AKABAKO   作:万年レート1000

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ゲームで言えばシズクのレベルは12くらい、リィンは7くらい。
他の同期は高くて3くらいです。

レアを求めてひたすら周回していた人と、ぼっちだから強くあらざるを得なかった人と、
12人で囲んで戦える人たちとの差ですね。


ダガン殲滅任務・森林

「実はあたしもパートナーカードを交換したのは初めてなんだよね」

「へぇ」

 

 場所は打って変わって再び惑星ナベリウス。

 フレンド結成記念として、二人で任務に出陣したのだ。

 

 クエスト名は『ダガン殲滅任務・森林』。

 ダーカーを一定数以上倒すという内容のクエストだが、元々ソロでもアクシデントさえ無ければクリア可能な二人だけあって、殲滅は順調に進んでいるようだ。

 

 それこそ、歩きながら談話する程度の余裕はあるように。

 

「あれ? でもシズクって他の同期らと組んだことあるんじゃないの?」

「あー、うん、そうなんだけどねー」

 

 喋りながら、シズクは手に持った『ガンスレイヤー』というガンスラッシュの引き金を引いた。

 放たれた銃弾はダガンのコアに命中し、それによって絶命したダガンは塵となって消えた。

 

 銃と剣が一体化し、近距離と遠距離どちらにも対応できるのが特徴の武器だが、シズクは銃形態で戦うことが多い。

 クラスが射撃主体の『レンジャー』であることも関係しているが、今相方として組んでいるリィンがソード主体の『ハンター』クラスであるのも理由として大きいだろう。

 

 リィンが前で、シズクが後ろというフォーメーションが自然と出来あがっていた。

 

「あんまりこう言うのも何だけどさー、皆弱すぎる」

「うわ、ばっさり言うわね……」

「テクニックをノーチャージで連打したり、ヘッドショットを知らないレンジャーだったり、変なPAでちゃうガンナーだったり……十年前のアレで人員不足だからってアークスの水準が低くなっちゃしょうがないだろうに」

「…………」

 

 素直な子だなぁ、とリィンは思った。

 

 デリカシーが無いと言われるのも頷ける素直さだ、リィンも同期の低レベルさには呆れたこともあったけれどここまではっきり口に出せるのはある意味凄い。

 

「しかも何よりもそういう足引っ張る子に限ってレア武器ドロップするんだよ!? あたしはまだ一回も赤箱見たこと無いのに!」

「あーあー」

 

 憤りを発散するように、シズクはガンスラッシュの引き金を引いた。

 原生生物の眉間に抉りこむように着弾した弾丸は、強靭な生命力を持つ原生生物の命すら容易く奪った。

 

 ヘッドショットと云って、射撃はエネミーの頭に当てることによってその威力を倍増させる効果があるのだ。

 

「しかしさっきから私エネミーに触れていないんだけど……」

「遠距離攻撃一撃で沈むなら近接(ハンター)の出番は無いよねぇ」

「エイミングショットとはいえ一撃って……」

 

 エイミングショットというのは、ガンスラッシュのPAの一つだ。

 チャージ可能な強烈な銃撃を正確無比に繰り出せるだけの単純なPAだが、狙いがつけやすく、威力も高くて射程もある優秀なPAだ。

 

「私、同期の中では一番才能あるって教官に言われたことあるんだけど……お世辞だったのかなぁ?」

「いやいや、あたしは単にレア欲しさに何度も何度も同じクエスト行ってたらレベル上がっただけだよ」

 

 地面から赤黒い靄が立ちあがり、ダガンが沸いた瞬間その額をエイミングショットが撃ち抜いた。

 

「へぇ、どれくらい?」

「五十から数えるのやめた!」

「ごじゅっ……!?」

 

 どれだけレアが欲しかったんだ。この子。

 リィンですらこの『ダガン殲滅任務・森林』を受注するのは二度目である。

 

「あ、いや、でも私は『ナヴ・ラッピー捕獲任務』が近接のソロだと辛くて少し手こずってたからであって……あっ」

「ふふ、リィンが負けず嫌いなのは分かっているからそんな顔しなくても大丈夫だよ」

 

 と、そこまで話したところで倒したダーカーの数が規定の数に近づいていることに気付いた。

 もうそんなに倒したのか、とリィンは驚く。ソロの頃とは比べ物にならない効率だ。

 

「でも私殆ど何もやっていないような……」

「いやぁでも前に居てくれるだけで安心感あって楽だったけどね」

 

 シズクは今まで、複数を相手取るときには射撃で先制攻撃後、近寄ってきた敵を剣モードで倒すという戦法を取っていたのだが、レンジャーの物理攻撃力は低く面倒だったのだ。

 しかしリィンと組むことで、近寄ってくる敵はリィンに任せて射撃に専念できるようになり大きな火力アップとなったのであった。

 

「そ、そう?」

「うん。この調子で残り数体、倒しちゃおう――ん?」

 

 ふと、レーダーが巨大な反応を検知した。

 

 木々が揺れ、鳥たちが騒ぎだす。

 (ウーダン)(ガルフ)など比べ物にならない天を衝くような咆哮が辺りに響き渡る。

 

「何? 何?」

「これは……」

 

 空に、大きな影が浮かび上がった。

 飛行ではなく、跳躍で空高く上がった『そいつ』は当然地面へ落下を始める。

 

 ずしん、と大きな地鳴りが響く。

 

 『そいつ』は威嚇するように両の拳を打ち鳴らし、その小さい両の眼で少女ら二人を見つめた。

 

「もしかして『ロックベア』……!?」

 

 リィンが険しい表情で叫ぶ。

 『ロックベア』、『ファングバンシー』、『ファングバンサー』の名は研修時代に森林エリアで出会う危険なエネミーとして教わっているのだ。

 

 曰く、ロックベアを倒せたのなら初心者卒業と云えるらしい。

 つまりは初心者の登竜門的存在だ。

 

 二人なら勝てなくはないかもしれないが、今はダガンと散々戦闘をして消耗している。

 

 ここは一旦、退くべきだ。

 

「シズク! ここは一旦テレパイプで退いて態勢を整え」

「ヒャッハー! ロックベアちゃん『リドルモール』落としてええええええ!」

「ええええええええ!? 何突貫してるのアナタぁああああああああ!?」

 

 ロックベアが拳を打ち鳴らす。

 シズクがガンスラッシュを銃モードから剣モードに切り替える。

 リィンが慌てて飛び出す。

 

 こうして、リィンとシズクの慌ただしい初ボス戦が始まった。

 

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