魔法先生ネギま! 子供先生と機械兵士   作:残月

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ネギに対する評価と酷評

 

 

 

明日菜が下着と靴下だけの姿になり、悲鳴が木霊する。

そんな中、高畑は上着を明日菜に着せる。

明日菜は運の良い事に体育の授業があるからジャージを所持していたが流石に道端で着がえるのはハードルが高すぎる。

高畑はネギを学園長室へ連れていくと言うので明日菜はこれに同伴し、途中で着がえる事にした。

因みにヴァルゼルドは木乃香を引き連れ、寮に明日菜の予備の制服を取りに行くのだった。

 

 

「ありがとなーヴァル君」

『いえいえ、礼には及ばないであります。それに本機だけでは寮に入れても着替えを持ってくるのは無理であります』

 

 

寮に着いてからのほほんと会話をしながらも急いで寮の部屋に向かうヴァルゼルドと木乃香。

 

寮に到着し、木乃香が部屋に入って一人になるとヴァルゼルドはネギの事を考えていた。勿論、先程の明日菜の服を剥ぎ取った武装解除の魔法の事だ。

クシャミで魔力が暴走するのは危険な事だ。

今のネギは例えるなら魔力と言う水が入ったグラスの様な物だ。そしてそれは許容範囲ギリギリの為に些細な事で零れてしまう。更にネギはその後の対処の仕方も甘い。

 

 

「お待たせー。ほな、行こか?」

『了解であります』

 

 

木乃香が予備の制服を持ってくるとヴァルゼルドは一旦、考えるのを中断し、学園長室へ向かうのだった。

 

ヴァルゼルドと木乃香が学園長室へ到着するとネギと高畑とジャージ姿の明日菜が居た。寮まで行って遅れたかと思ったが明日菜の着替え等の時間もあり同じ時間に到着した様だ。

 

 

「なるほど。修行のために日本で学校の先生を……そりゃまた大変な課題になったのぅ」

「は、はい!よろしくお願いします」

 

 

顎髭を撫でながら笑う学園長に緊張気味に返事をするネギ。後ろでは明日菜が怪訝な顔をしており、木乃香は「大変やなー」と呟いている。

 

 

「ところでネギ君は彼女は居るかのぅ。どうじゃウチの木乃香なぞ?」

「いややわー、おじいちゃん」

 

 

早くも話が脱線する。学園長はネギと木乃香の見合いをさせようかと考えたが木乃香はいつの間にか学園長の隣に立っており、トンカチでガスっと学園長の頭を殴っていた。

 

 

「まずは教育実習とゆーことになるかのう。今日から三月までじゃが……」

 

 

ここで一拍置き、改めてネギに問う学園長。因みにこの際にヴァルゼルドは学園長の頭に絆創膏を貼って先程の怪我の治療にあたっていた。

 

 

「ネギ君。この修行はおそらく大変じゃぞ。ダメだったら故郷に帰らねばならん。 二度とチャンスはないが、その覚悟はあるのじゃな?」

「は、はいっ!やります!やらせてくださいっ!」

 

決意の籠もる瞳でネギは返事をすり。

しかし、この後が問題だった。

 

ネギの住む場所が無いので学園長は明日菜と木乃香の部屋に泊まらせて欲しいと言い出したのだ。当然、これに猛反発したのは明日菜だ。木乃香は「ええよー」と言っていたが出会いが悪かったからか明日菜のネギに対する印象は相当に悪い。

授業が始まる時間が近付いていた為に、この件は一先ず保留となりネギは指導教員の源しずなと共に連れられ、明日菜達もこれに続き退室した。

この場に残るのは学園長、高畑、ヴァルゼルドとなった。

 

 

「どうじゃった?二人の目から見て、ネギ君は」

「相変わらずいい子そうで安心しましたよ」

『本機には……少々危険な子と思ったであります』

 

 

学園長の問いに笑顔で答える高畑。しかしヴァルゼルドは良い答えは出さなかった。

 

 

「ふむ……随分と厳しめな評価じゃのう?」

『魔法の秘匿への意識が低いと感じたのが第一印象であります。鞄から魔法の品が溢れ出し、クシャミ一つで魔法が暴発。一般生徒に被害が出ないかと思うと……」

 

 

そう言うとヴァルゼルドのライトグリーンの瞳は消えてしまう。そこで高畑も学園長も気付いた。

ヴァルゼルドは本来なら心根の優しい言わば【お人好し】なのだ。そのヴァルゼルドが酷評を出したのは本当にネギが心配だから。一般生徒への被害を一番に考えたから。

自分達はネギの人格や魔法の才能を一番に見たがヴァルゼルドはネギの迂闊さや一般生徒への被害を一番に思ったのだ。正直、この差は結構大きな問題だろう。

 

 

「ふむ……ヴァルゼルドの言う通りじゃな。魔法先生を1人、指導者として置く措置が必要かの……」

「そうですね……でも僕は魔法が使えません。学園長では先程の様になってしまう可能性が……」

 

 

ネギに対する見通しが甘かった事を痛感した学園長と高畑は早速、今後の話になる。

魔法絡みとなるとヴァルゼルドは口が出せないので退室しようとした際に学園長がヴァルゼルドに声を掛ける。

 

 

「ヴァルゼルド君、ワシ等魔法関係者はあの子に甘い。さっきの様にこれからも忌憚ない意見を聞かせて欲しいんじゃが……」

『了解であります』

 

 

学園長の言葉に敬礼をするとヴァルゼルドは退室しようとしたドアに手を掛け、振り返る。

 

 

『ネギ殿は素直で良い子であります。魔法の才に溢れ、尚且つ努力家かと。認識が甘いのは子供故のものであり、これからは我々が指導者となり、導けば問題はないであります。…………本機はネギ殿のこれからが楽しみに思うであります』

 

 

言いたい事を言ったヴァルゼルドはパタンとドアを閉めて行ってしまう。

 

 

「今のが多分、ヴァルゼルドが最初に出したかったネギ君の評価なんでしょうね」

「フォフォフォ……ワシ等のフォローまでしてくれるとは……本当にヴァルゼルド君には頭が上がらなくなってくるのぅ」

 

 

ヴァルゼルドが出したかったネギの評価。しかしヴァルゼルドまでネギに甘くなればネギの将来は危ぶまれる物が有る。そして麻帆良に住む生徒達にも魔法等の被害が出てしまうことをヴァルゼルドは良しとしなかった故に最初に酷評を出したのだ。

ヴァルゼルドの性格を考えれば酷評を出すのがどれほどツラい事だったか。高畑も学園長もそれが分かったからこそ、やはりヴァルゼルドは【善人】であり【お人好し】なのだろうとフォローしてくれたヴァルゼルドに感謝をするのだった。


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