘蛛のような無機質な瞳は、確実にイズミとハルを捕らえている。
「ダーク・ラグネ……」
イズミがその名を呟いた。
黒い外殻、四本の脚に肥大化した腹。
新人に降りかかる、登竜門的大型ダーカー。
ダーク・ラグネが、そこに居た。
というわけでデューマンのイズミとヒューマンのハルです。
どちらもファイターでダブルセイバー使いとナックル使い。
名前の由来は泉も春も英語だとどっちもspringだからです。
根幹では似た物同士って設定、好き。