AKABAKO   作:万年レート1000

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え? 登場人物に女性多すぎ?
もっと男性を出せ? キャスト男に至っては一回も出てないぞ?

AKABAKO世界でのアークス男女比率は2016年のアークス調査報告書での
男性30%、女性70%を遵守しているだけです(キリッ


猛る黒曜の暴腕③

「リーダーは何してんだよ!」

 

 破棄されたアークスシップの上で、まだ幼さの残る少女の怒声が響く。

 

 ここは前線も前線の最前線。

 難易度ベリーハードのさらに上、スーパーハードレベルのファルス・アームと戦う前の待機地帯。

 

「落ち着きなさい、アーチェ」

 

 落ち着きなさい、と冷静な口調で少女を窘めたのは耳の長い茶髪の女性。

 『恋鳳凰』と呼ばれる☆11ロッドを持ったニューマンである。

 

「んなこと言ったってよー、もう作戦開始まで時間がねえぜ?」

 

 アーチェと呼ばれた橙髪の少女は、その端正な顔に似合わない眉間に皺を寄せた表情で言う。

 

 『碇星砲』と呼ばれる☆11(激レア)ランチャーを椅子にして、ぷりぷりと怒っている姿は可愛らしくも恐ろしい。

 

「アズサ、リーダーに連絡は着いたか?」

「んー……着かないなぁ」

「どうすんだよ! 【大日霊貴】のリーダーがダークファルスとの対決に不参加だなんて拙いだろ!?」

「だから落ち着きなさいって、アーチェ」

「落ち着いてられるかよ! こうなりゃ今から直接部屋に乗りこんで……!」

 

 ランチャーから立ち上がろうとしたアーチェの身体を、アズサの腕が止めた。

 

「アタシが行くよ」

 

 アズサは、周りにいる十一人の【大日霊貴】メンバーに向かって言う。

 幼い容姿に似合わない大人びた表情で、軽やかに。

 

「あのシスコンリーダーの部屋に、行ってくる」

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 遥か遠くに見える、ダークファルス【巨躯】。

 その身体が僅かに、ほんの僅かに削れ、ファルス・アームとなって動きだす。

 

 【巨躯】にとっては角質が取れた程度の大きさでも、

 そのサイズはロックベアと同等かそれ以上。

 

 そんな存在が、四匹。

 連なってアークスの一団へと向かっていく。

 

「あれが、ファルス・アーム……」

 

 戦場と成り得る破棄されたアークスシップ上に降り立った直後、四匹のファルス・アームが【コートハイム】含む十二人に向かってきた。

 

 その名の通り、見た目は手そのもの。

 人の手に、黒い外殻が付与された感じである。

 

 手の、親指と小指に当たる部分が脚。

 そして人差し指と中指と薬指に当たる部分が頭。

 

 手首と手のひらの部分には、ダーカーの証たる赤いコアが鈍く輝いていた。

 

「本当にまんま『アーム』なんだね」

「どっかのカードゲームであんなのいたなぁ」

「こらそこ! 無駄口を叩くな!」

 

 シズクとメイが軽口を叩くと、即座にヒキトゥーテの叱咤が飛ぶ。

 

 やりにくいなぁ、とメイは溜め息を吐いた。

 

「来るぞ! 情報によれば弱点は手首! レンジャーは手首にウィークバレットを絶やすな!」

「了解」

「うふふ、リストカットならぬリストショット……うふふ」

「うばー」

 

 【システムリトル】のバンダナ少女と、【アナザースリー】のピンクキャスト、そしてシズクがまず前に出る。

 

 続いてハンターとファイター、ガンナーがレンジャー三人娘の後ろですぐ攻撃できるように待機。

 最後尾でフォースがテクニックをチャージ。

 

 決して間違った指揮じゃあないだろう。

 ただし、凡百の域を出ないが。

 

 列車のように連なってこちらに来たファルス・アームは、シップ上空まで来ると四匹に分解し、地に足を降ろす。

 

 三つの頭で咆哮した後、目の前のアークス達を打倒しようとそれぞれ行動を始めた。

 

「うばー……結構でかいや、回り込まないと手首狙えないな」

 

 ぼやきながら、シズクは走る。

 

 近場にいて、そして他のレンジャーとは狙いが被っていないファルス・アーム目がけて一直線に。

 

 が、その行動は無意味に終わった。

 狙っていたファルス・アームが、突如空に浮かんだのである。

 

「うば?」

 

 すいーっと音も無くファルス・アームはシズクの上空を通過し、

 

 身体全体を所謂『チョップ』の形に変えて、最後衛に居たフォースの団体へとその身を振り下ろした。

 

「きゃーっ!?」

「うわー」

「くっ……!」

 

 巨乳美女ニューマンと、白髪幼女と、アヤがミラージュエスケープを使用してその場から離れ、辛うじて回避に成功した。

 

 攻撃を外したファルス・アームは、ゆっくりと元の二足歩行形態に戻った。

 

「こらぁー! そんな簡単に前衛が突破されてどうする!」

「無茶いうなし! 今のはどうしようもないよ!」

「くっ……! うちのリーダーなら止めていたというのに……!」

 

 こうなってしまえば、前衛も後衛も無い。

 

 見れば、他のファルス・アームも素直に正面から攻めてくるものは少なく、アークスシップ船上という四角い戦場を縦横無尽に駆け回りながら戦っているようだ。

 

「せめてウィークバレットを……!」

 

 バンダナ少女、ハルナが丁度背を向けたファルス・アームの手首向かってウィークバレットを放つ。

 弾丸は音速で宙を飛び、正確無比にファルス・アームの手首をマーキングした。

 

 ウィークバレット成功である。

 

「ようし! よくやった!」

「攻めるよ!」

 

 直後、ヒキトゥーテとメイが動きだす。

 ウィークバレットの付いたファルス・アームに向かって走り、跳躍。

 

 ファルス・アームの体格が大きく、手首に攻撃を当てるにはそれなりに跳躍しなければならないのだ。

 

 ヒキトゥーテはウォンドを、メイはツインダガーを。

 それぞれほぼ同時のタイミングで振り抜いた。

 

「……な!」

「……ちょぉ!?」

 

 しかし、槌と刃は虚しく空を切る。

 

 ふい、ときまぐれな蝶のように、ファルス・アームは上空へと飛んでいったのだ。

 

 そのまま黒腕は、別のアークスに向かって張り手を二回繰り出した。

 

 こうぶんぶんと振りまわされては、手首もおいおいと振るえない。

 

「チッ……今のタイミングでも駄目か……!」

「こりゃツインダガーじゃなくて少しでもリーチのあるツインマシンガンの方がいいなぁ」

 

 ウィークバレットのマーキングは、十八秒しか持たない。

 強力な効果である代償であろう。故に、貼った後は即座に集中攻撃が基本だが……。

 

「こうも動きまわられちゃぁ……!」

 

 あっという間に、ハルナの貼ったウィークバレットは効果を失った。

 

 その後も何回か手首にウィークバレットを貼ることに成功したが、何度やっても碌に有効打を与えることができない。

 

 その間、何人かのアークスが致命打を受けて戦闘不能。

 それをムーンアトマイザーで治す手間でさらに火力が落ちていく。

 

 一進一退どころか、一進二退が精々であった。

 

『ハッキリ言って……』

 

 同じチームだけに聞こえる通信で、メイが呟く。

 その声色には、疲れの色が濃い。

 

『指揮官が無能ね』

『同意』

『うん』

『ですね』

 

 ヒキトゥーテ・ヤクの指揮は、お世辞にも上手いとは言えなかった。

 

 視野が狭いとか、頭が固いだとか色々原因はあるだろうが、一番の理由は彼が【銀楼の翼】であることだろう。

 

 【銀楼の翼】は言わずもがなエリート集団。

 それに所属する彼もそれ相応の才能があるのだろう。

 

 だからこそ。

 強い味方に囲まれて成長してきたからこそ、彼には今回の指揮は向いていない。

 

「ああもう糞! どうしてそんなことができんのだ!」

 

 【銀楼の翼】のハンターであれば余裕でジャストガードに成功していたであろう攻撃を、受けれない。

 【銀楼の翼】のレンジャーであれば精密に貫いていたであろう弱点を、外す。

 【銀楼の翼】のフォースであれば間に合っていたであろうタイミングでのテクニックが、間に合わない。

 

 強者であるが故のズレ。

 

 気付けば彼はメンバーの最高火力だというのに攻撃の手を止め指揮と言う名の罵倒に専念してしまっていたのだった。

 

 しかも――。

 

「おいそこのピンクキャスト! 次のウィークバレットはまだか!?」

「…………まだですごめんなさぁい(だまってろどうていが)!」

「ラヴちゃん副音声自重してぇ!」

 

 結局、待機時に聞いた筈の名前を憶えきれていない。

 『そこの』とか、『お前』とかを使用した上から目線の指示は、決して受けて気持ちいいモノでは無い。

 

 次第に、メンバーの気持ちは彼から離れていく。

 

 指示を無視して行動する輩はすでに半分を越えていた。

 

『はぁ……』

 

 シズクは思わずため息を吐いた。

 

 それに反応して、リィンが心配そうに声をかける。

 

『どうしたのシズク、やる気なさそうに溜め息吐いて。もう私たちも指示無視して四人で連携でも取る?』

『うばー、いや四人じゃちょっとコイツらはキツイよ。十二人しっかり連携しなきゃ勝てない』

『じゃあどうしたの?』

『いや、まあ、かなり個人的なあれなんだけど』

 

 ファルス・アームって、アイテムドロップあるの?

 と、先ほど浮かんでしまった疑問をシズクは口に出した。

 

『……相変わらずで安心したわ』

『だってこいつら【巨躯】の欠片みたいなやつでしょう? もしドロップ無かったらって考えたらそりゃやる気も下がるわ』

『ダークファルス襲来って宇宙の危機な筈なんだけどなー』

『宇宙の危機よりレアドロップの方が大事なのは確定的に明らか』

 

 言いながら、シズクはウィークバレットを装填して手首に放つ。

 そのまま、逃さないようになるべく最速で予備動作の少ないフォトンアーツを使用した。

 

「ワンポイントっ」

 

 弾丸を、十二連射するだけのシンプルなフォトンアーツ。

 だがシンプルが故に予備動作が短く、弾速も早い便利なフォトンアーツである。

 

 まあその代わり威力はまあまあなのだが……それでも今はこうやって少しずつ削るしかないのだ。

 

「……ん?」

『グォオ……』

 

 細かく刻んでいたダメージが功を奏したのか、ファルス・アームはうめき声をあげて地面に伏した。

 そのまま、ボロボロと崩れた後赤い光に包まれて消えた。

 

 ようやく、一匹である。

 

「よし! よし! よし! ようやく一匹だ! 他の部隊と比べて大分討伐ペースが遅れてるからな、ここから一気に……!」

「うばああああああああ!」

 

 ヒキトゥーテの声に被せるように、少女の奇声が響いた。

 声の発声主は勿論、シズク。

 

 彼女の前には、ファルス・アームが死んだ跡に残った、赤く大きな結晶。

 

 ボスを倒した後に出現する、アイテム入りの結晶である。

 

「よぅし、アイテムドロップ有りならやる気出てきたー!」

 

 早速割る。

 しかし、レアは出ない。

 

 安定である。

 

 だがまあ、いいかとシズクは背後を振り返りながら思った。

 

 視線の先には、体積が結構削れてきたダークファルス【巨躯】本体。

 やっぱなんかアイツゲッテムハルトさんに似てるよなとか頭の片隅で考えながら、

 そこから飛び出るようにしてこちらに向かってくる一匹のファルス・アームを視界に捉えた。

 

 やはり、倒しても倒しても補充が来る。

 常に四匹を相手するようになっている。

 

 けど、それは逆に考えれば、倒せば倒す程アイテムがドロップするというわけである。

 

「皆」

 

 今此処に居る全員に行きわたるように通信先をセットし、シズクは言葉を紡ぐ。

 嬉しそうに、楽しそうに、言葉を紡ぐ。

 

「もう充分にコイツらの動き(パターン)は見切ったから」

 

 ヒキトゥーテのように、大きな声じゃないにも関わらず良く通る声。

 

 それも一つの、指揮官としての才能。

 

「こっからはあたしが指揮を執る」

「はぁ!?」

「三十秒」

 

 ヒキトゥーテの不満そうな叫び声を無視し、シズクは続ける。

 

「まずは三十秒で今船上に居る三匹のファルス・アームを蹴散らそーと思います」

 

 シズクの、才能。

 それは、言わずもがなチート級の直感と推測と分析、視野の広さと柔軟性。

 

 それらを統合した『察する力』。

 

 そう。

 シズクの『戦闘における本領』は、敵の動きを察することによる『敵行動パターンの分析』とそこから導き出す『最適行動』。

 

 今からやるのは、それのちょっとした応用。

 上記に『味方の正確な力量把握』を加えた――名付けて『最適指揮』。

 

「全員、あたしに従え」

 




次回、シズク無双(予定)。

お姉ちゃん説得パートでどれだけ文字数使うか分からないから予定です。

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