ネギと木乃香がお見合いの話や占いの話に夢中になっている最中、ヴァルゼルドは考え事をしていた。それは学園長が木乃香のお見合いを幾度となく行っている事だ。木乃香はまだ中学生でお見合いの席を設けるにはまだ早い年齢だと言えるだろう。にも関わらず学園長は木乃香のお見合いをする。本人の意思を無視したお見合いなど政略結婚そのものだろうとヴァルゼルドは思い悩むが、答えは出ない。
何かに焦っているのだろうか?と思った、その矢先だった。何をしていたのか木乃香が教室で転んでしまったのだ。
「やーん。ウチ、ネギ君とヴァル君にパンツ見られてもーたな」
「あ、あわわわっ!?」
『ほ、本機は見ていないであります!』
転んだ拍子に木乃香の着ていた着物の裾が乱れて、木乃香の綺麗な足と純白の下着が露になる。子供のネギと妙なところで人間臭いヴァルゼルドは、キャーッと同時に視線を反らすと手で顔を覆った。
その直後だった。3-Aの面々が教室に入ってきたのは。
「「『あ……』」」
「「「キャァァァァァっ!!」」」
ヴァルゼルド、木乃香、ネギの声が重なり、3-A生徒の悲鳴が鳴り響いた。
この後、ネギとヴァルゼルドの懇切丁寧な説明でネギのパートナーの件は『教師として自信が持てなかった為に支えてくれる存在を求めていた』と言う話に落ち着き、木乃香の件は木乃香が転びそうになったのをネギが支えようとしたら一緒に転んで、先ほどの状況になったとされた。
この説明に不満を感じる生徒達だが、ヴァルゼルドとネギの言うことだからと渋々納得してもらっていた。
その後、ヴァルゼルドは木乃香と共に学園長の下へと向かった。
本人の意思を無視したお見合いをするのは良くないという事と、木乃香がお見合いを本気で嫌がっている事の報告を交えての説明だった。
「う~む……孫を思ってのお見合いだったんじゃがのう」
『木乃香殿は本気で嫌がっているでありますよ。学生の内は恋愛は自由にさせるべきだと本にも書かれていたであります』
「お爺ちゃん!」
ヴァルゼルドと木乃香の説明を聞き終えた学園長だが未だに渋っていた。ヴァルゼルドとしては木乃香を思うのであれば自由にさせるべきと思うし、木乃香は望まぬお見合いばかりで、お見合いそのものが嫌いになりつつあった。
「……あい、わかった。ワシも少し強引じゃった。お見合いは当分の間、見送るとしよう」
「やった!」
『よかったであります』
木乃香が本気でお見合いを嫌がっている事は学園長も勘づいてはいたが、孫を思うばかりに強引にさせ過ぎたと思う。それはお見合いをしないと宣言したと同時に、歓喜の声をあげた木乃香を見れば明白である。
「あ、でも……ヴァル君がお見合いの相手やったら喜んで受けたえ」
「こ、木乃香殿!?』
お見合い中止に喜んでいた木乃香は何かを思い付いたかと思えばヴァルゼルドの腕に抱きついた。
抱き付かれたヴァルゼルドは赤らめる頬は無いが、人間だったら間違いなく顔は真っ赤になっていただろう。
「………ロボットを人間にする魔法薬とかないかのう」
そんなヴァルゼルドと木乃香を見ていた学園長は二人に聞こえない程の小さな声でボソリと呟いた。