新学期となりネギが正式に麻帆良の教師となる第一日目。
「ヴァルゼルドは僕が声をかけたら教室に入ってきてね」
『了解であります』
新学期の定番である始業式も終わり、ネギとヴァルゼルドは3-Aの教室の前に来ていた。
ネギはヴァルゼルドの紹介の段取りを決め、教室に入っていく。
最初にネギが正式に麻帆良の教師になった事などの説明をした後にヴァルゼルドの紹介となる。
廊下で待つヴァルゼルドは声音センサーで中の様子を聞こうとした瞬間、教室の中から少女達の大きな声が響き渡った。
「「「3年A組、ネギ先生ー!!」」」
『ヌオッ!?』
廊下まで響き渡る声にヴァルゼルドは驚く。更に声音センサーで中の声を聞こうとしたのでダメージもあったりする。
「あ、皆さん実は今日このクラスの副担任代理になる方を紹介したいと思います」
挨拶を済ませた後、ネギはヴァルゼルドを、紹介するために声を出す。ネギの言葉に3-Aに動揺が走る。
「え~副担任代理!?」「副担任は、しずな先生だよね?」
「私の情報網にひっかからないなんて…」「どんな人だろう」「って言うか副担任代理って何?」
3-Aの生徒はそれぞれ驚いている。事情を知っているのはネギと副担任の源しずなのみ。ネギは年相応のイタズラな笑みを浮かべていた。ネギの隣では、しずなもクスクスと笑っていた。
そしてネギが入り口で待機しているヴァルゼルドに声をかけた。
「では、入って来て下さい」
『失礼しますであります』
ネギの言葉の後、教室のドアが開きヴァルゼルドが入ってくる。ヴァルゼルドは既に麻帆良では有名な存在となっている。それ故に3-Aの生徒達は入ってきたヴァルゼルドを見てキョトンと目を丸くした。
『本日よりこのクラスの副担任代理となったヴァルゼルドであります。ネギ殿やしずな殿がHRに来られない際や自習の監督役として来るのでヨロシクであります』
自身の立場を説明するとヴァルゼルドはビシッと敬礼した。
そしてヴァルゼルドの自己紹介の後、一瞬の間が空き……
「「「「「「「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?」」」」」」
3-Aの教室が驚きの声で弾けた。
因みにこの後だがネギとヴァルゼルドの歓迎会が行われた。
何故かウサギのコスプレをした千雨をネギが連れてきたがネギ曰く、クラスにもっと馴染める様に連れてきたとの事だった。
当然、ヴァルゼルドには知らされていない事でなんとかフォローしようとしたヴァルゼルドの努力むなしく3-Aの面々が千雨弄りを開始した。
その際に千雨の髪がネギの鼻先をくすぐった。
「ふぇ……ふぁ……ふぁ……」
『む、これは……』
この光景にヴァルゼルドはネギが麻帆良に来た日を思い出した。未熟なネギはくしゃみという些細な切っ掛けで魔力が溢れ出す。以前、明日菜に浴びせた魔法は『風の武装解除』武器や装備品、衣服を風精の力で無力化する魔法である。そんなものを喰らえば、強制ストリップであり、その効力は間近で見てしまったのでヴァルゼルドは素早く行動を起こした。
『それは駄目であります』
「ふゅぎゅ!?」
ヴァルゼルドはネギの背後に回り、首を九十度右に向ける。その際、ネギの悲鳴とコキッと首の骨が鳴ったが、大事の前の小事である。
ネギの魔法効果の範囲外に出した魔法はポヒュッと小さな音を立てて只のつむじ風となるのだった。
ヴァルゼルドは学園長から頼まれた『ネギのサポート』を副担任代理一日目にして果たしたのであった。