長くなりそうだったから分けただけだけど
惑星アムドゥスキア・浮遊大陸。
空に浮かぶ大陸という幻想的なエリアを、闊歩する男が三人。
「ふぅ……やはりベリーハードだと楽勝ですね」
「まあそう言うな、これも仕事だ」
「つってもこれじゃ腕が鈍っちまうぜ」
金髪のホストのような格好をしたイケメンと、銀髪のモデルと見間違うようなイケメン。
そして黒髪の生意気を体現したような長髪のイケメン。
このイケメンだらけの集団は、【銀楼の翼】のメンバーたちだ。
有名チームのメンバーだけあって、全員かなり上質の装備を整えている。
「あー、また【巨躯】とか来ねえかなぁ、今度は本体と戦ってみてぇ」
「ウチのチームからはリーダーと副リーダーだけ本体戦に呼ばれたからなぁ……」
『――――』
「ん?」
あまりモラルの良くないことを話しながら進んでいると、何か妙な音がした。
エネミーの声――ではない、もっと別の。
何かを、引き裂くような、割るような……。
「今、何か聞こえなかったか?」
「へ? いや、全然……」
『――ぃ――ぁ』
「「「!」」」
瞬時に、三人とも戦闘態勢を整える。
流石と言うべき反射神経だが、彼らは一つミスを犯した。
戦闘態勢を整えるよりも、
一目散に逃げることを優先するべきだった。
「キシャァアアアアアアア!」
戦闘機のような、鋭利な頭部。
巨大な身体に似合わない、細い胴体。
血なのか体色なのかは分からないが、赤黒く染まった硬質な両腕。
暴走龍『クローム・ドラゴン』。
ドラゴンというよりも、エイリアンに近い姿かたちをしているが、間違いなく今巷を騒がしている暴走龍はこいつのことだ。
しかし――
「な、なんだ、クロームか」
「脅かしやがって、【銀楼の翼】の実力を見せてやる」
そう、クローム・ドラゴンは、上位チームのメンバーならば勝てない相手じゃない。
四人以上でかかれば万全だが、三人でも充分に対処は可能だろう。
このクローム・ドラゴンが、普通のクローム・ドラゴンならば、だが。
「喰らえ! ウィークバレッ――」
「――ァアアアアアアアア!」
ウィークバレットを放とうとしたレンジャーの脇腹に、クローム・ドラゴンの巨大な爪が突き刺さった。
速い。
そして鋭い。
致命傷、である。
それでも最後の意地として放たれたウィークバレットは、
そのクローム・ドラゴンの左角に巻かれた、黄色い布を僅かに掠めたが着弾はせず、遥か後方に飛んでいった。
「キシャアアアアア!」
吼える。
狂ったように、クローム・ドラゴンは吼える。
まさに『暴走龍』と言うべき暴れっぷりである。
【銀楼の翼】の残った二人は、無残な姿となった味方を見るが否や一目散に走り出した。
「う、うわぁあああああ!」
「に、逃げろー!」
仲間とは一体何だったのか、となるほど潔い逃げっぷりである。
だが、一応弁明しておくと、彼らがここで逃げたという判断は正しい。
圧倒的なまでに正しい。
彼らはたったの一振り、龍の薙ぎ払いを見て悟ったのだ。
例え弔い合戦だ、と立ち向かっても、彼らに勝ち目などないことを。
「ギャォオオオオオオオオオ!」
だがやはり、遅すぎたのだろう。
逃げるのなら、空間を裂いて現れた瞬間に逃げるべきだった。
「ひっ――」
「あ、ああああああ!」
ぐしゃり、と血飛沫と共に悲鳴が鳴り響いた。
【銀楼の翼】のメンバーが、暴走龍によって三名重症を負ったというニュースが流れるのは、それから二日後の話だった。
*****
「はい、問題ありません。チーム【コートハイム】の皆さんに浮遊大陸のクエストを解放しました」
管理官コフィーが、いつも通り素っ気ない声で【コートハイム】の四人に告げた。
皆を代表して、メイがぺこりと頭を下げる。
「ありがとう、コフィーさん」
「仕事ですから」
これまた素っ気ない、仕事感丸出しの返事である。
しかしまあコフィーさんだし仕方ないか、と【コートハイム】の四人は礼を言ってからその場を離れた。
「あ、お待ちください」
「へ?」
と、離れようとしたところでコフィーが四人を呼びとめた。
珍しいこともあるものだ、と意外そうな顔をしながらも四人は足を止める。
「最近、巷で噂になっている『暴走龍』をご存じですか?」
『暴走龍』。
その単語を聞いた瞬間、シズクとリィンがピクリと反応した。
結構前の話だが、某アイドルから『暴走龍』に関する情報提供を求められたことがあるのだ。
そういえば、結局一度も遭遇したことないな、とシズクはリィンをちらりと見る。
偶然目が合った。
つい、昨日のことを思い出して目を逸らす。
「『暴走龍』ねー、名前だけは聞いたことあるけど」
メイは、小首を傾げながらそう言った。
巷で噂になっているということは、結構有名な話なのだが、その辺りこのリーダーは雑である。
なので代わりに、アヤが一歩前に出て答える。
「『クローム・ドラゴン』のことですよね?」
「その通りです」
コフィーは満足げに頷いた。
「ダーカーのように空間跳躍を駆使する、新種の龍族……と言われています。非常に戦闘能力は高く、ダーカーを主食としていますが会話は通じず、アークスに対しても襲いかかってくる危険なエネミーです」
「ははーん、成程、そのクローム・ドラゴ何とかが浮遊大陸には頻繁に出るから気を付けろってわけですか?」
「半分正解です」
「ていうかそこまで名前言ったなら最後まで言いなさいよ……」
アヤのツッコミがびしりと炸裂した。
頭を押さえて涙目なメイは放っておいて、コフィーは話を再開する。
「クローム・ドラゴン自体は、空間を跳躍する関係上何処の惑星にも出現します。てすが、ここ最近浮遊大陸……というか惑星アムドゥスキアに『左角に黄色い布が巻かれた個体』が頻繁に出現しています」
「左角に……?」
「そのままの意味なのですが、左側の角に黄色い布らしき物体が巻かれている個体が居るんですよ。そのクローム・ドラゴンの強さは他のクロームの数倍とも言われています」
「それって……」
「はい、間違いなくエクストラハード級の個体でしょう」
もし遭遇したら、かならず逃げてください、と念を押すようにコフィーは言った。
言われなくても、そんなのと出会ったら即逃亡安定である。
だからそれよりも、シズクとリィンが引っかかったところはその特徴。
左の角に、黄色い布が巻いてある個体。
それは、紛うことなくクーナが探していると言っていた個体じゃないのか?
と、リィンはシズクの様子をちらりと伺う。
目が合った。
逸らされた。
(やっぱ怒ってるのかな……)
「ああそれと、シズクさん、リィンさん」
思い出したように、コフィーは二人の名を呼んだ。
突然のことに驚きながらも、シズクとリィンは顔をあげて返事をする。
「はい?」
「うば?」
「これを……」
コフィーは手元の端末を操作し、慣れた手つきで二人の端末にとあるデータを送信した。
「アナタ達の功績、実力、その他色々を加味した結果、それをお渡しすることに問題はないと判断されました」
受け取ったデータを確認した瞬間、二人は目を見開く。
「『サブクラス』……」
「『利用許可証』……! これって……!」
「はい」
コフィーは、あくまで事務的に。
しかし、いつもより若干柔らかい表情で、二人に告げる。
「おめでとうございます。お二人に『サブクラス』を利用する許可が降りました」
実はまだシズクとリィンのサブクラスを何にするか決めて無かったり。←