AKABAKO   作:万年レート1000

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エピソード1も終わりが見えてきたけど外伝もやるのでエピソード2はまだ先の話なのだ……なのだ……(謎のエコー)


龍の巫

「許可が……降りた? 何で?」

「細かいことはいいでしょう! ハドレッド助けられるんですし!」

「お、おう」

 

 惑星アムドゥスキアに向かうキャンプシップ内。

 その中で、事情を知らない人が見たら首を傾げる光景が広がっていた。

 

 船の中には、女性が二人。

 片方は超有名な超実力派アークス、『リン』。

 もう片方は赤髪の無名アークス、シズク。

 

 およそ一緒にクエストに出ても実力差がありすぎるコンビだ。

 

「とりあえず浮遊大陸に着いたらクーナちゃんを捜します。それと、『リン』さんに訊きたいことが……」

「訊きたいこと?」

「はい。アークスに協力的な龍族……もしくは龍族に関係を持ったアークスを知っていたりしませんか?」

「龍族……」

 

 顎に指を当て、『リン』は記憶をたどる。

 

 いる。

 しかも、両方とも。

 

「いるよ。どっちも」

「うばっ流石ですね。では、『龍祭壇』の……それもアークスの目が届かないような深層に入る許可を取れませんかね?」

「龍祭壇かぁ……なるほど、そこにハドレッドを保護するわけね」

「はい」

 

 龍祭壇。

 惑星アムドゥスキアの最深層に位置する龍族たちの聖地。

 

 アークスですら、未だに全容を把握できないほど強固な守りに包まれた神聖な場所なのだ。

 

 確かにそこなら、コールドスリープされたハドレッドを隠すのにも適しているだろう。

 

「でも、許可取れたなら別に隠す必要ないんじゃ……」

「偽造ですから、万が一ばれたらやばいんですよ」

「えっ。いや、許可証って偽造できるものじゃ――」

「あ! アムドゥスキア着きましたよ!」

 

 誤魔化すようにそう叫んで、シズクはテレプールに飛び込んだ。

 

「…………」

 

 残された『リン』は、ため息を一つ吐いてアイテムパックからサイコウォンドを取り出し背負う。

 

「『彼女』には、関わらないほうが良い――か」

 

 シオンの言葉を反芻するように呟いて。

 『リン』もまた、テレプールへ飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 

 クォーツ・ドラゴン。

 その名のとおり、硬質なクリスタルが身体の随所を覆う戦闘機のような見た目の龍族である。

 

 浮遊大陸に生息する龍族としては頂点の強さを誇り、数多の中堅アークスをその流星のような素早い動きと破壊力で沈めてきたヴォル・ドラゴンやファング夫妻に次ぐ『壁』なのだ。

 

 勿論シズクも、いずれ相まみえる敵としてその情報は頭に入れていたが……。

 

「[おお][よくぞ来たな][アークス!]」

 

 龍族特有の、頭に響くような声が聞こえてきた。

 目の前の、クォーツ・ドラゴンが放ったのだろう。

 

 しかし、なんというか、その。

 こう言っては何だが、ゴツイ顔に似合わない、滅茶苦茶可愛い声だった。

 

 だけど。

 

「待っていたよ、急に呼び出すなんてどうしたんだい?」

「やぁ『コ・レラ』、アキさん。元気にしてた?」

「[無論][『リン』も][元気そうで何より……][ん?]」

 

 『リン』がクォーツ・ドラゴン――『コ・レラ』とその傍らに立つアキという見たことある黒髪眼鏡の女性に挨拶を交わした後、コ・レラがシズクに気がついたようで視線を向けた。 

 

「[其方のアークスは][初めて見るな]」

「ん? おや、何処かで見たことあるような……」

「ああ、実は今日来てもらったのはこの子の頼みでな……おいシズク、自己紹介を……」

 

 シズクは、口をあんぐり当ててコ・レラを見つめていた。

 

 無理も無いだろう。

 シズクのような若い一般アークスにとって、龍族とは敵性エネミーに他ならない。

 

 まだ龍族が友好的だった頃を知らない世代なら、最初はこんな反応をするのもしょうがな――。

 

「――かっわいい!」

「え?」

 

 突如、シズクは頬を紅潮させて目を輝かせながら叫んだ。

 

「ギャップ萌え!? これがギャップ萌えってやつなの!? コ・レラちゃんだっけ? カーワーイーイー!」

「[か、可愛い?][私がか?]」

「うん! とっても!」

「[そ、そうか……][可愛いか……][えへへ]」

 

 照れを隠すように、コ・レラは吼えた。

 それはアークスたちに声を届かすためのテレパシーとは違い、まさにドラゴンといった感じの咆哮だったが……。

 

「あ、そうだそうだ自己紹介っ。あたしはシズク! よろしくレラちゃん!」

「[ああ][よろしく][シズクよ][私は][コのレラ][龍の(かんなぎ)だ]」

 

 シズクは特にびびることもなく、コ・レラと接するのであった。

 強心臓というか、なんというか……。

 

 コ・レラが自分に危害を加えるような存在ではないことを、察しているような。

 

「へぇ、中々肝が据わった子じゃないか。ライト君に見習わしてやりたいくらいだ」

 

 アキが皮肉げな笑みを浮かべながらシズクの顔を覗き込む。

 ライト、とは誰だろうかとシズクは首をかしげた。

 

「ん? やはり君、何処かで会ったことがあるかい?」

「ええ、まあ、一応……」

「ああ、通りでその目の色に見覚えがあったはずだ……すまないね、興味の無いことは憶えていられないのだよ」

 

 言葉で謝っているのに謝罪の意思が全く感じられないの凄いなこの人、と思いながらシズクは「別にいいですよ、ちょっと話したくらいですし」と大人の対応を返す。

 

 忘れられがちだが、シズクは結構常識を知っているのだ。

 知っているだけだが。

 

「[して][シズク][そなたが私たちを呼んだ理由とは][何だ?]」

「ああ、それはね……」

 

「…………そういえばさ」

 

 シズクがコ・レラと龍祭壇使用の交渉に入ったのを確認した後、『リン』は思い出したようにアキに話しかけた。

 

「アキさんって研究者だろ? アークスの『研究室』と何か繋がりとかってあるの?」

「んん? ……いや、私はフリーの研究者だからね、そういった組織的なものとは無縁さ」

「ふーん……?」

 

 アキの言い方は、何処か引っかかるようなものだったが、誰も彼もがシズクのように察せられるわけではない。

 

 そんなものなのかな、と何処か心に引っかかるものを感じながら『リン』は視線をシズクとコ・レラに戻す。

 

 そこにシズクとコ・レラの姿は無かった。

 

「……は?」

「うばああああああああ!」

 

 悲鳴に近いシズクの叫び声が空から聞こえて、上を見上げる。

 

 そこには、超高速で空を自由に飛びまわるコ・レラの姿と、

 その背中に乗ってジェットコースターに乗った子供のようにはしゃぐシズクの姿があった。

 

「ちょっと目を離した隙に何やってんの!?」

「うばああああああああああああ! 楽しいぃいいいいいいいいいいい!」

「[さあ][着地するぞ][気をつけろシズク]」

 

 隕石が落下したような音を立てて、コ・レラは元居た地面に突き刺さる形で着地した。

 

 その衝撃でシズクはコロコロとコ・レラの背中から転がり落ちたが、怪我は無いようでヘラヘラと笑っていた。

 まあ、アークスならこの程度で怪我はしないだろう。

 

「あっはっはっは! 楽しかった」

「[怪我は無いか][シズク]」

「ん? うん、大丈夫だよー、背中乗せてくれてありがとね」

「シズクー!」

 

 ぽんぽんとコ・レラの角部分を撫でながらお礼を述べていると、『リン』とアキが血相変えて駆け寄ってきた。

 

「何やってんの!?」

「いやー、一度乗ってみたいと思っていて……」

「いやそうじゃなくて! 交渉は!?」

「ああ、そちらは滞りなく。二つ返事でOKが貰えました」

 

 グッと親指を立てるシズク。

 なんという仕事の速さだろうか。

 

 思わずコ・レラを見る。

 

「……いいのか? 龍祭壇って龍族にとって神聖な場所なんでしょう?」

「[構わない][かの哀しき龍を救う手立てがあるというなら][喜んで手を貸そう]」

「ちょ、ちょっと!」

 

 『リン』とコ・レラの会話を遮るように、アキが興奮しながら叫んだ。

 

「アキさん……?」

 

 しまったかな、とシズクは考える。

 

 アキは龍族専門の研究者。

 何処までハドレッドに詳しいか分からないが、ハドレッドが既に助かる状態ではないことに気づいているかもしれない。

 

 それなのに、救える手立てがあるというのはどういうことだと突っ込まれたら何て返そう。

 相手は専門家。『リン』さんのときとは同じようにはいかないだろう。

 

 なんてシズクの心配は――。

 

「ずるいぞレラくん! 私も背中に乗ってみたい! 頼む、乗せてくれ!」

 

 杞憂に終わったのであった。

 

 




ちなみにクーナにはカスラが連絡を取ったみたいです。
マネージャーだしね、連絡くらい取れるよね。
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