ここから先ep1外伝まで【コートハイム】に戦闘の予定が無いです。
無限の冒険とは一体何だったのか……。
あ、今回は予定通りメイの過去回です。
感動とかは多分できないです。
「「執事……?」」
シズクとリィンの声が重なった。
「ああ、あのメェーって鳴くやつですか?」
「リィン、それはヤギよ。せめてヒツジと間違えなさいよ」
「あれ? ヒツジの鳴き声もメェーじゃなかった?」
「話がずれてます、ずれてます」
「おおっと」
シズクの言葉に、メイはインターネットで調べようとした手を止めた。
論点がずれるの早過ぎである。
「執事、ってことはもしかしてアヤ先輩って結構良いとこのお嬢さんだったりするんですか?」
「いやいや、大したことないわよ」
「大したことあるでしょ。サイジョウ家といえばお金持ち中のお金持ちだよ」
アークスシップ内でも十指に入るんじゃないかな、というメイの言葉に、シズクとリィンは「おぉー」っと歓声をあげた。
「いやいや、ホント、大したことないのよ。ていうか……」
苦笑いしながら、アヤはリィンを見る。
豊満な胸部が目につくが、それよりも羨ましいものが彼女にはある。
アークライトが故の、天性の肉体。
『戦うこと』に特化した、引き締まった柔軟な筋肉と骨格。
「『アークライト家』に比べたら、
「えっ」
リィンはなにそれこわい、といった表情を浮かべた。
「あ、メーコ、前髪洗うから目え瞑ってて頂戴」
「んー」
「は、え、いや、確かに実家は結構大きいですけどアークスシップで十指のお家と比べたら全然……」
「アークライト家はアークスシップ内では三指に入る超ド級の名家よ?」
「えーっ!?」
「その反応……本当に知らなかったみたいね」
アヤは呆れるように溜息を吐きかけて、それを止めた。
桶にお湯を掬い入れ、まだ完全に泡立っていないメイの髪を洗い流す。
「(メーコ、どう思う?)」
「(んー? いや、有り得ないでしょ)」
ウィスパーチャット。
声を特定の相手にのみ届かせるという、アークスが持つ端末のチャット機能の一つである。
それを使って、アヤはメイに話しかけたのだ。
「(そもそも、アークライトなんていう名家中の名家のお嬢様が、【
「(リィンの知名度が低すぎるのも気になってはいた……
「(つまり?)」
「(完全に意図的な『情報操作』プラス『情報教育』……親の仕業ではないでしょうね)」
「(うん。それは間違いない……だから――)」
あの姉の仕業だろう。
聞けば、リィンの情操教育が小学生以下だったのも姉の
「(何のため?)」
「(さぁ、シズクじゃないし分かんないわよ)」
「(じゃあ後でシズクに訊いてみようか)」
「(そうね)」
と、そこまで話してウィスパーチャットを切った。
本来の、会話に戻る。
「え、え、嘘、私の家ってそんなに……」
「リィン、テンパるのはいいけどウチの過去語りはまだまだ続くんだが」
「え? あ、そうでした」
一先ず自分の実家事情は脇に置いておくことにしたらしく、リィンはメイの方に居直った。
過去語り、再開。
の前に。
「ていうか、何で執事なんですか? メイドじゃなくて?」
シズクから質問が飛んだ。
「執事って男の人がやるものでは?」
「いや、女性でも執事はいるわよ。メイドとは役割が違うもの……まあ、メーコも最初はメイドで雇われたんだけど……」
「ウチってメイド服笑えるほど似合わないんだな、これが」
快活に笑いながら、メイは答えた。
言われてみて、想像する。
メイのメイド姿――は、なんというか、うん。
「……ノーコメントで」
「想像してみたけど全然似合わないですねー!」
「あっはっは、シズクは正直だなぁ」
リィンは笑いを堪えながら、シズクは遠慮なく笑いながら。
それぞれ感想を言った。
瞬間、シズクの頭に空の桶がクリーンヒットした。
「あいたぁーっ!?」
「で、まあ執事をやってたんだけどその時に……」
「あ、ちょっと待って下さい」
また話を再開しようとしたところで、今度はリィンが手を挙げた。
どうやら質問があるようだ。
「何?」
「そもそもどういう経緯で執事になったのかも気になるんですが……」
「んー、じゃあもう、一々質問挟まれるのもあれだし」
最初から、語ろうか。
そう言って、メイは過去を思い出すように瞳を閉じた。
*****
A.P.220/4/3。
ようするに十八年前。
メイ・コートとアヤ・サイジョウは全く同じ日に、同じ病院で生まれた。
コート家は、決して裕福とは言えぬ家。
サイジョウ家は、言わずとも超裕福な家。
そんな二人が幼馴染として出会った理由は単純、親同士が仲良かったのだ。
家は近所。
性格は凸凹。
同性。
仲良くならない理由はなかった。
しかし、アヤの裕福な家への羨望、または劣等感からか。
メイはアヤと仲良くなるたび、反比例するようにメイは親への反抗心を強めていった。
齢八歳。
反抗期も重なって、その頃のメイは荒れていた。
荒れに荒れていた。
相変わらずアヤと仲は良かったが、親に対しては反発しかしていなかった。
そんなある日。
『アレ』が起こった。
後に十年前の『アレ』と揶揄される、オラクル史上最悪の事件。
ダーカーによる大規模侵攻。
死傷者のみならば【巨躯】が侵攻してきた四十年前よりも多いとされるその事件で、
メイを除いたコート家の人々は、一人残らず全滅した。
親も、親戚も、祖父母も、全て。
裕福ではないが一般的で幸福な家庭は、瞬く間に崩壊した。
――その後、当然子供一人では生活できないのでメイはメイドとしてサイジョウ家に引き取られる運びになった。
幼馴染のよしみというやつだろう。
が、すぐにメイドは首になり、執事となった。
理由は三つ。
メイド服が壊滅的に似合わなかったことと、料理が壊滅的にできなかったこと。
執事服が異常な程似合っててアヤのお眼鏡に適ってしまったこと。
執事として、働いて、働いて、働いて、
アヤがアークスの研修生になるときは、護衛兼執事として一緒に入学して、
ああ、そうだった。
肝心の、アヤとどういう経緯で付き合ったかをまだ話していなかった。
しかし、何と言うかまあ、全年齢向けだととてもじゃないが詳細を語れないので、一言だけ。
男装中に幼馴染のお嬢様に無理矢理されるという激烈な初体験をしたとだけ、言っておこう。
*****
「まあ、こんな感じかな」
と、いう回想を。
メイは箇条書きでモニターに映し出して説明した。
「…………」
「…………」
分かりやすい。
非常に分かりやすい。
だが、なんというか、思ってたのと違う。
「メーコ、髪洗い終わったわよ」
「ありがと。じゃあウチはあっちの滝にちょっと行ってみようかな!」
「私は自分の髪洗ってからにするわ」
アヤが自分の髪を洗い始めたのを見もせずに、メイはお湯から飛び出て滝に向けて走り出した。
十八歳にもなって「滝! 修行!」とはしゃいでいるチームリーダーを見て、後輩二人は溜め息を吐くのであった。
両親が、死んで。
残されたメイは後悔した。
余裕が無い癖に、メイの嫁入り用として貯蓄された通帳。
大事に保管された、子供の頃書いた両親の似顔絵。
最後まで自分を抱きしめて守りながら死んだ父親の死体。
例え反抗期だろうと自分を愛してくれていた家族への想いと、
親の心も知らずに反発していた自分への卑下がメイを襲った。
それと同時に、思った。
もしも……もしも――。
『もしも次があるのならば』
『こんなウチにも新しい家族ができたのならば』
『その時は、もう二度と失わないように――』
この命を、懸けてでも。
そう、強く思った。
(メイに死亡フラグが立ったような気がするけど回収すべきか……いや、うーん……)
ところでアークス調査報告書でサイコウォンドがロッドの中で人気二位でしたね!
一位がアンブラステッキなことを考えるとこれはもう実質一位ですね!
やっぱサイコウォンドが最高至上超越だってハッキリわかんだね!
まあサイコウォンドが至上なのは紀元前から決まってたことなので今更感にあふれる結果ですけどやはり嬉しいものですね!