AKABAKO   作:万年レート1000

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すいません遅くなりました。



ダークファルス(?)、遭遇

「成る程、ダーカー……ダークファルス……そのような恐ろしい存在がこの星に居ると言うのか?」

「うん」

 

 クロガネの背の上で、シズクは頷く。

 

 とりあえず道中で概要だけでも教えてくれとクロガネに頼まれたので、ダーカーやダークファルスに関することを説明中である。

 

「なんと、侵食能力……?」

「うばうば、だからダーカーを見つけても出来ればアークスに任せて欲しいんだけど……」

「ふむぅ……しかし邪悪なる力ならば、スクナヒメ様のご加護で防げると思うのだが……」

 

「……リィンさん、さっきのやつどうやったんですか?」

「さっきのやつ?」

 

 と、そんな風にクロガネと話しているシズクの背中を見つめていたリィンにイズミが話しかけた。

 

 さっきのやつ。

 言うまでも無く、敵の剣を受け止めただけで根元からへし折った『新技』のことだ。

 

「ああ、あれね……実はただの防御なのよ。瞬間的に力とフォトンをグッと込めて、防御力を高めてるだけ。ジャストガードの応用ね」

「え? それでどうやって剣を折ったんですか?」

「硬い金属の塊に武器をフルスイングしたら武器が折れるでしょう? それと同じよ」

 

 防御力に特化しまくっているリィンの身体は、今や下手な金属よりも硬い。

 いや物理的に皮膚が硬化しているわけではなく、体内のフォトンが鎧みたいな役割を担っているだけなのだが……その鎧が、滅茶苦茶な硬度を誇っているのだ。

 

 実のところ、『防御力』というただ一点においては。

 

 リィンは既に、六芒均衡を含めた全アークスの中でもトップクラスに位置している――。

 

「さ、参考にならないね……」

「ボクらは攻撃重視のファイターだからねぇ……」

 

 というか参考にできるアークスなんてほぼいないだろう。

 

 そんな風に雑談しながら進むこと、三十分。

 

 空が若干明るくなってきた。

 白の領域が近くなってきたということだろうか。

 

 今会いに行こうとしているスクナヒメというのは、灰の神子。

 白と黒が混ざった神というのだから、その神殿も白の領域と黒の領域の中心辺りにある筈だ。

 

 つまり目的地がそろそろ近いということだろうか……と、

 

 黒の領域を歩く一行の前に、白いドレスを着た少女が現れた。

 

「む……?

 何だあやつは、汝らの仲間か?」

「んー?」

 

 クロガネがその少女の姿に気付き、足を止める。

 

 シズクたちに背格好が似ているから、クロガネが勘違いしてしまったのも仕方がない。

 目の前にいる少女が――ダークファルス【百合(リリィ)】が、

 

 アークスの仲間だなんて。

 

「っ! 違う! あいつはダークファルス!」

「何……!?」

 

 言って、シズクとリィンはクロガネの背から飛び降りる。

 

 一瞬迷った後、イズミとハルもシズクたちに続くように飛び降りた。

 はっきり言って足手纏いなのだが、それは口に出さずシズクは二人を庇うように少しだけ前に出る。

 

「ダークファルス【百合】! 何故ここに!? 何が目的!?」

「…………」

 

 【百合】は、ダークファルスの中でも飛びぬけて饒舌で、かつ敵対心というものに欠ける存在だ。

 

 そして無類の女好きということも判明している。

 なので、話しかければ何かしら反応があるのではないかと目論んでいたのだが……。

 

 【百合】はシズクの言葉を完全に無視して、両手の武器を構えた。

 

 茜色の剣。

 いつもの武装だ。

 

「うば……? 何か様子が……」

「来るぞ!」

 

 刃が折れてただの銃となった銃剣をいつの間にか構えていたクロガネが叫ぶ。

 

 それと同時に、ダークファルス【百合】は駆け出した!

 

「速い……!」

「……!」

 

 何も言わず、リィンも駆け出し【百合】と刃を交わす。

 

 前衛はリィンの仕事である。

 それが分かっているからこそ、行動も早い。

 

「わ、私も……!」

「ボクも援護に行きます!」

 

 一歩遅れて、後輩二人も走り出す。

 それを止めようか一瞬迷ったシズクだったが、それよりも優先すべきことがある、と通信端末を手に取った。

 

「シャオ! シャオ! ハルコタンにダークファルス【百合】が出現! 【双子(ダブル)】じゃなかったのは気になるけど……至急応援をお願い!」

『そんなに叫ばなくても聞こえてるし、モニタリングしてたよシズク。

 確かに【双子】じゃなかったのは不可解だけど、ダークファルスが出現したとあったらアークスとしては見逃せない――これで諸々の手続きをすっ飛ばして先遣隊以外のアークスもそちらに送り込むことができるね』

 

 すぐに応援を送るよ、というシャオのセリフを聞いた後、シズクは即座に通信を切って戦闘態勢へと入る。

 

 その瞬間、驚きで目を見開いた。

 リィンたちが――正確にはリィンが、ダークファルス【百合】を圧倒していたのだ。

 

「…………」

 

 【百合】が、無言のまま剣を振るう。

 

 横薙ぎの一撃をリィンは左腕(・・)で受け止め、蹴りで【百合】の腹を穿つ。

 ダメージが通っているのか通っていないのかはいまいち分かり辛いが、大きく仰け反った【百合】にイズミとハルがダブルセイバーとナックルを手に飛びかかった!

 

「サプライズダンク!」

「ストレイトチャージ!」

「…………」

 

 両剣と拳は、茜色の剣で容易く受け止められた。

 

 しかしそれによって生まれた一瞬の隙を突き、リィンが接近。

 ライジングエッジ――切り上げがクリーンヒットし、【百合】は僅かに浮き上がった。

 

 しかし傷が付いているようには見えない。

 やはりリィンの攻撃力で致命傷を与えることは難しいようだが……それでも戦況的には押しているようだ。

 

「おかしいわね……喋らないし、何だか弱くなってるし、そもそも何でリリーパじゃなくてハルコタンに……いや」

 

 考えるのは後にしよう、とシズクは銃口を【百合】に向けて狙いを定める。

 

 折れたブラオレットと、壊れたヴィタライフルに代わり新しく手に入れたガンスラッシュ――『ヴィタハチェット』を。

 

 ……うん、そうなのだ。

 『レア武器を買わない』という縛りプレイ(コレクターのプライド)を続行中なシズクは、とりあえずの繋ぎとしてコモン武器を購入した。

 

 一応+10強化はしているが、クラフトもしっかりしていたブラオレットと比べると若干火力は落ちる――。

 

「エイミングショット!」

 

 フォトンの光弾が、銃口から放たれる。

 アサルトライフルやランチャーまで含めた全ての銃弾系フォトンアーツの中で最も狙った場所に当てやすいということで愛用しているシズクが最も得意とするフォトンアーツである。

 

 光弾は、シズクの狙いから寸分も違わず真っ直ぐ進み、イズミとハルの間を縫い、リィンの振るった剣を避けた【百合】の顔面を――――僅かに外れて、壁に着弾した。

 

「ちっ……」

 

 演算、失敗。

 それと同時に、シズクは確信する。

 

 シズクの演算能力は、シオンが存命時とそう変わりない。

 変わったのは、『全知』にアクセス出来なくなったこと。

 

 それはつまり、今まで戦ったことのない敵の行動パターンを知ることが出来なくなったということだ。

 

 今、【百合】の行動パターンを基に演算したら弾が外れた。

 ということは(・・・・・・)今目の前にいるこの(・・・・・・・・・)百合(・・)の形をした何かは(・・・・・・・・)百合(・・)ではない(・・・・)

 

「初見の相手は行動パターンを覚えるとこからなの面倒臭いなぁ……」

 

 ぼやきながら、引き金を引く。

 

 前衛がリィンだけじゃなく、イズミとハルが居るから若干狙いづらかったが、今度は銃弾がちゃんと【百合】(?)の頭に当たってくれた。

 

「今だ!」

 

 顔面に弾丸を受けて大きく怯んだ【百合】(?)のどてっぱらに、ハルの拳が突き刺さる。

 

「…………」

 

 が、そんなもの効かないとばかりに【百合】(?)は怯みもせずハルの腕を掴んだ。

 

 やばい。

 彼女には確か触れた相手の内部から剣を生やすという一撃必殺の技があった筈。

 

 本物ではない可能性が高いから、それが使えるかは分からないが――何にせよ止めようとシズクとリィンは動き出すが――間に合わない。

 

 今まで頑なに開かなかった【百合】(?)の口が、そっと開く。

 

「"(シニバ――)"」

「ゲッカザクロ」

 

 一閃。

 

 突如割り込んできた斬撃が、【百合】(?)の腕を切り落とした。

 

 それと同時に、リィンの蹴りが【百合】(?)の胸部に直撃。

 再び【百合】(?)は吹き飛ばされ、壁に激突した。

 

「……間に合ったようね」

 

 【百合】(?)の腕を切り落とした張本人――ライトフロウ・アークライトは、青い髪を風に靡かせながら刀身が湾曲している赤いオーラに包まれたカタナを鞘に収める。

 

 援軍到着。

 【百合】(?)の斬られた右腕は、再生しない――。

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