ヴァルゼルドは朝早くから学園長室に呼び出されていた。
『おはようございます学園長殿』
「うむ、おはようヴァルゼルド君。麻帆良には大分慣れた様じゃのぅ」
ヴァルゼルドの挨拶にフォフォフォと笑いながら返す学園長。
『して、本機を呼び出した理由はなんでありましょう?』
「うむ、明日なのじゃが……麻帆良に新しい先生が赴任してくるのじゃ。その先生を迎えに行って欲しいのじゃよ」
ヴァルゼルドは学園長に何事かを問えば、学園長はヴァルゼルドに新しい先生のお出迎えを頼んだ。
『本機で宜しいのですか?もっと他の……』
「新しい先生は魔法先生なのじゃよ。早く馴染んで欲しいのと、ヴァルゼルド君にはその先生のサポートを頼みたいのじゃ」
学園長は顎髭を弄りながらヴァルゼルドに追加の注文を出した。
『サポートでありますか?本機は教員免許を所持していないであります』
「サポートを頼みたいのは授業面では無く魔法面なんじゃよ。なんせ10歳の少年じゃからの」
ヴァルゼルドの問いに学園長はにんまりと笑った。
『じゅ……10歳でありますか!?』
「うむ、魔法の修行の一環で麻帆良で教鞭を振るう事になっての。天才少年で大学は飛び級、魔法の才もあるのじゃが何分まだ10才の子供じゃ。故にヴァルゼルド君にはネギ・スプリングフィールド君のサポートを頼みたいのじゃよ」
驚くヴァルゼルドを後目に学園長は新しく赴任する先生の『ネギ・スプリングフィールド』の説明に入っていた。
「なーに、サポートと言っても魔法がバレないようにするのと引率が必要な時に同伴して欲しいのじゃよ」
『魔法の方は普段の事だからなんとかなるでありますな』
学園長もヴァルゼルドも言った『魔法がバレないようにサポートする』は実はヴァルゼルドが普段からしている行為だった。
当初は機械兵士としての能力を買われて、夜の警備。つまり、麻帆良に侵入してくる者達の撃退を任務としようとしたのだが……良くも悪くもヴァルゼルドは目立つのだ。
『ヴァルゼルドが居る所には不思議な事が起きる』等の噂が立てば魔法の存在が明るみに出てしまう。
そして学園長が考えた対策は『ヴァルゼルドを夜の警備(裏)に出さない』だった。
夜間の見回りはするがそれは表向きで魔法での戦闘から生徒達の意識を逸らせるのにヴァルゼルドの目立ちっぷりを利用したのだ。
つまり万が一、ネギの魔法がバレそうになっても『麻帆良が誇る高性能&ポンコツロボ、ヴァルゼルドが何かした』と思わせる為の処置である。
『学園長殿。それではその任、確かに拝命したであります』
「うむ、ネギ君は明日の朝、電車で来るから出迎えて此処まで連れて来てくれるかの」
ビシッと敬礼したヴァルゼルドに学園長はいつもの飄々とした笑いで返した。
◇◆◇◆
所変わってエヴァ邸。
「くくく……やっとだ。やっと呪いを解くチャンスが来たのだ」
エヴァはとてつもなく嬉しそうにしていた。ソファに座り、ワインを優雅に傾ける様は悪の魔法使いそのもの。
「マスター。少し落ち着かれては?ワインも既に二本目です」
そんなエヴァを気遣うのは従者である茶々丸。茶々丸は普段よりもハイペースでワインを飲むエヴァを心配していた。
「なぁに……前祝いのような物だ。やっと……やっとこの巫山戯た呪いを解呪出来るかも知れんのだぞ」
「マスター……」
エヴァはワイングラスをテーブルに置くと俯いてしまう。
「ヴァルゼルドも言っていたが……呪いに使われた術式は無茶苦茶。本人以外には解けないんだよ。この呪いは」
悲しそうなエヴァに掛ける声が見つからない茶々丸。
「しかし、もうすぐ奴の息子がこの学園にやってくるという情報を掴んだのだ!ナギの息子なら呪いを解く鍵となる!これで!私は自由になれるのだ!」
ドドーンと効果音を背負いそうなほどの勢いで捲くし立てるエヴァ。気合いが入っているのか座っていたソファに立ってガッツポーズしていた。
「ああ、マスターが楽しそう。…………でも」
エヴァが楽しそうにしている事を喜ぶ茶々丸だが一つの懸念があった。
「ヴァルゼルドさんはどうするのでしょうか?」
エヴァはネギを使って呪いを解呪する気満々だが、その事を知らないヴァルゼルドへどう伝えたものかと頭を悩ませていた。
◇◆◇◆
麻帆良大学工学部では超が暗闇の中でモニターを見詰めていた。
「遂にネギ・スプリングフィールドが麻帆良に来るカ。これで私の計画も始められるネ」
超はモニターに映し出された計画書を見て笑みを溢す。
「しかし……こんな所でイレギュラーとはネ」
ピッと超がパネルを操作すると映し出されたのはヴァルゼルドの姿。
「彼は私が知る歴史の中には居なかったネ。彼の存在がどんな影響を及ぼすか見物だヨ」
イレギュラー。だが愉快な彼が何をしでかすのか。それを思うと超は楽しみだと言わんばかりに 口端をつり上げるのだった。
次回より原作一巻に突入します。タイトルに子供先生と書いてるのに子供先生の登場が遅れて申し訳ありませんでした。