AKABAKO   作:万年レート1000

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サプライズパーティとか成功したことないなぁと考えて、
そもそもサプライズパーティを開いたことがないことに気が付いて、
あれ? そもそも誕生日パーティとか家族と以外……
というところまで行ったところで思考を打ち切った。

そんな土曜日の昼。


誕生日会

「だからー、今日はチームメンバーの皆がお祝いしてくれるの!」

 

 アヤ・サイジョウのマイルーム。

 アヤは一人、通信機に向かって怒鳴りつける。

 

「はぁ? 本物の家族と偽物の家族とどっちが大事って……お父さん、チームの皆を偽物扱いしたらいくら肉親でもぶちごろがしますよ?」

『――――』

「はいはい、分かった、分かったわ。明日は帰るから、……え、ええ、メーコも一緒よ」

『――――! ――!』

「そんな邪見にしなくてもいいじゃない……全く。じゃあ切るわよ」

『――――っ!?』

 

 相手側が何か叫んだと同時に、アヤは通信を無理矢理切った。

 

「もう……子供じゃないんだから放っておいてくれていいのに」

 

 ぷりぷりと怒りながら、アヤはベッドに身を沈めた。

 

「お腹空いたわね……」

 

 天井を見上げ、呟く。

 もしこれで本当は誕生日パーティとか無かったらどうしよう、と少し心配になりながらボーっとしていると、通信機が通話を受信したのか機械的な音声を鳴らした。

 

「もしもし?」

『――――!』

 

 通話口から父親の声が聞こえた瞬間、アヤは通信を切った。

 瞬間、再び受信を知らせる電子音が鳴り響く。

 

「ああもう……しつこいわね!」

『ふぇ!?』

 

 通話口から聞こえた声は、野太く低い声ではなく、鈴のように清らかな後輩の声だった。

 

『な、なんですか? どうかしました?』

「……リィンだったのね、ごめんなさい、何でも無いわ」

『そ、そうですか……』

「それで、何か用?」

 

 誕生日パーティのことだろうなぁ、と当りをつけながら訊ねる。

 

『えっと、アヤさん晩御飯まだ食べてませんよね?』

「ええ」

『ルインが晩御飯作り過ぎてしまったので、一緒に食べませんか?』

「勿論いいわよ」

 

 一見何でもないようなセリフだが、実際聞いてみるとまるでカンペでも見ながら喋っているような声色だ。

 

 サプライズするつもりならもう少し上手く隠してほしいと思うが、まあそこはツッコまないのが年長者としての嗜みだろう。

 

 通信を切り、部屋を出る。

 

 広大なアークスシップだが、テレパイプを使えばリィンの部屋まで五分とかからない。

 

 クラッカーの音にビビらないようにと覚悟を決めてから、アヤはインターフォンを鳴らし、扉に手をかけた。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

『勿論いいわよ』

 

 アヤから色良い返事を貰った瞬間、三人は動き出した。

 

「よし! 皆クラッカーは持った? 配置に着くよ!」

 

 メイの指揮の元、それぞれソファの後ろや物影に隠れてクラッカーを構える。

 

 それを確認して、メイは照明を落とした。

 当然、部屋の中は完全に真っ暗となる。

 

 部屋に入る→真っ暗闇で驚く→クラッカーでさらに驚かせる。

 という作戦だ。

 

「ドキドキするわね」

「うん」

 

 シズクと一緒にソファの裏に隠れているリィンが、声を上擦らせて言う。

 

 家族以外との誕生日パーティなんて初めてだし、サプライズパーティだって初めてだ。

 緊張しない方がおかしいというものだろう。

 

「え、えっと、クラッカーってこの紐を引っ張るのよね」

「そうだよ。あ、でも鳴らす時はちゃんと顔から遠ざけてね、結構耳に来るから」

「分かったわ」

 

 頷いて、リィンは紐を握りしめる。

 鳴らさないように、慎重に。

 

 しかしふと、気になった。

 気になってしまった。

 

(クラッカーの紐って、どれくらい力込めたら鳴るのかしら)

 

 好奇心、それと本番で鳴らせなかったらどうしようという不安。

 

 その二つが重なって、つい、リィンは軽く紐を引っ張った。

 

 結果。

 言うまでもなく、大方の予想通りクラッカーは爆ぜた。

 

 爆音を鳴らし、テープを撒き散らし、爆ぜた。

 

 シズクの、耳元で。

 

「うっばぁあああああああああああああああああ!?」

 

 まるで音響弾――というほどではないが、それでも耳元で鳴ったら被害軽微とは言えない音量である。

 

 シズクの身体はトビウオのように跳ね上がり、奇声を辺りに撒き散らした。

 

「な、何!? 誰かクラッカー鳴らした!?」

 

 思わずメイも、隠れていた棚から飛び出してきた。

 しかし、暗闇で何も見えない。頼りになるのは音だけである。

 

「耳がぁああああああああ!」

「め、メイさんどうしましょう! クラッカー鳴らしちゃいました!」

「あああああああああああああああああああああああ!」

「え!? 何!? 何て!?」

「うびゃぁあああああ! ぉあぁあああああああああ!?」

「だからっ、クラッカーが……!」

「耳ゃぁー!」

「シズクうるせぇ!」

「シズク、ちょっとうるさいわよ!」

「理不尽っ!?」

 

 時間が無いので涙目のシズクは一旦置いておいて、リィンはメイの元へ歩きだした。

 真っ暗闇なので完全に勘での行進だが、流石に勝手知ったる我が家。無事メイと合流することができた。

 

「め、メイさん、どうしよう。クラッカー鳴らしちゃった」

「焦るな焦るな、クラッカーなら予備が机の上に……」

 

 言いながら、メイは机に手を伸ばした。

 暗いので完全に手探りだ。故に。

 

 熱々の鉄板料理に手を突っ込んでしまうという悲しい事故が、メイを襲った。

 

「あっっつぅ!?」

「メイさん!?」

 

 アークスは、フォトンの力によってマグマに浸かっても滅茶苦茶熱いお風呂に入った程度にしか感じないほど頑丈だが、それはあくまでクエスト中の気を張っているときの話だ。

 

 鉄板程度で火傷こそしないものの、不意打ち気味のダメージに思わずメイは飛び跳ねた。

 

「あーもう、びっくりしたー、指にソース付いちゃった」

「もう一回電気付けません?」

「いやでももうアーヤ来ちゃうだろうし……」

 

 テレパイプを使えば、大体アヤの部屋からリィンの部屋まで五分くらいである。

 

 電話してから今何分経ったか分からないが、もうあまり時間は残されていないだろう。

 

「こうなったら光テクニックを行使するときに漏れる光を光源にして……」

「アークスシップ内でのテクニックは使用禁止だっての」

「ぐぬぬ……」

「…………」

 

 その時、ゆらりと二人の背後の影が揺れた。

 

 ひたり、ひたり、と音を立てぬよう忍び足で這い寄った『それ』は、持ち前の直感を活かして完璧&正確に二人の耳元へとクラッカーを向け……。

 

 紐を引っ張った。

 

「ぎゃぁああああああああ!?」

「うおああおあおあああええええええ!?」

 

 爆音。それとテープ。

 完全な不意打ちに女子らしくない悲鳴をあげるリィンとメイであった。

 

「うっばっばっば! あたしを放置した罰だよ!」

「し、シズクぅ~」

「こ、この……」

 

 ゆらり、とメイはよろめきながらも立ち上がり、クラッカーを構える。

 

 だがしかし相手はチートクラスの直感を誇るシズクだ。

 暗闇の中、直感だけで正確にメイの攻撃態勢を察し、即座に退避を始めたのは流石と言えよう。

 

「くっ……見失った」

「うばー! 暗闇なのにどう逃げればいいか手に取るように分かるよ何これ怖い!」

「自分のことなのに!?」

 

「うー……あ、スイッチあった」

 

 リィンがそう言って、照明のスイッチに手を掛けた。

 メイとシズクが戯れている間に、リィンは手探りで照明のスイッチを探していたのだ。

 

「ふっふっふ、シズクめ、明るくなったら覚悟しとけよ」

「うばば……だがあたしも次のクラッカーを構えているんですよ。返り討ちにしてくれます」

「この暗闇の中でクラッカーを探し当てたのか……!?」

「点けるよー」

 

 ぱちり、とスイッチが押され、部屋は天井からの光に照らされ視界が晴れた。

 

 瞬間、メイとシズクは動き出――そうとしたところで、二人は何かに気付いたようにその身体を硬直させた。

 

 ぎぎぎ、と錆びついた機械のように顔だけを部屋の入り口に向ける。

 

「ぷ……くく……」

 

 入口付近から、笑い声が一つ。

 

 アヤだ。

 うずくまり、口元を抑えながら必死に笑い声を我慢しているアヤがそこにいた。

 

「…………」

「…………」

「はーっ、もう、お腹痛い……」

 

 涙目になりながら、アヤは立ち上がった。

 彼女にしては珍しく、子供のように無邪気な笑顔で。

 

「やっぱアナタ達最高だわ」

 

 そんな笑顔を見せられて、メイとシズクは毒気を抜かれたように顔を見合わせ、笑った。

 

「誕生日」

「おめでとうございます」

 

 クラッカーが二つ鳴り響き、色とりどりのテープがアヤに降りかかる。

 

「ありがとう」

 

 このチームを作ってよかった、とアヤは改めて思ったのだった。

 

 

 

 

 

「……あの、私もクラッカー……」

「「「あ」」」

 

 おずおずと手を挙げながら、リィンは言った。

 

 その表情は、なんというか、酷く暗い。

 

「あ、いえ、別にいいんですけどね。私が暴発させたのが悪いんですし」

「り、リィン……」

「別に楽しみにしてたわけでもないですし、別に……」

「ほ、ほらリィン! まだクラッカー一個残ってたから! 使って!」

「え、ほんと!?」

 

 シズクからクラッカーを手渡されて、リィンは嬉しそうに笑った。

 

 貰ったそれをアヤに向けて、笑顔で一言。

 

「おめでとうございます」

「ありがとうね、リィン」

 

 クラッカーが鳴り、テープが降り注ぐ。

 

「ほんと、【コートハイム】の末っ子だなリィンは」

「えー? いやいや私よりシズクの方が身体小さいじゃないですか」

「まあ胸は一番大きいけどさ……っと、いつまでも立ってないで座ろうか、もう皆お腹ぺこぺこだろ?」

 

 言って、メイは皆を促すように背中から押した。

 もうすでにいつも晩飯を食べる時間は過ぎていて、皆お腹はぺこぺこだ。

 

「そうね、夜はまだまだ長いし、栄養補給しなくちゃね」

「今日は徹夜で女子トークですかね?」

「パジャマパーティいいわねぇ、女の子っぽくて」

「え? いや麻雀やろうぜ」

「女子力の欠片もない!?」

 

 今夜は楽しくなりそうだなぁ。なんて考えながら、アヤはソファに座りかけて……。

 

 ふと思い出したように、口を開く。

 

「あ、そうだ、忘れない内に渡しとくわ。メーコ」

「ん?」

誕生日おめでとう(・・・・・・・・)

 

 アヤは包み紙に包まれた箱を、メイに手渡した。

 

「いやしかし、生まれた日付まで同じの幼馴染なんてそう居ないわよねー。おかげで誕生日を毎年忘れなくて済むわ」

「…………え、あ、うん、そうだね」

「シズクとリィンはもうメーコに誕生日プレゼント渡し……た? って、あれ? 何か様子が変ね……」

 

 ジト目の視線が二つ、メイに突き刺さる。

 それを見て、アヤは察したようにその笑みを消した。

 

「メーコ、アンタまさか……」

「メイさん?」

「メイ先輩?」

「いやー……あはは……えっとぉ……」

 

 三方向からの圧力に、冷や汗を掻きながらメイは口を開く。

 

 こうなってしまった理由はある。

 こうならないように講じようとした策は失敗した。

 

 後は――それを如何に怒られないように説明するかどうかだ。

 

「は、話せばわかる」

 

 そんな浮気した夫のセリフみたいな言葉を吐いて。

 

 メイの言い訳タイムが開始されるのであった。




いや思い出したわ、小学校の頃友達の誕生日祝ったわ。
と思い出して少し救われた気分になった。

そんな土曜日の昼。






次回メイの言い訳回です。
しばらく日常回が続きます。
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