AKABAKO   作:万年レート1000

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【百合】、復活

「あれあれ?」

「あれあれあれあれ?」

 

 宇宙の何処か。

 名前すら無い惑星で、双子のダークファルスは目を丸くして互いに首を傾げあう。

 

 彼らの前には、小型のダーカーが一匹。

 そのダーカーから、報告を受けているようだ。

 

「どうしてアークスが白の領域に居るの?」

「どうしてアークスが黒の領域に居るの?」

「奴らがあそこにたどり着くまで、もう少し時間が掛かると思ってたのに」

「あいつらがハルコタンに来るまで、まだまだ時間が掛かると思ってたのに」

 

 どうする? と【双子(ダブル)・男】が自身の片割れに語りかけ、

 どうしよう? と【双子・女】が自身の片割れに語り返す。

 

「まだ黒の王様食べてないのに」

「まだ黒の民を増やしてないのに」

「どうしよっか」

「どうしようねぇ」

「うーん」

「うーん」

 

 珍しく考えるような素振りを見せて、【双子】は宇宙(そら)を見上げる。

 

 アークスは、厄介な相手だ。

 大半は有象無象だが、一部には決して油断できない強者も居る。

 

 【巨躯】を封印したり、【若人】の力の大半を奪ったり、【敗者】を打ち破ったり。

 

 何だかんだダークファルス側に結構な被害を与えているのだ。

 

 【双子】とて余裕ぶっている態度は崩さないものの、余裕で勝てる相手ではない。

 

「……ん?」

「……んん?」

 

 と、その時だった。

 

 宇宙を見上げていた【双子】が、揃って首を傾げる。

 その視線の先には――一人の少女。

 

 白いドレスを身に纏った、女の子が一人宇宙から落ちてきた!

 

「ぃやぁああああああっほおぉおおおおおおおおおー!」

「ダークファルス――」

「【百合(リリィ)】――!?」

 

 大きく粉塵を撒き散らしながら、着地。

 一時期弱っていた頃の面影はもう無く、力は完全に取り戻したらしい白いダークファルスが、【双子】のすぐ傍に降り立った――!

 

「うっばっばっば! あたし、復活! あたし、復活! あたし、復活! はしゃぎ過ぎて宇宙を飛びまわっちゃったわここは何処!? あたしは誰!? なんつって! ……ん? あっ! そういえばあたしマジで記憶喪失だったわそんな設定あったなー! うばばばばばば!」

「…………」

「…………」

 

 かつてないくらいテンションが高い【百合】を目の前にして、【双子】はドン引き顔という非常に珍しいというか彼らにとって生まれて始めてとなるそんな表情を浮かべた。

 

 致し方ないだろう。

 こんなテンションが振り切れている人間に出会ったら、ドン引き以外のどんなリアクションを取れというのか。

 

「うば? あれあれ? なんか何処かで見たことある双子がいるー」

 

 ひとしきり騒いだ後、ようやく少し落ち着いたのか【百合】は【双子】の存在に気が付いた。

 

「確か……ダークファルス【双子】? だっけ?」

「……一応殺しあった仲なのにおぼろげなのね」

 

 いつものように、【双子】は言葉を繰り返さない。

 喋るのは、【双子・女】だけだ。【双子・男】が口を開いた瞬間、間違いなくこの女は襲い掛かってくるだろうから。

 

「殺しあった……あー、そんなこともあったわね。懐かしい……」

「――ああもう! やっと見つけた!」

「アプちゃん♡!」

 

 懐かしい、と言った瞬間。

 ワープでアプちゃんことダークファルス【若人(アプレンティス)】が現れた。

 

 即座に、飛びつく【百合】。

 そしてそれをかわす【若人】。

 

 しかし復活した【百合】の身体能力には敵わず、【百合】は無事【若人】の胸元に顔を埋め背中に腕を回しぎゅっと抱きついた。

 

「うばばー♪」

「ったく……ん? 【双子】じゃない、何してるのよこんな何も無い惑星で」

「別に何もしてないわ。ちょっと休憩してただけ」

 

 休んでたらその子が降ってきたのよ、ともう既に【百合】の興味が【若人】に移ったが、まだ一応女の方だけで喋る【双子】。

 

 その判断は正解である。

 

「ふぅん? ま、いいわ。ほら【百合】、復活したならまた採掘基地を襲う準備に入るわよ」

「あいあいさー! ……あ、そうだっ」

「?」

 

 何かを思いついたかのように頭上に電球を浮かべ、【百合】は【双子】に向き直る。

 

「えーっと、【双子】だっけ? アナタも採掘基地を攻めるの手伝ってよ」

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 折れた刀身が宙を舞う。

 

 シズクの身長よりも遥かに大きい、クロガネの持っていた銃剣の刃は無残にも根元から折れてしまった。

 

 刃が地面に突き刺さる。

 陽光に照らされて輝くその刀身に、一切の錆や劣化は無く――。

 

「……り、リィン。今何したの?」

「新技」

 

 クロガネが振り下ろした銃剣を、受け止めただけ(・・・・・・・)でへし折った張本人――リィンが、軽くドヤ顔しながら短く言った。

 

 しばらく行動を共にしていなかった間に、また強くなったようだ。

 デスクワークばかりで、正直鈍っているシズクにとってこれは頼もしい。

 

「す、すげぇ……」

「い、今何が起こったの……?」

 

 後輩二人も、驚きを禁じえないようだ。

 だがしかし、今のこの場で誰よりも驚いているのは間違いなくクロガネだろう。

 

「……ほ、ほう。中々やるな、小さき者よ……」

「声が震えてるわよ」

 

 振り下ろされた銃剣を受け止めるために掲げていた大剣を背に戻しながら、リィンは言う。

 

「私たちに敵意は無いし、さっきこの子が言ってたことは全部本当よ。

 この星に危機が迫っている。私たちはそれを助けに来たの」

「…………」

「……!」

 

 り、リィンが初対面の相手とまともに話せている……!

 いや少しばかりスタッカートが効いている節があるが、それでも今までを考えると凄い成長である。

 

「…………ぬぅう……」

 

 クロガネは、迷っているようだ。

 目の前にいる不審人物たちを信用していいものか。

 

 王の元に、連れて行くべきか。

 はたまた――。

 

「……いいだろう」

 

 果たしてクロガネは、頷いた。

 

 折れた銃剣を仕舞い、礼儀正しく一礼。

 

「我が名はクロガネ。黒の領域とスクナヒメ様を繋ぎし守人也。

 宇宙から来た小さき者よ、一先ずそなた等を客人として扱おう」

 

 堅物そうな外見に似合わず、柔軟な考えができる巨人のようだ。

 最悪、黒の領域とは敵対関係になることを想定していたためこれはありがたい。

 

 シズクたちも一礼しながら自己紹介を交わす。

 

 他種族の人間四人の名前を覚えるのは大変そうだったが、なんとか記憶したっぽいクロガネは「では客人」と居住まいを正すと、

 

「星の危機とあれば、まずはあの方に報告せねばなるまい。

 この星の神――スクナヒメ様の元へ、案内しよう」

 

 言って。

 クロガネは背に乗れと言わんばかりに背を向けて腰を降ろした。

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