「…………と、いうわけでとりあえずハルコタン原住民の協力を取り付けることには成功しました」
「「「「………………」」」」
時は経って、翌日。
アークスシップの会議室で、シズクはシャオや六芒均衡、その他アークスにとって重要な役職に就いている人たちの前で事のあらましを説明し終えた。
ハルコタンにシズクが目を付けたところから、三体のダークファルスが現れスクナヒメがそれを追っ払ったところまで。
話し終えた後、参加者の反応は一様だった。
(比較的)真面目でマトモな感性を持っているレギアスやカスラはまだ分かるのだが、戦闘狂であるマリアやヒューイ、そして馬……幼いクラリスクレイスですら、沈黙している。
それほどまでに、事態は最悪だ。
ダークファルス三体が、手を組んだ。
そのニュースは、ルーサーをやっとこさ打倒し、これから組織を建て直していくぞと意気込んでいる時期のアークスの心を曇らせるには充分……というかこれ以上ないくらいバッドニュースだった。
最悪の存在が三つ重なって、最悪中の最悪中の最悪だ。
少し前に採掘基地防衛戦で【
あれに加えて【
「何かしらの対策を打たなければ――本当に取り返しのつかなくなる事態になりかねません」
採掘基地防衛戦での敗北を繰り返せば、待っているのはダークファルス【若人】の完全復活。
それだけは、何としてでも避けなければいけない。
だから――。
「シズク」
レギアスが、重苦しい雰囲気の中シズクの名を呼んだ。
「『A・I・S』の開発状況はどうなっている?」
その言葉に、シズクは強気の笑みで答えた。
万事、滞りなく。
*****
アークスシップ・ショップエリア。
「うばー……会議疲れたー」
ていうか気が付いたら随分と重要な役職に就かされてる気がするぅー、っとシズクは愚痴りながらテレパイプから現れた。
アークスの再編が終わったら、なし崩し的に重役にされそうで怖い。
いや出世が嬉しくないわけじゃないんだけど、まだ若いんだから自由な身で居たいっていうかリィンと一緒にいれる時間が減るのが嫌だ。
(ま、そうならないように色々根回ししとかなきゃ……あたしが今振られてるタスクも、あたしが居なくなっても良いようにテンプレ化してわかり易く……)
「シズク、お疲れ」
思考を巡らせていると、唐突に声をかけられてシズクは顔をあげた。
目の前には綺麗な青い髪をポニーテールで纏めている、麗人。
リィンだ。
どうやら会議が終わるのを待ってくれていたらしい。
「リィンも参加すればよかったのに」
「私は立場的にはヒラだし、内容も知ってるもの」
「うば、それもそうか……って、あたしも一応立場的にはヒラなんだけどね……」
多分もう誰一人シズクを一般のヒラアークスとして扱ってくれる人はいないだろう。
親が元マザーシップで従兄弟が現マザーシップの人間という情報は、特に隠されているわけではない情報であることに加えて、アークスには珍しくデスクワークで大活躍しているということで必然的に知名度が上がってしまっているのだ。
「有名になるのは嬉しいけど……有名税っていうのかしら。今まで無かった困りごととか増えてるわね……」
「うばー……そうだねぇ、特にイズミとハルの二人が、妙にそれでプレッシャー感じてるみたいだし……先輩としてフォローしなきゃね」
「やあ、シズク」
よし、これから二人のところに行こうか、と踵を返したシズクの前に良い笑顔のシャオが現れた。
とってもいい笑顔のシャオが現れた。
大事なことだから二回……いや、そんなことはどうでもいい。
そのドSチックなシャオを視認した瞬間、シズクは思い出した。
デスクワークの諸々をシャオにぶん投げて、特別にハルコタンへの現地調査に向かっていたことを。
当然、お仕事はまだまだまだまだ残っている。
「悪いんだけど、【百合】と【双子】、【若人】が手を組んだ所為で色々とまた仕事が増えてるから至急作業室に向かってくれる?」
「…………はーい」
全然悪びれてなさそうな顔だ。
むしろ逃げられずに捕まえることができたことに安堵している顔だ。
……まあ、でも仕事だし仕方が無い。
しかもダークファルス共闘という一大事を前にした緊急性の高い仕事は流石にサボれないだろう。
ということで……。
「リィン、悪いんだけどさ……」
「ええ、分かってるわ。二人のフォローはまた今度……」
「いや、リィンからフォローしといて」
「…………」
「…………」
「……え?」
何言ってんの? とばかりにリィンは首を傾げた。
「そんな子犬みたいな顔しないでさ……お願い、あたししばらく手が離せなさそうだから」
「え、で、でも……私だけじゃ……」
「大丈夫だって」
不安そうな顔をするリィンに、シズクは笑いかける。
背伸びをして手を伸ばし、彼女の頭をそっと撫でながら、
「リィンはね、きっと自分が考えてる以上に成長してるよ」
「そ、そう……? でも私、あの子達に何て言えばいいかまるで思いつかないんだけど……」
「うっばっば、
「え?」
「
大丈夫大丈夫、今のリィンならきっと何とかなるよ」
それだけ言って、シズクは手を振った後仕事場へ向かって行った。
残されたリィンは、その後姿をしばらく見つめた後。
何かを決意した瞳で、
通信端末を開き、イズミとハルの連絡先を開いた。