AKABAKO   作:万年レート1000

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スランプとリアル多忙が重なって筆の進みの遅さがやばい。


足手纏い

 ライトフロウ・アークライトが到着してからの戦いは圧勝だった。

 

 楽勝とも言い換えていいくらいだ。

 刀身が湾曲している赤いオーラに包まれたカタナ――アーレスリュウガを持ったライトフロウの剣捌きは以前より洗練されているようだった。

 

 リィンも強くなったけど。

 ライトフロウも強くなった。

 

 それでこそ越す楽しみがある――とリィンは薄く微笑んだ。

 

「さて……」

 

 全身細切れにされて、消えていく【百合(リリィ)】(?)を見ながらライトフロウは呟く。

 

「こいつは一体何だったのかし――」

「うばああああああああああああああああああああああああ!」

 

 シリアスをぶち壊す奇声が、シズクから放たれた。

 

 何事か、と驚く一行の視線など意に介さず、シズクは走る。

 ライトフロウの元に――というか、ライトフロウの持つ、武器の元に。

 

 アーレスリュウガという、星13の激レア武器に目を輝かせて――!

 

「ほ、ほ、ほ星13武器だぁああああああ! 実物は始めて見た! うばー! うばばばばー! 凄い! 凄い格好いい! はぁはぁ、はぁはぁ! ちょ、ちょっと触ってみていいですか……?」

「え、ええ……いいわよ?」

 

 星13武器――アーレスシリーズは、アルティメットクエストにのみ出現する強力ボス『アンガ・ファンダージ』からのみ超低確率でドロップする最高レア。

 

 シズクのようなレアドロコレクターからすれば、喉から手が出るほど欲しい代物なのだ。

 

 黒と海色のオッドアイの瞳をきらきらと輝かせながら、シズクは【百合】のこともハルコタンのことも忘れているんじゃないかと錯覚するくらい――いや実際忘れているのだろう。

 

 初めて見る最高レア武器に、完全に心を奪われている。

 

「うばばー♪ ……これがアーレスリュウガ……美しいなぁ……いいなぁ……」

「シズクちゃんは相変わらず可愛いわねぇ……」

「うば?」

 

 そんなことを言いながら、アーレスリュウガに夢中なるシズクの頭をライトフロウは撫でた。

 

「姉妹だから好みも似てるのかしらね。外見とか色々小さいとことか凄く好み……ねえシズクちゃん、この武器あげるから私に乗り換えてみたり――」

「お姉ちゃん?」

「冗談よ冗談」

 

 妹に睨まれて、姉はあっさりとシズクから手を離した。

 

 どうやら本当に冗談……というより妹をからかっただけだったようである。

 

 ……まあ好みというのは本当のようだけど。

 

「さてシズクちゃん、そろそろいい?

 この……【百合】もどきについて解説が欲しいんだけど」

「そうよシズク、いつまでもその武器に見蕩れてないで」

「はっ! り、了解……」

 

 物凄く名残惜しそうにカタナをライトフロウに返して、シズクはトテトテと【百合】の死体に近づいていく。

 

 手で【百合】の残滓に触れて、予想通りとばかりに一つ頷いた。

 

「これは【百合】の剣だね」

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 ダークファルス【百合】の能力は茜色の剣を自由自在に生成・操作・変形させること。

 

 わりとシンプルな能力だが、シンプル故に強く、応用が効き易い能力であるといえよう。

 

 例えば大量の剣を生成して掃射するだけでも強いし、敵の体内に剣を生成すれば致命的なダメージを与えることだって出来るし、

 

 

 自分の分身を作ることだって出来る。

 

 

 本当に、厄介極まりない能力だ。

 

『分身……分身、ね。

 成る程確かに偽者とも、複製(クローン)とも何処か違うあの感じは分身というのが正しいだろう』

 

 再びクロガネの背に乗って移動しつつ、シズクはシャオと通信中。

 

 さっきの戦闘ログの送信をして、考察を話し終えたところである。

 

『これは厄介だね……今さっき、『リン』からも同様に白の領域で【百合】の分身と戦ったという報告が来た。

 ハルコタン中に彼女の分身がばら撒かれているかもしれない……』

「うばば……本人に比べたら弱いけど、それでも普通の大型ダーカーよりも普通に強かったからね……厄介だなぁ……」

 

 少なくとも、イズミやハルレベルのアークスじゃ太刀打ちできないだろう。

 

(まあそんなこと、本人たちの前では言えないけれど……)

 

「……少なくとも」

 

 と、そこでライトフロウが口を割り込んだ。

 

 イズミとハルを、交互に見て。

 

「そこの二人じゃ無理ね。というかまた【百合】の分身が出た時に足手纏いだからもう帰った方がいいわ」

「ちょっ……!」

 

 言ってしまった。

 

 はっきりと、イズミとハル両名を正面から見据えつつ。

 

「お姉ちゃん!」

「リィン。こういうのはね、はっきり言ってあげる方が本人のためなのよ

 別に才能が無いと言っているわけじゃない。動きを見てれば将来ちゃんと強くなれる子たちっていうのは分かる。

 でもね、今はまだあなた達にあのレベルは早いわ」

 

 ライトフロウ・アークライトの言葉を受けて、イズミとハルは――顔を伏せた。

 

 自覚はあるのだろう。

 ……というよりも、先の戦いで自分たちが全然活躍していなかったことから、自覚せざるをえなかったのだろう。

 

 自分たちが先輩たちと比べて、まだまだまだまだ下のレベルだということを。

 

「でも……」

「いいです、シズクさん」

 

 まだ何か言おうとしたシズクの言葉を遮って、イズミは苦笑いを浮かべた。

 

「ライトフロウさん、はっきり言ってくれてありがとうございます。……私たちは、先に帰還します」

「…………癪だけど、そうした方がよさそうっすね」

 

 言って、止める間も無く二人はクロガネの背から降りた。

 

 イズミはぺこりとお辞儀をして、

 ハルはびしっと警官のような敬礼をした後、テレパイプを使ってアークスシップに帰っていったようだ。

 

「…………」

「…………」

 

 沈黙が、流れる。

 

 ライトフロウの言ったことは、正論である。

 

 厳しくも真っ直ぐな、第三者からの言葉。

 優しい二人にはとてもじゃないが言えなかっただろう。

 

「……気まずい空気なところ悪いが、そろそろ到着だ」

 

 沈黙を破ったのは、皆を背に乗せて移動中のクロガネだった。

 

 くれぐれも粗相はしてくれるなよ、と守人らしいことを言われてシズクは一応返り血とか浴びてないかなとか身だしなみを確認した後、クロガネの肩から顔を出して前を見た。

 

 少し遠くに、大きな社がある。

 あれがおそらくスクナヒメが住んでいる社なのだろう。神様が住んでいるだけあって小奇麗で立派な装飾も付いているが、随分と大きい……ハルコタンの民は皆身長が高いから当然なのだろうけど。

 

「スクナヒメ様。客人を連れて参りました。彼女たち曰く、どうやらこの星に危機が迫って……」

 

 クロガネが、社に跪いてスクナヒメに語りかけ始める。

 

 ついにこの星の神様とご対面だ。

 居住まいを正し、小さな社に視線を向ける。

 

「そういえば」

 

 と、そのタイミングでリィンが口を開いた。

 

「ダークファルス【百合】は、何故分身をこの星に送り込んだのかしら? あの子の狙いはリリーパの筈でしょう?」

「うば。えっとうん、それが一番の問題点でね?」

「問題点? 疑問点じゃなくて?」

「うんまあ、一応疑問点ではあるけど、大体予想は付くというか……まあ結論から言うと……

 

 ――【百合】と【双子(ダブル)】が手を組んだ可能性が非常に高いんだよね」

「話の途中、失礼」

 

 シズクの言葉に何かしらのリアクションをリィンがとる前に、クロガネが話に割り込んできた。

 

 もうスクナヒメを呼び出せたのかな? と彼の背後を見るも、誰も居ない。

 

「……スクナヒメ様からの伝言だ。『今は眠いから日を改めよ』、とのこと」

「…………」

「かなり身勝っ……いえ、自由気ままな方なのだ、あの方はな……本当、何と言うか……すまぬ」

 

 はい。

 

 みんなせーので叫びましょう。

 

「「「何それぇえええええええええええ?!」」」

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