ネギ達の図書館島侵入騒ぎから一夜明け、ネギ達へのお説教が終わった。
新田による説教が終わったネギ達だがヘコんでもいられない。
なぜならば試験まで時間が無いからだ。
しかし、件の魔法書も無しで如何すれば良いのかと悩むバカレンジャーだが今回、一番泥を被る形となったヴァルゼルドを思うと、そんな考えは何処かへと吹き飛んだ。
兎に角猛勉強しかないとネギ+バカレンジャーの気合いはMAXとなり、この日よりネギの放課後授業が追加された。主にバカレンジャー補習授業である。
これに賛同したのはネギLOVEのいいんちょ事、雪広あやかだ。
あやかは元々の世話好きも相まって甲斐甲斐しくバカレンジャーに教えた。明日菜との衝突もあったが明日菜はヴァルゼルドへの負い目も有り、素直に喧嘩を引くなど周囲を驚かせる事となる。
そして一方のヴァルゼルドは学園長室に来ていた。
勿論、先日のゴーレムの件である。
『学園長殿、先日のゴーレムなのでありますが……』
「う、うむ……」
今日のヴァルゼルドは少々凄みがあった。何処か怒っている雰囲気なのだ。
『何故にネギ殿達を地下に落とし、剰え襲わせたのでありますか?』
「うむ……当初は不正を叱る為にやった事じゃった。魔法書に頼る事を当然と思わせぬ為にと言うのとネギ君の魔法や先生としての意識を高める為じゃの」
ヴァルゼルドの問いに真面目な顔付きで語る学園長。
「ヴァルゼルド君の報告にあった『学年最下位で小学校からやり直し』は単なる悪ふざけから産まれた噂じゃの。それにネギ君の授業の噂が相まっての事じゃろう」
『………最初の事情に関しては理解できましたが……後のゴーレム襲撃に関しては?』
学園長の説明にヴァルゼルドは大凡を理解した。つまりは出来レース染みた修行に危機感を煽らせようとしたのだ。しかし、ヴァルゼルドはまだ納得していない部分がある。
ゴーレムの襲撃。これは本当に危ないことだったとヴァルゼルドが感じた事だったからだ。
「うむ……そっちの件はじゃな……うう~む」
学園長は言いづらいのか唸るばかりだ。
「実はこの麻帆良には特別な魔法使いが居るのじゃが……其奴にもある仕事を頼んでいるんじゃが時折、あの様なイタズラをしてくるんじゃよ。ワシからゴーレムのコントロールを奪ったのも同様の理由なんじゃ。其奴曰く『ヴァルゼルド君の事を知りたいのですよ。私も麻帆良を預かる身。イレギュラーへの対処は必要でしょう?』との事じゃ。ワシなどの頭では足りぬが代わって頭を下げさせてくれ」
そう言って席から立ち上がると頭を下げる学園長。今回の一件に反省を感じる事も出来るがネギ達を守ってくれた事への感謝がデカかった。
『頭を上げて下さい学園長殿。そして、その魔法使い殿に言伝を頼みたいのであります。「本機はいつでも呼びかけに応じる次第であります。故に周囲への被害は認めない」と』
「うむ。キチンと伝えておくわい。ワシも今回は木乃香が被害に遭ったからヒヤヒヤしとったんじゃ」
ヴァルゼルドの言葉に頷いた学園長。どうやら此方は此方で心配していた様だ。
そして、その日から数日後。試験も終わり、今日は結果発表の日だ。
ヴァルゼルドも学園に足を踏み入れていた。ネギ達の試験結果を知る為でもあるが、なんとこの学園では食券を賭けたトトカルチョが行われているのだ。
学園公認で掛札は食券だけとの決まりは有るが賭け事には違いなくトラブルも多いのだとか。
ヴァルゼルドが学園に到着すると既に賭に負けた者や勝った者の落差が激しく笑顔の者も居れば落胆し、ヘコんでいる者も居る。
極少数だが喧嘩までしている者も居たらしく、ヴァルゼルドや他の指導員が止めに入っていた。
『賭け事を許すのもどうかと思うでありますが?』
「一応は社会勉強の一環らしいのだよ。やり方は違うが株やキャリートレードにも通じる面があるからね」
ヴァルゼルドは新田に思った事を口にするが一応、社会勉強に通じる面があると学園公認になっていると新田が答える。
そんな中、一際大騒ぎしている一団がいた。
ヴァルゼルドはその面子を見て、少し安堵する。騒いでいたのはネギ達、2ーAの面々が笑顔だったから。
少し足を止めて離れてみていると、ネギが胴上げされていた。
バカレンジャーの面々は涙さえ流して喜んでいた。実に嬉しそうだ。
それは努力が報われた故の物だろう。なんせ試験が行われる前までバカレンジャーは締め切り前の漫画家の様な状態で勉強していたのだ。その結果が実ったのだから嬉し涙も流れる筈である。
『良かったであります』
そんな2ーAを見ながら嬉しそうに呟いたヴァルゼルド。
後にヴァルゼルドがもしも涙が流せるのだったら、泣いていただろうと新田は語った。