レア武器についてですが、基本エピソード1の現在でも☆13まで全部出土します。
ただ各レアリティごとの凄さは以下で終始統一します。
☆7→コモンとあんま変わらん
☆8→中堅アークス御用達
☆9→大型チームの中核的存在はわりと持ってる
☆10→強者の証
☆11→強者中の強者の証
☆12→『リン』のサイコウォンドしか確認されていない
☆13→誰も持っていない
ショップエリア・アイテムラボショップ。
言わずと知れたドゥドゥの居城である。
法外な値段を払うことで武器防具を強化できるが、その成功率は高くない……という悪魔のようなシステムが成り立っている、アークスによってはダーカーより忌み嫌われているショップだ。
何よりも厄介なのは、アークスにとって武器防具の強化は必須事項であり、強くなるためには避けて通れない道だと言うことだろう。
ドゥドゥの心底人を馬鹿にした厭らしい笑みから放たれる
「素晴らしく運がないな、君は」や、「ふむ、失敗じゃないかな?」
等の言葉がトラウマになってしまうアークスは九割を越えてしまっているのだ。
そんな嫌われものが、何故役職を下ろされないのか?
その問いの答えは一つ、腕が優秀だから。
アイテム強化というカテゴリーで、彼に敵うものは一人とていない。
元々天文学的数字だった武器強化を、腕一つで実現可能にした彼の代わりなどいないのだ。
だから彼は、今日も爆死したアークスを煽るのだ。
趣味が悪いと罵られようが、決して己のキャラを曲げることなく。
――だが、
「ぐ、ぬ……」
アイテムラボの奥の部屋。
装備強化マシンや、装備強化に関する機密や秘密が詰まったその部屋で、一人の男が苦しそうに呻いた。
毒々しい紫の帽子に、同じく毒々しい紫のスーツ、
その人となりを表すかのように捻れた黒い髪とヒゲ。
名をドゥドゥ。
全アークスの怨みを背負いながらも常に涼しい顔を崩さない彼の額には、珍しく汗が滴っていた。
「くっ、またこの日がやってきてしまったか……」
彼の手には、ウィンドウに表示された一通のメール。
それとメールに添付されてきた複雑な形の機械。
メールは、装備強化の成功率を上昇させることができるアップデートプログラムの試作品が出来たことを伝える内容であり、
送られた機械はそのプログラムが入ったソフトウェアである。
*****
ドゥドゥ弱体化期間。
そう揶揄される期間が、オラクルには存在する。
何ヵ月かに一度、不規則ながらも装備の強化成功率が上がるという期間だ。
その理由は、アークス開発部からの試作品運用試験が主なものである。
コストの問題や、試作品であるということから1週間という短い間だが、強化成功率は5%から10%ほど上がるのだ。
たかが10%と思うかもしれないが、これはかなり大きい。
特に特殊能力付与に関しては90%(体感では50%)が100%になるのだ。
絶対に成功する、という安心感は大きい。
何せ装備強化はお金がかなりかかるのだ。
特殊能力付与だけではなく、+値強化も目に見えるくらい成功するので、ドゥドゥ弱体化期間にしか装備強化しないというアークスも出てくるほどだ。
そして、今日はその弱体化期間の初日。
故に、ショップエリアの人口密度はとんでもないことになっていた。
「うっわ……」
弱体化期間と聞いて、拾ったザックスを強化しようとショップエリアに降り立ったリィンは即座に顔をひきつらせた。
まず目につくのが、アイテムラボ前の長蛇の列。
某夢の遊園地の人気アトラクションに匹敵する数のアークスが、メセタや武器防具を抱えて並ぶ様はなんというかシュールだ。
さらに、列を外れたところで強化を完了させたアークスが目に隈を浮かばせながら仲間に自慢したり歓喜したりする姿や、
逆に弱体化期間だというのに爆死した運のないアークスたちの死体がそこらに転がっているのが目にはいる。
「……とりあえず、並びましょうか」
二時間くらい待つことになりそうね、とリィンは考えながら、列の最後尾に向かう。
こんなに並んでたら煽ってる暇も無いんじゃないかしら、とリィンはちらりとドゥドゥの方に眼を向けた。
「うわああああああああ! 95%落ちたぁああああああ!」
その瞬間、先頭の男が頭を抱えて膝から崩れ落ちた。
どうやらやらかしてしまったらしい。
ドゥドゥはそんな男に向けて、いつものように、厭らしく口元を歪めて言葉を放つ。
「素晴らしく運がないな、君は」
「ぐ、ぐぅううううううう!」
ああ、こんなときでも平常運転なのね、と諦めたようにリィンは溜め息を吐いて、手元にウィンドウを開く。
前借りた少女漫画でも読みながら、待つことにしたようだ。
*****
一方、最前列では熾烈な戦いが繰り広げられていた。
「はっはっはぁ! ドゥドゥさんよぉ! 気分はどうだい!? ストレートで+10まで強化された気分はよぉおお!」
「くっ……素晴らしく運がいいな、君は」
頭の眩しいおじさんが、いつもの仕返しと言わんばかりに笑いながら完成した武器をドゥドゥに見せびらかした後、上機嫌にアイテムラボから去った。
休む暇なく、次のアークスがドゥドゥの前に現れる。
シャープな眼鏡をかけた、知的な雰囲気の男性だ。
「おおっと、やっと僕の番ですか。前回90%を三つ落とされたリベンジ、果たさせて貰いますよ」
言って、男は武器と素材を取り出す。
その武器のレアリティは9、それだけでこの男がアークスとして優秀だと分かるレア武器だ。
「とはいっても、武器も素材の組合せも前と同じ……いやぁ、怖いなぁ! 90%で落とされるの怖いなぁ! ……あ、そーいえば今能力追加成功率って10%上がってるんでしたっけー! いやぁ、100%成功っていいもんですねぇ! あーひゃっひゃ!」
「ぐぬぬ……成功だ」
「ふん!」
当然能力付与は成功し、男は武器を奪い取るようにドゥドゥから受け取ると、足早にその場を去っていった。
そしてすぐにまた新たな客がやってくる。
弱体化期間が始まって早半日、ずっとこのペースである。
ドゥドゥも、流石に疲労の色が濃い。
だが休み時間はまだまだ先である。
これだから嫌なんだと内心溜め息を吐く。
「こいつの強化を、お願いしようか」
トン、とその男が武器をカウンターに置いた瞬間、周囲のアークスたちがざわめいた。
ドゥドゥも思わず眼を見開く。
それは、現在確認されている武器の中でも最高峰に近い、激レア武器。
レアリティ10、『ブリューナク』。
薙刀のような形状と、蒼白く光る刃が特徴的なパルチザンに分類される武器である。
「す、すげぇ、ブリューナクだ……」
「実物なんて初めて見たぜ……ん? あいつ何処かで見たような……」
「確かに何処かで……あ! 思い出した! あいつ【銀楼の翼】の副リーダー、『カーマ・セィヌ』だ!」
周囲のざわつきが、より大きくなった。
【銀楼の翼】というチームは、数多くあるチームの中でもかなり有名なチームなのだ。
その実力もさることながら、チーム員全員がイケメンというのが有名な要因としてかなり大きいだろう。
やはりというべきか主に婦女子の方々に人気があり、ファンクラブまで結成されている大型チームだ。
そして今ドゥドゥと対峙しているこの男――『カーマ・セィヌ』はそのチームの副リーダー。
輝くような銀髪と、鷹のように鋭い金色の瞳、そしてビジュアル系バンドのような顔つきは確かにイケメンと名乗るに相応しい見た目をしていた。
「ふむ、しかしこのレベルの武器となると、強化費用が嵩むが大丈夫かね?」
「ふん、問題ない。グラインダーもこうして999個用意させてもらった。+10になるまで頼むよドゥドゥ」
「ほう、任せたまえ」
数分後、ブリューナク+4が出来あがった。
…………。
まさかの即堕ち二コマどころか行間すら無しである。
「…………」
「素晴らしく運が無いな、君は……」
流石のドゥドゥですら、同情を含んだ声色になってしまった。
地味にレアボイスである。
「…………ごふっ」
「うわー! カーマ・セィヌが吐血して倒れたぞ!」
「顔が真っ青だ! 急いでメディカルセンターに!」
「……また来たまえ」
周囲のアークスに抱えられ、メディカルセンターへと運ばれていくイケメンを見送った後、再びドゥドゥの前に強化希望のアークスが現れる。
今週は終始こんな風に慌ただしいのだろう、なんて憂いながらドゥドゥは厭らしい笑顔を作る。
「ふっふっふ、何用かね?」
*****
「なんだ、今日はショップエリアが騒がしいな」
「ああ、今日から強化成功率が上がっていますからね。仕方が無いでしょう」
ショップエリアの最上階には、まるで展望台のような円状の通路がある。
そこを通りながら、白色の鋭角なフォルムが特徴なキャスト――名を『レギアス』
――が下のアイテムラボ前を見ながら呟いた一言に、隣を歩くニューマンがそう応えた。
ニューマンの名は『カスラ』。
黄緑の髪に、道化のような丸く大きい帽子とシャープなグラサンが特徴的な男だ。
「ふむ、今日がその日だったか……それにしても人が多いというか……流石に彼一人で捌ける人数ではないのではないか?」
「とはいっても彼の代わりは居ませんからね……ある意味アークスで一番重要な人物と言えるかもしれません」
「しかし、強化期間が来るたびにこれでは他の店も迷惑だろう、何か対策を考えなければな……」
「そうですねぇ……」
レギアスに言われて、カスラは顎に手を当てて少し考えるように仕草を見せた。
足を止めてアイテムラボの様子をしばらく伺った後、「ふぅむ」と息を吐く。
アイテムラボ内では、ドゥドゥが休む暇なく働いている。
こうして遠目に見ているだけなら勤勉な職員に見えるのだけれどなぁ……。
「ドゥドゥのクローンを――いえ、やめておきましょう」
出かけた言葉を、カスラは即座に飲みこんだ。
複数のドゥドゥが一斉に煽ってくる様子を想像し、吐き気を催したのだ。
「そ、そうですね、では彼に弟子をとらせてみるのはどうでしょうか?」
「弟子を?」
「要は強化できる人材を増やせばいいわけですからね……今までもちょくちょく打診はしていたのですが、丁度いいですし本腰入れて探してみましょうか」
「……丁度いい?」
「おっと、失言でした。忘れてください」
胡散臭そうにそう言って、カスラは歩みを再開した。
問うても無駄なのだろう、とレギアスも続くようにその場を去る。
後日、『モニカ』と呼ばれる才能溢れる少女がドゥドゥの弟子としてその才覚を表していくのだが……。
それはまだ、先の話だ。
モニカ登場フラグが立ちました。
あとリィンのザックスは無事+10になりました。