久しぶりの【アナザースリー】登場です。
ボクっ子と巨乳ドジっ子と淫乱キャストの三人組みです。
「シズクー?」
翌日、朝。
シズクのマイルーム前に、リィンは立っていた。
部屋には鍵がかかっているので、入れない。
シズクは基本朝起きたらマイルームの鍵を開けるので、鍵がかかっているということはつまり寝ているということで……。
「明日は朝からウォパルって言ったのになぁ……」
端末を開いて、時計を確認。
もう約束の時間は過ぎている。
「はぁ……仕方ないなぁ……」
インターフォンを連打しながら、端末の画面を動かしアドレス帳からシズクを選ぶ。
モーニングコール代わりに通話を飛ばしてやろう、と通話ボタンに手を伸ばしかけたその時だった。
がちゃり、と鍵が開く音がした。
同時に、ゆっくりとシズクの部屋の扉が開いていく。
やっと起きたか、とリィンは端末の画面を閉じて、部屋から出てきたシズクと向き直る。
「遅いわよシズク、今日は朝からウォパル行くって言ったじゃない」
「…………」
「……シズク?」
のそり、と。
部屋の中から、寝巻きのシズクが出てきた。
が、何だか様子がおかしい。
いつものテンションは何処にもなく、ただ只管に、
無表情で、
無機質で、
人間味が、全く感じられない表情をしていた。
(そういえば、シズクの寝起きを見るのって始めてかも)
シズクが泊まるときも、いつも朝ごはんを手伝うために彼女は早起きをしていたから。
寝起きに立ち会ったのは、これが始めてだった。
「シズク?」
「…………リィン」
声にも、何処か抑揚が無い。
髪もぼさぼさで、赤い髪の根元にある黒色の地毛がちらちら見えていた。
「……
「?」
「昨日、クラフトに夢中になって夜遅くまでやってた所為で……まだ眠くてなんというかもう……無理」
ぼふっと、シズクは目を閉じてリィンの胸元へ崩れ落ちた。
そしてそのまま寝息を立てて眠ってしまった。
……立ったままおっぱいを枕にして寝るとは、器用な子だ。
「はぁ……しょうがないわねぇ」
眠るシズクを抱きかかえて、リィンはシズクの部屋に入った。
レィクは居ない。
戦闘用サポートパートナーはクライアントオーダーの素材集めにフィールドに居ることが多いらしいので、多分その関係だろう。
「よしっと……」
シズクをベッドに寝かせて、布団をかける。
額に肉とでも書こうかと思ったけど、残念ながらペンが無かったので断念。
ウォパルに行くのは午後からに変更ね、ということだけメールを送っておいて、リィンは部屋を出た。
(さて、ぽっかり空いた午前の予定をどうしようかな……)
廊下を歩きながら、思考する。
サポパの定期メンテナンスは明日だし、一人でウォパルに行くのは何だか味気ない。
「……午後から行く予定だったとこにでも、行きましょうか」
呟いて、リィンはテレパイプの転送先座標を弄りだす。
デパートの域を超えたデパート――SGNMデパートへ。
*****
「う、わぁあああああああああああああああああああああああ!?」
「きゃぁあああああああああああああああああああああ!?」
「うっひょひょーーーーーーい!?」
惑星リリーパに、少女の悲鳴が三つ――いや、悲鳴かどうか怪しいのが一つあったが、兎も角三つ響いた。
声の主は――【アナザースリー】の三人娘。
上からマコト、リナ、そしてラヴの声である。
三人とも、全力疾走で何かから逃げながらの叫びだ。
「な、なん、何でこうなったのおおおおおおおおおお!?」
「うぇえええええええええん! おうち帰りたいいいいいいい! テレ、テレパイプ! テレパイプは!?」
「駄目ですよリナさん、こんな状況でアイテム使ってたらその間に殺されちゃいますよう!」
だから走る。
全速力で、走り続ける。
惑星リリーパの、地下坑道――”だったところ”。
惑星リリーパ・壊世区域を、走り抜ける。
「わぁあああああああ!」
「ひぃいいいいいいいいい!」
背後から、爆発音。
ちらりと後ろを振り返ると、一匹で【アナザースリー】全員を皆殺しにできるような超弩級の機甲種が全部で二十匹くらい。
その全てが彼女たちに砲塔を向けていた。
「やばいやばいやばいマジで死んじゃうぅううううう! 何でリリーパに壊世区域があるんだよ! ナベリウスだけじゃなかったの!?」
「はっ! マコトさんマコトさん! 今こそあの『生涯で一度は言ってみたい台詞トップスリー』に入る、『ここは私に任せて先に行け!』が使えるときでは!?」
「使わないし使ったらぶち殺すよ!?」
ラヴの言葉にマコトがツッコミを入れた瞬間、砲弾がマコトの頬を掠め、
遥か先の極彩色をした坑道に落ちて爆発した。
「……っぅ!?」
怖すぎる怖すぎる怖すぎる。
あんなのが当たったら即死確定である。
最早、ここまでか、と。
マコトが絶望しかけたその時だった。
「あ! 見て! あれ出口じゃない!?」
「おお! ホントですね!」
リナが指差す先に、地上へと続く階段があった。
この壊世区域に入るときに通った階段だ。間違いなく壊世区域の外に繋がっているだろう。
「ほら、急いでマコト!」
「走りますよー! 足が折れるまで!」
「…………うん!」
走って。
走って走って階段を駆け上って。
三人は、地上へと飛び出すように走り抜けた。
「ぬっ!」
「けっ!」
「たぁあああああああ!」
ずざざー! っと地面を野球選手のヘッドスライディングのように滑りながら、脱出。
【アナザースリー】。
無事、元居た採掘場跡に帰還成功である。
「ぜぇ……はぁ……こ、ここまでは追ってこないみたいね……。あー……死ぬかと思った」
「ふぅー……報告、しないとね。リリーパにも壊世区域があったって」
「いやぁ、その前にもう帰りましょう。二人ともお疲れでしょうし」
ラヴの提案に、二人は素直に頷いた。
もう一歩も動きたくない程、肉体的にも精神的にも疲れている。
だが、テレパイプを出そうとアイテムパックを開いた瞬間だった。
「……ん?」
「え?」
ふと、三人がいる場所に影が差した。
厚い雲が丁度通った、とかでは勿論無く、上空から巨大機甲種――。
――『ヴァーダーソーマ』が、ジェット噴射の爆音を鳴り響かせながら彼女たちの前に降り立った。
「ははは……今日は厄日ですねぇ」
「二人とも……戦える?」
「このくらい、壊世のエネミーに比べれば……!」
立ち上がって、武器を構える。
マコトが、ガンスラッシュを構え前へ。
ラヴとリナがそれぞれランチャーとタリスを構えて後方支援。
これが【アナザースリー】の基本戦陣だ。
剣モードのガンスラッシュを持ったマコトが敵を翻弄して、高火力の大砲とテクニックでとどめを刺す。
だがしかし、今日のところは。
それをお披露目する機会はなさそうだった。
「うばー! ジェット噴射うるさい邪魔ー!」
金属が、それ以上に硬く鋭い物質に切断される音が突如響く。
次の瞬間、ずるりと
「まったく! 図体がでかいエネミーは騒音もでかくて嫌だわ……はぁー、ここら辺にはアプちゃんの力も無さそうだし、別のところに……ん?」
ヴァーダーソーマを切ったのは、一人の少女だった。
真っ白い髪と、真っ白いドレスを着た、赤い瞳の少女。
そう。
お察しの通り、ダークファルス【
「何……? この辺から懐かしいような良い匂いのような変な感じが……」
【百合】は首を傾げながら、壊世区域がある方へ向かってふらふらと宙を飛ぶ。
ちなみに空を飛ぶのはダークファルスにとって標準装備の能力である。
そんな。
そんな風に【若人】が近くにいないというのにふざけた態度の【百合】を見て、【アナザースリー】は固まっていた。
目を見開き、全身に冷や汗をかいて、固まっていた。
キャストであるラヴですら、身動き一つ取れない。
うかつに、動けない。
だって、アークスである三人には分かってしまうのだ。
目の前にいる可愛い少女が――紛れもなく本物のダークファルスだということが。
「…………うば?」
「っ……!?」
位置関係的に、遅すぎたくらいだが。
ようやく、【百合】は【アナザースリー】の三人を目視した。
「……ああ、アークスってやつね、貴方たち」
「…………」
「…………」
「…………」
三人とも、無言だ。
というよりも、喋る余裕がないと言うべきか。
アークスとして、最低限以上のダークファルスの知識は持っている。
なので、今存在を確認されているダークファルス達の容姿や名前くらいは勿論知っている。
だから、今目の前に存在している白いダークファルスが――未確認のダークファルスだということも、理解せざるをえなかった。
本当に、今日は厄日だ。
人生最悪の日だといっても過言ではないだろう。
(ていうか……『うば』って……その口癖は……)
「……うばー、別にあたしアークスなんかに興味ないし、見逃してあげてもいいんだけど……」
近寄って、【百合】は【アナザースリー】の三人を嘗め回すように眺めて言った。
その言葉で、わずかに三人の緊張が解けた。
展開次第では、見逃してもらえる可能性もあるのでは、と。
「でも」
「えっ」
じろり、と【百合】はマコトを見た――いや、睨んだと言ったほうが正しいかもしれない。
鋭い目つきで、ドスの聞いた声で、言い放つ。
「男は死ね」
「ちょっ……!?」
瞬間、【百合】がかざした手の先から、茜色の剣が出現・射出された。
高速で放たれた剣を、マコトは間一髪のところで後ろに飛び跳ねることによりかわして――リナのおっぱいに後頭部を突っ込んだ。
むにゅん、と柔らかい感触が後頭部を襲う。
「きゃっ」
「は? ラッキースケベする男とか許せないわ死ね」
「ちょ、ちょっと! ちょっと待ってタンマ待って!」
「あたしね、女の子は女の子同士で恋愛して、男は死ねって思ってるの」
超持論を語りながら、【百合】は更なる剣を展開する。
背後に五本、左右に三本ずつの、合計十一本。
これらを一斉掃射したら、間違いなく今度こそマコトはお陀仏だろう。
「待って! その、ボクは……!」
「この子女の子なんですよぉおおおおおおお!」
「うわぁああああああああ!?」
突如、マコトの胸元がラヴによって思いっきり開かれた。
マコトの慎みやかな胸が一瞬外気に晒され、僅かに揺れる。
しかしこれまた一瞬でマコトの腕がそれを阻害した。
「ラヴぅぅうううううう!? 何するんだ! この!」
「マコトさんが女の子だということを証明するためですよぅ、決して私が見たかったからとかそういうのじゃありません! 決して! 決して!」
「二度も言うと逆に怪しいんだけど?!」
……てっ。
こんなコント紛いなことしている場合じゃあない。
目の前のダークファルスは――顔を手で覆っていた。
若干、肩が震えている。
妙なコントもどきを見せられて怒りに触れたのだろうか……と、マコトはいよいよ戦闘開始を覚悟しガンスラを強く握った。
「…………貴方、女の子だったの?」
「そ、そうだよ……」
「うばー……何だろう。……何だか貴方――」
ふわり、と【百合】はマコトの前に降り立った。
品定めするように、ゆっくりと手を伸ばし、そして――。
「――イラつくわ」
「あぐ」
剣が、マコトの腹部に突き刺さった。
フォトンの守りなんてものともせず、刃は容易くマコトの身体を貫き破る。
「マコトさん!?」
「ま、マコトー!?」
「あたしは優しいから、これくらいで勘弁しといてあげるわ」
くるり、と【百合】は踵を返した。
周囲に展開していた剣群は既に消えている。
本当にこれ以上戦うつもりは無く、去っていくようだ。
「だから、その引き金は引かない方がいいと思うよ」
「…………!」
「っ……!」
リナのタリスと、ラヴの銃身が背を向けた【百合】に突きつけられていた。
だがしかし、例え全力で集中砲火したところで勝ち目が無いのは明らかだ。
「じゃあねアークスのおにゃのこたち。精々男なんぞに靡かずに、そのまま百合百合していてくれたまえ」
最後に【百合】らしいことを言って、ダーカーワープを使い白いダークファルスは消え去った。
……色々と、言いたいことや、やらないといけないことがあるけどとりあえず。
「リナさん、早くムーンアトマイザーを! 私はテレパイプの準備をしておきます!」
「は、はい!」
白いダークファルスが去ったことにより、マコトに突き刺さっていた剣は消えている。
故に、マコトの腹からは止め処なく血があふれ出ていた。
早く治療しなければ命が危ないだろう。
ムーンアトマイザーの、黄金の光が辺り一面に広がっていく。
マコトの傷が塞がったのを確認して、【アナザースリー】の三人はアークスシップへ帰還するのであった。
この後報告を受けたアークスの管制室が、新種のダークファルスをその性質からダークファルス【百合】と仮呼称するのだが、それはまた別のお話。