ヴァルゼルドは図書館島へ急行する。そして歩みを止めずボディの収納スペースから携帯電話を取り出す。連絡を取るのは先程、ヴァルゼルドが言った最低限の連絡先である。
《フォフォフォ、待っとったぞヴァルゼルド君》
『学園長殿?』
ヴァルゼルドが連絡をしたのは学園長だった。電話が繋がると共に聞こえた笑い声と「待っていた」の言葉にヴァルゼルドは疑問の声を上げる。
《ネギ君達の事じゃろう?先程、図書館島に来おったわい》
『先程、ネギ殿の生徒達からネギ殿達が行方不明になったとの報告があったのでありますが』
電話の先から学園長はネギ達の行動を把握している様だが、のどか達から行方不明なったと聞いているだけにヴァルゼルドの心情は穏やかではない。
《お仕置きの意味も込めてちょっぴり脅かしたんじゃがの……》
『生徒の内、一人は泣いていたであります』
学園長の言葉にヴァルゼルドは少々キツい口調だ。
《う、うむ……ワシも悪ふざけが過ぎたの……直ぐに助けてやりたいがワシもゴーレムで脅して、ネギ君達を地下に落としてしまったんじゃ。スマぬが迎えに行ってくれんか?》
『本機もネギ殿達に言わねばならぬ事があるので望むところであります』
学園長にネギ達の迎えを頼まれたヴァルゼルドは快く引き受ける。
『ところで……2-Aが今度のテストでも最下位だと、解散して小学校からやり直しって噂は本当なのでありますか?』
《なんじゃい、その噂は。いくらなんでもあり得んじゃろう》
ヴァルゼルドは気になっていた事を学園長に問うが学園長はそれはあり得ないと断言する。しかしヴァルゼルドは「この学園なら可能性はゼロではない」と思ったので聞いたのだ。
《うむ、では頼むぞい……っと、その前に図書館島に入った辺りで生徒が居るからそちらの対応も頼めるかの?魔法生徒じゃから事情は知っておるんじゃが……》
何処となく歯切れの悪い学園長。
《そちらの方も頼めるかの?木乃香の為になる事なんじゃ》
『事情は解らないでありますが、本機に出来る事であるならば引き受けるであります』
学園長はヴァルゼルドに頼み事をして、ヴァルゼルドの返事に満足したのか、後は任せたと言うと通話を切る。
話をしている間にヴァルゼルドは既に図書館島に到着していた。
当直の警備員に『見回りであります』と告げると中に入っていくヴァルゼルド。夜間の警備で何度も来ているので顔パスに近い状態だった。
そして地下へと急ぐヴァルゼルドの前に一人の少女が居た。
少女はソワソワと落ち着きがなく、慌ただしい雰囲気だ。
とりあえず声をかけようと近づくヴァルゼルド。
『こんな時間に何やっているでありますか?』
「どないしよー……助けに行かなきゃ……でも……このちゃーん!?」
少女はヴァルゼルドか声を掛けても気付かずにブツブツと何かを言っていた。しかも最期には泣き叫ぶ始末。
『何事でありますか?このちゃんとは木乃香殿の事でありますか?』
「ハッ!?曲者!」
ヴァルゼルドの声に漸く気づいたのか少女は手にした野太刀を引き抜くとヴァルゼルドに斬り掛かる。
『なんの《ガスッ》あいたー!?』
「え、あ、あれ?」
突如、襲ってきた少女の刀を真剣白刃取りしようとしたヴァルゼルドだがタイミングが合わず、見事に命中。対する少女も見切られたと思っただけに何故、当たったかを疑問に思う程だった。
ヴァルゼルドは手を合わせたまま、仰向けに倒れてしまう。倒れたと同時にズズンとヴァルゼルドの自重の音が鳴るがこれに困ったのは少女の方だ。
「こ、この人はヴァルゼルドさん!?まさか警備に来ていたのか!?」
少女は慌てた様子で野太刀を納刀するとヴァルゼルドに駆け寄る。少女の名は桜咲刹那。
麻帆良においてヴァルゼルドを初K.O.した少女となった。