水の中から現れたヴァルゼルド。歩み寄るに連れてボディから水が溢れ出ていた。
「何者でゴザルか!?」
「さっきの石像の仲間カ!?」
反射的に一同の前に出て構える楓と古。どうやら彼女達はヴァルゼルドを知らない様だ。そんな中、ヴァルゼルドを知る者から声が掛かる。
「あー、ヴァル君やー」
「ヴァルゼルドさん!?何故此処に!?」
木乃香はのほほんと夕映は驚愕と共に叫ぶ。
「え、あの『麻帆良のガーディアン』!?」
「初めて見たアル」
「ほほぅ……ニンニン」
まき絵、古、楓の順にコメントが出る。どうやらヴァルゼルドの名は知っていたが見た事が無かった用だ。
『ネギ殿、穴から落ちたのは此処に居るので全員でありますか?』
「え、あ、はい」
ネギに質問をして全員が無事である事を確認したヴァルゼルドは生徒達と向かい合う。
『本機が此処に来た理由は二つ。一つは生徒達の救助の為……』
ヴァルゼルドは説明をしながら指を二本立てる。そしてヴァルゼルドが救助に来てくれた事で帰る事が出来ると皆が喜んでいた。
『二つ目は……違法行為を行った生徒達の罰則の為であります』
「「えっ……」」
ヴァルゼルドの言葉に全員がピタリと動きを止める。
『学校設備内の無断侵入。中等生立ち入り禁止エリアへの侵入。教員(ネギ)の拉致。寮の門限破り。図書館の秘蔵本(魔法書)の窃盗未遂。更には試験での(魔法書による)不正行為未遂。罪状は様々であります』
「う……そ、それは……」
ヴァルゼルドの発言に言葉を詰まらせる明日菜。留年の危機を感じていたとは謂えどいざ自分のしでかした事を振り返ると罪は重い。
他の生徒も同様で微妙に打ちひしがれるている。そんな生徒達を見てなんと声を掛けた物かと悩むネギ。
『次にネギ殿。いくら拉致されたからって、途中いくらでも引き止めれた筈。明らかに危険なところに不正に忍び込もうとしている生徒を止めるのが先生の役目でありましょう?』
「は、はい……」
そんな思いとは裏腹にヴァルゼルドは生徒達からネギのお説教にシフトする。
『更に生徒達の行動はテストで不正をする為に……これも止めなければならない筈でありますね?』
「………はい」
ネギは流されて図書館島に来てしまったのだが、そんな言い訳は許さないとばかりにヴァルゼルドは言葉を繋げる。
『ネギ殿も後で生徒達と一緒に新田先生のお説教であります』
「……わかり……ました……」
問答が終わる頃にはすっかり俯いて杖を握り締めているネギ。それを見ていた生徒達も焦りの色が見える。普段からポンコツと呼ばれるヴァルゼルドが威圧的だからだ。
特に明日菜や木乃香は優しさの塊の様なヴァルゼルドがこんなに厳しく物を言うのが信じられなかった。
そして、ヴァルゼルドとネギのやり取りを見ていた生徒達は自分達がネギを巻き込んだ事への罪悪感を覚える。
「ね、ねえ……ヴァルゼルド?」
『なんでありますか?』
先程の威圧感もあって遠慮気味に話し掛ける明日菜。
「ネギは……私が無理やり連れて来たの。だからネギは許してあげて!」
ヴァルゼルドに深々と頭を下げる明日菜。それを見て、他の生徒も頭を下げ始める。
『……ネギ殿は麻帆良学園で『教師』として登録されているであります。特別扱いは出来ないであります』
「それでもっ!」
「いいんです、アスナさん。ありがとうございます」
ヴァルゼルドの言葉に尚も食い下がろうとした明日菜だがネギが待ったを掛けた。
「ネギ!?」
「明日菜さんや皆さんの気持ちは嬉しいです。でもここで甘えてしまったら、皆さんに『先生』って言えなくなってしまう気がするんです。僕も皆さんと一緒に怒られます」
「ネギ君……」
明日菜や他の生徒もネギの言葉に何も言えなくなってしまう。
『ネギ殿、今後はこうゆうのは勘弁して欲しいであります』
「ふぇ?」
ポムとヴァルゼルドの手がネギの頭の上に乗せられる。
『本機はあまりお説教が得意ではないのであります』
「……あ」
ヴァルゼルドの言葉に漸く全員が気付いた。ヴァルゼルドは厳しいことを言っていたが全て言いたくて言った訳では無く、ネギを教師として扱い、生徒達にも節度有る対応をしていたのだと。
その為に心を鬼にしていたのだと。