自分の分のお説教を終えたヴァルゼルドは立ち上がると周囲を見渡す。
『では、そろそろ帰投するであります』
「えっ!帰れるの!?」
ヴァルゼルドの言葉に驚いた明日菜。
『職員用のエレベーターが少し上に登った所に設置してあるであります』
「しょ、職員用……」
『職員用のエレベーター』がある事に地底図書館の神秘性が薄れたと感じる夕映。
『いくら地下とは言えど、此処は図書館島の一部であります。管理する為の最低限の設備は存在するであります』
「言われてみれば……確かに」
ヴァルゼルドの発言に納得のネギ。そもそも古代遺跡の様な図書館の地下だが、その全容を把握しないまま生徒の入来を許可する訳がない。
全容とまではいかなくても、ある程度の安全が確保できていなければ、そもそも立ち入り禁止になっている筈である。
もっとも本当にヤバい部分は地下図書館よりも更に下に存在するのだが、今のネギは知る由も無い。
『さ、荷物を纏めて帰るであります』
「「はーい」」
ヴァルゼルドの号令に周囲に散らばった荷物を纏め始める一同。
その時だった。
『フォッフォッフォッフォッフォー!』
「さっきのゴーレム!?」
ネギ達を地下へと落とした張本人のゴーレムが先程、ヴァルゼルドが落下した湖から姿を現したのだ。
『ネギ殿達は本機の後ろへ』
ネギ達を庇う様にゴーレムの前に出るヴァルゼルド。
ヴァルゼルドは腰に備え付けられたライフルを引き抜く。
戦闘態勢に移行したヴァルゼルドだが、そこでふとゴーレムの正体を思い出す。
そうこのゴーレムは学園長が操るゴーレムなのだ。
『生徒を落としたり……今もまた脅したりと……何を考えてるでありますか?』
学園長の行動に疑問を覚えつつも、ネギ達を守る為にライフルを構えるヴァルゼルド。因みに装填されている弾は暴徒鎮圧用のゴム弾である
構えたライフルが火を噴き、発射された弾はゴーレムの持っていた巨大なハンマーに命中する。次々に発砲し、ついにハンマーはゴーレムの手を離れた。
『今の内に逃げるであります』
「う、うん!」
ゴーレムがハンマーを落とした事に動転している隙にネギ達は急いで職員用のエレベーターへと走る。
『フォーフォーフォーッ!』
「まだ来るアルか!?」
ゴーレムはハンマーを拾い上げるとズシンズシンと重量のある足音を鳴らしながらネギ達の後を追う。
ネギ達は追い着かれまいと急いでヴァルゼルドが指定した職員用のエレベーターへと走る。
「あ、見えた!」
「本当に『職員用』って書いてあるよ!?」
木乃香がエレベーターを発見して叫ぶ。そしてエレベーターには確かに『職員用』とデカデカと書かれていた。
急いで乗り込むネギ達だが此処である事に気付く。
「ちょ、このエレベーター人数制限あるの!?」
「しかも七人までですか!?」
慌てる明日菜と夕映。
それもその筈、現在此処に居るのはネギ、明日菜、木乃香、夕映、古、楓、まき絵、ヴァルゼルドの計八名。
このままでは誰かが取り残される事になるのだ。
「どど、どうしよう!?」
「どうしようっても定員オーバーじゃエレベーターが動かないアル!」
パニックになる生徒達を後目にネギはエレベーターから出て杖を構える。
「僕が残ります!皆さんは行って下さい!」
「だ、駄目よネギ!」
残ろうとするネギを止めようと自身もエレベーターから飛び出そうとする明日菜。
『いえ、残るのは本機であります』
ヴァルゼルドはネギを抱き上げるとエレベーターから出ようとしていた明日菜に投げ渡す。
「え、うわっ!?」
「ヴァルゼルド!?」
ネギを受け止めた明日菜はそのままエレベーターの中へと押し戻される。そしてヴァルゼルドは上行きのボタンを押して自身はエレベーターの外へと待機していた。
「待って下さいです、ヴァルゼルド!」
「そうだよ、一緒に行こうよ!」
一人で残ろうとするヴァルゼルドに夕映やまき絵も慌て出す。
『フォーフォーフォーッ!』
「また来たでゴザルか!」
そんな中、ゴーレムが追い着いてきてしまいハンマーを振りかぶっていた。
あのハンマーが振り下ろされたらこんなエレベーターはひとたまりも無いだろう。
『させないであります!』
『フォーフォーフォーッ!』
振り下ろされたハンマーにヴァルゼルドは拳を振り上げる。ヴァルゼルドの拳と大きなゴーレムのハンマーがぶつかれば、当然大きく硬いゴーレムのハンマーがヴァルゼルドを破壊してしまう。
「ヴァルゼルド!」
「ヴァルゼルド、ダメェ!」
そんな分かりきった未来に思わず叫ぶネギと明日菜。
『フォーッ!?』
しかし、ネギ達の予想した未来は訪れなかった。
なんとヴァルゼルドの拳は変形しドリルとなってゴーレムのハンマーを打ち砕いたのだった。
「す、凄い……」
そんな光景を見て、ネギが呟く。だがそれと同時にエレベーターの扉は閉まり始めてしまう。
「あ、駄目閉まらないで!」
『明日菜殿、ちゃんとテストを受けるでありますよ?』
扉が閉まることに焦った明日菜。扉が閉まっていく最中、ヴァルゼルドの言葉を聞き、視線はヴァルゼルドに移る。
それと同時に扉は閉まってしまうが、その時のヴァルゼルドは何処か微笑んでいる様に感じた明日菜だった。