AKABAKO   作:万年レート1000

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再誕の日⑦

 引き続き、マザーシップ内の通路をひた走る『リン』とマトイ。

 

 こうも同じ景色が続くと迷いそうになる。

 シャオがナビゲートしてくれてホント助かるなとかそういったことを考えつつ走っていると……。

 

「……来たね。『リン』。そっちのお嬢ちゃんは、連れか」

 

 

 ――見知った顔に、出くわした。

 六芒均衡の一人、マリアだ。

 

「……アークスの人! また、戦わないといけないの?」

「おっと、警戒する必要はないよ。六芒に絶対令はきかない。じゃないと均衡できないだろう?」

 

 マトイが警戒心をあらわにすると、マリアは安心させるようにそう言った。

 

「……それに、アタシたちの目的はどちらかといえば、アンタ達に近い」

 

 言いながら、マリアが上を見上げる。

 釣られてそちらに視線をやると、今しがた『リン』たちが通ってきたトンネルになっている通路の上から一人の男が降りてきた。

 

 『クローズクォーター』と呼ばれる戦闘服を彼が勝手に細部を改造した『ヒーローズクォーター』というコスチュームを身に纏う、強い眼力を持ったヒューマン。

 

 六芒均衡の六。

 ヒューイがマリアの背後まで跳躍して現れた!

 

「……斥候ご苦労、ヒューイ。で、どうだった」

「概ね予想通りだ、姐さん。三人が三人、準備万端で待ち構えているぜ」

 

 普段の言動のせいでテンションが高い変なヒトくらいの印象しかヒューイに持っていなかった『リン』が驚いたように目を見開く。

 えらく真面目な面構えで、ヒューイは斥候の結果をマリアに報告していく。

 

(おお、伊達に六芒均衡をやってるんじゃなかったんだな)

「ダーカーどころか、人っ子一人通す気なさそうだ……っておおっ!」

 

 と、そこでヒューイはようやく『リン』の存在に気付いたようで大袈裟に驚き、叫ぶ。

 

「君は君たちは! よくぞここまでやってきた! さあ、次の相手はこのオレ……」

「…………」

 

 感心した途端これである。

 

 しかし流石のヒューイも空気は読める……というか案外大人なところもあったりするので、上がりかけたテンションをすぐに下げて……。

 

「って、そういう状況じゃないな。お互いに」

 

 と、真顔に戻った。

 

「よくここまで来てくれた。……それと、道中助けに行けなくて、すまない」

「いやそんな……」

「言ってしまえば同じ六芒均衡の暴走に近いものだっつーのに、だ」

「…………」

 

 やだ。なんか真面目なヒューイとどう接すればいいか分からない。

 

 今まで彼のことをシズクと並ぶシリアスブレイカーだと認識していたけど別段そうでもなかったらしい。

 

「……だからアタシたちが止めてやるんだよ、ヒューイ」

 

「『リン』! 待って、待って待ってっ!」

 

 と、その時だった。

 

 突然聞き覚えのある声が、背後から聞こえてきたのだ。

 

 振り返ると、そこにはこちらに向かってくる一人のアークスが居た。

 

 赤と白のコスチュームに、金髪ツインテールのソードを背負ったアークス。

 

 エコーである。

 彼女は一般アークスであるため、絶対令を影響を受けている筈なのだが……。

 

 瞳が赤く光っていない。

 

「はあっ、はあっ……よ、ようやく追いつけた!」

 

 エコーが息を切らしながら『リン』とマトイの元へと寄ってきた。

 

 変わらずその瞳には敵意が見えない。

 どうやら絶対令は効いていないようだ。

 

「アンタ達を狙って、という感じじゃないね……なんだ、知り合いかい?」

 

 ゼノのことを昔から知っているということは、当然エコーのことも知っているのだろう。

 

「この二人を問いただす気なら全部片が付いた後にしてもらえるかい。そんな暇はないんでね」

 

 突き放すように、マリアはそう言った。

 彼女の実力も、マリアは知っているのだろう。

 

 しかしエコーは、渾然とした態度で言い返す。

 

「そんなことをしにきたわけじゃない。あたしには、あたしの目的がある」

「エコーさん……」

「あたしとゼノ……ううん、あたしはずっと、この子を見てきた。してきたことも、何もかも。

 だから、何か理由があるってこともわかる。それが今やらなきゃいけないことっていうのも、わかる」

 

 エコーは、真っ直ぐな瞳で『リン』を見た。

 『リン』もまた、その視線を真正面から受け止める。

 

「だからあたしは『リン』のやることを手伝うの。

 それが、あたしのよく知ってるお節介な先輩ってやつがこの状況でやりそうなこと、だからね」

 

 先輩は後輩を助けるものだと、彼は言った。

 

 そうして、『リン』、マトイ、マリア、ヒューイ、エコーの異色な五人パーティは。

 

 三英雄の待つマザーシップ中心部へと、歩みを進めるのであった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「ねえねえリィン! そういえばこの前ちょちょいと全知を探ってたら面白い必殺技を思いついたんだけど試してみていい!?」

「ん? 別に私は構わないけど何をすればいいんだ?」

 

 三つあるチート能力が四つに増えたのか、とちょっと期待しながらリィンは目の前のリューダソーサラーが振るった鎌を受け止めた。

 

 その瞬間、シズクはリィンと鍔迫り合いをしているリューダソーサラーの真下に潜り込み、無防備に晒された敵の腹部にあるダーカーコアに向けて銃弾を乱射。

 

 たまらず後退しようとするリューダソーサラーの身体をリィンが抑え、逃げられなくしている間にシズクはじれったくなったのか銃口をダーカーコアに突き刺して乱射を直接敵の体内へとぶちまけた。

 

 悲鳴をあげながら消えていくダーカー。

 その消滅を完全に待つことなんてせずに、シズクは起き上がるとリィンに向けて貫通弾(ピアッシングシェル)を放った。

 

 それをリィンは平気な面で縦に切り裂き、二つに分かれた弾丸はリィンの背後から迫っていた小型鳥ダーカー『シュトゥラーダ』二匹のコアをそれぞれ貫いた。

 

「名付けて『コネクトドーピング』! あたしとリィンの『繋がり』を利用してフォトンを受け渡しすることによって、一時的に片方を強くする荒業よ!」

「シズクの能力って大抵が荒業よね」

「百聞は一見に勝る――ってことでいくよ!」

 

 久々の連携特化でちょっと楽しくなって来たというかテンションが高まってきたシズクは、

 笑顔で奥地へと走りながらリィンに向けて手をかざす。

 

「うばー!」

「わっ」

 

 すると、リィンの身体が一瞬だけ白い光に包まれた。

 

 ハンタークラスは、体内のフォトン量がそのまま防御力に直結するクラスだ。

 

 謎技術によってシズクのフォトンが足されたリィンの防御力は、今ならば――。

 

「これは、凄いわね……」

 

 鳥人のようなダーカー、『グル・ソルダ』が持っているソードの一撃を、リィンは左腕で受け止めた。

 

 斬れていないし、怪我一つ無い。

 自分の身体が鋼か何かにでもなったような感じである。

 

「うっばっば、問題はあたしにフォトンを集中させても大して火力上がんないし耐久上がってもしょうがないから意味無いってことと、リィンに集中させてる間あたしがフォトンアーツを使えなくなるってくらいかな」

「メリットに対してデメリットが大きくない?」

「実際に使ってみて痛感してる」

 

 これはチートとは呼べないかなぁ……、と呟いて、フォトンを元に戻すシズク。

 

 使いどころがないことはないと思うので、一応覚えておこう。

 

「……ん? 何かこの先やたらダーカーが集まってるね」

「ていうか、誰か戦ってるみたい……、っ!?」

 

 リィンが何かを発見したようで、目を見開き駆ける速度を上げた。

 

 そこに、居たのは――

 

「お、お姉ちゃん!?」

 

 ――ライトフロウ・アークライトが、カタナを口に咥えダーカーと対峙していた。

 カタナを、口に咥え……咥え……。

 

「何で口で!?」

 

 ツッコミながら、リィンは姉を助けるべくダーカーの群れへと飛び込んだ。

 

 




シズクの新能力は、ゲームの【深遠なる闇】戦で発動するA.R.K.S.支援システムのちょっとした応用です。
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