AKABAKO   作:万年レート1000

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風邪で頭が痛いぃぃいぃ。


罰ゲーム

「もしかしてさ……シズクって運動神経無い?」

「ちゃうねん」

 

 ボーリングがワンゲーム終わったところで、リィンはスコアボードを眺めながら呟いた。

 

「皆のさー! 運動神経がさー! 良すぎるだけなんだよー!」

 

 両手両膝を地面に付けながら、シズクは叫んだ。

 

 ちなみにスコアは以下の通りである。

 メイ……256。

 アヤ……211。

 ラヴ……156+40。

 リナ……170。

 

 リィン……198+30。

 マコト……201。

 シズク………………72。

 

 見事に一人だけ惨敗である。

 

 尤も、一般女性ならば72点取れれば普通は充分なのだ。

 問題はシズクが分類上一般女性ではないことである。

 

「フォースでしかも胸の所為で動きにくそうなリナちゃんですら170なのに……」

 

 メイがリナの豊満な胸部を見ながら言った。

 

 唐突に話を振られ、リナは慌てながらも言葉を返す。

 

「む、胸は関係なくないですか!?」

「ちくしょぉおおおお! こんな、こんな爆乳に負けるなんてぇええええええ!」

「ば、爆乳とか言わないでください!」

 

 顔を真っ赤にしながら、リナは両腕で胸を隠して退いた。

 どうやら自身の豊満なバストはコンプレックスなタイプの巨乳らしい。

 

 そうと知ったら弄り倒すしかない、とシズクはにやりと口元を歪めた。

 

「じゃあ、魔乳?」

「まにゅっ……!? や、やめてください!」

「リィンよりも大きいよねー、ちょっと一回揉ませ……」

「ひぃー! シズクちゃんがいじめる! マコト助けて!」

 

 涙目になりながら、リナはマコトの後ろに隠れた。

 むにゅん、とマコトの背中にリナの柔らかいものが押しつけられる。

 

「…………」

「マコトどいて、そのおっぱい触れない!」

「あはは……勘弁してあげて」

「うっばっば、止めるというのならマコトの胸を揉み…………ごめん」

「謝らないでよ……」

 

 マコトの胸部を見た瞬間、シズクはそっと涙を流して頭を下げた。

 

 それはそれは綺麗な、謝罪の姿勢だった。

 

「でも、マコトなら……同類(ヒンニュウ)ならあたしの気持ちもわかるでしょう?」

「ボクだって……この背中に当たる感触が憎くてしょうがないさ」

「憎い!?」

「でも、仲間だからね、憎くても、仲間は守るのがリーダーってものさ」

 

 人生で一度は言ってみたいようなイケメンセリフを吐きながら、マコトはリナを庇うように片手を広げた。

 

 それを見て諦めたのか、シズクはやれやれと大げさに両手を広げながら振り返る。

 と、目の前に良い笑顔のメイが居た。

 

「…………」

「…………」

 

 満面の笑みである。

 何でだ? と考えるまでもなく、答えは一つ。

 

「罰ゲームね、シズク」

「そうでした……」

 

 すっかりリナの胸部についている16ポンドボーリング球に夢中になってしまって忘れかけていたが、『平均点が高いレーンの一位が平均点が低いレーンのビリに一つ命令できる』というルールだったのだ。

 

 得点を見れば一目瞭然だが、命令する人はメイ、命令される人はシズクである。

 

「さぁーってどんな命令しよっかなぁ」

「お手柔らかにお願いします」

「んっふっふー」

 

 にやにやと笑いながら、メイは考える。

 こういった場での『罰ゲーム』は、下手な命令はできない。

 

 キツすぎれば罰を受ける本人の機嫌を損ない、緩すぎれば場が白ける。

 見ている人も楽しめて、かつ罰を受ける当人も納得いくものでなくてはならない。

 

(皆疲れているだろうし、ジュース買ってきて、とか)

(誰かのモノマネをしてみて、とかが鉄板なのだろうけど……)

 

 ありきたりもまた、できれば避けたい。

 いざとなったらそれもやむなしだが……。

 

(ん……おっ)

 

 ふと、マコトの後ろに隠れるリナが目に入り、メイは頭上に電球マークを浮かべた。

 

 良いアイデアが浮かんだようだ。

 

「よし、じゃあシズク」

「はい」

「バストサイズとカップ数を皆の前で公表しろ!」

 

 びしぃっとシズクを指差しながら、メイは命令を発した。

 

 バストサイズと、カップ数の公表。

 さっきまで胸の話をしていたから浮かんだのだろう。

 

「…………うば」

「ん?」

 

 ぼろり、とシズクの瞳から涙が漏れた。

 無色透明の雫は、止まることなく頬を伝い、床に落ちた。

 

「うっ、く……ぐす……」

(な、泣いたー!?)

「め、メイさん!」

 

 マコトが、今度はシズクを庇うように前に出た。

 同じ持たざる者同士、気持ちが分かるのかその表情は真剣そのものだ。

 

「それだけは……それだけは勘弁してあげてください! そんな鬼畜な命令、流石に罰ゲームの範囲を越えています!」

「き、鬼畜!?」

 

 そこまで言われると、なんか悪いことをしているような気になってくる。

 小さいことなんて周知の事実なのだから別に良いじゃんと思うのだが……。

 

(コンプレックスを刺激する系は拙かったかな……)

「あー……じゃあ、誰かのモノマネとかにしとく?」

 

 妥協案。

 別に泣かせたいわけじゃないのだ、命令の変更くらいしていいだろう。

 

「モノマネ……それなら」

「よし、じゃあ誰のモノマネする?」

「んー……」

 

 涙を拭いながら、シズクは周りを見渡す。

 ちらり、とリィンの顔を見て、その後メイの顔を見て、

 

 微かににやりと、笑った。

 

「じゃあリィンのモノマネします」

「え、私!?」

 

 手を上げて宣言して、シズクは集中するように息を大きく吐いて、吸う。

 

「すぅー……はぁーっ……」

「…………」

 

 皆が見守る中、シズクはゆっくりと両手を頭の上に持っていき――

 

 ――まるでウサミミのように指先をピンと伸ばす。

 

 

「シズクだピョン!」

 

 

 静寂が、場を支配した。

 

 アヤと、ラヴ、リナ、マコトの四人は意味が分からず頭上にはてなを浮かべ、

 

 リィンは、段々と、段々と、その顔を赤くしていった。

 

「うばー……思ったより恥ずかしいなこれ……」

「な、なん、な、なな……! なんっで!」

 

 顔を真っ赤にしてリィンはシズクに駆けより、胸倉をつかんだ。

 

「うばっ」

「何でシズクがそれを知って――メイさん!」

 

 よく考えたらメイの仕業としか考えられないことに思い至り、リィンはメイのいる筈の方へ振り返る。

 

 しかしそこにメイの姿は無く、

 遥か遠くに走り逃げるメイの後姿が見えた。

 

「に、逃がすかー!」

 

 叫びながら、メイを追って駆けだす。

 フォトンも使っての全力ランだ。

 

 瞬く間に、メイとの距離を詰めていく。

 

「リィン、足早いなぁ……」

「シズク、さっきの何?」

 

 他人事のように呟くシズクに、マコトが首を傾げてそう訊ねた。

 

「……秘密♪」

「えー、なにそれー」

 

 ぶーぶーと頬を膨らますマコト。

 だがしかし、あの動画を皆に見せるのは何となく嫌なシズクであった。

 

「み、みんなー!」

「うば?」

 

 遠くから叫びながら、リィンがメイの首根っこを引きずってこちらにやってきた。

 

 もう捕まえたのか、早い。

 しかし何処か様子がおかしい……メイがピクリとも動かず、なすがままに引きずられているではないか。

 

「どしたのリィン、メイさんに何したの?」

「思わずボーリングの球を投げたら後頭部に当たっちゃって気ぃ失っちゃった!」

 

 見れば、メイの後頭部には大きなタンコブが一つ。

 何をやっているのだこの子は。

 

「リィン、やりすぎよ」

「アヤさん……」

 

 メイの後頭部をそっと撫でながら、アヤは言った。

 

「いくらメーコに非があったとしても、気絶させるほどの暴力を振るう必要は無かったんじゃないの?」

「う……」

 

 ぐうの音も出ない、正論だ。

 かっとなったとはいえ、凶器を使って頭を撃つなんて、やりすぎだ。

 

「……メーコは私が医務室まで連れていくわ」

「わ、私も付き添います!」

「別にいいわよ、私一人で充分だわ」

「でも……!」

 

 お姫様だっこでメイを抱えたアヤにすがるように、リィンは手を出した。

 しかし、アヤはくるりと背を向けてその手を拒絶する。

 

「大丈夫よ、メーコはこんなことでアナタを嫌いになったりしないし、私もそうよ」

「…………でも」

「反省しているのは分かっているわ、だから……」

 

 アヤは顔だけ振り向いて、リィンを見た。

 真っ直ぐな瞳で、真剣な表情で、言葉を紡ぐ。

 

「今度さっきシズクがやったモノマネの元ネタを見せて頂戴ね」

「…………えっ」

「じゃ、行ってくるわ」

「ちょ、まっ」

 

 リィンの制止は聞かず、アヤはテレパイプを使って何処かへ飛んで行った。

 

 デパート内の医務室に向かったのだろう。

 

「…………えぇー……」

 

 また、あれやるの?

 と、絶望感たっぷりの表情で、リィンは床に崩れ落ちるのであった。

 




マコトとリナのキャラ、少しは立ったかなぁ……。


投稿してから見直して、加筆修正しました。
頭が痛い状態で投稿するのは駄目ですね!
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