AKABAKO   作:万年レート1000

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ぎりぎりセーフ。
番外編は時系列を気にしたら負け。

なんだか最近スランプ気味で、筆の進みが遅いです。
まあ書き続けてればそのうち治ると思うけど、内容にも粗が出てたら申し訳ございません。


【番外編】クリスマス

 ショップエリアの中央オブジェクトに、巨大な樹木が建っている。

 

 樹にはそれはもう色取り取りの電飾、宝石、雪のような綿がわんさかと付着しており、

 そして天辺には光り輝く星の冠。

 

 ようするに、クリスマスツリーがショップエリアに飾られているのであった。

 

「…………よし」

 

 12/24。

 クリスマス一色のショップエリアで、赤い髪の少女は何かを決心するように小さく呟いた。

 

 その手には、赤いリボンで結ばれたプレゼントボックス。

 

「今日は、クリスマスイヴ。この気持ちを伝えるには、絶好の日だ」

 

 赤い髪の少女――シズクは、自分に言い聞かせるように呟く。

 目を瞑って、胸に手を当てて、頬をかすかに赤く染めながら。

 

「プレゼントは買った、高級ディナーの予約をした……うん」

 

 告白の準備は、出来ている。

 

 後は、土壇場で勇気を振り絞ることができるかどうかと、リィンが今日明日予定が無いことを確認して遊びに誘うだけだ。

 

 まあ前半は兎も角、後半は問題ないだろう。

 彼女がクリスマスという行事を知らないかもしれない――という不安要素はあるが、それは説明すればいいだけの話だ。

 

 意を決して、端末を開きリィンのアドレスをタップする。

 

 数回のコールの後――通信機の向こうから聞きなれた少女の声が聞こえてきた。

 

『……もしもし?』

「もしもし、リィン?」

 

 心臓が高鳴る。

 声が上擦っていないか、少し心配だ。

 

「あ、あのさ、今日これから遊べない?」

『今日これから?』

 

 あー……っと、通信の向こう側から悩むような声がした。

 

 じわり、とシズクの背中に嫌な汗が伝う。

 

『…………』

「……り、リィン?」

『ごめん、無理』

 

 シズクの、表情が固まった。

 

「――え? え?」

『ほんとごめんなさいね、今日はちょっと用事が……』

「ちょ、ちょっと待って!? 用事!? 用事って何!? ま、まま、まさかクリスマスデート!? 誰と!?」

 

 ショップエリアのカップル達の視線が、シズクに突き刺さるがそんなもの気にせずに叫ぶ。

 

 もし本当にデートだったら、もう、なんというか、チーム解散の危機である。

 

「い、いいいい一体誰と!? 何時の間に?!」

『ちょ、ちょっとちょっと落ち着きなさいシズク。耳がキンキンするわ……』

「あ、ごめん……」

『別にデートとかじゃないわよ、今日は……そう、昔から試してみたかったことをやってみたいの』

 

 昔から試してみたかったこと。

 とりあえずデートじゃないと分かった瞬間、シズクは安堵するように息を吐いた。

 

「……昔から、試してみたかったこと?」

『うん、あのね……』

 

 少し恥ずかしそうに、リィンは言う。

 

 少しどころではない、恥ずかしい台詞を。

 

『……サンタクロースに、会ってみたいの』

「………………………………うば?」

 

 一瞬、リィンが何を言っているのか分からなかった。

 

 流石に、それは、そう。

 流石に、サンタクロースは実在しないことくらい知っていて欲しかった。

 

「え、あの」

『それで、サンタって夜に来るじゃない? いつも夜は寝落ちしちゃってて、一度も会ったこと無いのよね……』

「…………」

『だから今年こそはサンタを見るために、昼間の内に寝貯めしておくの!』

「…………」

 

 ああ、それ五歳くらいの頃やったなぁ……っと白目を剥きながらシズクは心の中で呟いた。

 

 クリスマスを知らない可能性や、サンタをまだ信じている可能性は考えていたが、これは予想の斜め上である。

 

『と、いうことで今から寝るから遊べないわ、ごめんね?』

「アッハイ」

『それじゃ、おやすみー』

 

 ぷつん、と通信は切れた。

 

 耳に当てていた手を、ぶらんと下げて、シズクはベンチに座り込む。

 

「…………うばー」

 

 どうしよう、これはどうしたらいいんだろう。

 全く考えが浮かばず、頭を抱えるばかりになったシズクの、

 

 端末が、通話の受信を伝えるように小さく鳴った。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「さて、と」

 

 リィンのマイルーム。

 シズクと繋がっていた通信を切り、一息ついて枕を抱える。

 

「寝ますか」

「ちょっと待ってください」

 

 いざベッドにダイブしようとしたリィンを止める声が、一つ。

 

 ルインだ。

 紫の髪と紫の口紅が特徴的な、毒舌サポートパートナーである。

 

「何昼間っから惰眠を貪ろうとしているんですか」

「ルイン。いや別に惰眠というわけじゃ……」

「クリスマスなんですから、シズク様でも誘って何処か遊びに行ったらどうですか?」

「いやそれは断った」

「…………は?」

 

 何言ってんのコイツ、とでも言わんばかりの困惑した表情を見せるルインであった。

 

「は。え、いや、シズク様の誘いを断ってすることが、昼寝ということですか?」

「うん。サンタに会う為に、夜寝落ちするわけにはいかないからね」

「…………」

 

 絶句して、言葉を紡げない。

 

 ここまで無知だと痛々しくとも思える。

 いや、やっぱ普通に痛々しい。だってこの子どや顔とかしてるんだもの。

 

「じゃあ、おやすみ」

 

 そう言ってベッドに潜ってしまったご主人を侮蔑の目で暫く見つめていたルインだったが……

 やがて、ため息を吐きながら端末を取り出した。

 

 通話帳からシズクの名をタップし、通信を繋ぐ。

 

「あ、シズク様ですか?」

『? ルイン? どうしたの?』

「いえ、ちょっと今からウチ来て貰えませんかね?」

『え? でもリィンは寝てるんじゃ……』

「はい寝てますよ。でも問題ありません、すぐ出かけるので」

 

 待ち合わせ場所がここってだけですよ、とルインは主が眠るベッドを横目に言う。

 

 頭まで被った布団から、耳だけはみ出ている。

 

『そ、そう? じゃあ今から行くね……』

「お待ちしております」

 

 通信を切って、にやりと笑う。

 

 いつまでそうしていられるかな? と主を嘲笑うかのように。

 

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 数分後、シズクがリィンの部屋にやってきた。

 

 寝ているであろうリィンに気を遣ってか声量は控えめだ。

 

「いらっしゃいませ、シズク様」

 

 ルインが、台所から姿を現した。

 シズクが来るまでに少しでもと台所仕事をしていたようである。

 

「や、ルイン。それで、何の用なの?」

「ははは、シズク様、クリスマスに女子が二人集まってすることと言ったら一つでしょう」

「?」

「ワタクシとデートに行きましょう」

 

 ぴくり、と寝室の布団が震えた。

 

「で、デート?」

「はい。どうやら我が主は寝てしまっているので、今のうちにシズク様との仲を深めようかと」

 

 妖艶な笑みを浮かべながら、ルインはシズクの手を取る。

 機械だというのに、思わずドキッとしてしまうような艶やかなしぐさだ。

 

「う、うば……」

「さ、行きましょう。大丈夫です、マスターへの書置きはちゃんと残してありますので」

「…………」

 

 ま、いいか、とシズクは頷いた。

 勿論リィンからルインに鞍替えするとかではなく、リィンが寝ているならこの後の予定が全部キャンセルというのと同義なので、暇を潰すという意味なら渡りに船なのである。

 

「ではまずはショップエリアのカフェでコーヒーブレイクは如何でしょう? その後はSGNMデパートでウィンドウショッピング、晩御飯はちょっとお高いお店でディナーを……」

「あ、それならあたしいい感じのお店を予約してあるよ」

「あら、準備万端ですわね。もしかして誰かと一緒に行く予定だったりしましたか?」

 

 皮肉げにそう言いながら、ルインは背後の寝室へと目を向ける。

 

 布団は大きく揺れており、確認などせずとも彼女が動揺しているのが目に取れた。

 

「うばば……まあ、もうキャンセルしようとしていたししょうがないや」

「あらまあ、シズク様の誘いを断るなんて無粋な方もいるんですねぇ」

 

 煽るような口調で言いながら、ルインはシズクの手を引っ張ってマイルームから出て行った。

 

 部屋には、布団に潜るリィンだけが取り残されることになる。

 

 

「…………」

 

 しばらくして、布団の中でリィンがもぞりと動いた。

 

 眠れない。

 元々昼間から眠れるような眠たい状態じゃなかったのもあるが、今みたいな話を聞かされたら寝るに眠れない。

 

「ルインのやつぅ……」

 

 呟いて、布団から這い出る。

 

 水の一杯でも飲もうかと思い立ったのだが、机の上に置かれた一枚のテキストデータが目に入った。

 

 そういえば書置きを残したって言ってたな、とそのテキストデータを手に取る。

 

「えーと、何々……『シズク様とデートに行ってきます。昼御飯と晩御飯は鍋にカレーが入っていますから温めて食べてください』」

 

 ちらり、と台所を見る。

 確かにそこにはカレーが入っているであろう鍋が置いてあった。

 

「…………ふぅん、主には作り置きのカレーを食べさせて、自分はシズクと良い店でディナー? ふぅん……ふふふ」

 

 いやまあ、寝るといったのは自分だけど。

 シズクの誘いを断ったのは自分だけど。

 

「……ムカムカするわ」

 

 サンタなんて、もうどうでもいい、と呟いて。

 

 リィンは二人を追って走り出した。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「あ、来た来た」

 

 ショップエリアのカフェでコーヒーを飲みながら、シズクは嬉しそうにリィンへ笑いかけた。

 

 対面にはにやにや顔のルイン。

 ブラックコーヒーをゆらゆらと揺らし、計画通りとでも言わんばかりの笑みを浮かべていた。

 

「はぁ……、はぁ……っルイン! ず、ずるいわよこんなの!」

「えー? 何がずるいんですかー?」

「むむむ……」

 

 息を荒げながら、ルインを睨みつけるリィン。

 しかし当のルインはにやにやとした笑みでリィンの視線を流すだけである。

 

「まあまあリィン、折角来たんだから楽しもうよ。ほら、座って座って」

「……うん」

 

 若干納得のいっていない風に頷いて、リィンはシズクの隣に座る。

 

 即座に甘めのコーヒーが目の前に出された。

 どうやら追ってくること前提で既に注文しておいたようだ。

 

「何だか手のひらの上みたいで嫌だわ……」

「うばば……、その、あたしと遊ぶより、サンタに会う方が大事だった?」

「……その訊き方は、ずるいわ」

 

 コーヒーを啜る。

 甘い。好みの、甘さだ。

 

 全く、本当――気の利くサポートパートナーである。

 

「それじゃあ、ワタクシはここでお暇させていただ――」

「え? 何言ってるのよ」

 

 席を立とうとしたルインを、リィンが引き止めた。

 

 その手を握って、無理やり座らせる。

 

「あの……?」

「どうせなら一緒に遊びましょうよ。思えば碌に休暇も取らせてなかったし丁度いいわ」

「え、っと……サポートパートナーは普通24時間365日休みなど取らないもので……」

「何今更普通のサポートパートナーっぽいこと言ってるのよ」

「普通のサポートパートナーですよ」

 

 普通のサポートパートナーは主の恋愛に気を回したりしないです。

 とかの突っ込みは、無粋だろう。

 

 そう。

 もうその辺りの話は今更なのだ。

 

(【深遠なる闇】とやらを知れば、教えてくれるらしいし)

「……むう、しかしシズク様はワタクシが居ると邪魔なのでは?」

「そうなの? シズク」

「うば? いやいや、あたしだってルインには居て欲しいよ」

 

 大事なところでは空気を読める子だしね、と心の中で呟きながら、シズクは言う。

 

「ルインだって、大切なあたしの友達だ」

「――――」

 

 ルインは、目を見開いてシズクを見た。

 

 そして、嬉しそうに目を細め、口元を歪めて、言葉を紡ぐ。

 

「……そう、ですか。それは、光栄です」

「? どうしたの? そんなに意外だった?」

「い、いえ……なんでもないですよ」

 

 シズクの海色の瞳が、ルインを見つめていた。

 

 でも、ルインは”知っている”。

 この全てを見抜くような海色の瞳では、『条件』に引っかかって自身の本質を見抜くことは出来ないことを、ルインは”知っている”。

 

「昔――いえ、前見たテレビで、似たような台詞を吐いたシズク様そっくりのキャラが居たものですから、びっくりしただけですよ」

「ふぅん……?」

「おまたせしましたー、こちらBランチセットでございますー」

 

 会話を断ち切るように、カフェの店員がサンドイッチなどが盛られた容器を持って寄ってきた。

 

 注文した昼食が届いたようだ。

 

「ごゆっくりどうぞー」

「いただきます」

「いただきまーす、おいしそー」

 

 リィンとシズクの興味は、料理の方に移ったようだ。

 ほっと一息を吐いて、ルインはコーヒーを口に入れる。

 

 苦くて、美味しい。

 

 そして――。

 

「ほら、リィン、あーん」

「え、ちょ、ちょっと、恥ずかしいわよそんなの」

「いいからいいから」

「もう、……あーん」

 

 ナチュラルにいちゃつく二人を見て、ルインは口元を緩めた。

 

(…………)

「あ、そういえばさ、リィン」

「むぐむぐ……ん? 何よ」

「クリスマスプレゼント、用意したんだ、受け取ってくれる?」

「え?」

 

 アイテムパックから、シズクはプレゼントボックスを取り出した。

 

 それを、隣に座るリィンに渡す。

 

「わ、開けてもいい?」

「どうぞどうぞ」

 

 リボンを解き、白箱を開く。

 中から出てきたのは――白い兎の、ぬいぐるみだった。

 

「兎のぬいぐるみ? 可愛いわね」

「うっばっば、リィンって兎好きかなって思って作った」

「手作りなの!?」

 

 リィンが驚いたのも無理は無い。

 渡されたぬいぐるみは、およそ店売りのものと遜色の無い、それは見事な裁縫物だったからだ。

 

「あいっかわらず器用ねぇ……」

「ほらほら、それ持って『リィンだぴょん』って言ってみて」

「言わないわよ! いつまでそのネタ引っ張るのよもう……」

 

 頬を赤く染めながら、リィンはぬいぐるみを優しく撫でる。

 

 言葉は怒っているように聞こえるが、その頬は緩みっぱなしだ。

 

「おやまあ、立派なクリスマスプレゼントですね」

「あ、ルインの分は作ってないの……ごめんね?」

「いえいえ、こうして同席しているだけでも身に余る光栄だというのに、プレゼントまで貰ってしまっては恩が返しきれなくなってしまいます」

 

 大仰なことを言いながら、ルインは首を横に振る。

 

 しかし実際、ルインは今相当機嫌がよさそうだ。

 珍しく毒舌が欠片も表に出ていない。

 

「大げさねぇ」

「しかしマイマスター、こんなプレゼントを貰っておいて、貴方からシズク様へのプレゼントは無いのですか?」

「えっ」

 

 ぎくり、とリィンの肩が震えた。

 

 寝る予定だったから、当然そんなものは無い。

 ていうか実は昨日までクリスマスだということを忘れていたリィンである。

 

「うば、別にあたしが渡したかっただけだし別にお返しなんて――」

「ノー! ノーですよシズク様! クリスマスと言えばプレゼント交換! 一方的に貰うだけなんてクリスマスの作法に反しています!」

「そ、そうよシズク。今すぐは無理だけど……そう、この後デパート行って何かプレゼントを……「シャラップ!」」

 

 リィンの言葉を遮って、ルインは叫ぶ。

 思わず口を閉じたリィンの横に移動して、耳元に口を持っていく。

 

「る、ルイン……?」

「何言っているんですか雌豚(マスター)。今すぐ渡せるプレゼント、あるじゃないですか」

「え……?」

 

 ルインは、シズクのプレゼントを縛っていたリボンを手にとって、リィンの片腕に巻きつけていく。

 上手に、丁寧に、傷つけないように結び、綺麗なフレンチボウを作り上げた。

 

「できました。これでおーけーです」

「……?」

「いいですか? できるだけ上目遣いでこう言うのです……『プレゼントは、わ・た・「うばーっ!」』」

 

 流石にシズクのストップが入った。

 ていうか入れざるを得なかった。

 

 昼間の公共場所で何を言わせようとしているのかこのサポートパートナーは。

 

「し、シズク。その、プレゼントのお返しは後でちゃんとするからね、その、今の以外で」

「りょ、了解」

「ちぇー」

 

 唇を尖らせながら、ルインは元の席に戻る。

 

 その時ふと、赤面して何処かぎこちない感じのシズクとリィンの姿が目に入った。

 

(…………)

 

 そっと、カメラを起動して、無音のシャッターを鳴らす。

 

 青い髪が綺麗な主と、赤い髪が映える主の友達を一緒にフレームに収めて。

 

 ルインは、心の中でそっと呟いた。

 

(……やっぱり)

百合(オンナノコドウシ)は、尊い……)

「……?」

 

 普段からは考えられない、緩みきった笑みを漏らすルインに、疑問符を浮かべるリィンだったが、

 

 ルインの真意を彼女が知る日が来るのは、まだ先の物語(おはなし)である。

 

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

 

「結局、告白できなかったな……」

 

 翌朝。

 リィンのマイルームにて、ソファベッドから起き上がったシズクは静かにそう呟いた。

 

 あの後、三人で遊び、ディナーを食べ、リィンの部屋で一泊したのだが。

 

 見事に何も無かった。

 何も、言えなかった。

 

 へたれだと罵られても、何も言い返せないくらいだった。

 

 ていうか実際ルインに罵られても、何も言えませんでした。

 

「はぁ……ん?」

 

 リィンはもう起きただろうか、と寝室のベッドを見たときだった。

 

 彼女の枕元に、何かある。

 

 赤く大きな靴下の中に、四角い箱が一つ。

 

「……? プレゼント……?」

 

 まさか、本当にサンタクロース――なわけがあるまい。

 

 勿論シズクが置いたものではないし、ルインもサンタの真似事をするようなやつじゃないだろう。

 

「…………」

 

 某姉の姿が浮かんだが、それも無いはずだ。

 あの姉はリィンのマイルーム番号を知らないのである。

 

「……ん」

 

 そうこう考えている内に、リィンがむくりと起き上がった。

 

 目を擦り、一つ欠伸をした後に、枕元に置いてあったプレゼントを手に取り、叫ぶ。

 

「あー! プレゼント来てる! くそー……今年もサンタの姿を拝めなかったかぁ……」

 

 無邪気な子供のように、はしゃぐリィン。

 そんな姿を見ていると、もしかして本当にサンタはいるのでは……と思えてこないでもないが、それは無いか。

 

「まあいいかー、今年はシズクやルインと遊べたし、サンタの正体は来年暴いてやる」

「…………」

 

 リィンのマイルーム番号を知っていて、隣の部屋で眠るシズクに気づかれずに寝室へ侵入できる存在。

 

 それは確かに正体を暴きたい。

 そして是非ともその術を伝授させて頂きたい。

 

 ……じゃなくて。

 うら若き乙女の部屋に侵入した『誰か』が居るというのは、立派な事案である。

 

 通報するべきだろうか、と悩み始めたシズクの指先に何かが当たった。

 

「……?」

 

 枕元に置いてあったのは、書き置きのテキストデータ。

 リィンが書いたものでも、ルインが書いたものでもない。

 

 おそらくリィンにプレゼントを与えた、『侵入者』からのメッセージ。

 

「…………うば」

 

 そこに書かれているメッセージを読んで――シズクは微笑んだ。

 

 そういえば、そうだった。

 

 よく考えればクリスマスにサンタクロースを扮してプレゼントを配る存在など、一つしかない。

 

 シズクは静かに、テキストデータを握りつぶした。

 

 これを、リィンに見せるわけにはいかない。

 

 だって、まだ知らないのなら教えるわけにはいかないだろう。

 

「シズク? どうしたの? ルインが朝ごはん作ってくれてる筈だから食べましょう」

「うん、今行くー……あ」

「?」

「リィン、メリークリスマス」

「……うん、メリークリスマス」

 

 来年こそは告白するぞ、と心に誓うシズクであった。

 

 




ルインの謎がどんどん深まってく割りに何も判明しないなぁ……。
最初はまじでただのサポパだったのに設定を後から盛られた所為でこんなことに……。

最後の『侵入者』は、メイやアヤじゃないです。
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