これが終わったら原作突入します。
ヴァルゼルドが麻帆良に来てから既に数週間が経過していた。
当初は様々な注目を集めていたヴァルゼルドだが既に慣れたのか麻帆良学園の者は皆、ヴァルゼルドを受け入れ普通に接していた。
見た目は武骨な警備ロボ。しかし中身はまるでポンコツ。
何よりヴァルゼルドは妙に人間臭い部分が多いのだ。
このギャップが馴染む最大の要因だったのかもしれない。
ヴァルゼルドの朝は早く、六時頃には起動を開始する。
エヴァ邸に居候しているヴァルゼルドは同じくエヴァ邸の住人と同時に起床すると朝の挨拶。
「おはようございますヴァルゼルドさん」
『おはようであります茶々丸殿』
何気に茶々丸はこの挨拶が楽しみとなっており、挨拶の後は笑顔になっている。本人は気付いていないが。
『充電完了!では、行ってくるであります』
「はい、いってらっしゃいませヴァルゼルドさん」
昨晩、寝る前に充電をしていたらしく元気になったヴァルゼルドは朝の仕事に出掛ける。
茶々丸は出掛けるヴァルゼルドに頭を下げ見送るとエプロンを付けてエヴァの朝食作りを開始する。
その姿を他の者が見れば、夫を仕事へ送り出し、子供の朝食を作る母親の様だと評価するだろう。だがツッコミを入れる者はこの場には居なかった。
「ヴァルゼルド、おはよう」
「おはようございますヴァルゼルド君」
「ヴァルゼルドさん、朝早いですねー」
エヴァ邸を出発したヴァルゼルドは目的地に着くまでに挨拶を交わす。部活などで早起きの生徒や教員などとは此処で会うのだ。
最初の目的地に着いたヴァルゼルドは、目的地である建物の中に入っていく。
「あ……オハヨウ、ヴァルゼルド」
『おはようであります、ココネ殿』
ヴァルゼルドの目的地は麻帆良に存在する教会だった。
そしてヴァルゼルドと挨拶を交わしたのはココネ・ファティマ・ロザ。魔法生徒の一人で麻帆良学園の教会のシスター見習いでもある。
『美空殿はまだありますか?』
「もう少しシタラ来ると思う。先に始める」
ヴァルゼルドの質問に答えるココネは少々片言だ。と言うのも彼女は日本人ではなく外国人。更にを言えば彼女は魔法界の住人なのだ。
その事を気にしないヴァルゼルドはココネの言葉に頷くと自身の装備を変更する。
三角頭巾
▼
エプロン
▼
竹箒
▼
雑巾
▼
ヴァルゼルドはお掃除装備へと換装した。等と言うが実際はエプロンを着ただけである。
そしてヴァルゼルドとココネは仲良く教会の掃除を始める。ヴァルゼルドが教会に顔を出す様になったのは些細な事が切欠だった。
教会の外を掃除していたシスター見習いの春日美空とココネは掃除が大変や高い所に手が届かないとぼやいた。それを聞いたヴァルゼルドが『ならば本機が手伝うであります』と言ったのが始まりで、その後もヴァルゼルドは定期的に教会に顔を出す様になっていく。今では教会に礼拝に来る者にも親しく話し掛けられる程だ。
さて、此処で所属するシスターの話をしよう。
その名はシスターシャークティー。高畑や刀子などの魔法先生の一人で美空やココネの指導者である。
彼女はヴァルゼルドが麻帆良に来たばかりの頃、ヴァルゼルドを警戒していた。ガンドルフィーニの様な考え方ではないが、生徒を守る聖職者としてヴァルゼルドがどんな人物(ロボット)かを見定めようとしていた。
しかし、彼女がヴァルゼルドに会う前にヴァルゼルドが教会に現れたと聞いて彼女は教会まで走った。
美空やココネは問題児だが可愛い生徒で有り教え子だ。
そんな彼女達を素性の知れないロボットと接触させてしまうなど……
シスターシャークティーは自分の迂闊さを呪いながらも全速力で教会へ向かい、教会の扉を開いた。
「ヴァルゼルド、もう少し右」
『了解であります』
「いやー、お手伝いロボットが来てくれるなんて楽できるね、ありがとうヴァルえもん」
其処にはヴァルゼルドに肩車をしてもらいながら掃除をするココネとヴァルゼルドに掃除を任せてサボる美空の姿。
シスターシャークティーは豪快にずっこけた。そりゃもう見事なくらいに。
その後、美空とヴァルゼルドにお説教のシスターシャークティー。美空にはサボった事とヴァルゼルドに掃除を押し付けた事を叱り、ヴァルゼルドには生徒がサボった場合は注意せよとお叱りを与えたのだった。
そんな事があってからヴァルゼルドは教会に顔を出し、掃除をするのが日課となっていた。
『これで完了であります』
「おー」
掃除を終えたヴァルゼルドは汗を掻いた訳では無いが額を拭う仕草をする。ココネもそれを見て掃除終了となる。
「オッハヨー、あれ?掃除もう終わった?」
『おはようであります美空殿』
「美空、遅い。もう掃除終わった」
掃除が終わったタイミングで美空が顔を出す。
「いやー、ゴメンゴメン。いつも通りに来たんだけどなぁ……やっぱヴァルゼルドが来てると掃除も早いわ」
美空は頬を掻きながら悪びれもせずに言う。
「だったらヴァルゼルドが来る日はアナタも早く来なさい美空」
「痛ッたたたたっ!?」
そこでいつの間に来たのかシスターシャークティーが美空の後頭部を鷲掴みして握力で痛め付ける。
『おはようでありますシスターシャークティー殿』
「おはようございますヴァルゼルド。お掃除ありがとうこざいます。此処はもういいですから」
シスターシャークティーは握力を弱める事無く普通に会話を続ける。そしてヴァルゼルドに次に行って下さいと促す。
『ハッ!では、失礼するであります』
「バイバーイ」
「はい、お勤め頑張って下さい」
ヴァルゼルドはお掃除装備を解除し、敬礼する。
ヴァルゼルドが退室するとココネは手を振り、シスターシャークティーは柔やかに送り出した。
「まったく美空……アナタはいつもヴァルゼルドに甘えて……」
「痛ッたたたたっ!?た、助けてヴァルえもーん!」
ヴァルゼルドを口実にサボる美空とそれを叱るシスターシャークティー。
これも麻帆良の日常と化していた。