「逃げるのよ!遠くへ逃げるのよ!!」
デストロイヤー警報なるものが発令された直後、アクアはそう叫び、慌てながら荷造りを始めました。
その慌てようは今までに見た事がない程で、屋敷中を散かしながら、どう考えても人では持てないほどの荷物の山を作っています。
ルリならこれでも持てるのでしょうが……その大きさでは逃げれないと思いますよ。
何処かに逃げるのなら、キャルにいれてもらったお茶を飲んでいる、めぐみんやルリのような小さな鞄がいいと思います。
それにしても、アクアをここまでさせるデストロイヤーとは、一体どんなものなのでしょう。おそらくモンスターの一種だとは思いますが……警報にされるほどのモンスターですか。
あまり戦いたくないですね。
そんな事を考えて居ると、カズマがルリに話し掛けました。
「なあ、そのデストロイヤーってなんなんだ?それと召集されてるのに行かなくて大丈夫なのか?」
「……正式名称……機動要塞デストロイヤー……通った場所には草一つ残らないと言われているモンスター……これに襲われて首都を放棄した国もある……」
「そんな相手なので、挑むには命が幾つ有っても足りませんよ。私の爆裂魔法も常時張られている結界で防がれてしまいますし……逃げるのが正しい判断です」
めぐみんの爆裂魔法すら効かないとは……もうこれは逃げ出すしかありませんよね。
機動要塞って名前からも、かなり巨大な相手みたいですし、おそらく挑んでもペシャンコにされるか、恐れを抱いて逃げ出すかがオチでしょう。
そもそも、そんな相手なら私達のパーティだけでは手に負えませんし、この駆け出し冒険者の街に国家を壊滅させるような相手に戦いを挑む者いないでしょうしね。
別の街でも冒険者を続けられるといいなと思いながら、私も荷造りを始めようとした時でした。
「……遅くなった!……って、どうしたんだ皆?荷造りを始めて……冒険者ギルドに行かないのか?」
声がした方向を振り向けば、普段の鎧の上に鎖を編みこんだマントを羽織り、左手には大きな盾までつけた、まるで戦争に行くかのような装備をしたダクネスの姿が……まさかデストロイヤーに挑む気じゃありませんよね?
ちょっとした冗談ですよね?そうなんですよね!?
そんな私の思いは数秒後に打ち砕かれる事になりました。
冒険者ギルドの前、装備を整えた私達はそこまで来ていました。
あの後、デストロイヤーから街を守る為に、冒険者ギルドに行くと言い出したダクネスを押し止めるために皆で説得したのですが、ダクネスは聞く耳すら持ってくれませんでした。
変態のため頭がプリンのように柔らかいと思っていたのですが……これは考えを改めざるを得ません。どうやら彼女は体と同じくらいに頭が固かったみたいです。
ともかく、ダクネスは私達が来ないなら一人で冒険者ギルドに行くと言い出し、それで死なれでもしたら後味が悪いので全員で冒険者ギルドに行く事にしました。
まあ、あまり来ては居ないでしょうし、それを見たら流石のダクネスも諦めるでしょう。
私がこんな事を考えたているうちにも、カズマが冒険者ギルドの扉を開けて……
「おっ!やっぱり来たのか!お前なら来ると信じてたぜ!!」
扉の近くに居たダストがカズマの姿を見て話しかけていましたが、私はそんな事に気を回す余裕がありませんでした。
なぜかと言えば、私の予想に反して相当な数の冒険者達が重武装でギルド内に待機していたからです。なぜか男性冒険者の比率が何時にも増して多い気もしますが……きっとこの街の事が好きな冒険者が男性に多かったのでしょう。
でも、なんで男性だけに……あっ!!そういえばこの街にはサキュバスのお店が……
カズマとルリを見ると、二人ともなんとも言えない表情になっていました。どうやら私の考えた通りみたいですね。
なんと言うか……ほんの、ほんの少しだけそのサービスに興味が出てきました。今度、カズマに教えて貰ってお店に行ってみますかね。
ともかく、これでダクネスの説得は不可能、デストロイヤーとの戦いは避けられないでしょう。どんな相手かは分かりませんが、気を引き締めなければなりませんね。
私が覚悟をしていると、十分な数の冒険者が集まったと判断したのか、ギルドの職員の掛け声が聞こえてきました。
「お集まりの皆さん!只今より、対機動要塞デストロイヤー討伐の作戦会議を始めたいと思います。もし討伐が無理と判断された場合は、街を捨てて全員で逃げる事になります。皆さんが最後の砦となっています。どうか、よろしくお願いします!」
そんな掛け声と共に、ギルドの職員達が、酒場の席に使っているテーブルを中央に集め、即席の会議場みたいなものを作りだしました。
そして、職員の指示に従って続々と冒険者達は席に着きます。私はカズマの隣に座ったのですが……こういった雰囲気は始めてなので緊張しますね。
ともかく、席に座った後にギルドの職員から機動要塞デストロイヤーについての説明がありました。
なんでも、デストロイヤーは昔あった魔道技術大国ノイズで作られた、対魔王軍用の巨大ゴーレムの事らしく、それを研究開発責任者に乗っ取られて今に至っているそうです。外見は蜘蛛のような形をしていて小さな城ぐらいの大きさがあるみたいです。
また、特筆する面として、相当な速さで移動するのと、めぐみんが言っていた魔法攻撃を無力化する結界が張られている事、そして、機動要塞の内部には大量のゴーレムが配備されていて、さらには対空用のバリスタまで備え付けてあるみたいです。
最後に、このモンスターが北西から迫ってきていて、このままの速度だと明日の早朝にこの街にたどり着くみたいなのですが……どう考えて無理ゲーですよね、これ。
そう思ったのは私だけではないようで、ギルドにはどんよりとした空気が漂い始めていますし……やっぱり無理じゃないんですかね。
私がそんな事を思っていると、冒険者の一人が手を上げました。
「その、魔道技術大国ノイズって国はどうなったんですか?それを作り出した国なら対抗策ぐらい……」
「デストロイヤーの暴走で真っ先に滅びました。今では跡形も残っていません」
……自分の作り出した物に滅ぼされるって、どれだけアホな国なんですか。
しかも、滅ぶだけではなく、デストロイヤーと言う天災を置き土産として残していますし……正直、デストロイヤーと共倒れして欲しかったです。
ともかく、これで案の一つが消えたのですが……今度は別の冒険者が手を上げました。
「街の周りに大きな落とし穴を掘るとか」
「それは、すでにやられています。デストロイヤーを穴に落とすのまでは成功したのですが……八本の足を使って、直にジャンプして逃げ出されてしまったそうです」
職員の説明を聞いて場が凍りつきました。
まさか落とし穴まで無理とは……倒せるように出来てるのですか?ゲームとかの強制敗北の敵なのではないですか?このままでは一方的に蹂躙される未来しか見えませんよ。
「他に案のある方はいますか?」
静まり返った冒険者ギルドの中を、職員の静かな声が響きました。
その後も、幾つかの案は挙がったのですが……その全てが反論され、デストロイヤーに効果のありそうな案は未だに挙げられていません。
今になって思った事があるのですが……ノイズが滅んだのは相当昔の話らしく、それまでの間、どこも手出しが出来なかった物をどうにか出来る訳がないんですよね。ましてや此処は駆け出し冒険者の街、無理に決まっています。
私達のような弱者が圧倒的な強者に勝つためには策を練るしかないのですが…………今此処で、ぱっと出るような策でどうにかなるのなら、すでの何処かの冒険者が倒しているでしょう。
これを倒したかったら、常識に囚われない型破りな作戦でも……常識に囚われない?……あ!?
そういえば、そんな人が近くに居たじゃありませんか!!一応、彼にも意見を求めてみましょう。
「カズマ、貴方はこういった常識では無理なような事を機転を利かせて、どうにかするのが得意じゃないですか。なにか良い案はありまえんか?」
「お前は俺の何だと思ってるんだよ。たっく、そうだな…………結界さえなければ、めぐみんの爆裂魔法で……結界?…………アクア、お前、ウィズの店に行った時に魔王城の結界を破れるとか言われてなかったか?だったら、デストロイヤーの結界も解けるんじゃないのか?」
「え!?たしかに、そんな事を言われてたと思うけど……正直、やってみないと分からないわよ。魔王城の結界とデストロイヤーの結界が同じだって保障はないし……」
いきなりカズマに話しかけられたアクアは戸惑いながらも返事を返しました。
確かにウィズはアクアなら魔王城の結界を破れるとか言っていましたが……絶対破れるとは言い切れないみたいですね。
まあ、アクアの言う通り、魔王城の結界に通じるからと言って、デストロイヤーの結界に通じると言う話にはなりません。似ているだけで、全くの別物の可能性もありますからね。
でもそれは、デストロイヤーに対抗するための策を何一つ考え付く事が出来なかったこの場では、光明となりました。
「今、結界が破れると言いましたよね!?それって本当ですか?」
「いや、破れるかもしれないって事で、絶対とは言い切れないそうです」
カズマ達の話し声を聞き逃さなかった職員が声を上げて、カズマを問い詰めます。
その答えを聞いた職員は、これで魔法が通るかもしれないと一瞬喜んだ後で、でもこの街にいる魔法使いでは火力が足りないと悩み出しました。
でも、その悩みは無駄な悩みと言えるかもしれません。それはこのギルドにいる冒険者全員が思っている事でしょう。なざなら、この場には……
「火力ならあるじゃないか……頭のおかしいのが」
一人の冒険者が声に出しましたがその通りです。このギルド、正確には私達のパーティには頭のおかしい……ってそれは言いすぎですよ。爆裂魔法関連では確かに少し頭がおかしいと言わざるを得ませんが、それ以外ではめぐみんは常識人に近いのですよ。
しかし、私のこんな思いとは裏腹に、冒険者達は次々と口を開きました。
「そうか、この街には頭のおかしいのが居たじゃねぇか!」
「これで、なんの心配もいらねぇね。後は頭のおかしいのが……」
「そうだ、頭のおかしいのが居れば、火力には……」
「マナ、今私を頭のおかしいのと言った奴の顔を覚えていてください。一人につき、五千エリスを払います。後で、その人たちには私がどれだけ頭がおかしいか、体感させてやります」
本当ですか!?
これは思わぬ臨時報酬です。大きな声で言った人は四人、あと聞こえないほどの小声で言った人が六人いました。つまり最低でも二万エリス、最大なら五万エリスも貰えると言うことですね。これは覚えない訳には行きませんね。
私は顔を覚えようと、その人達の顔を見ていると、彼らは立ち上がって逃げ出してしまいました。めぐみんに復讐されるのが怖かったんでしょうか?
でも、すでに顔を全員覚えたので意味はないんですけどね。
ともかく、この件は一旦置いておく事にして、問題はめぐみんの爆裂魔法でデストロイヤーを倒しきれるかです。
デストロイヤーは相当な大きさがあるみたいですし、もしかしたらめぐみんの爆裂魔法を以ってしても一撃では厳しいかもしれません。
めぐみん、本人に聞いてみる事にしましょう。
「めぐみん、それでデストロイヤーを倒す事は出来ますか?」
「うう……それは、我が爆裂魔法を以ってしても……一撃では……厳しいと思われ……」
流石に無理でしたか……でも私を含めめぐみんに失望の目を向ける者は誰一人としていません。
この場所に居るほとんど者はディラハンの時にめぐみんの爆裂魔法の威力を見ていますからね。あれで倒せないデストロイヤーの方が異常だと皆分かっているのでしょう。
それにしても、どうすればいいでしょう……せめてあともう一人居ればどうにかなるのかもしれませんが、めぐみんと同じ火力をすぐさまに用意できるわけがありませんし……駄目もとでやってみますかね。
私がそんな事を考えていた時でした、突然ギルドの扉が開く音が聞こえてきました。
「すいません、遅くなりました……ウィズ魔法具店の店主です。一応冒険者の資格を持っているので、私もお手だいに……」
私が扉の方に振り返ると、そこにはウィズの姿が…………そういえば、彼女って魔王軍の幹部でしたよね。だったら爆裂魔法程とはいわなくても、凄い魔法を覚えていてもおかしくはありませんよね。
もしかしたら、これはいけるんじゃないですか?
ギルドでの対策会議から夜が明けて、日射しが刺し始めた早朝。私とめぐみんは、デストロイヤー迎撃地点で待機をしていました。
あの後の話し合いで、ウィズも爆裂魔法を使えることが分かり、二つの爆裂魔法をデストロイヤーの左右に打ち込んで、両足を破壊して動きを止めるといった作戦が立てれました。
そのため、ウィズとアクアは迎撃地点を挟んだ向かい側で待機しています。ちなみに、他の仲間は、ルリが何やらカズマに別な作戦を指示されたみたいで、それを実行するために私達とは別行動、ダクネスは何を考えているのか正門の前に立ち塞がっていて、カズマはダクネスを説得するために正門の前にまでいっています。
まあ、たぶんですが説得は無理でしょう。
私がそう思った矢先に、カズマが帰ってきました。
「悪い、あの変態の説得は失敗した。あの頑固な変態を守る為にも、この作戦は成功させるぞ」
「そうですか。ではめぐみんの責任重大ですね。もし失敗した場合は、変態が己の性癖によって散る事になりますよ。頑張ってくださいね。」
「そ、そそそ、そうですか……ま、まかせてください。わ、わたしが絶対に……絶対にせ、せ成功させてみせます……」
私の言葉にめぐみんは物凄く緊張した様子でそう返してきました。
もしかして、私はめぐみんに余計なプレッシャーを与えてしまいましたか?そんなつもりは無かったのですが……
でもこれでは、成功するものも成功しなくなってしまいます。これは早急に緊張を解きほぐさなければなりません。
「めぐみん、落ち着いてください。今までに誰も手が付けられなかったモンスターなんですよ。失敗したところで責める人などいませんよ。ダクネスはいざとなったら、ルリにでも引きずってもらいましょう」
私はそう言いますが、緊張しているめぐみんの耳には届かなかったみたいで、彼女は私に返事すら返そうとしません。
このまま、緊張して失敗でもされたら大変ですし……
私はカズマと顔を見合わせ、なんとかしてくださいと視線と顔で伝えます。すると、カズマはめぐみんに聞こえるような大声で……
「はぁ…………紅魔族随一の魔法使いとかほざいていたのは、何処のどいつだったけなぁ~~~~」
その言葉にめぐみんがピクリと肩を揺らしました。
「まさか口だけ奴だったとかそんな事じゃないよな~~~。まぁ、あのデストロイヤー相手ならしょうがないか。でも、そいつが言っていた爆裂魔法は最強の攻撃魔法ってのもこれで信用できなくなったよな。だって、そんな魔法を持ってるなら緊張する必要なんかないだろ。やっぱり、爆裂魔法ってのは見た目だけの……」
「おい!私を馬鹿にするのは良い!だが、爆裂魔法を馬鹿にするのは止めて貰おうか!!爆裂魔法が見た目だけ魔法ですと……いいでしょう!そこまでに言うならば、爆裂魔法の真の威力、私がその目に焼き付けてみせましょう!!」
おおっ!!
流石カズマです。一瞬でめぐみんの緊張を解きほぐすどころか、やる気に満ち溢れた状態にさせましたよ。これなら、めぐみんに何も心配する事はないでしょう。
私は、今にも爆裂魔法を放ちそうなめぐみんから視線を外し、デストロイヤーがやってくるであろう、正面の平原を眺めます。
そこには、デストロイヤーの両足を無事に破壊できた際に、乗り込むためのロープをつけた矢を持った者や、要塞内部あるゴーレムと戦うための打撃武器を持った者など様々な冒険者達が待機しています。
その誰もが、めぐみんほどではありませんが緊張していました。
まあ、こういう私も緊張で心臓がバクバクと音を鳴らしているんですけどね…………
『冒険者の皆さん!そろそろ機動要塞デストロイヤーが見えてきます!!それぞれの戦闘準備をお願いします!!』
魔法で拡音されたギルドの職員の声が聞こえた、数十秒くらいでしょうか。
かすかにですが大地の震えを感じ取ることが出来ました。おそらくデストロイヤーの移動によって発生したものなのでしょうが……まだ見えないの大地を揺るがすとはどれほど巨大なモンスターなのですか。
私が逃げ出したい気持ちを抑えながらも待っていると、地平線から私の予想より二回りも大きな要塞が……
もう、帰っていいですかね。死にたくはありません。
私が忍び足でこの場から逃げ去ろうと…………
「おい!一人で何処に行く気だ!!」
「か、カズマ!!離してください!私はまだ死にたくはありせん!そもそも、今回の作戦には私は必要ないじゃないですか!!」
「だからって、お前一人を逃がす理由にはならねぇんだろ!!此処に残らねぇのなら、成功した時の討伐報酬も……」
「すいません。仲間を見捨てるなんて出来ないですよね。さっさと討伐してしまいましょう」
「お前……」
?
なんでカズマもめぐみんの私に呆れたような視線を向けているのでしょう?カズマにいたっては頭が痛そうにもしてますし……私は残るって言ったじゃないですか。理由が検討もつきません。
まあ、考えてもしかたがないので、無視する事にしましょう。
それよりも、今は目の前のデストロイヤーのことです。この機動要塞、ギルドで早いと説明は受けていたのですが、正直な話、人が走るのと同じくらいの速さだと思っていました。
ですが目の前にあるのは馬が走るのと同じくらいの速度で、こちらに迫ってくる八本足の要塞……もの凄く恐ろしいですよ。実際に何人かの冒険者はパニックを起こしていますからね。
アクアの結界破壊やめぐみんとウィズの爆裂魔法の発動の指示は、カズマがやることになっているのですが……まだ彼は指示をする気はないみたいです。まあ、迎撃地点には入っていないので当たり前と言えば当たり前なのですが……正直、今すぐにでも爆裂魔法を放って欲しいです。
「めぐみん、いいか?アクアが結界を破った後に、デストロイヤーの動きを止めてから指示をする。それまで焦って打っ放したりするなよ」
「任せてください、カズマ。貴方が馬鹿にした爆裂魔法の真髄、その目に見せつけてやりますよ」
カズマがめぐみんに最終確認をしている間にもデストロイヤーは物凄い速さで、こちらに迫ってきます。そして、デストロイヤーが迎撃地点の入る直前で……
『アクア!結界の破壊を頼む!!ルリは結界が破壊されたら予定通りにやってくれ!!』
「『セイクリッド・スペルブレイク』ッ!」
カズマの指示を受けたアクアが魔法を発動……彼女の打ち出した光の玉は、デストロイヤーに向かっていき、それと衝突する前に薄い透明な膜とようなものと衝突、その膜はすぐさま粉々に砕かれました。
どうやら、結界を破壊するまでは成功したみたいですね……後はルリが何かをやるみたいなのですが、一体なにをする気なのでしょう?
私が疑問を感じていると、突如デストロイヤーの後方から伸びた何本ものロープが機動要塞の八本の足に絡みつきました。そしてギリギリとロープの軋む音と共にデストロイヤーの動きが徐々に遅くなっていき……そして動きを止めてしまいました。
何が起こったわよくわかりませんが、これはチャンスです。カズマはめぐみんとウィズに指示を出します。
『ウィズ、めぐみん!今だ!!デストロイヤーの足を吹き飛ばせ!!』
「「『エクスプロージョン』ッッ!!」」
ほぼ同じタイミングで放たれた爆裂魔法はデストロイヤーの足を木っ端微塵に吹き飛ばしました。
めぐみんとウィズの手によって全ての足を破壊されたデストロイヤーは、重力に逆らう事が出来ず凄まじい地響きと轟音と共に、地面と激突しました。
これで……痛い!!な、なんですか!?頭の上に何がぶつかりましたよ!!
私が慌て上を見ると、そこにはめぐみんの魔法で粉砕されて足の破片が雨のように降っていました。どうやら、爆裂魔法でも完全に足を消し去ることは出来なかったみたいですね。
でも、ウィズ達の方には破片は降っていませんし……まあ、あちらは魔王軍の幹部、レベルの差を考えると当然の結果なのかもしれません。
しかし、それに納得しきれない者もいます。例えば……
「カズマ……もう一度、もう一度チャンスが欲しいです!!次こそは私の爆裂魔法が一番だと証明……」
そこで、カズマにしがみついて、懇願している。爆裂魔法愛好家の人など……と言うかそんな事を気にするの人など、彼女一人しかいませんね。
爆裂魔法に持てる全てを掛けてきた身としては、相手がどれだけレベルの差があろうと、簡単に引き下がるわけにはいかないのでしょう。ですが爆裂魔法を打てるのは一日一回だけ……そんなにカズマに懇願してもチャンスは来ないと思いますよ。
そんな事よりも、私はカズマに一つだけ聞きたい事があります。
「カズマ。デストロイヤーの動きが止まったのですが、何をしたのですか?直後にいった事を考えるとルリが関与したのは間違えなさそうですが……」
「それは、私も気になっていました。説明してくれませんか?」
「あれか?あれは、事前に待機して貰っていたルリに『バインド』を使ってもらっただけだ。ウィズの店に超希少金属で作ったロープがあってな……それ値段がアホみたい高いから全く売れなかったみたいで、物置にしまっていたのを使わせてもらったんだ」
そんなロープがあったのですか……でも、あの巨大要塞に引っ張られても千切れなかったのは凄いとは思うのですが、この辺の冒険者には宝の持ち腐れですよね。もの凄く高いと言っていましたが、値段によっては高レベルの冒険者すらも使わないかも知れません。
そんなものを店に並べようとするとは……そういえば、ウィズはこの付近では必要性ない高価なマジックアイテムを並べているとか冒険者の誰かが言っていましたね。もしかして彼女、商才はないのではないでしょうか。
まあ、ウィズの件は一旦置いておくことにしても、ロープをデストロイヤーに巻きつけたまではいいのでしょうが、そのロープを何処に固定してのでしょう?
あれだけの要塞を止めようとすれば、かなりの大きさの杭を地面に打ち込まないといけないと思うのですが……そんなのは何処にも見当たりませんね。
カズマに聞いてみましょう。
「カズマ?ロープを何処に固定したのですか?私の目には映りませんが……」
「何処にも固定してないぞ。ルリがロープを持って引っ張ったんだよ」
そうでしたか、ルリがデストロイヤーと綱引きをして…………って、えええええっ!?いや、流石にそれは無理でしょう!
たしかに彼女は、大男数人でも持ち上げる事すら敵わなかった荷物を簡単に持ち上げた事はあります。でも、あの要塞相手に綱引きをして互角だなんて、生き物であるかを疑わざるを得ません。
私とめぐみんがカズマの答えを聞いて驚愕していると、カズマが補足してくれました。
「流石に、素の状態でって訳じゃないぞ。アクアに支援魔法を掛けてもらった上で、一時的に腕力を数十倍に上げるポーションを飲んでもらっている」
なんだ、そんな事実があったのですか。それなら幾分か納得出来ます。
それにしても、数十倍の腕力を得たとしても、デストロイヤーと綱引きを出来るのはルリが凄まじい腕力を持っていたからこそですよね。私じゃ同じ状態になってもそんなことは出来ないと思いますよ。
でも、数十倍の腕力を手に入れられるのは魅力的ですよね。今度ウィズの店に行って……
「ちなみに、そのポーションなんだが、効果はたったの三十秒足らずで、効果が切れた後は一週間ほど身体にうまく力が入らないようになるそうだ。今頃ルリは待機してもらっていた盗賊職の人達に回収されているはずだ」
つまり、それを飲むと、目の前でカズマにおんぶして貰っている、めぐみんのような状態になると……
「なんですか、その欠陥商品は……人の動きを爆裂魔法のようなネタ的存在に変えて、一体なにをしたいのですか?」
「おい、爆裂魔法がネタとはどういうことだ。今まさに爆裂魔法の活躍を見たではありませんか。その発言の撤回を要求します」
撤回って、爆裂魔法がネタ魔法なのは事実だと思いますよ。
一発で魔力は使い果たすし、爆音でモンスターを呼び寄せかねませんし……肝心の威力だって上級魔法を何回も当てて方が効率が良いのではありませんか?
事実このパーティで役に立っているのは、どんあ相手でも時間稼ぎが可能なダクネスや、打ちやすい状況を整えてくれるカズマの存在が大きいと思いますよ。他のパーティには捨てられてみたいですし……
まあ、別にそれを直せと言うつもりはないのですがね。
ともかく、これでデストロイヤーの討伐は終わりですね。
「カズマ、やったわよ!デストロイヤーなんて大層な名前の割には呆気なかったわね!でも、一国を滅ぼした相手よ!これでカズマの借金を返せるだけの賞金が……」
そんな事を叫びながら、アクアが笑顔を浮かべてこちらに走ってきました。
たしかに、作戦ではこれで終わりなのですが……なんか今フラグ立ちませんでしたか?第二形態とかに移るフラグをアクアが立てましたよね。
まあ、でもフラグなんて所詮はゲームや漫画などの産物、実際に起こるわけ……
『この機体は、機動を停止しました、この機体は、機動を停止しました。廃熱、及び機体エネルギーの消費が出来なくなっています。このままでは爆発する可能性があります。搭乗員は速やかに……』
起こりましたね。
これ…………どうしましょう?誰か良い手はありませんかね?
その後の冒険者達が集まった緊急の会合で、この要塞に乗り込んで動力源を絶つと言う事になりました。このままだと爆発するのはアナウンスからでも間違えないのですが、それがどれだけの規模かはわかりません。もしかすると、街を吹き飛ばす程の大爆発をするかもしれません。
そのため、乗り込んで確実に街の安全を確保する事になったのですが……男性冒険者の気合の入れようが尋常じゃなかったですね……そのまでして、サキュバスのお店を守りたいのですか?
まあ、気合を入れてくれるのは良い事なのでよしとしましょう。
それで、私とアクアは、アーチャーがロープの付いた矢を打って要塞に張ったロープを使って要塞の上に上っていました。他の仲間達は、めぐみんとルリは使い物にならないので論外、カズマは昨日死んだばかりなので、めぐみんとルリと一緒に地上で待機。ダクネスは普段よりも重武装したのが災いしてロープを登れずにいました。
たった二人だけと言う寂しさはありますが、男性冒険者の気合の入れようを考えると、私達が手を出さずとも終わるでしょう。
私がそう思いながら甲板の上に上がるとそこいは、大量のゴーレムの残骸がありました……私の予想どうりですね。
「マナ、そんなところで突っ立ってないで、早く避けなさい!私が上にあがらないでしょ!」
「す、すいません。今すぐ退けます」
私が慌ててその場から飛びのくと、ロープを伝ってアクア……とその後ろに居たウィズが甲板に上がってきました。
さて、全員が上がったところでどうしましょうか?さっき見た通り、男性冒険者の奮闘で私達は特にやる事がありませんし……そういえばゴーレムとかに使われている金属って価値が高そうですよね。
「アクア?ゴーレムに使われている部品とかで高い物ってありますか?」
「金属自体の価値はあまりない物が多いわね。それでも使われている、そのままの形の部品を取り出せれば価値はあるかも知れないけど……大概は機密保持のために行動不能になるのと同時に壊れるように出来てるわ。あまり稼ぎにはならないわよ」
そうですか……少し残念です。
まあ、そんあ旨い話が転がっている訳がありませんか。
私は深く息を吐くともに、このまま何もしないのもサボっているみたいで気分が悪いので、アクアは負傷者の治療を、私は剣を片手にゴーレムを壊しまくりました。ちょっとだけですが、ゴーレムを破壊するのに爽快感を覚えたのは秘密の事です。
ゴーレムを破壊しつくした私達は、扉を打ち破り要塞内部に突入、デストロイヤーの暴走の原因となった責任者の死体を見つけたのですが……思い出すだけ頭が痛くなってきます。
その責任者の近くに置いてあった、日記の内容を要約すると、こんな事が書いてありました。
やべ、どうしよう。まだ頼まれてた要塞の設計終わってねぇや。こうなったら、蜘蛛を紙の上で叩き潰してしまったために出来た、蜘蛛が張り付いた紙を提出すればいいか。
え!?なに、それでいいの!?好評なの!?高価な材料までそろえちゃったの!?やべよ……俺はただ蜘蛛を叩き潰しただけのに、引き返しのつかねぇ所まで来ちゃったよ……本当にどうしようか、これ?
やばい……このプロジェクトが始まってからヤバイ事の連続だったが、これは度を越してヤバイ……まさか酒に酔って要塞を暴走させちまうとは……作ってた国がそれで滅んじゃったし……まぁ、そんな事はどうでもいいか。食料とかは有り余るほどあるし、俺はもう余生をここで過ごそう。たぶん凄い迷惑かけてると思うが俺には関係ないしな。
これを聞いた冒険者達と思わず「ふざけるな」ってハモってしまいましたよ。
まさか、後に天災の一つとして数えられる物が、こんなしょうもない理由で作られ、暴走しているとは……とりあえず、この責任者とやらに会ったら顔面を数十発殴ってやりたい気分になりましたよ。
ともかく、責任者が居た部屋のさらに奥の部屋に入り込んだ私とアクア、そしてウィズは、この要塞の動力源を見つけることができました。
動力源はコロナタイトと言われる赤く輝く石なのですが……鉄格子に阻まれて取り出すことができません。一応、剣で壊せないか何度か振ってみたのですが、檻の方にも希少鉱石が使われてるようで、傷一つ付きません。
ウィズの魔法なら壊すの事態は出来るのでしょうが、そんな火力をこの場で使ったら、コロナタイトに刺激しかねないので使うことは出来ません。そもそも、取り出したところでこれを、どのように処理をすればいいか……問題が沢山ありすぎます。
「アクア、女神らしく、封印とか出来ないのですか?もしくは、水の女神なんですから、水を使ってこの石を冷やしてくださいよ」
「無茶言わないでよ!天界に居た私ならいざ知らず、地上に落とされて、弱体化した私はそんな便利な力は持ってないわよ!水だって、こんなに熱を持ったのが相手じゃ、焼け石に水よ!!」
やっぱりそうですか……、って言うかアクアって地上に来て弱体化していたのですか?アンデットなら魔王軍の幹部クラスを一方的に浄化したり、首を飛ばされたカズマを蘇生させたりしていたので、そんな考えは思いつかなかったですよ。
でも、弱体化をしていなくても、役に立たない駄女神になっていたのは間違えないと思います。
アクアの件は置いておくとして、コロナタイトをどうしますかね……なんか徐々に白く輝いてきたので時間はあまりなさそうなんですが、全く思いつきません。
もう諦めて、皆で逃げ出す……なんでしょう?ウィズが何か言いたげにしていますね。
「あの……ひとつだけ手段があるのですが……その、爆裂魔法を放ったせいで……」
「要するに、魔力が足りないから、『ドレイン・タッチ』で私から魔力を吸い取りたいのですね……いいですよ。緊急事態ですし、別に減るものもありませんし」
「あ、ありがとうございます!」
ウィズは私に一礼すると、私の肩に手を乗せて、魔力を吸い取り始めました。
相変わらず、不快感があるのですが……事情が事情のため我慢することにしましょう。別に病気になるわけでもないですし、吸い取られた魔力も一日たてば元に戻ります。
お金を取られるわけではないので我慢できますよ……取られるのがお金だった場合は必死に抵抗すると思いますが……
「もう、大丈夫です!これで『テレポート』……物や人を一瞬で移動させる魔法を使うことが出来ます!!あっ!?でも……」
確かに、コロナタイトを一瞬で人の居ない場所に移動できれば、爆発しても問題ないでしょうし、鉄格子もそれごと転移させればいいだけですよね。でも、ウィズが何かに気づいたような声を上げた後に、顔に陰りを見せましたね……一見、完璧なように見えるこの作戦に何か問題点でもあるのでしょうか?
そもそも私は『テレポート』と言う魔法を詳しくは知りませんし……私が首を傾げると、ウィズが答えてくれました。
「『テレポート』は基本的に事前に登録した場所でないと移動できないのですが……私はアクセルの街と王都とあるダンジョンの入り口にしか登録していないんです!最初の二つは勿論出来ないのですが、ダンジョンの近くにも都市があって……」
「つまり、どの場所にも人が住んでいるので、『テレポート』を使う事が出来ないって事ですか!?なにか他に手は無いんですか!?」
「一応、手はあります!ランダムテレポートと呼ばれるもので、転移先を指定しないで飛ばす事もできます。でもこれは何処に飛ぶのか分からないので、もしかしたら人の密集地帯に飛ばされるかも知れませんし、最悪の場合はほんの数メートルしか飛ばせない場合も……」
こんな時に運任せですか!?ああっ!!
なんで運の異常に良いカズマが居ない時に……しかも目の前にには運が異常に悪いアクアが居ますし……ウィズの言う最悪の結果が出る未来しか見えません。
もうこうなったら、一旦下に下りてカズマを連れてきて……
「マナ、ウィズ!!なんでもいいから早くやって頂戴!!なんかコロナタイトの輝き増し始めてるんですけど!今すぐ爆発しそうなんですけど!このままだと爆発に巻き込まれちゃう!!」
アクアの声に反応した私がコロナタイトの方を向くと、そこには目を向けるのも眩い、太陽のような光を出し始めたコロナタイトの姿が……
カズマを連れてくる時間もありませんか……って言うか、逃げるのすら間に合いそうにありませんね。早く『テレポート』で飛ばさないと皆仲良く吹き飛ばされます。
でもウィズは未だに迷っているみたいですし……もうこうなったら仕方がありません!
「ウィズ!人が住んでいる場所に飛ばしても、誰がやったかなんてバレやしません!魔王軍の所為だって事になりますよ!!もし、バレた際には私がその罪を全て被ります!だいたい、世界なんて広いんですから、そうそう人の住んでいる場所に飛ばされたりしませんよ。なにより、私はこんな場所で死にたくありません!!私はお金持ちになるまで死ねないんです!!」」
「マナが最後の最後で本音を言ったわ!!」
五月蝿いです!!
どうせ誰だって、こんな状況に陥れば身の安全を第一にするはずです。言わない奴は口に出していないだけで、心の奥底で同じ事を思っています。アクアだって私と同じ気持ちなんでしょう?
所詮、人間なんて自分の命を何よりも大切にする生き物ですからね。むしろ変な正義感に燃えて、自分の命よりも他人が大事とか簡単に言える奴の方が、何を考えているのか分からなくて怖いですよ。
ともかく、私の言葉を聞いたウィズは若干悩みながらも頷き、魔法の詠唱を始めました。
「『テレポート』ッッ!!」
ウィズの『テレポート』は、コロナタイトを此処からでは爆発音が聞こえないくらいの遠くの場所に転移することに成功したみたいで、その事実に私達は安堵の息を吐きました。
その後は、甲板に残っていた冒険者達に動力源の排除に成功した事を伝え、これ以上の危険が無い事を知った冒険者達は次々と甲板から降りていきました。
私達もそれに続いて地面に降りて、カズマ達が待機している場所に向かいました。
「カズマ、動力源ですが何とかなりましたよ。もう疲れたので屋敷に早く帰りましょう」
「屋敷に早く帰りたいのは俺も同意見なんだが……ダクネスがな……」
そう言いながら、カズマが見つめる先には、未だに仁王立ちをして険しい表情でデストロイヤーの残骸を睨みつけてダクネスと、それを説得しようと木の枝を杖代わりにして隣に立っているルリの姿が見えました。
一体、あの変態は何を考えているのでしょう?まさか、まだデストロイヤーから攻撃を受けていないから、満足出来ないなどの理由ではないでしょうね……あのドMクルセイダーの性癖を考えると十分にありえます。
なにを話しているのか、聞き耳を立ててみましょう。
「……ダクネス……もう終わった、帰ろう……それに足を壊した……そこに立っても意味はない……」
「まだ、終わってはいない。きっと予備の足が出てきて、この街を蹂躙するはずだ。私の予感がそう告げている」
なんで、ダクネスは当たって欲しくない予想を言っているのでしょう。
まあ、その予想は当たらないと思いますよ。だって、動力源を抜いたんですよ。いくら巨大要塞とは言え動力源なしに動くなんて不可能だと思います。
ですがダクネスは一歩も引く様子はありませんし、仕方がありません……カズマの『バインド』で縛った後に…………何でしょう?何かが揺れる音が聞こえませんか?
私がデストロイヤーの方を向くと、轟音と共に震えているデストロイヤーの姿が……
「どうしましょう!?たぶん、これまでにデストロイヤーに溜まっていたエネルギーが逃げ場を失っているんです!見てください、あの大きな亀裂からエネルギーが漏れて出ています!このままだと、亀裂から出たエネルギーが街を……」
ウィズの言葉を聞いた、私は亀裂の方を見ると、ウィズの言う通り、赤い光のような物が漏れ出ていました。
一難さってまた一難って奴ですか!?そんな言葉、体感なんてしたくありませんでしたよ!!
なんでこの世界に来てからは、こうも運が無いんですか!?アクアの運のなさが私達にまで影響してるんじゃありませんか!?
もう、あの厄病神を川にでも捨ててきたほうが良いのではありませんか!?トラブルは起こすは、借金を作るは、良い所なんてカズマを蘇生させた……それなりには役に立っていますね。前言は撤回しましょう。
ともかく、あの亀裂から漏れ出るエネルギーをどうにかしないと……
なにやら、ウィズとカズマが小声で話し合っていますね。なにか良い方法があるのでしょうか?
私には策なんて思いつくことは出来ないので彼が唯一の頼りですね。他の冒険者も慌てふためいていますし……
ウィズと話し合いが終わったのか、カズマはアクアに近づくと……
「ねぇ、頑固な事を言ってない此処から逃げましょう!動力源は抜いたし、街にはあまり被害は出ないわ!あのデストロイヤーにそれで済んだなら……ひぃやぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!?」
ダクネスを説得していた、アクアに後ろから襲い掛かり『ドレインタッチ』でアクアの魔力を吸収し始めました。いきなりそれをやられたアクアは抵抗する事も出来ず、暫くは魔力を取られっぱなしでしたが、程なくしてカズマの手を振りほどきました。
「なにすんのよ、ヒキニート!今は非常事態なのよ!!時と場所くらい……」
「だから、お前から魔力を吸い取ってるんだよ!いいか、ウィズなら爆裂魔法で亀裂から漏れでて来るエネルギーを相殺できる!だから俺が、お前の魔力を吸って、それをウィズに送って爆裂魔法を放てるだけの魔力を取り戻して貰う!分かったら抵抗しないで、魔力を寄越せ!!」
そんな方法があったのですか。これならどうにか出来そうです。
でも、それをするならウィズが直接吸い取ったほうが効率が良いのではないですか?なぜカズマを中継して二度手間を掛けるのでしょう?
…………あっ!?そういえば、ここは多くの人の目に入りますよね。冒険者のカズマなら、気の良いアンデットに教えて貰ったで通せますが、ウィズですとリッチーである事がバレてしまう可能性もあります。
そこら辺の事を考慮したした結果、カズマが中継役をするのでしょう。
でも、肝心のアクアが渋っているみたいですね。
「いやよ!なんで私がアンデットなんかに魔力を渡さないといけないのよ!!大体、女神である私の魔力なんかを、ウィズが吸ったらそれこそ消滅しちゃうわよ!!」
渡したくないから言った出任せの可能性もあるのですが……本当の可能性も十分にありえますよね。なにせ、アンデットにとって女神と言うのは最大の天敵なのですから。でも、だとしたら他に誰が……………一人だけ居ましたね。
カズマの背中の上で、先程までぐったりとしていためぐみんは、地面に力強く降り立って言いました。
「真打ち登場」
デストロイヤーに入った亀裂が徐々に広がって、あふれ出すエネルギーも増えていき、後もう少しで街を吹き飛ばすのではないかと心配になってきました。
そんななか、カズマはアクアとめぐみんの首を掴んで、アクアから吸い取った魔力をめぐみんに送っていました。ウィズの話によると、心臓に近い場所の方が魔力を吸い取れるそうで、最初は背中から吸い取ろうとしていた見たいのですが、それを二人とも拒絶。妥協案として今の状態になっています。
それにしても、カズマはアクアから魔力を吸い取りすぎなのではありませんか?爆裂魔法に使う魔力の量が分からないのや、カズマがウィズよりも一度に吸い取れる魔力の量が少ないので、なんとも言えないのですが、私が吸われた量の十数倍は吸い取られていると思いますよ。
「はぁ……はぁ……ヤバイです!アクアの魔力はヤバイですよ!これなら過去最大級の爆裂魔法を放てそうです!ウィズにだって負けないくらいの爆裂魔法が放てそうです!」
「ねぇ、めぐみん!?ウィズに勝つために余計な魔力を吸い取ってるじゃない!?もう十分な魔力は渡したはずよ!!」
めぐみんが、頬を赤く染めて興奮しているみたいなのですが……本来の目的を忘れては居ませんよね?
あくまで目的は、爆裂魔法でデストロイヤーに溜まったエネルギーを相殺させる事ですよ。決して、過去最大級の爆裂魔法を放つことや、ウィズの爆裂魔法に勝つことではないんですよ。
流石の、めぐみんでもそれくらい事は分かっていると思いますが……ほんの少しだけ心配です。
私が不安を抱えていると、魔力を吸い終えたようでカズマの手から離れためぐみんはデストロイヤーの亀裂に杖を構えました。
どうやら、目的を忘れていなかった見たいですね。安心しました。
「いいですか?私は他の事なら全てにおいて負けても構いません!ですが爆裂魔法、これだけは誰にも負けたくないのです!!見ていてください、これが私の究極の破壊魔法です!!」
めぐみんが聞きなれた詠唱を始め、めぐみんの杖先は今までに見た事がないくらいに光り輝いています。そして、詠唱を終えためぐみんは……
「『エクスプロージョン』ッッ!!!」