AKABAKO   作:万年レート1000

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最近一話一話の量が長くならないように気を付けているんだけど、長いのと短いのとどっちのがいいのかなぁ


祝勝会

「かんぱーい!」

 

 マイルームに、快活な少女の声が一つ響き渡る。

 祝勝会。ということでチームコートハイムのメンバーはいつものようにリィンのマイルームに集まったのだ。

 

 ちなみに何故いつもリィンのマイルームかというと、他の部屋より広くて(家具が少ないため)、掃除が行き届いている(ルインによって)からである。

 

「……かんぱーい」

「…………乾杯です」

 

 元気一杯(いつもどおり)のメイとは対照的に、後輩二人の反応は冷ややかであった。

 

 高らかに掲げられたメイのグラスを無視し、二人してアヤのグラスのみに乾杯した。

 

「ちょ、ちょっとやだなー二人とも、こっち! こっちにも乾杯頂戴!」

「え? 何か言いましたか低所恐怖症先輩。」

「あの、大丈夫ですか? 高高度中毒先輩、地面に足が着いてますよ?」

「うわぁぁーん! 後輩が辛辣! アーヤ助けて!」

「ふふ、助けて欲しいなら……」

 

 アヤは微笑みながら、グラスを置いて自身の両手首をくっ付けて前に出した後、左手で丸を作って右手の人差し指と中指をそのなかに突き刺した。

 

 ジェスチャーだということは、この場の全員が理解できた。

 しかしリィンのみ意味が分からなかったようで、首を傾げる。

 

「何です? 今の」

「ふふ、秘密。で、どうするのメーコ? 顔が赤いけど大丈夫?」

「う、あ……えーっと……せ――」

「せ?」

 

 ちらり、とメイは後輩二人に目を配らせた。

 シズクは顔を赤くしながら目をそらし、

 リィンは興味が料理に移ったようでこちらを見てもいなかった。

 

「……せ、背に腹は変えられぬ……!」

「ふふ、交渉成立ね」

 

 にやり、とアヤが笑う。

 あ、早まったかなと後悔するも、もう遅い。

 

「二人とも、メーコも悪気があってやったわけじゃないのよ」

「悪気が無かったとしてもあたしが死にかけたっていう事実は変わらないんですよっ!」

「シズク、この中で一番防御力低いもんね……」

 

 遠距離職であるレンジャーで、かつ防具も初期防具を+10にしただけなシズクは【コートハイム】の中で一番脆いのだ。

 なので戦闘中は自然とリィンの後ろで射撃していることが専らである。

 

 そんな紙防御が、遥か上空から落下してしまうと流石のアークスでも瀕死になってしまうのだ。

 

「ええ、だからお詫びの印として……これを」

「? チケットデータ?」

 

 端末同士の通信で、二枚のチケットがシズクとリィンにそれぞれ贈られる。

 

 その中身を確認した瞬間、シズクは音を立てながらソファから立ちあがった。

 

「な……!? これ……は!?」

「ちょ、アーヤそれは……!」

「大人気アイドルクーナ……ライブチケット?」

 

 チケットには、派手な文字でそう書かれていた。

 

 クーナ。

 今人気絶頂中のアイドルである。

 

 チケットを取るのは困難に困難を重ね、その倍率は超一流大学に合格するよりも難しいと呼ばれるほどである。

 

 かくいうシズクもクーナの大ファンである。

 リィンも、以前少し縁があってクーナと話した際に興味を持って、機会があればライブ等に行ってみたいと思っていたところだったのだ。

 

「い、いいんですかこんなの……」

「いいのいいの、二人分あるからアナタ達で行ってきなさい。ね、メーコ?」

「う、ぐ……う、うん」

 

 下唇を噛んで、汗をだらだら流して、血涙を滴らせる様はどうみても未練たらたらだ。

 

 アーヤと二人で行くつもりだったのだろう、そんな姿を見てしまうと、何だか申し訳なくなってきた。

 

「あ、あの、やっぱ悪いですから返しますよこれ」

「別にそこまで怒っていたわけじゃないですし……」

「え!? ホント!?」

「駄目よ、あげたものを突っ返されるのは好きじゃないの」

 

 送信し返したデータを、アヤは即送り返した。

 

「あ、アーヤぁ……」

「……そんな目をしても駄目、アナタの軽率な行動が招いた結果なんだから」

「あ、もしかして……」

 

 そんなやりとりを見て、シズクは察した。

 からかうような口調でアヤに言う。

 

「メイ先輩がクーナちゃんにキャーキャー言ってるのが嫌なんですか?」

「…………」

 

 静寂が、流れた。

 

 全員の視線が、アヤに集まる。

 

「…………え、……え?」

 

 数秒して、ようやくアヤは言葉を理解したように頬をカァっと染めた。

 図星、だったのだろう。その顔は珍しく耳まで赤い。

 

「ふーん? 嫉妬? 嫉妬だったの?」

 

 にやにや、と一転攻勢に回りだすメイ。

 あ、これは後で痛い目見るパターンだなとシズクは静かに察した。

 

「ち、違うわよ調子に乗らないで……」

「えー? もー、素直に言えばいいのにー。ほら、言っていいよ? 『メーコは私だけを見てればいいのよ! 抱いて!』って」

「…………メーコ」

「え? 何? 抱いて?」

「今夜は覚悟しときなさいよ?」

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

『緊急クエスト発生――アークス各員は、クエストカウンターに向かい、任務への参加を――』

 

「ふわぁ……」

「むにゃ……」

「先輩たち眠たそうですね、夜更かしでもしたんですか?」

 

 翌日の朝。

 朝早くから発生した緊急クエストに参加するべく、ゲートエリアに集まった【コートハイム】のメンバー。

 

 眠たげに欠伸をし、目を擦るアヤとメイにリィンは純粋な瞳で言い放った。

 この瞳の前で「エッチなことしてました」なんて言える猛者がこの世に何人いるというのだろうか。

 

「シズク……やっぱいい加減リィンに情操教育した方がいいんじゃない?」

「え? いや、うーん。でもここまで重症だと何処から手を付けたらいいか……」

「いっそベッドの上でとか」

「ぶっ!?」

 

 ひそひそと、リィンに聞こえないように話すシズクとメイ。

 小学生レベル――いや、それ以下の性知識しか持たないリィンのことを危惧しているのだ。

 

「い、いやですね、それは流石に焦り過ぎというか、あたしとしてはもう少しじっくりと仲を深めたいというか……」

「ところでぶっちゃけどうなの? シズクってリィンのこと好きなの? あ、ライクじゃなくてラブな意味で」

「…………ノーコメントでお願いします」

「えー? いーじゃんよー、言っちゃいなよー」

「ほ、ほらもうナベリウス着きましたよ」

 

 誤魔化すようにそう言って、シズクはテレプールの方に駆けていった。

 青いねぇ、なんて笑いながら、メイもそれに付いていくように歩きだす。

 

「今回の緊急クエスト、何だっけ?」

「あーえっと、『ファングバンサー討伐』です」

「げぇ」

 

 リィンがクエスト名を言った瞬間、メイは顔を歪ませた。

 

 ファングバンサー。

 ほぼ常に雌雄一対で行動するファング夫妻と呼ばれる種族の雄の方。

 

 獅子のような形状の原生生物であり、その実力はナベリウスの頂点と呼ばれている程である。

 

 強靭な爪と牙に、俊敏な動きを可能とする筋肉量。

 強敵であることは疑いようも無い事実だろう。

 

「当然雌の方もいるんだろうなぁ……あーやだやだ」

「そんなに強いんですか? 確かに初心者キラーとは聞きますけど……」

「まあ、四人でやれば勝てるだろうけど結構辛い戦いになるだろうね」

「現地に着いたら他のアークスと合流すべきね」

 

 そんな風に作戦を立てつつ、四人でテレプールに跳び込む。

 

 自身の身体がフォトンに変換され、空間を飛び越えていく感覚を身に受けながら。

 

 【コートハイム】の四人は、惑星ナベリウスに降り立つのだった。

 




フラグ建て回。(絶対回収するとは言っていない。)
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