ほのぼの回です。
伏線貼り回、または中身無い回とも言う。
「はぁーっ、クエスト失敗かぁ」
アークスシップ・ゲートエリア。
帰還した途端、メイは大きく溜め息を吐いた。
「まあ、仕方ないわよ。オペレーター室から見てた感じだと『あれ』ダークファルスよ?」
「はぁ!? てことは【巨躯】と同格!? っあー、よく生きてたなウチら」
「ホントね」
今更ながら、冷や汗が沸き出てきたメイであった。
言われてみて思い返すと、あの【仮面】はメイの銃弾を全て受け切った上で、軽々しくリィンの一撃をかわしていた。
もし正面から戦っていたら、全滅は避けられなかっただろう。
(でも、アイツがダークファルスだとすると……)
(シズクが無傷だということが気になる……)
やはり何かあったのだろうか、とメイはシズクの方に顔だけ振り返る。
シズクは、笑顔でリィンと雑談していた。
けどその笑顔は、何だかいつもと違うように見えて……。
「…………」
「うば? どうしたんですかメイさん、そんなに見つめて」
「……いや」
よろしくない。
何がよろしくないってこれから誕生会なのにこのテンションはよろしくない。
何とかならないものか、と腕を組み頭を捻るが、基本的に弱いメイの頭じゃ名案がパッと思い浮かぶわけがないのであった。
「先輩先輩」
「……ん?」
(無い)頭を捻っていると、悩みの種本体であるシズクがこそこそと小声で話しかけてきた。
「あたしそろそろケーキ作りしなきゃいけないから一旦抜けます」
「え? あー、そっか」
そうだった。
シズクは今日ケーキを作るという使命があるのだった。
ケーキを作るのにどれだけの時間がかかるか知らないが、シズクが言うからには今から作り始めないと駄目なのだろう。
「……分かった、けど」
「大丈夫ですよ」
シズクは、メイの言葉を遮るように笑った。
全てを察しているのだろう。
メイの心も、気遣いも。
気持ち悪いくらい、正確に。
「無茶はしませんから」
「…………」
「じゃ、アヤ先輩には上手く言っておいてください」
そして、シズクは走ってその場を去っていった。
「……ま」
その後ろ姿を見ながら、メイは呟く。
「今更、か」
*****
「と、いうわけでアヤは諸々の用事で、シズクはケーキ造りのために不在だから今の内に部屋の飾りつけをしましょーう」
「おー」
場所は変わり、リィンのマイルーム。
ソファ前に置かれた机には、色とりどりの折り紙、それとハサミに紙とペン等々。
リィンのシンプルすぎる部屋を飾り付けするための小道具たちだ。
「で、私パーティの飾りつけとかしたことないんですけど、どうやるんです?」
「えっとね、まず折り紙をこういう風に切って……丸めて……」
メイが作り始めたのは、所謂パーティ定番の輪っかを繋げた鎖状のアレである。
慣れた手つきで折り紙を切り、丸め、繋げていく。
「と、まあこんな感じで繋げていくのよ。中々可愛いでしょ」
「成程、これなら私にもできそうですね」
言って、リィンも折り紙に手を伸ばす。
流石にこの程度の工作は出来るようで、リィンも手早く輪っかを作っていく。
ただし、形は多少歪だが。
「やっぱ二人だと早くできるねぇ」
「アヤさんの誕生日にいつも作ってるんですか?」
「そうだよ」
「……じゃあその時作ったのとか残って無いんですか?」
「いや邪魔だし都度捨てるよ」
じゃあこれ全部ゴミになるのか……と微妙な表情をしながら、リィンは輪っかを繋げていく。
(しかしこれ、言われるがままに作ってるけど、どうやって飾るのだろう)
「よし、じゃあそろそろ合わせてみようか」
「え? ああ、はい」
メイの作っていた輪っか鎖と、リィンの作っていた輪っか鎖の端を合わせるように持ち、繋げる。
するとイイ感じの長さになったので、メイはそれを持って立ちあがった。
「何をするんです?」
「長さ丁度いいか調べるの。そっち持って」
輪っか鎖の端と端を持って、広げる。
それを壁の隅と隅にひっつけるようにして長さを調べる。
運が良いことに、飾り付けるには丁度いい長さだった。
フォトンで接着し、綺麗に壁に張り付ける。
「これで一面完成」
「おぉー、成程、そうやって飾るんですね」
綺麗に彩られた壁を見て、思わずリィンは感嘆の声を漏らした。
こんな紙細工を追加しただけで、なんだか『パーティ感』が出てきたのに驚いたのだ。
「じゃあリィンは引き続き輪っかを作るのお願い、ウチは他の作るから」
「他のって何があるんですか?」
「え? んー、こういうのとか」
メイは赤い折り紙を取り出し、それを折りだした。
これもまた作るのに慣れているのか、あっという間に折り紙は薔薇に変化した。
「わ、何ですかこれ、薔薇?」
「そーそー、これも輪っか鎖と一緒に壁に貼るのよ」
「わ、私もこれ作ってみたいです」
リィンは、子供のように目を輝かせながら言った。
(…………)「そうね、じゃあ作り方教えたげるわ」
「ありがとうございます!」
嬉しそうに笑って、リィンも赤い折り紙を取り出して再びソファに座った。
メイもまた、折り紙を持ってリィンの対面に座る。
「まずここをこう折って……」
「ふんふん」
「これをこうして……」
「ふんふ……ん? 今どうやりました?」
「え? こう」
「……んん?」
自身の折った折り紙と、メイが折った折り紙を見比べてリィンは首を傾げた。
「対面だと分かり辛いかな?」
「むぅ……そうですね、左右反対だと、イマイチ……」
「じゃあこっちおいでおいで」
確かに、これは隣に座った方が分かりやすいな、とリィンは立ち上がって移動する。
そしてメイの隣に腰を下ろそうとした瞬間、突然がしりと腰を掴まれ、無理矢理引っ張られた!
「ちょっ……!」
「へっへっへー」
座ろうとしたところを引っ張られれば、当然リィンの身体はメイの膝の上へ乗ることになる。
さらにそのまま、後ろから抱きかかえるように腕をまわされた。
「せ、せくはら! セクハラですよ!」
「うぇっへっへ、いいじゃんよー女同士だしー、こうした方が教えやすいしー」
「もー、仕方ないですねぇ」
文句を言いながらも、満更ではなさそうなリィンであった。
「重くないです?」
「(フォトンの力で支えてるから)重くないよ」
フォトン万能すぎである。
それを聞いて安心したのか、リィンはメイを背もたれにするように身体を預けた。
「で、分からなかったところどこ?」
「ここからですね、どうすればいいのかさっぱり……」
「あー、ここはね……」
一見恋人同士の所業だが、その実親子の様な二人である。
何事もなかったように折り紙作りを再開し始めるのであった。
「ここをこうして……こうすれば……」
「えっと、こう?」
「そうそう。これで完成」
数分後、リィンの手のひらの上に真っ赤な紙細工の薔薇が出来あがった。
多少形は歪なものの、初めてにしては上出来だろう。
「よしよし、じゃあどんどん作っていくぞー」
「はいっ」
メイを椅子にしたまま、リィンは次の折り紙に手を伸ばす。
メイは輪っか鎖作りを始めたようだ。薔薇はリィンに任せるらしい。
「そういえば」
「はい?」
会話が途切れないなぁ、と思いながらリィンは応える。
お喋り好きなのだ、メイは。
「リィン髪型変えたわね」
「今更ですか……」
「いや何かタイミングを逃しててさ」
リィンの今の髪型は、最初に出会ったときの異なりサイドポニーだ。
その束を弄りながら、メイは言葉を続ける。
「でも、あれ? 最初ってポニーテールにしてなかったっけ」
「あれはシズクにやってもらったんですよ、一人だとポニーテールって上手くいかなくて……」
サイドポニーは、大まかに言えばツインテールの片方だけ版である。
昔からツインテールばかり結んでたのでこっちはすぐに結べるようになったのだ。
「ふぅん……ところで何で急に髪型変えたの?」
「それは……えっと、けじめ?」
「何のよ」
「…………姉への、です」
「姉? ってライトフロウ・アークライトよね?」
「はい」
どうして髪型を変えることが姉へのけじめになるんだ? と首を傾げるメイ。
リィンは折り紙を折る手を止めることは無く、話を進める。
「ツインテールは、姉が一番可愛いと褒めてくれた髪型で、それを結うリボンは姉がくれたものです」
「……っ」
「どちらも捨てました」
最後の砦、だったのに。
姉を慕う妹としての、最後の希望だったのに。
「……でもさ、一本残ってるじゃん、リボン」
「……そうですね、でもこれは、ただ髪が邪魔だから使っているだけです」
「はっ、邪魔なら切ればいいのに」
「…………メイさん」
「じょーだんだよじょーだん、ごめんごめんって」
「…………」
ツンデレだな全くもーっと呟きながら、メイは作っていた輪っか鎖を机の上に放り投げ、新しく折り紙を取り出した。
どうやらもう一面分の輪っか鎖が完成したらしく、また新しく輪っかを繋げていく作業に入った。
「…………」
リィンも再び作業に没頭しようと、手元に視線を戻したときだった。
(普通、姉が変態だと知ったら)
(妹はどういう反応をするのが『正しい』のだろう)
ふと、一つの疑問がリィンの頭をよぎった。
勿論、そんなものに正解などありはしない。
ただ、リボンを片方だけ取っておくという女々しい――というか未練タラタラな行為をしている自分が、『間違っているのではないか』という疑問が沸いただけ。
「メイさん、今度は私からも質問いいですか?」
「ん?」
だから、訊いてみることにした。
メイに姉妹がいるかは知らないから、まずはそこからだが。
もし彼女に姉妹がいるのなら、軽快で能天気な彼女は肉親が変態だと知ったらどうするのだろうか。
「メイさんって、姉妹とか居ますか?」
「居ないよ」
なんだ、居ないのか。と少し落胆するようにリィンは視線を落とす。
「姉妹どころか、親も居ないけどね」
「……え?」
「血の繋がっている人はこの世に一人も存在しない――天涯孤独」
少し、メイのリィンを抱く腕の力が強くなった。
離さないように、零れてしまわないように。
「――だから、ウチは【コートハイム】を作ったんだ」
「メイさ――――」
「やっほー! 二人とも飾り付けの準備は終わってるー!? シズクちゃんが手伝いにやってきたぜー!」
リィンのセリフを遮るように。
シリアスな雰囲気をぶち壊すように。
我らが察しの良すぎる系主人公は、空気を読まずにリィンの部屋へ大声をあげながら入室してきた。
「いやー、途中からルインが手伝ってくれてさー、思ったより早く終わっちゃったよ」
「…………」
「…………」
そういえばさっきからルインが居ない。
シズクを手伝いに行っていたのか、成程、自由なサポパである。
「ん? う、うば!? 何そのイチャイチャ態勢! うらやまいやけしからん! あたしも混ぜろー!」
察しているのだろう。
今の間際まで発していた二人のシリアスな雰囲気を、きちんと察しているのだろう。
それでも尚この反応なのだ。
しかしいつにもましてテンションが高い。
「……シズク」
「ん? 何かなメイ先輩」
「アナタに罪は無いし、間違っていない。けど」
メイは、すぅぅっとリィンの腰に回していた手を動かした。
少しずつ、上へ。
「イラッとしたのでリィンの巨乳を揉みしだきます」
「え!? 何で私!? ってきゃっ! ちょっ!」
「う、うばあああああ!? ずるいうらやま間違えたあたしにも揉ませろぉおおお!」
「いや助けてよ!?」
リィンの胸を遠慮なく揉みしだき怒られて、
シズクにやめろ代われと怒鳴られて、
それでもメイは、幸せそうに笑うのだった。
メイさんとリィンの絡みを書くのが楽しくてついこの二人をペアにしてしまう。
主人公ぇ……。