AKABAKO   作:万年レート1000

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早く『リン』さんの可愛いところがシズクとかリィンとかクーナとかマトイとかにバレるイベントが書きたいなぁ。

10/31 23:27 に大幅加筆修正しました。
結末は一緒だけど、内容は大分違います。


戦技大会開催!

 ――――アークス戦技大会、前日の夜。

 

「うーん……」

 

 幾重にも重なったインスタント食品の空容器。

 

 幾度と無く回収日を逃した末に溜まったゴミ満タンのポリ袋。

 

 くしゃくしゃになって床に散らばった衣類や下着類etcetc……。

 

 そんな古典的とも言えるような汚部屋(マイルーム)で寝転びながら、黒髪ツインテの麗人ことキリン・アークダーティは悩ましげな表情で唸った。

 

「どうしよっかなー、戦技大会のパートナー」

 

 先日、アークス戦技大会の参加条件が明かされた。

 

 参加は二人一組。

 ロックベアの討伐経験有り。

 六芒均衡の参加は禁止。

 

 下二つはまあいいとして、最初の一つが『リン』にとって難関だった。

 

 ……決してぼっちだというわけではない。

 むしろその逆だ。

 

 リサ、オーザ、マールー、アフィン、パティエンティア、サラ。

 

 計七人のアークスから、戦技大会のお誘いを受けているのだ。

 

 人気者なのも、困り者である。

 

「うーむむ……む?」

 

 ごろん、と寝返りを打ったら、肘に何かが当たった。

 

 『ラッピーミニドール』と呼ばれる、可愛らしいラッピーの人形だ。

 

 そういえば以前ジラードさんがクライアントオーダーの報酬にくれたな、とそれを手に取る。

 

「なあラッピー、私はどうすればいいと思う?」

「『きゅっきゅ、そんなこと僕に訊かれても困るっきゅ』」

「相談くらい乗ってくれてもいいじゃないか」

「『きゅきゅ、言うて僕ただの人形だし』」

 

 尚、ラッピーミニドールに音声再生機能なんてものは付いていない。

 

 このやり取りは、全部『リン』の一人芝居である。

 

「全く、役に立たない奴だなー」

「『きゅっきゅ、無茶振りが過ぎるだけっきゅ。僕にだって出来ることはあるっきゅ』」

「ほほう? それは?」

「『それは……こうやって抱きしめられることによってご主人を癒すことだっきゅ!』」

 

 裏声でラッピーボイスを叫びながら、『リン』は人形をぎゅっと抱きしめる。

 

 そしてその態勢のまま、悶えるように転がって、

 まだスープが入っていたインスタントラーメンの容器に頭から突っ込んだ。

 

「ひゃぁああああ!? あっつ……くはないけど不快! めっちゃ不快だっきゅ!」

 

 ついラッピーの物真似をしつつ、手近にあったティッシュで頭を拭く。

 

「ああもう、お風呂入らなきゃ……はは、こんなところ誰かに見られてたら恥ずかしい……」

 

 ちらり、と部屋の入り口を見る。

 当然、そこには誰もいない。部屋のロックは問題なく作用している。

 

 ふーっと一つため息を吐いて、『リン』はお風呂場へ行くために立ち上がった。

 

「……むーん」

 

 さて、ラッピー人形に話しかけても、悩みが解決したわけじゃない。

 

 床に錯乱しているゴミを踏まないように気をつけて、お風呂場に向かいながら考える。

 

 誰と一緒に、戦技大会に出ればいいのか。

 

「……問題は、戦技大会がマターボードに記されていることなんだよなぁ……」

 

 マターボードは、『リン』の歩む未来の道標。

 

 そこに記されているということは、誰と一緒に参加するかは未来の分岐点になっている可能性がある。

 

「んー、やっぱ、あれしかないか……」

 

 湯船に大量のアヒル人形を投入しながら、『リン』は諦めたように呟く。

 

 多分途中で面倒くさくなるから、嫌だったんだけど仕方ない。

 

「時間遡行で、六回戦技大会を繰り返そうか」

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

 そして、アークス戦技大会当日。

 

 惑星ナベリウス森林のハード帯エリアに、シズクとリィンは降り立った。

 

「……本当に、ナベリウスだったわね」

「ん……」

 

 周囲には、誰もいない。

 参加者ごとに出発地点が違うようだ。

 

「まあ結局ファングとは戦えなかったし、昨日の特訓に意味があったのかは分かんないけど」

「うん……」

「? どうしたのシズク? 何か様子が変ね」

 

 いつもより大分テンションが低いシズクを心配するように、リィンは声をかける。

 

 だが、どちらかというとテンションが低いというよりこれは……。

 

(ああ、いつもの(・・・・)か)

「うばー、いや、何か違和感が……ね」

『あーテステス……』

 

 不意に、通信機に音声が入った。

 

 大会の司会者からの通信だろう。

 開催の挨拶でもするのだろうか。

 

『なんて言うと思ったか! オレにマイクテストなんて必要ない!』

「うわっ」

 

 急に耳元で大声が響いて、思わずリィンは肩を震わせた。

 

『オレのたぎるフォトンの力で、皆には十分聞こえているはずだ。軽く挨拶でもさせてもらうぞ!』

「うう……十分すぎるわよ……」

 

 端末を弄り、軽く音量を下げる。

 ああいう五月蝿い男は、結構苦手だ。

 

『どこでも本番、いつでも本気! オレ、ヒューイ! 六芒均衡の六兼、今大会の主催だ! よろしくな!』

「どこでも本番、いつでも本気。オレ、ヒューイ。六芒均衡の六兼、今大会の主催だ。よろしくな」

「……へ?」

 

 今、シズクが何かを呟いた。

 通信の音声と全く同時に放たれたから、よく聞こえなかったが。

 

「え、何シズク、もう一回言って……」

『……むう、モニター介してだと反応がわかりにくくてつまらないな。まあ、みんな盛り上がってるだろうし気にしないけど!』

「……むう、モニター介してだと反応がわかりにくくてつまらないな。まあ、みんな盛り上がってるだろうし気にしないけど」

 

 ヒューイとシズクの、声が重なった。

 全く同じ言葉を、全く同時に喋っている。

 

「え、ちょ、シズク」

『戦技大会への参加、感謝するぞ! オレは主催だから参加できないという事実に打ちひしがれているところだ。こんなに楽しそうなイベントに参加できないんだからな! ……くそっ、企画するんじゃなかった!』

「戦技大会への参加、感謝するぞ。オレは主催だから参加できないという事実に打ちひしがれているところだ。こんなに楽しそうなイベントに参加できないんだからな。……くそっ、企画するんじゃなかった」

 

 最初から気づけよ、とかあんたが企画しなきゃ誰もこんなことやろうと思わないよ、とか。

 色々皆ツッコミたいことはあったが、リィンにはそんなことよりもツッコむべきことがある。

 

 シズク、あんた、何やってんの。

 

『さて、戦技大会の内容だが……細かいルールは気にするな! やるべきことはただ一つ! 誰よりも強い者が、誰よりも万全に奥地へとたどり着く! そういうふうに、できている!』

「さて、戦技大会の内容だが……細かいルールは気にするな。やるべきことはただ一つ。誰よりも強い者が、誰よりも万全に奥地へとたどり着く。そういうふうに、できている」

『だから諸君は……っておいこら! 邪魔するな。今演説中なんだぞ……!』

「だから諸君は……っておいこら、邪魔するな。今演説中なんだぞ……」

『……えい、くそ! うりゃっ! いいだろ、私だって運営に関わってるんだから喋らせろ!』

「……えい、くそ。うりゃっ。いいだろ、私だって運営に関わってるんだから喋らせろ」

 

 突然乱入してきた幼い女の子の声にも、完全に対応している。

 

 まるで、何度も見ているビデオを朗読するように。

 

 淡々と。

 

「……ていうかこの声……」

『ふふん、アークスのみなよ! 聞こえているか! 私の声が!』

「ふふん、アークスのみなよ、聞こえているか。私の声が」

 

 聞き覚えの有る声が、通信機を通して参加者のアークス全員に届いた。

 

 この、尊大っぽいお子様ボイスは……紛れも無く先日あったクラリスクレイスのものだ。

 

『我が名はクラリスクレイス! 六芒均衡の五だ! 三英雄だ! 偉いんだぞ! 今回の戦技大会にはわたしもいろいろとからんでいる! 存分に楽しむといいぞ!』

「我が名はクラリスクレイス。六芒均衡の五だ。三英雄だ。偉いんだぞ。今回の戦技大会にはわたしもいろいろとからんでいる。存分に楽しむといいぞ」

『最後には、とっておきのお楽しみも用意してあるからな! ふふふっ楽しみだなぁ……!』

「最後には、とっておきのお楽しみも用意してあるからな。ふふふっ楽しみだなぁ……」

「…………」

 

 偉ぶった子供的な台詞喋るシズクって貴重だなぁ。

 普段は妙に真面目か、おちゃらけた感じの台詞が多いから。

 

 なんて、何処か現実逃避的な思考をするリィンであった。

 

『おおっとお、クラリスクレイス! それ以上喋ってはいけないぞ! 秘密だからこそ楽しいこともある! ……さて、そろそろ戦技大会開催だ! ……いいなクラリスクレイス。打ち合わせ通りに喋るんだぞ』

「おおっとお、クラリスクレイス。それ以上喋ってはいけないぞ。秘密だからこそ楽しいこともある。……さて、そろそろ戦技大会開催だ。……いいなクラリスクレイス。打ち合わせ通りに喋るんだぞ」

『わ、わかっている!』

「わ、わかっている」

 

 しかしホント一言一句同じだ。

 これもシズクの能力なんだろうか。

 

『では、アークス戦技大……』

「では、アークス戦技大……」

『あっ! よ、よーい、どん!』

「あっ、よ、よーい、どん」

 

 気の抜けるような、クラリスクレイスの放った合図で、戦技大会は始まった。

 

 だが、シズクとリィンは動かない。

 主催二人の会話が終わって、ようやくシズクは「……うん」と一つ頷いた。

 

 そして、呟く。

 

「『リン』さんめ……何回時間遡行(くりかえ)したんだあの人……」

「? シズク? さっきからどうしたの?」

「いや、うーん、まあ、何というか……」

 

 何て説明したらいいんだろう。

 腕を組んで考える。

 

 けど、結局。

 

「……いつもの直感で、ヒューイさんたちの台詞を読んだだけだよ」

「……ふーん」

 

 いつものように(・・・・・・・)、シズクは嘘を吐いて。

 

「さ、行こリィン。どうせなら上位入賞を目指そう!」

「え、ええ」

 

 リィンの手を引き、ナベリウスの奥地目指して走り始めた。

 

 

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