AKABAKO   作:万年レート1000

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シオンさんの台詞回し難しすぎィ!
違和感あるかもしれません、すいません。


シオン

 アークスシップ・ショップエリア。

 

 昼飯時だからか人の少ないそのエリアで、白衣の女性が立っていた。

 

 中央のモニュメント前で、目を閉じながら。

 

 誰かが来るのを、待っているようだ。

 

「――もう、介入してくるのか」

 

 その呟きは、おそらく。

 誰かに向けて発せられた言葉ではなく、独り言。

 

「厄介な事だ……」

 

 ぽつりと、それだけ呟いてまた彼女は押し黙った。

 

 そうして待つこと数分。

 不意に、ショップエリアとゲートエリアを繋ぐ転送装置の自動ドアが開いた。

 

「あ、シオン居た居た」

「…………来たか」

 

 白衣の女性――『シオン』は閉じていた瞳を開いて、待ち人を見据える。

 

 黒く長いツインテールに、赤色の瞳。

 そう、待ち人とは『リン』のことである。

 

「なあシオン、マターボードが壊れたんだけど……」

 

 『リン』は、粉々に砕け散ったマターボードの破片をシオンに見せながら、言う。

 

「何で壊れたのか分かるか?」

「……マターボードは、無限にも等しい演算の末に造り出される優位事象への道標」

 

 相変わらず、難しい言葉をわざと選んで使ってるような話し方だ。

 と、呆れながら『リン』は複雑に紡がれる言葉を聞き取ろうと、頑張って耳を傾ける。

 

「謂わばそれは、無数の可能性を網羅した白箱に他ならない。……だが、万事を収束した末の演算すら覆す事象起これば壊れるのもまた必然」

(……何言ってんのか殆ど分からん)

「あー……ようするに、予期しない例外が発生しました、ってこと?」

 

 何とか頭の中で言葉を噛み砕き、自分にもわかりやすい言葉で通訳を行い、訊ねる。

 どうやら通訳は成功したようで、シオンはゆっくりと頷いた。

 

「……わたしと、わたしたちは謝罪する。貴方に不要な心配をかけてしまったこと……そして、原因を識りながらも何も教えることのできない不甲斐無さを……」

「いいっていいって、いつものことじゃん」

 

 シオンの謝罪を笑って流し、『リン』は壊れたマターボードを懐に仕舞う。

 

「それで、次のマターボードはもうできてる?」

「すまない……次のマターボードができるまで、今暫くの時間が必要だ」

「そうか……。じゃあまた出来たら呼んでな」

 

 言って、用事は済んだということでシオンに背を向ける。

 

 クーナ捜しの続きをしなければいけないのだ。

 シズクの方が感知に関しては鋭いだろうし、手伝ってもらおうかななんて考えながら足を一歩進めた瞬間。

 

「待って欲しい」

 

 シオンが、『リン』を呼び止めた。

 

「……? 何?」

「……今から言うことは、ただの忠告に過ぎない。故に、強制するものではない――貴方が選ぶ先に、未来はあるのだから」

「忠告? 珍しいこともある――」

「『彼女』には関わらない方が良い」

 

 その言葉は、いつものように平坦で抑揚のない口調だった。

 

 でも、何処か『意思』を感じるような言葉でもあった。

 

「『彼女』……?」

 

 振り返る。

 しかし、シオンの姿はもう無かった。

 

「……『彼女』。……クーナ? マトイ? ――――シズク?」

「『リン』さーん!」

 

 『リン』がシズクの名を呟いた瞬間、計ったようなタイミングでシズクがテレパイプから現れた。

 

 手を振りながら、駆け寄ってくる。

 

「お、シズク? どしたの――」

『彼女には関わらない方が良い』

「――っ」

 

 シオンの言葉が、頭を過ぎる。

 もしかして、シオンは言うことを言ったから去ったのではなく。

 

 『彼女』……シズクが来たから、姿を消したのではないのかという疑念が『リン』を襲った。

 

 ……が。

 

「ハドレッドを助けるために、『リン』さんの力が必要なんです! 手伝ってください!」

「よし、任せろ!」

 

 人助けとなると、一も二も無く引き受けてしまうのがキリン・アークダーティという人間なのであった。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「何でかしら……」

 

 場所は変わって、リィンのマイルーム。

 

 鏡の前で自身の髪を弄りながら、呟く。

 

「何で、自分でやると真っ直ぐにならないのかしら……ポニテって」

 

 斜めっているポニテを解いて、仕方なくいつものサイドテールに切り替える。

 今度シズクにポニテのやり方習わなくては。

 

「さて、と」

 

 今日は先輩たち二人で活動するらしいし、シズクは何やら用があるらしいし。

 

 久しぶりのソロ活動日だ。

 ヴォル・ドラゴン辺りに一人で挑んでみようかな、なんて考えながらリビングの戸を開ける。

 

 すると、リィンのサポートパートナー――ルインが机に美味しそうなご飯を並べて待っていた。

 

「あ、糞虫(マスター)。もうお昼ご飯できてますよ」

「うん、ありがと」

「全く……毎度毎度少し夜更かししたくらいで昼になるまで寝ないで欲しいものですね」

「うぐっ、相変わらずサポートパートナーのくせに言うわねぇ……」

 

 本当、このサポートパートナーは容赦が無い。

 

 口が悪いし態度悪いし、暴力振るうし。

 ていうか本当にサポートパートナーなのか怪しいし。

 

 一度メンテナンスに出すべきなのだろうか。

 でもそういうのって何処の施設が担当なんだろう……。

 

「もぐもぐ……全く、料理が美味しくなかったら解雇してるわよ」

「はっ。解雇できるか試してみたらどうですか? 無駄ですけど」

「え、何それ怖い」

 

 不敵に笑うルインに戦慄しつつも、リィンは食を進める。

 本当、何者なのやら。

 

「ま、もういい加減慣れたし……今更解雇する気も無いけどね」

「ふふふ、塵芥(マスター)にしては懸命な判断です」

「ああ、そうだ。はいこれ」

 

 思い出したように、リィンはアイテムパックから何かを取り出した。

 

 羽根の飾りが付いた、皮ブレスレット。

 【コートハイム】のチームアクセサリーと、同じものである。

 

「これは……?」

「【コートハイム(うち)】のチームアクセサリーよ。皆にもちゃんと許可貰ってるから」

 

 腕に付いたチームアクセサリーをルインに見せながら、リィンは言う。

 

「……いやですから、どうしてこれをワタクシに?」

「これは、『家族の証』なんだってさ。だから、アナタにも持ってて欲しいって…………シズクが、言うから」

 

 喋りながら、最後の一文だけリィンは顔を背けた。

 頬が赤い。シズクじゃなくても今の言葉が嘘だと分かる仕草だ。

 

「……そう、ですか」

「べ、別に要らないなら返してくれても……」

「いえ、頂きます。……嬉しいです。本当に」

 

 ブレスレットを胸に抱いて、本当に嬉しそうに、ルインは笑った。

 それは、およそサポートパートナーが抱けるような感情ではない筈のものだったが……。

 

 まあ、それに関してはいつものことである。

 

「いつかアナタが何者なのか、教えなさいよね」

「ふふふ、貴方のサポートパートナーですよ」

 

 にこり、とルインは小さな身体の割に大人びた笑顔を浮かべた。

 今まで類を見ないレベルで上機嫌である。

 

「……まあ、話したくなったらでいいわよ」

 

 こんな笑顔を浮かべられたらこれ以上追求する気にもなれず、リィンは両手を合わせる。

 目の前には空の食器たち。

 

 ごちそうさま、である。

 

「――【深遠なる闇】」

「?」

 

 ぽつり、とルインが言葉を零した。

 聞き覚えの無い単語だ。何やら、物騒な名前だが……。

 

「この言葉の意味を貴方が知ったとき、改めてお話しましょう」

 

 言って、ルインは空になった食器を持って台所へ行ってしまった。

 

「……今日の予定は、変更ね」

 

 情報屋の双子姉妹を思い出しながら、リィンは呟く。

 

「とりあえず、彼女らを捜してみましょうか」




【深遠なる闇】の情報って一般アークスにはこの頃出回ってなかったよね? と不安になりながらの投稿でした。
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