麻帆良学園の学園長室の扉が乱暴に開かれた。
「おい、ジジイ居るか?」
「入ってくるなり失礼じゃのう」
乱暴によって入ってきたのは長いウェーブの金髪を持つ小柄な少女『エヴァンジェリン・AK・マクダウェル』だった
「もう少し静かに入ってくれんかのぅ」
「なぜ私がジジィを気遣わねばならんのだ」
エヴァと話しているのは、異様に後頭部が長い老人であった。この老人は『近衛近右衛門』麻帆良学園の学園長である。
エヴァはフンと鼻を鳴らすと学園長室に備え付けられているソファーにドカッと座り足を組む。
「どうしたんじゃ、お主から此処に来るとは」
「茶々丸が連絡を寄越してきた。何か厄介な事が起きたのかもな」
エヴァの言葉に老人は眉を顰めた。
「はて、魔法先生からも魔法生徒からも報告は上がってこなんだが……」
「茶々丸が言うには迷子だ、そうだ……」
首を傾げる老人にエヴァは補足説明をするが謎が深まるばかり。
「ふむ、迷子とな……仮に侵入者ならばお主が気付くじゃろう?」
「だからこそ茶々丸は私を呼び、お前に会わせようとしているんじゃないか?茶々丸では判断しきれなかったかもしれん」
茶々丸が連れてくる侵入者(仮)を待っていると学園長室の扉が開く。其処から顔を出したのは眼鏡を掛け、スーツを着た男性だった。
「高畑君、待っていたぞぃ」
「なんだジジイ、タカミチまで呼んだのか?」
ソファーに座るエヴァは老人を睨み、タカミチと呼ばれた男性は苦笑いを浮かべる。
「なんの事かは判らないけど僕は学園長に元々呼ばれてたんだよ。念話で少し早めに来てくれとは言われたけど」
男性は指で頬を掻きながら説明する。
男性の名は『タカミチ・T・高畑』
麻帆良学園の教師で魔法先生でもある。
「話は学園長から聞いたけど茶々丸くんが連れてくる迷子?のお相手だろ?」
「ワシもまだ知らぬが茶々丸くんが連れてくるんじゃ明らかに害を成す存在ではあるまい」
「後は茶々丸待ちか……」
三者三様にこれから来るであろう人物の予想をする。
そして学園長室の扉がノックされた。
「失礼します、絡繰茶々丸です。迷子の方をお連れしました」
「うむ、で……その迷子の方は?」
学園長室に入ってきたのは茶々丸のみ。
扉は開いたままになっており、そこから大柄な人影が見えていた。恐らく、背が高いのだろうと三人は予想する。
「ヴァルゼルドさん、此方へどうぞ」
『ハッ!では失礼するであります!』
そして入ってきた人物に三人はポカンと口を開けて呆然としてしまう。
茶々丸の後に入ってきたのは身長2メートル近くの武骨な機械兵士だったのだから。
『シルターンにサプレスの方でありますか?』
「なんだと?」
ヴァルゼルドは学園長とエヴァを見た後にコメントを零し、エヴァはヴァルゼルドの言葉に眉を顰めた。
『茶々丸殿やはり、此処はロレイラルかシルターンなのでは?先程も学園内にサプレスの方々をセンサーに捕らえたであります』
「いえ、学園長はシルターンの者ではなく人間なのですが」
「何か知らぬが馬鹿にされた気がするのぅ」
ヴァルゼルドと茶々丸の会話から何気に馬鹿にされた気がした学園長。
因みにシルターンは鬼妖界と呼ばれる妖怪の世界でサプレスは悪魔や悪霊が住まう世界。
つまりヴァルゼルドはエヴァが吸血鬼である事に気付き、学園長をぬらりひょんと勘違いしたのだ。