この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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この不当な裁判に救済を

アクアによる脱獄計画から一日……裁判をする事となった私は裁判所にある法廷の中に居ました。

作りは日本に裁判所とそれほど変わらず、私は法廷の中央に立たせられていて……違いと言えば弁護人が私の隣に立っていることぐらいですかね。

まあ、そんな事は正直どうでも良いのですよ……

それより気になる事が一つ……

 

「カズマ……どうして貴方以外の皆が虚ろな目をしているのですか?」

 

「知るか……こっちは昨日、駄女神が作った冤罪を晴らすのと、爆裂魔法の件の許しを貰うので大変だったんだよ」

 

ああ……あの後、本当にダクネスの元に警察が行ったのですね……

本当にご愁傷様です……心の底からカズマには同情をしますよ。だっていきなり気絶させられたと思ったら、その次にはやって来た警察の対処をしなければいけなかったんですからね。

でもこれで、アクアとめぐみんとダクネスは暫くの間行動が不能……裁判には参加できませんね。これじゃあ私が不利に……あれ?よくよく考えてみると、これって良いことなんじゃないですか?

三人には悪いですが、この三人が好き勝手したら事態が悪化する未来しか見えませんからね。

ナイスです、カズマ。

 

私がそんな事を思っていると私の正面に居る裁判長と思われる人物が木槌を叩きました。

 

「静粛に!これより、国家転覆罪の容疑が問われている、カトウマナの裁判を始める!!代表告発人はアレクセイ・バーネス・アルダープ!!」

 

裁判長の呼びかけに太った男が立ち上がりました。

代表被告人……今回、私がコロナタイトを飛ばしてしまった場所は王城と言うとんでもない場所だったので複数の人から告訴をされているみたいなんですよね。

ただし、全員を法廷内に入れることは出来ないので、この男が代表者をしているみたいなんですが……ちょっと傷ついたからって根に持ち過ぎじゃないですか?

もう外見からは怪我なんて見えませんし……

 

それよりも、この男の視線は何とかならないんですか?私やアクアなどの女性にネットリとした下心満載の嫌らしい視線を向けてくるのですが……カズマでも此処まで露骨なのはしないですよ。

なんか、私の死刑が確定したら減刑する代わりにやらせろとか言いかねませんよ……なんでこんな男に……

私が自分の運のなさを呪っているとうちに裁判が進んでいきます。

 

「では、検察官は前に!此処で嘘をついても魔道具で直ぐに分かる。それを肝に銘じて発言するように!」

 

裁判長がそういうとセナが立ち上がって始めます。

 

「では起訴状を読ませてもらいます。被告人カトウマナは、起動要塞デストロイヤー襲来時、これを他の冒険者と共に討伐、その際に暴発寸前のコロナタイトをテレポートで転移するように指示。転送されたコロナタイトは王城で爆発。人的被害こそ微少だったもの、王城は現在も修復工事中、そのために膨大の予算を投じられています」

 

うぅぅ……

こうしてやった事実だけを聞くと、私かなりとんでもない事をしていますね……

別にそんな事しようとなんて思ってませんよ……なんで私はこうも運が……って近くにアクアがいたからあんな所に転送されたのですよね?

って事は私はアクアの身代わりに……?

う、恨みますよ……アクア。

って、さっきからアルダープはダクネスの事ばかり見ているのですが……知り合いなのでしょうか?

 

(カズマ……あのクソ領主がダクネスの事ばかり見つめているのですが……)

 

(俺もそれは気になってたんだ……おい、ダクネス?あれと知り合いなのか?)

 

(はぁ!?……わ、私は今まで何を……)

 

(ようやく正気に戻ったのですね。此処は裁判所の中ですよ。それとあの男とは知り合いなのですか?)

 

(そ、そうなのか?あの男は……まあ、そんな感じだ)

 

(ダクネス。いくら嗜虐(被虐)嗜好があってあんな男が好きだとはいえ、付き合いは考えた方が良いですよ)

 

(マナにそれを言われたくはないのだが……)

 

(おい、ダクネス。それはどういう意味だ……ってそろそろ私語はやめた方がいいぞ)

 

確かに裁判長がこちらを睨みつけていますね。

わたし達が話をやめて正面へ向き直すとセナが続きを話初めました。

 

「モンスターや毒物、劇物、爆発物などをテレポートする場合、ランダムテレポートの使用は法律で禁止されています。被告人が指示した行為は、この法律に反し、また王城と言った国の中枢が爆発されるという国家を揺るがしかねない結果をもたらしています。よって検察は国家転覆罪の適応を求めます」

 

「分かりました。続いて被告人と弁護人に発言を許可する。では、陳謝を」

 

ようやく私たちの番ですね……カズマ期待していますよ……

私はそんな事を奥底で思いながら、話始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……以上で私の話は終わりです」

 

裁判長に促された私は魔道具が鳴るのを警戒してかなり謙虚にこれまで起こったことを言ったのですが……それでも裁判長は信じきれなかったのか魔道具の事をなんでも見ていましたね。

まあ、倒した思った要塞が暴走……さらに原因となったコロナタイトを抜いても、また危険な状態にまたなったのですから当たり前なのかもしれませんが……

 

「分かりました。では検察官。被告人に国家転覆罪が適応されるべきだとの、証拠の提出を」

 

裁判長に証拠の提出を促されたセナはそばに待機していた騎士の一人に合図を出すと、その騎士はどこかへと行ってしまいました。たぶん証拠を取りに行ったんでしょうね。

どんな証拠が出てくるのやら……変なこじつけじゃないと良いのですが……

 

「ではこれより証拠の提出を行い、被告人が国家転覆を狙ったテロリスト、もしくは魔王軍の関係者である事の証明を行いたいと思います」

 

そういって懐から一枚の紙を取り出すセナ……なんの紙でしょうか?

 

「これは被告人の取り調べを記録したものですが、この取り調べで被告人は魔王軍の幹部に知り合いが居るか?十億エリスで仲間を裏切るか?っという問いで魔道具を鳴らしました。これは被告人が魔王軍に関わっている紛れもない証拠です」

 

やっぱりその件は持ち出されるのですね……

隣のダクネスの視線が非常に痛いです……そしてカズマは頭が痛そうに手を顔に当てています。

なんていうか……すいませんでした。胸の奥底に蔓延る欲望に負けてしまいました。

あっ、ちなみにアクアとめぐみんは未だに正気を失っています。

 

「彼女の行った事はそれだけではありません。証人を此処に」

 

彼女がそういった連れ出して来たのはミツナミ?……でしたっけ?

名前を忘れてしまいました。会った事はあったと思うんですけど……誰でしたっけ?

 

(カズマ……あの人がだれか知ってますか?)

 

(そんな事も忘れてのか?あいつはマクラギ……?だったけ?)

 

(カズマ、お前も忘れてるのではないか……たしかあいつは、ミラサメだったはずだ)

 

なんですか、その有名な妖刀みたいな名前は……

全く的外れな気がするのですが……

でも本当に名前が……と首を傾げて悩んでいると、セナが発言を続けました。

 

「ミツルギさん、貴方は被告人に魔剣を奪われたうえに、全財産を奪われたと聞きましたが、間違いはないですね」

 

「はい。ですけどあれは僕が挑んだのが原因と言うか……」

 

ああ……思い出しましたよ。ミツルギでしたね。

確かアクアを水を浄化するクエストに連れて行った時の帰りに会った私と同じ転生者でしたね。

でも魔剣の件は正当な権利だと思いますよ。好きにしていいっと言った負けたのはミツルギなのですからね。ちゃんと魔剣は返したので責められる理由はないと思います。

実際にミツルギもそう思っているのか、私の擁護するような言葉を放した時でした。

 

「そうなんです!あの女が卑怯なことをしてミツルギから魔剣を取ったんです!!」

 

「そうです!あの女が卑怯な事さえしなければ……」

 

この女……私に恨みでもあるのですか?

私がしたことなんで精々牢屋送り……うん。十分に恨まれる理由となってますね。

でも、あれは正当な権利で魔剣を手に入れた私に楯突いた彼女達が悪いと思いますよ。

って言うかミツルギ、彼女達は貴方の女なんですから、ちゃんと手綱を握ってくださいよ。

カズマだって普段から面倒くさいと言ってるくせに、私やアクアなどが問題を起こせば飛んできて叱りつけますよ……

まあ、私やアクアはカズマの女ではありませんが……

 

ってそんな事を思ってる内にミツルギは早々に退場となってしまいましたね。

 

「以上の事から被告人の非人道性が証明されたと思います。被告人が国に恨みを持った居た事実を踏まえれば、ランダムテレポートを装って王都に送り付けたのではないかと考えます」

 

確かに恨みはしましたが、そんな大それたことをする度胸なんて私にはありませんよ。

何よりそんな事をしてもお金になりませんしね……

 

「よろしい。次に弁護人、検察官の言った事に異論があるのでしたら、反論を」

 

ようやく自分の番が来たと前に立つ、カズマ……

し、信頼しても良いのですよね?アクアやらダクネスにさせるよりはましだと思いますが……

なんで此処にルリが居ないのですか……きっと先日のポーションの副作用が抜けきってないせいだとは思いますが……

 

「それじゃあ、まず最初に魔王軍と知り合いって件だが……知り合いってのはどういった関係を言うんだ?」

 

えっと、顔とかを知っていたら知り合いになると思いますが……

他の定義なんてありましたっけ?

一応、セナは私が思った事と同じような事を言っていますが……それがどうしたのでしょう?

私もセナも、そして裁判長もカズマが何を言いたいのかが分からなくて首を傾げています。

 

「そう、知り合いってのは顔を知ってるだけの間柄でも良いんだ。それじゃあ、先日のアクセルの街を襲撃してきたデュラハンはどうなるんだ?あいつと俺達は会話をした……これって知り合いの定義に入るんじゃないか?」

 

ああっ!!

そういった考えもありましたか……確かに理屈はあっていますよね。

現にカズマに指摘されたセナは悔しげな顔をしながらも、納得はしているようで反論をする気配はありません。でもそれって私にその他の知り合いはって質問したら潰されるような……

っと私が再び不安を抱いているとカズマがまくし立てるように話を続けます。

 

「大体、その魔道具の精度ってどんなものなんだ?十億で裏切るって言っても、思っただけなんじゃないのか?思っても実行しない奴なんて世界にどれだけいると思ってるんだ?」

 

そうですよね。

目の前に思った事を全て実行に移したらおぞましい結果を起こす男がいますし……

本当にこの男は悪魔ではないのかと何度も疑いましたよ。っと言ってもカズマが躊躇したことを平然と実行に移した私が言える事ではないと思いますが……

ともかくカズマの言葉に反論することが出来ないのかセナが言葉を詰まらせています。

そしてようやく反論したと思えば……

 

「ですが、今まで魔道具を破壊するほどの嘘をついたのは初めてです!!これは実行に移す可能性が高いと言う証拠……」

 

「可能性が高いっていうのがどうしたんだよ!?この守銭奴の事を良く知ってる俺から言わせてもらうとな!こいつは金の為なら何でもするように見えるが、決して超えてはいけない一線は守るんだよ!!」

 

か、カズマそんなに私の事を信頼して……

でもどうせなら小言で「禁断症状を起こして身体中を痙攣させるけどな」っと言わなくてもいいと思います。

それがしっかりと聞こえたせいで辺りの視線が若干痛い事になっているのですが……

まあ、事実なので反論は出来ませんが……

 

「ともかく、大なり小なり欲望ってのは誰もが持って居るものだろ。例えばそこに居る、一見真面目そうな裁判長が、女性を無理やり襲う性癖を持っていたり……」

 

「弁護人!!口を慎みなさい!!私は断じてそのような趣味など持って……」

 

チリーン……

 

裁判官が話している途中で鳴り響く魔道具の音……つまり誰かが嘘をついたって事ですよね。

えっと……今の状況から判断すると嘘をついたのは裁判長なわけで……って事はそういった性癖を持っているってことで……

そこまで考え至った私はそっと裁判長の事を見つめます。すると法廷内にいる誰しもが裁判長の事を見つめていました。口に出したカズマですら予想外だったみたいで信じられないような顔で裁判長の事を見つめています。

そして数秒でしょうか?それとも数分でしょうか?長い時間にわたって無言を貫いていた裁判長が木槌を叩くと、ようやく口を開きました。

 

「弁護人の意見を認めます。どうやら魔道具に不調があるようです。今回の裁判では魔道具によるものは一切認めない事とします」

 

「さ、裁判長!?」

 

セナが叫び声を上げましたが……その気持ちはわかります。

だってカズマはそんな事は一言も言ってません……目の前の男は自分掛けられた疑いをもみ消すために権力を乱用したのですからね。

裁判長ともあろう人がそれでいいのですか?

私はそれで助かった身なので嬉しいと思わなければいけないのでしょうが……正直、微妙な気分ですよ。素直にほくそ笑んで喜んでいるのなんて、隣に居る鬼畜男ぐらいですからね。

 

「それでは、弁護人。他の反論は?」

 

「はい、次はミツルギの件だが……あれは前提が間違っている」

 

「っと言うと?」

 

「あれは、あいつが決闘をして勝ったら好きな物を上げるって言ったから、勝者の権利として魔剣を取り上げただけだ」

 

「ですが、証人は卑怯な方法でっと……」

 

「検察官、発言は許可を得たからするように。では、弁護人続きを」

 

「確かに決闘には卑怯な手を使ったさ……でも使ったのは俺だし相手は高レベルの冒険者だぞ?これぐらいあって当然のハンデだろ。それにあの証人はこの守銭奴が原因で捕まったんだぞ?その事を恨んで虚偽の証言をしてないって保証がどこにあるんだ?」

 

「検察官、今弁護人が言った事は事実ですか?」

 

「い、今直ぐに調べさせます!!」

 

セナが付き添うの騎士の一人に支持を出すと、その騎士は飛ぶように走って法廷の外に出て行きました。指示を出したセナもそれを聞いた騎士もかなり焦った様子でしたね……

ってよくよく考えれば当たり前ですよね。だって、連れてきた証人が嘘をついた可能性があるのですからね。

なんか、結構いい流れになってますよね。無罪……とまではいかなくても死刑は免れそうですね……

 

私がそんな事を考えていると、騎士が法廷内に戻って来て、セナの耳元で何かを呟いています。

 

「そ、その……調べた結果、弁護人の言う通りでした」

 

「検察官、証人は信頼できる者を連れてきてください」

 

「は、はい……」

 

気まずくなったのか、セナは顔を俯かせています。

うん、これは勝ったも同然ですね。だって、セナの出した証拠を全て潰したのですよ。

此処まで来て死刑になんて…………………………この場に運のないアクアが居ることが非常に不安になって来たのですが、大丈夫ですよね?

 

「では、検察官。弁護人の意見に反論はありますか?」

 

「そ、それは……」

 

言葉を詰まらせるセナ……やっぱり不安は私の気のせいだったのですかね?

でもこの不安は結構な確率で当たってるような気が……

 

私がそんな事を思っていると、法廷内に騎士が一人入ってきてセナのそばまで行きました。

何やら耳元で呟いているみたいなんですが……なんでしょう?聞き終えたセナが急に勝ち誇った笑みをしました。

もしかして、今の状況をひっくり返せるようなことでもあったのですか?

私が不安を抱えていると、セナが話始めました。

 

「裁判長、被告人への新たな証拠が見つかったので、提出を許可を」

 

「許可しましょう。検察官、新たな証拠を提示しなさい」

 

裁判長を許可を出すと、法廷内に冒険者と思わしき男が現れました。

新しい証拠って新しい証人の事だったのですか?

でもこの男……あった覚えがないんですよね。さっきのミツラギと違って本当に覚えがないというか……

彼には何も悪い事をしてないと思うのですがね……一体何を言う気なのでしょう?

 

「ボク……ボク見てしまったんです……そこの女が、女が……そのに居る仲間を…………………………………縛ってカエルに食べさせてたんです!!」

 

…………ああっ!!あの時の男でした!!

私がダクネスと一緒にカエル釣りに行った時に私たちのやっていることを見て驚いていた男です!

今、ようやく思い出しましたよ!!

ってこれってすごく不味くないですか?

反論がい一切不可能なんですが……だって、私が実際にやってしまった事ですし……

か、カズマ……

 

「弁護人。これについての反論は?」

 

「そ、その……餌にされていた仲間にとっては本望と言うか……」

 

「弁護人、発言は真面目にお長いします。そんな人はいません」

 

ち、違うんですよ!!

そこの!そこの、今顔を逸らしてる人がそうなんですよ!!その人にとっては喜ばしい事なんですよ!!カズマの言う通り本望なんですよ!!

 

でもこんな事を言ったところで誰も信じてくれないですよね……ダクネスは餌にされて本当に喜んでいたのに……

なんか、周りの目が厳しくなってきましたが、いくらお金の為とはいえ嫌がっている人を餌にはしませんよ……たぶん……

 

「弁護人、これ以上言う事はありませんね」

 

カズマはうつむいたまま頷いて返しました……

凄く悔しがってしたいですけど……別にカズマがそんな顔をする必要はありませんよ。

最後のは私の自爆ですし……やっぱり少しくらいはお金に関する欲望を押さえておくべきでしたかね。

今更後悔しても遅いんですけどね。

 

「……それでは被告人に判決を言い渡します。被告人のこれまでやって来た非人道的行為を鑑みるに検察官の訴えは妥当。よって判決は……死刑とします」

 

裁判長は冷徹に私を見下ろしながらそう言い渡しました。

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ……やっぱりそうなるんですね。

なんか嫌な予感はしていたので覚悟はしていましたが……落胆を隠せそうにありません。

あそこまで良いところに行ってこれですからね……まあ、自業自得と言われればそうなんですが……

そういえばこの世界の処刑法ってどうなってるのでしょう?江戸時代にあった拷問じみた処刑とかだったら嫌ですよ。痛い思いはしたくありません。

前回は即死だったために痛い思いはせずに済みましたからね……

 

っと私が内心諦めかけていると、予想外の人が驚きの声をあげました。

 

「えっ!?た、確かに被告人は重罪人ですが……死刑にするほどでは……」

 

そう行ったのは検察官のセナです。

えっと、この世界の事は良く分からないのですが……検察官の求刑以上の刑罰になるって事はあるのですか?てっきり私はセナが死刑を求刑しているものだと思っていたのですが……

って、指摘された裁判長も首を傾げて、なんでこんな判決を出したんだって顔をしていますし……

何かこの裁判おかしくないですか?傍聴席で座っている人も怪訝そうな目を向けています。

ですがそんな中、代表告発人であるアルダープが立ち上がって、セナに向かって話掛けます。

 

「どこがおかしい。そいつは魔王軍の関係者で国に混乱をもたらした首謀者だ。早く死刑にするんだ」

 

「いえ、そこまで断定する証拠はない以上……」

 

何でしょう?

アルダープに説明をしていたセナが急に首を傾げました。

まるで自分の言った言葉に違和感を感じている様で……そして、次にセナはとんでもないことを言い始めました。

 

「そう、ですね……被告人は死刑で問題ない……と?」

 

「ちょっと、待って下さい!検察官がそんなに意見をコロコロと変えてどうするのですか!?お金でも積まれたんじゃないでしょうね!!」

 

あっ、めぐみんはようやく正気に戻ったのですね。

でもアクアはまだ正気を失っているみたいなのですが……首謀者だったので罰が一番きつかったのでしょうか?まあ、アクアの弁護されると言うのは非常に不安なので、助かっているのですが……

 

って今はそんな場合じゃありませんね。

めぐみんに食った掛かられたセナは未だに首を傾げていて、自分の言った言葉を信じられない様子です。それは裁判長も同じで……

まさかあの男、めぐみんの言った通り金を積んだんじゃないですよね……いや、それなら今のような動作をするわけがありませんよね。

まさか、魔法で…………でも魔法がある世界でその手の対策を怠っているは考えにくいですし……

 

「とにかくそいつは魔王軍の手下、早く死刑にしないか!!」

 

「マナが魔王の手下だと本気で行ってるのですか!?ならばよろしい、私が魔王の手下と言うのがどういった存在なのか、その目に……」

 

「アホ!余計な事をしてどうするんだ!!」

 

今にも爆裂魔法を放とうとしためぐみんの頭を叩いてそれを止めるカズマ……

助かりましたよ……こんな所で爆裂魔法なんて使われたら皆一緒に木端微塵に吹き飛びます。

唯一の例外となりそうなのはダクネスぐらいものでしょう。彼女、本当に異様なほど固いですからね。

私がそんな事を思っていると、カズマはめぐみんの耳元で何かを呟いたかと思うと、彼女は法廷の外に出ていきました。カズマは一体何を吹き込んだのでしょう?

めぐみんが簡単に納得するとは思えないのですが……

 

深く考えてもしょうがないので、素直にカズマに話を聞こうと思った時でした。

誰かが私の服の裾をくいくいっと引っ張ったのです。私が下を向くと、そこには机に隠れるようにしゃがんでいるルリの姿が……

 

(ル、ルリ!?どうしてこんな所に……)

 

(……隠密スキルを使って……待機していた)

 

(それじゃあ、身体は元通りになったんですね。ってそんな事じゃなくて、どうしてルリが隠れるように待機しているのですか?)

 

(……脱獄するため……)

 

ルリの言ったその言葉に思わず私は息を飲んでしまいました。

脱獄するために待機をしていたとなると……多分、ルリが独断でやったのではなくて、カズマが事前に指示をしていたのでしょう。常識人であるルリが一人で考えて実行に移すとは考えにくいです。

私はカズマに相変わらず卑怯なっと思うと同時に嬉しく思いました。だって脱獄の手引きなんてやれば重罪となるでしょう……アクアならまだしもカズマがそれに気付かないわけがありません。

そこまでして私を助けてくれるなんて……心の底から嬉しいです。

でも……

 

(……移送される時にめぐみんが爆裂魔法を放つ……その隙に私と一緒に……)

 

(そこまでしなくても良いですよ……気持ちだけで嬉しいです。私の事なんて忘れて……)

 

(……分かった…………………………無理やり引きずって行く……)

 

それって全然わかってないですよね!ルリってこんな強引なキャラでしたっけ!?

ま、不味いです。ルリの腕力は人間の限界を軽く超越しています。引きずられたら勝てる気なんて全然しないですよ。簡単に持ち運ばれてしまいます。

そうなれば、カズマには物凄い迷惑が……

って、めぐみんの爆裂魔法で動揺させるって、だからめぐみんはカズマに素直に従ったのですね。

ああ……私は一体どうすれば……

 

「裁判長、少し待ってもらえないだろうか」

 

モンスターの餌にされた事が暴露されてから、何も話すことがなく沈黙を守っていたダクネスが急にしゃべる始めました。それはカズマ達にとっても予想外の行動のようで、カズマもルリも少し驚いた表情でダクネスの事を見守っています。

あっ、ちなみにアクアはまだ正気を失っているようで虚ろな瞳で虚空を見つめています。

 

とにかく、そういって裁判長の所に近づいて行ったダクネスは胸元から何かを取り出して裁判長にそれを見せつけます。それは紋章の描かれた高そうなペンダントなのですが……私にはそれ以上の事が分かりませんでした。

でも裁判長は違ったようで……目を見開いてそれを見つめています。それは隣に居るセナも同じで……ルリも少しだけ動揺した面持ちでそれを見つめています。

 

「それは……!あなた……いや、あなたさまは……」

 

「すまないが今回の裁判、一旦私に預からせて貰えないだろうか?なかった事にしろとなんては言わない、ただ時間を貰えないだろうか。時間さえ貰えれば、彼女が魔王軍の関係者ではないと必ず証明してみせる」

 

「それは……」

 

言葉を失っていまい黙り込む裁判長とセナ……

なんか良く分からないのですが……あのペンダントってそんなに凄いものなのですか?

普段なら説明してくれるであろう、アクアは正気を失っていますし……

ともかく、しばらく二人が黙り込んでいると、アルダープがダクネスに食い掛りました。

 

「い、いくら貴方の頼みといえど……それは……」

 

「アルダープ。今回の件を聞いてくれるのであれば、私は貴方に大きな借りを作ることになるな。私の出来ることなら、なんでも一つだけ言う事を聞こう」

 

「な、何でも……」

 

ゴクリとつばを飲み込むアルダープ……

その後はダクネスの身体を非常に嫌らしい視線で眺めていますし……

もしかすると私せいで、ダクネスに非常に危ない橋を渡らせる事となったのでは……

性癖とか考えると、むしろ喜びそうですけど、すごく心配になってきました。大丈夫ですよね?

 

「良いでしょう。他ならぬ貴方の頼みだ。彼女には猶予を与えることにしましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、裁判は取りやめとなり、逃げる恐れがないと判断された私は釈放されることとなり、カズマやダクネス、そして正気をいまだに失っているアクアと一緒に歩いていました。

ちなみにルリはすでにめぐみんを連れて屋敷に帰っているはずです。彼女は一応は法廷には来ていない事になってますからね。

今はそんな事よりも……

 

「カズマ……いくら何でも、脱獄は不味いと思いますよ。私だけじゃなくてカズマまで犯罪者となってしまうじゃないですか」

 

「それは私も言いたかったことだ。なぜそんなバカな事を考えた。国家反逆罪の罪人の脱獄の手引きなど、バレたら一発で首が飛んでいたぞ」

 

「脱獄のプランはルリと一緒に隣国に逃げるまで入念に計画してたからな……アクアが変な事を起こさない限りは失敗しないようにしてたんだよ」

 

カズマとマナの二人で考えてもアクアは大きな懸念材料となるんですね。

まあ、今までの行動を鑑みるに納得せざるを得なかったですが……本当に、アクアはこちらの予想を上回る結果を引き起こしますからね。悪い意味に……

 

「って言うかダクネスの方が不味いんじゃないのか?あのクソ領主、お前の事ヤバイ視線で睨みつけていたぞ」

 

「確かにあれはヤバかったですね……下手すると事案ものの視線でしたよ」

 

「……んっ……」

 

「おい、今少し興奮しただろう」

 

「し、してない」

 

嘘を言わないでください……ってこのやり取りこれで何度目になるんでしょうね……

本当に、この変態の性癖はどうにかならないものなのでしょうか……

でもダクネスの性癖は私の金に関する執着と同様のものと考える事も出来なくはないですよね。それを踏まえると直すのは不可能なような気が……

そう思った私は一人頷いていると、後ろからカズマの疲れ果てた老人のような溜息が聞こえてきました。やっぱり少し自重できるように頑張ってみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ、カズマ。私マナの裁判に弁護人として出たのよね?ちっとも記憶がないんですけど」

 

「しっかり出てたよ……」

 

確かに出てましたけど正気を失っていましたよね……結局アクアが正気に戻ったのは裁判の次の日でしたし……

本当にこの男は何をやったのでしょう?一応ルリに聞いてみたのですが、彼女には顔を真っ青にして「……思い出したくない……」っと言われました。

めぐみんやダクネスも覚えていないみたいですし……多分実際にやられた三人は脳の防御機構が動いて記憶から消したのでしょうが……つまりそれが働くほどの何かをやったのですよね。

前々から思っていた怒らせると一番怖いのはカズマって考えは間違ってなかったようですね。

 

ともかく、ダクネスの交渉の結果、私の死刑を取り消すために二つの条件が出されました。

そのうちの一つは当たり前の事ですが、私が魔王軍の関係者ではないと示す事ですが……悪魔の証明と言えば良いのか、それを示すのは非常に難しそうなんですよね。

いくら私が魔王軍を倒そうと茶番だと言われればそれまでですし……でも、それ以外には証明のしようがないんですよね。

しかも、二つ目の条件として破壊された王城の修復費を払わなくてはなりませんし……

 

前者はともかく、後者ついては早く動いた方が良いとカズマに言われたので、金を手に入れる策を考え付いたと言うカズマについていく事にしたのですが……

この場所ってもしかしてウィズの店に向かっているのですか?でもどうして……

 

「カズマ、もしかしてウィズの店に向かっているのですか?」

 

「ああ、そうだが……ってアクア、拳を握りしめてどうしたんだ?」

 

「なるほどね……カズマの考えは分かったわ。今回の一件、そもその原因はあのアンデットがポカをやらかしたせいでこうなったんだもの。借金の補填にあの店にあるお金を根こそぎ奪おうって訳ね。任せない!あんなクソアンデット、私がすぐにでも浄化してやるわ!!」

 

「ちょ、アクア……」

 

なにアクアは物騒な事を考ええるのですか!?やってることが殺人強盗と変わりないですよ!それ!!

って、そもそもウィズの店にそんなお金があるとは思えないですし……聞く限りでは経営は相当厳しいみたいですからね。

って、そんな事より今は飛ぶようにウィズの見せに向かったアクアを早く止めないとウィズが浄化されてしまいます。私とカズマは走ってウィズの店に向かうと、そこには扉の空いた店……私達が急いで店の中に入ると……

 

「さあ!クソアンデット、覚悟しなさい!!今日は年貢の納め時よ!!」

 

「ひぃ……アクア様!!一体どうしたのですか!?」

 

そこには今にもウィズに襲い掛かりそうなアクアの姿がありました。

私はそれを直ぐにでも止めようとしたのですが……その前にカズマは剣の柄を頭に叩きつけます。

あれ、一度だけやられた事があるのですが、凄く痛いのですよね……現にアクアは頭を両手で押さえて涙目になってますし……まあ、自業自得なのですがね。

 

「いきなり押しかけて悪いな、ウィズ」

 

「い、いえ。私は大丈夫ですので……それよりも最近姿を見なかったのですが……何かあったのですか?」

 

「それに関係することで、今日は尋ねたんだが……」

 

「?」

 

首を傾げるウィズにカズマは簡単に説明を始めました。

先日のデストロイヤー戦で飛ばしたコロナタイトが首都にある王城に飛ばされた事、そしてそのせいで私が国家反逆罪で捕まっていた事、その裁判で死刑が言い渡されたが現在は処分保留となって、死刑を回避するためには私が魔王軍の関係者でないと証明しなければならない事と、修復費を払わなくてはいけない事……

説明していく度に、アンデットであるためか、元々悪い顔色がさらに悪くなっていきました。

テレポートして事に責任を感じてるみたいですが……指示をしたのは私なのでそんなのに気にしなくても良いんですけどね。

責任は私が取ると口走ったのは私ですし……

 

「そんな事が……すいませんマナさん、そもそもの発端は私がテレポートしたせいなのに……」

 

「余り気にしなくて良いですよ……ウィズがテレポートをしなかったらより悲惨な結果となってましたし……」

 

でもこの国、本当におかしいですよね。

少し前のデュラハンの件もそうですし……確かにアクアは余計な事をして街を破壊してしまいましたが、相手は魔王軍の幹部ですよ。普通は国が直したりするものじゃないんですか?

なんのために税金を取っているのやら……

今回の件だって、ろくに証拠もなしに私は死刑になったんですよ。

いくら私が人間的に劣っているからと言ってそれが魔王軍の関係者にされたんじゃたまったもんじゃないですよ。そんなのでなるなら、身近にもっと魔王軍の関係者らしき人が……っは、思考を読まれた時が怖いのでここで考えをやめましょう。

ともかく、そのせいで私達はまともな反論が出来なかったんですよ……中世の裁判と比喩された日本の裁判ですら此処まで酷くはないはずです。

一体なぜ……と私が考えてる間にカズマがウィズと話始めましたね。

 

「それで、潔白の証明は後で考えようと思っていたんだが……修復費に関しては全くあてがなくてな……」

 

「そうですか……、本来ならば私が払うべきなのでしょうが、お店が赤字続きでお金のほとんどなくて……、明日の食事でさえも、今日も朝は砂糖水で……」

 

「良いです!それ以上は言わなくても良いですから!!」

 

なんか聞いてるこっちが悲しくなってきましたよ。

明日の食事にすら困るって、それはこの世界に来たばかりの私と殆ど同じじゃないですか……あの時は偶然カズマに会って助かったのですよね……

って、そんな事よりも今はなぜカズマが此処に来たのかっと言う事です。失礼かもしれませんが、ウィズが修復費を払うお金がないのが分かりきっていた事ですし……まあ、実態は予想以上にお金がなかったですが……

 

「それで、悪いんだがこのお店にこっちで作った商品を置いても良いか?」

 

「こんな事なら構いませんとも。むしろ商品が増えるのは願ったり叶ったりですし……お金が必要になっている原因は私ですからね。何を売るのか分かりませんが期待していますよ、カズマさん」

 

そういってにっこりと笑うウィズ……

 

それにしても、カズマはカズマで結構と考えているのですね。

このまま冒険者として稼ぐっと言う手もありますが、それをしたら何年かかるか分かりません。

今までは運が良かっただけで、普通に考えたらデュラハンやデストロイヤーのような実入りの良くて倒せる相手なんて来るはずがありませんからね。

でも一つ問題となるのは……

 

(カズマ?一体何を売る気なのですか?素人の作ったような物で修復費を賄えると思えないのですが……)

 

(それなんだけどな……ライターとかちょっとした小道具を作ろうと思ってな)

 

(確かにそれらを作れればかなりのお金を得られそうですが……作れるのですか)

 

正直、そんなものが簡単に作れるのであれば、とっくに他の転生者が作ってそうなんですよね。

今までそれがなかったっと言う事は、誰も作ることがなかったと言うわけで……まあ、普通に考えれば当たり前の事なんですよね。だって、カズマの言ったライターでさえ、工具や材料がそろって居たとしても作れる人なんて全く居ないですよ。

作れるのなんて、ライターの開発に関わっている人くらいです。

それなのに、此処はその工具や材料すら……

 

(そこの方は少し考えている……知り合いに鍛冶のスキルを持っている奴がいるから、教えて貰う予定なんだ)

 

な、なるほど!!

一瞬、鍛冶と聞いたときは何を言っているのだろうと思いましたが……よくよく考えると、カズマはどんなスキルも覚えられる冒険者なんですよね。

他の転生者達はきっと私のように上級職になったから、作る事が出来なかったんですね。

まさか、カズマが冒険者である事がこんなことに役立つとは……思ってもみなかったですよ。

でも……

 

(カズマ、今になって思ったのですが……私の借金なのでカズマが苦労する必要は……)

 

(お前一人にやらせると、とんでもない事をしでかしそうだからな……例えば銀行強盗とか……まあ、お前が俺に迷惑かけるなんて何時もの事だろ。今になって気にする必要なんかねぇよ)

 

し、失礼な……

いくら私でも、そんなリスクが大きすぎる事はやりませんよ。

でも成功率が高くて大金が取れるのであれば……うん、カズマが私を心配するのは当たり前でしたね。何時も本当にすいません。

何時か何かでこの大きな借りを返せればいいのですが……

 

ともかく、話し合いは終わったので屋敷に帰ろうと……

 

「ウィズ?なにかあったのか?アクア見て迷った表情をしてるが……この馬鹿が何かしたなら正直に言って良いんだぞ」

 

カズマの声が気になったウィズを見れば、アクアを見つめて表情を少しだけ曇らせたいました。

なにかアクアに関する事で言いたいことがあるのでしょうか……心当たりが多すぎてなんだかわかりません。それぐらいアクアは問題の多い人物ですからね。

最も私が言えた口ではありませんが……

 

「い、いえ……その……アクア様が此処に来るたびに、この店の商品は店主が人に言えないような製法で作ってるから、買わない方が良いと吹き込んでいて……あっ!!でも、そのおかげか聖水が男性の冒険者に売れているので……」

 

「この馬鹿!!」

 

「痛いっ!!」

 

それを聞いたカズマはアクアの頭に剣の柄を使って追撃を加えます。

それを受けたアクアはゴロゴロと床を転げまわっていますが……完全に自業自得なので無視をしましょう。

それよりも、聖水が売れているって……カズマがベットの下に隠していた本の知識をもとにすれば、そういうことなんですよね。

この街の冒険者は馬鹿ばかりなんじゃないですか?そんなのが聖水になるわけが……でも一応女神であるアクアのものなら……ってそんな事を真面目に考えたらここで聖水を買った馬鹿と同じですね。

 

「それは本当に良いです。でも……アクア様がお店の商品を次々と触るので、ポーションだったり、解毒用の薬だったり、色々なものがかなりの数を駄目に……」

 

「ウィズ、悪い!この馬鹿からは後で、ちゃんとお金を巻き上げて払わせるから!!」

 

「ちょ、いきなり頭を掴まないでよ!!っていうかなんで私がアンデット如きに頭を下げないのいけないのよ!しょうがないじゃない、水の女神である私が触れればどんなものでも浄化しちゃうのよ!」

 

だったら、触らないください……

ほぁ……一体どれだけの商品を駄目にしたのですか……金額が金額だったら私もアクアにお話をしないとけないのですが……

えっ!?私の金じゃないだろ?

それでも目の前でお金を捨てるような輩が居たら許さるわけがないじゃないですか。当たり前の話です。だって捨てたら私が奪え……ではなくて搾取する、でもなくて貰う事が出来ないじゃないですか。

 

「本当に良いんです!過ぎた事は仕方ないですし……それにアクア様には私の代わりに墓場の霊を天に還して頂いてますし……」

 

墓場に結界を張って手抜きをしようとしたことがある駄女神は露骨に視線を逸らしました。

もう、なんと言えば良いのか……正直ウィズの方が女神に見えてきました。

もう本当にジョブを交換した方が良いのでは……そう私が思っているとウィズは何かを思い出したような顔をした後に、戸棚の下から箱のような物を取り出しました。

 

「ウィズ?それは何ですか?」

 

「マナさんが先日頼んでいたものですよ」

 

ああっ!!

思い出しました。デストロイヤーの来る前にウィズの店で頼んでいたのでした。

これ、結構の値段がしたんですよね……ミツルギから奪ったお金の残りやダストから奪ったお金で払ったんですが、想像以上に高くてお金がすっからかんになってしまいましたよ。

でもこれがあれば……私はそんな事を思いながら渡されたものを手に取りました。

 

「マナ?それって魔道カメラよね。そんなものを買ってどうするのよ?」

 

魔道カメラ……一言で言ってしまえばカメラの魔道具版です。

これを買った意味がアクアには分からないようですが……すごく簡単な事なんですけどね。

カメラはこのためにあると言っていいこと使う予定です。

 

「アクア、ヒントをやるよ。弱み、脅す、金……」

 

カズマは私に呆れたような視線を向けながら、いまだに悩んでいるアクアに対してそう言いました。

それでも分からずに悩んでいるみたいですが……ウィズは分かったようで苦笑していますね。

 

「弱みって……はぁ!マナ、そのカメラってもしかして……」

 

「はい。人の弱みを取って、それをネタにつけ込んでお金を貰おうと思いました」

 

なぜでしょう?

私は笑顔で言ったはずのに、アクアは自らの身体を守るように両手で押さえて、ブルブルと震えています。顔も真っ青になってますし……私変な事言ったでしょうか?

カメラを持って最初にやる事でですよね?

実際に私は父親が夜のお店に入っていく現場を取って、お小遣いを増やしてもらいましたし……

こんな事をする私がおかしいのでしょうか?今度カズマに聞いてみることにしましょう。

 

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