A.夜が無いと夜這いイベントが出来ないから。
というのは冗談で、設定的には擬似的な太陽みたいのがあって、それで昼夜を区別しているようです。(あくまでAKABAKOでの設定です)
『十年前』。
その言葉を聞くだけで、嫌な顔をするアークスも多いだろう。
十年前、それはオラクルの歴史上最悪の事件が起きた年。
超大規模なダーカー襲来。
普段の市街地緊急の十倍から五十倍とも言われている量のダーカーが一斉に攻めてきたのだ。
民間人が沢山死んだ。
アークスも沢山死んだ。
数多の人が大切な人を失った。
多くの涙と血が流れた。
ベテランはおろか、その年に入った新人ですら戦いに身を投じることとなった。
――その結果、当時の一年生アークス七十二名の内、生き残ったのはたったの三人。
後の【銀楼の翼】リーダー、サカモト。
後の【大日霊貴】副リーダー、アズサ。
後の【大日霊貴】リーダー、ライトフロウ・アークライト。
何れも後世に名を残すであろう英傑たち。
しかし、その中の一人は今――――。
*****
「リーダー、居るよな?」
ライトフロウ・アークライトのマイルーム前。
緑髪のショタっぽいロリっ娘、アズサは扉をノックしながら言った。
「…………」
返事は無い。
でも、中に居ることは分かっている。
何故なら精神崩壊状態のライトフロウをマイルームまで運んだのは、他ならぬアズサなのだ。
流石にあの状態で、部屋から出て何処かを彷徨くなんてことはしないだろう。
ふて寝している可能性が一番高い。
「リィーダァー! 寝てる場合じゃないぞー! ダークファルスが攻めてきたんだ!」
ノックの音をより大きくして、叫ぶ。
ふと扉の横にインターフォンがあることを思い出し、ノックしながらそちらも押しまくる。
完全に近所迷惑行為である。
ただ、ダークファルス戦真っ最中の現在、マイルームには殆どアークスは居ないのでさほど問題ではないだろう。
「…………駄目か」
扉の向こうに居る筈のリーダーから、一切返事は無い。
これは一計を案じる必要があるな、とアズサは頭を捻る。
数秒考え、とりあえず駄目もとで思い浮かんだアイデアから試してみることにした。
「……あれ!? リィンちゃん……だっけ? どうしたのこんなところでー?」
勿論、リィンが来ているわけがない。
作戦その1、妹が来たように見せかける作戦である。
「え? 何? お姉ちゃんに会いに来た? まだ何か言い足りないことがあるの? ……え? 謝る? ふーん、でも今リーダーのやつ不貞寝しててさー反応がないんだ――!」
それは一瞬の出来事だった。
スライド式の部屋の扉が、僅かに、ほんの僅かに開いた。
その瞬間、アズサは超反応で動きだし、指を僅かに空いた空間に挿し入れた!
「――よぉおおおっと! マジかよ! これで釣れるのかよ!」
「え、わ、わ!」
間髪いれずに、もう片方の手も扉を掴み、力づくで開けようと試みるアズサ。
しかし、中に居るライトフロウがそれを拒む。
扉の向こうから、物凄い力で扉を閉めようと力を入れる。
「だ……! 騙したわねアズサ! リィン来てないじゃないの!」
「そっちこそ居留守使ってるんじゃないよ! ていうか今のに騙されるとかアタシ悲しいよ!?」
「う、うるさいわよ! 乙女心は純粋なのよ!」
「何が乙女だよ今年でにじゅっ……! いててててて! ちょ! 指! 指千切れる!」
「まだ若いし! 乙女で通用するし!」
扉に挟まれた指の感覚が無くなってきた。
だが、ここで逃したらもうチャンスは無いだろう。
(やばい……! でも純粋な力じゃ奴の方が上……!)
(何か……策を――!)
一つだけ、閃いた。
だが、あまりにも幼稚すぎる策だ。
果たしてこれが通用するのか――否、通用しちゃったらどうしよう、という考えがアズサの頭をよぎる。
しかして指が限界だ。
駄目でもともと、アズサは苦しそうに声を張り上げた。
「あ! リーダー! 後ろにリィンちゃんが!」
「え!? 嘘!?」
通用しちゃったよ! と心の中で叫びながら、一瞬力が緩んだ隙を逃さずに扉を開き身体をねじ込む。
扉の前に居たライトフロウを押しのけ、見事に部屋への侵入を果たす。
ライトフロウが、自室に誰かを入れたことは、これが初めてである。
「ま、また騙し……あ! 駄目! 駄目よアズサ! 部屋を見ないで!」
「……何と言うか……」
部屋に侵入したアズサの眼に飛び込んできたのは、大量の妹グッズ。
隠す気すら無い……と、いうか隠すことができない程大量の、一方的な愛の結晶。
「想像の五倍酷いな……、この部屋」
「あ、あぁぁああああ……ちがっ、違うの、これは……」
「でも……リーダー」
部屋を見渡した後、アズサは自身のリーダーを見つめる。
いつもの凛とした雰囲気は、無い。
いつもの安心できる微笑みも、無い。
ボサボサの髪に、赤く腫れた眼。
眉を八の字に曲げた、生気の無い絶望顔。
「今のアンタの
「…………っ」
「ほら、まずは洗面所で顔洗ってきな」
アズサの言葉を受けて、ライトフロウは踵を返して歩きだした。
……と思ったらそのままベッドに赴き、現実から逃避するようにベッドへ身を沈めた。
「……リーダー、ダークファルスが攻めてきてるんだぞ」
「……無理よ」
掠れるような声で、ライトフロウは呟く。
「辛い……本当に、辛い。今の状態で、ダークファルスと戦うだなんて死にに行くようなものだわ」
「…………」
「失恋って、こんなに辛いものだったのね」
恋の相手は実の妹。
そのハードルの高さは理解していた。
永久に続くものではないと、心のどこかで思っていた。
それでも、失う覚悟はできていなかった。
「大丈夫よアズサ……アナタが居れば大丈夫、ダークファルスくらい、押し返せ――」
「いい加減にしろ」
ドスの効いた言葉が、ライトフロウの胸に突き刺さる。
それは、十年来の友人であるにも関わらず、聞いたこともないような重く厳しい言葉だった。
「恋が結ばれない苦しみなんて、誰でも知っている、……アタシだって知っている」
「あ、アズサも……?」
「当り前だ。『失う痛み』なんてモノは……誰にでもやってくるんだ」
「…………でも」
ライトフロウは、絞り出すような声で言葉を紡ぐ。
「分かるなら……知っているなら、アズサにも分かるでしょう、私の痛みが、私の苦しみが……!」
「分かるよ。けどリーダー、でもね……」
例えば。
そう、例えば。
「アタシがダークファルスに殺されたらどうする?」
「え――」
「アタシだけじゃない、今、こうしている間にも――
【大日霊貴】の皆が死んだらどうする?」
「あ、え……」
「肝心要のリーダーがいなくて、戦線崩壊してたらどうする?」
「そんなの、アズサが居れば……」
「『リーダーが居ない所為で』、誰かが死んだらどうする?」
「う、ぐ……」
責める。
言い過ぎなんじゃないかと思うくらい、責める。
それくらいで、今のこいつには丁度いい。
「仲間が死んだのを後で知って、こう言うの? 『失恋のショックで寝込んでました』って」
「ぐぅううううう……分かったわよ!」
ようやく、ライトフロウは立ち上がった。
その姿を見て、アズサはにやりと笑う。
「これ以上、大切な人を失う訳にはいかないものね」
「ようやく分かってくれたか、馬鹿め」
「顔、洗ってくるわ」
洗面台があるであろう方向へ歩いて行ったライトフロウの後姿を見ながら、アズサは溜め息を吐いた。
「全く、手のかかるリーダーだ」
少し、嬉しそうに。
*****
「全員、あたしに従え」
場面は変わって、シズクたちの居る破棄されたアークスシップ船上。
力強く言い放ったシズクの言葉への反応は、大きく分けて三つ。
「…………何言ってんだアイツ」
「…………」
冷ややか。
「いきなり何言い出すんだ小娘コラァ!」
激昂。
「シズク、何をすればいい?」
「信じてるわよ、シズク」
そして、チームメイトからは従順な反応。
充分だ。
とりあえず、チームメイト三人の力を使用して、指揮の有用性を示そう。
「まず、今から手首を狙うのをやめましょう。狙うべきは、足」
「はぁ? 弱点を狙わないでどうするんだよ?」
「論より証拠ってことで……リィン、メイ先輩、アヤ先輩」
チームメイトの名前を呼んで、一匹のファルス・アームを指差す。
「あれが今一番弱っているファルス・アームですんで、あれ狙います」
「了解」「やー」「分かったわ」
言った瞬間、シズクはウィークバレットをファルス・アームに放った。
見事ファルス・アームの足に着弾したウィークバレット。
そのマーキング目がけて、まずアヤがテクニックを放った。
「イル・グランツ!」
星状の光弾が十発、光の軌跡を描いて飛んでいく。
ホーミング性能を持った星弾は、一発残らずファルス・アームに命中した。
「サテライトエイム!」
「ライジングエッジ!」
続いてメイとリィンのフォトンアーツも炸裂。
ウィークバレットによって柔くなっていた足は、黒い装甲が粉々に砕け散った。
部位破壊が成功したことにより、ファルス・アームの、
動きが止まる。
「もっぱつ!」
黒い装甲が剥がれると、中から剥き出しの赤い
間髪いれずに、そこへウィークバレットをもう一度撃ちこむ。
「おお……」
メイは思わず、感嘆の声をあげた。
さっきまで、散々苦労してきたウィークバレットの付いた弱点への攻撃。
それがこうも簡単に、達成できるとは。
「よし、インフィニティファイア!」
「ラ・グランツ!」
「オーバー……エンドぉおおおおおおお!」
銃弾と、光槍と、剣撃が交差する。
ファルス・アームの体力はガリガリと削れていき、
『ぐぉおお……』
崩れ落ちて、消えた。
「見ての通り」
その結果を見届てから、シズクは言う。
「一瞬の隙を突いて手首を狙っても充分に火力が出るような強者じゃない限り、足を狙った方がよっぽどか火力が出る。ウィークバレットを二発使うがレンジャーが三人も居れば問題ないでしょう」
ちらり、とシズクはヒキトゥーテを見る。
彼は、目を見開いて、口をあんぐり開けて驚いていたが、
少ししてようやく口を開いた。
「ど、どうして足を壊せば怯むと分かった? どうして足を壊せば弱点があると分かった!?」
「どうしてって……」
そんなの、今まで戦ってきた大抵のエネミーは部位破壊すれば怯んだし、
ダーカーの身体構造は柔いコアを黒い装甲で覆っているものだ、装甲を壊せば、当然弱点が露出するだろう。
ただ、今までの経験から導き出しただけだ。
むしろそんなことも分かんなかったのコイツ?
と、呆れながらもシズクは答える。
説明するのも面倒くさいので、ただ一言。
「勘です」
あ、リィンは兎も角メイやアヤもシズクの指示に素直に従ってるのは
シズクの察しの良さとかその辺を理解してるからです。
そういう描写は無かった? 行間であったんですよ(迫真)。