この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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この貴族の令嬢に縁談を

「おい、アクア。毎度毎度言うのが面倒になって来たんだが、そこを退けよ。ダクネスが居ない以上、今日もクエストは中止だ。ウィズの店に並べる商品の開発をしたいんだよ」

 

「何よ、ダクネスが居ないからって最近ピリピリし過ぎでしょう。……それよりも、あのゆんゆんって娘、良いことを言ってたわよね。確か何かをしてもらうなら対価が必要だったかしら。ともかく、もしこの場所を譲って欲しいのであれば、私に何かをお供えしなさい」

 

また、アクアが面倒くさそうな事を言ってますね。

素直に譲れば良いのに……私は勿論のことですが、めぐみんもルリもカズマが商品開発する際は一切邪魔しませんよ。っと言うか率先して彼に譲っています。

正直、今のところカズマの商品以外にお金を集める術がありませんからね。

 

第一対価なんて言い出したら、三億五千万っと言う莫大な借金を肩代わりしてもらったアクアは一生かかっても返し切れない恩があると思うのですよね。更にそれ以外にも普段から自らの引き起こした事件の後処理をしてもらっていますし……

まあ、それに近い借金を作った挙句に、これまで散々彼に迷惑をかけた私が言える事ではないのでしょうが……

でも、少し自覚している分、アクアよりはましだと思います。

 

ともかく、アクアはまたカズマに余計な事を言ったのか、彼のこめかみがピクピクと引きつっています。

早く謝らないと大変なことに……

なんか、カズマが手招きをしていますね。なんの用か分かりませんが、行ってみることにしましょう。

 

「アクア、これが最終通告だ。今すぐそこから退けろ。さもなければお前は泣いて後悔することになるぞ。後になって後悔しても遅いからな。それでも良いと言うのならそこに座っていろ」

 

「なによ、私を脅そうっていうの?あんた、最近調子に乗ってるから忘れてるみたいだけど私は女神なのよ。カズマ程度が私を後悔させるなんて無理に決まってるじゃ……」

 

「マナ、これ」

 

そう言って右腕を私に突き出すカズマ。

いったい何なのでしょうか?手に持っているのは紙切れみたいですが……

取りあえず紙を受け取る事にした私は、二つ折りにされていたそれを広げて見ます。

するとそこには何か住所のようなものが書かれているのですが……仮に住所だとしてなんの住所なのですか?そもそも、住所がアクアの件と何が関係あるのですか?

必死に考えますが、意味が分からず早々と私は首を傾げてしまいました。

すると、カズマは仏のような顔で私に優しく語りかけました。

 

「マナ、そこに書かれてる場所では人身売買が行われているらしい……後は言わなくても分かるよな?」

 

「了解です♪」

 

私の人生で一番ではないかと思えるような笑顔で私はカズマに言葉を返しました。

その後、私とカズマははっはっはっと互いに笑顔で笑い合いましたが、なぜかアクアはこの世の終わりのような顔をして私達を見つめています。

なんで笑顔で居るのに、絶望しているのでしょうか?一緒に笑えば良いと思いますよ。

ともかく、こんな素晴らしいものを貰ったのです。やる事は早くやる事にしましょう。

 

「ねぇ、なんでマナはカズマからロ―プを借りているの?なんでそのロープを持ったまま、私に近づいてきているの?ちょ、ちょっと落ち着きましょう。こういった洒落にならない冗談はダメだと思うの」

 

「大丈夫ですよ。冗談なんかじゃありませんから」

 

私の言葉にアクアはさらに顔を真っ青にして、何かに縋るような目で私を見つめています。

まるで捨てられた子犬のような目をしていますが……その程度で私をどうにかできると思っているのですか?

捨てられていた珍しい種類の子猫を容赦なくペットショップに売ろうとした(流石にカズマに止められて、信頼できる人に渡しました)女ですよ。更にアクアの実態を知っているのです。容赦なんてあるわけがありません。

 

「カズマさん!!調子に乗ってたのを認めるから!頭を下げて謝るから!これからは心を入れ替えるから!!お願いだからマナを止めてぇぇぇぇっ!!」

 

アクアの必死の叫びにカズマは顔を逸らして、無視を決め込みました。

そんなカズマの姿を見てアクアはカズマに宣言された通り、涙目になって……っと言うか瞳から大量の涙を流して後悔を始めていますが、私には関係ありません。

今回はカズマからちゃんと許可を貰ったのです。前回のように途中で止められるような事はないでしょう。しかも今回は売る場所が分かっているので手間が省けて儲けものです。

私は素早くロープでアクアを縛り付けると、そのまま引きずりました。

 

「カズマさん!!これからは絶対に邪魔をしないって誓うから!むしろ手伝うから!!だから、マナを止めて!!このままだと私、本当に売り飛ばされちゃう!!お願いよぉぉぉぉぉおおお!!」

 

「……本当に……売る気?」

 

「まさか……マナに渡した紙に書いてる住所にあるのはギルドだよ。流石の俺でも仲間を人身売買に掛けるようなクズにはなれねぇよ。まぁ、アクアには良い反省の機会になるだろ」

 

「…………平然と仲間……売ろうとしてる……」

 

「あいつに関してはノーコメントで……」

 

何かあったのでしょうか?

なぜかルリが私を指さして、呆れたような視線を私に向けています。

距離があるのと、アクアが騒いでいるせいで聞き取る事が出来ません。まあ、今はそんな事はどうでも良いですね。そんな事よりも、今は目の前にあるお金です。

私が意気揚々と屋敷を出ようとした時でした。

 

「た、大変だ!カズマ、大変なんだ!!」

 

そんな事を叫びながら屋敷に入って来たのは、真っ白なドレスを身に着け、金髪を三つ編みにして片方の肩から前に垂らしている……その、なんというか貴族のお嬢様のような恰好をした人物でした。

えっと、取りあえず一言。

 

「「どちら様でしょうか?」」

 

あっ、カズマと被りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんっ……!!くっ……!二人とも、そういったプレイは嫌いではないが、やるなら後にしてくれ」

 

ああ……

今の頬を赤らめた嬉しそうな表情で誰か分かりました。彼女、ダクネスですね。

こんな恍惚した表情をするのは、私はダクネスしか知りません。

それにしても、今着ている服はどうしたのでしょうか?見た感じ結構高い服だと思うのですが……流石にダクネス自前のとは考えられませんし……

あっ、そう言えばダクネスはあのクソ領主の元に行っていたのでしたね。きっとあの領主に貰ったのでしょう。

私が一人納得していると、ロープに縛られているアクアがダクネスに縋りつくような声を発しました。

 

「ダクネス!私を助けてぇぇぇっ!!二人が、二人が私を売り飛ばそうとしてるのよぉぉぉぉっ!!」

 

「なに!?私のいない間にそんな羨ましい……ではなく、けしからん行為が行われようとしていたのか!二人とも、売り飛ばすならアクアではなくこの私をぜひ!!」

 

ダクネスは相変わらずですね……

って、アクアを売り飛ばすタイミングを逃してしまったのですが、どうすれば良いのでしょうか?

折角良い金になると思ったのですが。人身売買の行われている場所も知ってあと一歩……

あれ?この住所、ギルドの住所じゃありませんか?もしかしてカズマ、私を使ってアクアを懲らしめようとしたのですか?

何時もなら慰謝料と称してお金を分捕っているところですが……今回は私のために商品を開発しようとしていたのが原因なので、不問とすることにしましょう。

皆、私の事を金の亡者とか言ってますが、超えてはいけない一線は守っているつもりですからね。

 

「何か騒がしいと思ったら、ダクネスが帰って来たのですね」

 

声が聞こえて来た方向を振り向けば、クエストに行くような恰好しためぐみんが降りてきました。

今日はカズマはクエストに行かないと言っていたような……

私がめぐみんの恰好に困惑していると、めぐみんはダクネスに近づくと優しげに語りかけました。

 

「ダクネス、何があったのかは聞きません。良く帰って来ました。取りあえず、風呂にでも行って身体と心を癒してきてください。話はその後にじっくりとしましょう」

 

「風呂?めぐみんは一体何を言っている?今はそんな事よりも、大変なことに……」

 

「はいはい、分かりました。分かったので、まずはお風呂に行って疲れを癒してください。いくら性癖だと言っても辛かったのは分かっています。今日は疲れを癒して、明日にでも話会いましょう」

 

「マナまで、一体何を……」

 

「こんな高そうな物を身に着けて……そうか、マナの為に必死に頑張って来たんだな。でももう大丈夫だ。後は全部俺達に任せてくれ」

 

カズマがしみじみよそういった事で、よくやく私達が何を言っているのか理解したのか、顔を真っ赤に染めたダクネスが反論を始めました。

 

「お前達は一体どんな事を想像していたのだ。この服は自前の物だし、領主には変な事は一切されていない。もしかして、中々帰ってこないのは、あの領主に好き勝手弄ばれて……んっ!!」

 

「おい、今は弄ばれている姿を想像して興奮しただろ」

 

「……してない」

 

このやり取り……本当に、何度目になるのでしょうか?

もう突っ込みませんが、っと言うか面倒なので突っ込みたくないですが、時と場所くらいは考えて欲しいです。

ともかく、コホンっと一息を置いたダクネスは続きを話始めました。

 

「心配を掛けたのは悪かった。ともかくまずはこれを見て欲しい」

 

そう言ってダクネスが懐から取り出したのは、一枚の写真です。

カズマがそれを受け取り見つめているのですが……

 

「なんだこれ?ってイケメンの写真か?」

 

カズマの言葉を聞いて私が覗いて見ますが、そこには爽やかなイケメンの姿が描かれていました。

写真を見るからにはすごく良い人そうなのですが……一体彼は誰なのでしょうか?っと言うかこの人が居ると何が大変なのですか?

ダクネスが騒いでいる意味が分からず、首を傾げているとビリッと紙が破けるような音が聞こえて来ました。

私が音の方向を見れば、カズマが受け取った写真を破こうとしていました。

 

「カズマ!お見合いの写真に何をしているんだ!?そんな事をしたら、お見合いを断れなくなってしまうだろうが!!」

 

「あ……いや、悪い。無意識に手が動いてしまって……」

 

無意識のうちに破こうとしたんですね……

なんですか、そのイケメンへの拒絶症状は……

 

もしかして、未だにちょっとイケている男に幼馴染を寝取られたのを引きずっているのですか?

婚約の約束したって言ってましたけど、それは小学生の頃の話ですよね……悪いですが、彼女は全く覚えてないと思いますよ。

それにあれはイケメンと言うより不良でしたし……性格はともかく顔だけは良かったですがね。

まあ、それは一旦置いておくことにして、今ダクネスが重要な事を言ってましたよね。

えっと、確か……

 

「えっと……ダクネスはこれを、お見合い写真って言いましたよね」

 

そ、それです。後のカズマの発言の方に意識が言って忘れかけていました。

ナイスです、めぐみん。

 

「そ、そうなんだ!アルダープめ、小賢しい手を使ってきた!!言う事を聞くとは言ったものの、無体な要求をすれば父が蹴るのは目に見えていた。だからああいったのだが……まさかこのような手段を使ってくるとは……」

 

なんかかなり狼狽えていますね……

まあ、お見合いをされるとなれば多少は狼狽えるかもしれませんが……

っと言うよりいまいち事情が分かりませんね。今分かってるのは、ダクネスが写真の人物とお見合いする事となっていて、それはあのクソ領主が関わっていると言う事くらいです。

 

「えっと、ダクネス取りあえず落ち着いて説明してくれませんか?」

 

「悪いがそんな口早に話されても、こっちはなんも理解できねぇよ。マナの言う通り落ち着いてから説明してくれないか?写真の方はアクアに……ってまだロープに縛られてたか。取りあえず、俺はアクアのロープを解くから、マナはダクネスを落ち着かせてくれ」

 

私は素直に従うことにして、ダクネスを連れてソファーに座らせました。

すると、話を聞くためかルリやめぐみん、先ほどまでお茶の準備をしていたキャロ(今日はバイトは休みのそうです)が集まってきました。

そして数秒程たった辺りでしょうか?息を整えたダクネスがゆっくりと口を開きました。

 

「写真に写っているのはアルダープの息子だ。アルダープの奴め、自らが私と結婚したいと申し出ても父に断られるのが分かっていたから、こんな要求をしてきたんだ」

 

「えっと、その……ダクネスのお父さんに頼んで息子との結婚は断れないのですか?」

 

この国の制度やダクネスのお父さんの地位は分からないのですが、断れるのであれば父、息子関係なく断れると思うのですが……

めぐみんや、ルリも首を傾げていると言う事は制度とかの問題ではないと思いますし……父より息子の方が地位が高いってのもないと思いますよ。

写真を見る限りでは、若いようですし……

 

「その……実は父は息子との結婚については乗り気なんだ。実力は高くて、アルダープとは違って黒い噂は一切なくてな……父は彼を高く評価しているんだ」

 

「そういう事なのですね……でもどうして息子なんかとの結婚を申し込んだのでしょうね?息子に綺麗な嫁を……っと考えるような男には見えませんでしたし、何よりダクネスを非常に熱心に見つめていましたからね」

 

「……あれは、事案もの……」

 

あっ、ルリもそう思ったのですね。

あれは私達が薄着で出歩いている時のカズマの視線を軽く超えていましたからね……

 

でも一番の疑問はめぐみんの言う通り、なぜダクネスに息子との結婚を申し込んだっと言うところですね。めぐみんの言う通り息子の事を考えるような男には見えませんでしたし……

むしろ、私のような自分の欲に率直な人間に見えるんですよね。

 

クソ領主にどんな魂胆があるのかっと皆で首を傾げていると、ダクネスは机に広がった設計図に目が移ってました。確かそれはカズマが商品の試作に書いていたものだと思いますが……

ダクネスに取っては物珍しいみたいですね……そう言えばめぐみんのたまに覗き見て質問していましたね。

 

「……これは何なんだ?奇妙な物が掛かれているが」

 

「ダクネスが居ない間に、カズマが金策として作っていた商品の設計図ですよ」

 

「予定ではそれをウィズの店に置いてもらうらしいです」

 

めぐみんと私の説明を受けたダクネスは、さらに興味深げに見つめながら言いました。

 

「どういったものを作ろうとしているのかは分からないが……カズマは運が良かったから商売をやるのには向いているかもしれないな」

 

「本当に俺って運が良いのか…………」

 

後ろの方から突如響いてきた声、その声に私やめぐみん、ダクネスもビクッと肩を震わせました。

ゆっくりと声のした方向を向けばそこにはカズマがこちらを見つめていました。どうやらアクアのロープを解き終わったようですが……なぜか私は顔から流れ出る汗を止める事は出来ませんでした。

 

「最近すごく疑問に思ってるんだけどな……本当に俺って運が良いのか?だって運が良いのなら、もっと役立つ仲間に恵まれてるはずだし、借金なんか抱えずに済むはずだし、一週間に四~五回も頭を下げたりせずに済むよな。もしかしてギルドカードが壊れてるのか?俺のギルドカードだけ不良品なのか?そうなんだよな?そうに決まってるよな……」

 

そう言うカズマの顔には一筋の涙が……

え……そ、その……

 

「カ、カズマごめんネ。ボクがそんな迷惑を掛けテるなんテ思エなくテ……」

 

「キャルは良いんだよ……お前がやったのは一度だけだろ?それなのにあいつらは……」

 

そう言いながらこちらをちらりと見つめるカズマ……

だ、ダメです。カズマに膨大な迷惑をかけ続けた自覚がある分、耐え切れそうにありません。

 

「そ、その今回の件はマナを助けようとした結果であってな……別に迷惑を掛けようと思っているわけではないんだ!だから、その……」

 

「そ、そう言えば、マナの疑いを晴らすために、ゆんゆんと出掛ける約束をしていたのを忘れてました!!それでは、私はちょっと出かけて……」

 

「私はカズマに誘われたからノーカンですよね!カズマの運の悪さとは関係ないですよね!?」

 

「別に言い訳なんかしなくても良いんだよ……ただ、俺の運が本当にあるのかって言う事なんだから」

 

そう言って唯々私達をじっと見つめるカズマ……

や、やめてください。そんな目で私達を見つめないでください。

罪悪感を刺激されて居たたまれなくなるんですよ。どうやらそうなっているのはめぐみんやダクネスも同じようで、微妙な表情をしていますし……

取りあえず意を決した私、いや私達は………………………………

 

 

 

「ようやく見つかったわ。これで写真を直せば…………ってどうして三人でカズマに土下座をしてるの」

 

取りあえず、アクアもした方が良いと思いますよ。

この中では私に次ぐほどの迷惑を掛けていますから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……つまり、話を纏めるとこう言う事か?危険な冒険者稼業をやめさせたかったダクネスのお父さんは以前からお見合いのセッティングをしていて、ダクネスとしてはまだ結婚したくないから今までは全て蹴っていたっと……」

 

アクアを含めてカズマへの土下座を終えた私達は、再びダクネスの何が大変なのか話し合うことにしました。

そこで分かった事は、ダクネスのお見合いが今日の昼からあるっと言う事と、それを断る事は出来そうにないって事ですね。

それで、今はなぜ断れないのかの説明を具体的に受けて、その要約をカズマが確認の意味も込めて話していました。

ちなみにアクアはカズマに言われて写真を治すために米粒を持ってきたようなのですが……そのまま修復を始めています。カズマとしては自分で直すつもりだったのでしょうが……

先程の話が応えたのか、それとも単純に面白そうだからやっているだけなのか……実態は分かりませんが、アクアは手先が器用ですから、向いていると思いますよ。

なんか、カズマに聞いた話だと宴会のスキルを全て取ったみたいですし……

 

「……ん、そうだ。私は現状のままで満足しているし、もしこのまま活躍でもして名が売れるようになれば、きっと魔王軍の幹部が私を捉えに……」

 

「さて、ダクネスをどうするか話し合うぞ」

 

なんかこの先の展開が容易に読めたので、カズマの指示に従って無視を決め込み、どうしたものかと話し合いを始めようとします。

ちなみに無視されたダクネスは「んっ……!!さ、さすがカズマ!!放置プレイが上手い!!」っと興奮した面持ちで言っています。本当にこの変態は末期ですよね……

まあ、突っ込まずに無視しますが……

 

「それにしても、厄介なことになりましたね。今まではダクネスのお父さんが勝手に申し込んだお見合いなので断る事は出来ましたが、今回はダクネスがなんでもすると言う約束によるお見合い。結婚はともかくお見合い自体を断るのは難しいのではないでしょうか」

 

めぐみんの言う通りなんですよね……

いきなり結婚しろとかなら、相手の性格を知らないやとか、ダクネスのお父さんはそれなりの地位が有るみたいなので無礼だとかで、断る理由は沢山あるのですが……お見合いから始めるってのが嫌らしいですよね。

きっとお見合いに出ればほぼ結婚は確定の出来レースのような感じになっているでしょう。なにせ、相手がよほどのクズでもない限りはダクネスから結婚を断るのは難しいですからね。

それにダクネスは、性格はともかく姿だけは綺麗ですからね。今は、ドレスを着てるせいでそれが一層引き立っています。ほんと性格だけが……

まあ、そのことに関しては私は人に言えた口ではないのでやめる事にしましょう。

 

「っと言うか、ダクネスのお父さんはどれくらい偉いのですか?領主の、しかも何でも聞くと約束したうえでの命令を蹴る事を可能なんて…………」

 

ダクネスの地位が気になった私は、疑問を口に出したのですが……

言い切る前にルリに口を塞がれてしまいました。

 

(る、ルリ!?何をするのですか?)

 

(……相手の素性……詮索するのは……失礼……)

 

た、確かにそうなのかもしれませんが、この問題を解決するにはダクネスの事を知らなければ不可能だと思いますよ。場合によっては、そのお父さんを脅すと言った手が使えるかもしれませんし……

ともかく、ルリが咎めるような視線を向け始めたので素直に「あまり関係なかったですね」っと言ったのですが、ダクネスは私の言葉を聞いても何か思いつめたような顔をして悩み始めました。

えっと……そんなに悩むようなことなら無理に聞いたりはしないのですが……

ダクネスはそんな私の意も知らず、決心したような顔をすると話始めました。

 

「実はな……その、私は本名を、ダスティネス・フォード・ララティーナと言う。そ、その……そこそこ大きい貴族の娘だ」

 

「「「「えっ!?」」」

 

ルリとキャロの除いた私達四人は声をあげて驚いてしまいました。

いや、だって貴族ですよ……アクアが女神だと知った時の同じくらいの衝撃です。

ルリも声をあげなかったものの、少し驚いた顔をしていますし……キャロは貴族ってものが良く分からないのか首を傾げていますね。

ともかく、事実を白状したダクネスは少しだけシュンとしていますね……たぶん今までに行った際に似たような反応をされたからだと思いますが、その後の関係はともかく驚くのは仕方がないと思いますよ。

 

「ダスティネスって……そこそこどこか、王国の懐刀って呼ばれてる大貴族ではありませんか!!ダクネスは本当にあのダスティネス家の娘なんですか!?」

 

めぐみんの追及にダクネスはゆっくりと頷きました。

えっとどれくらい大きな家なのか分かりませんが、王国の懐刀って話を聞くに国でも一二を争う貴族なのは間違いなさそうですね。

つまりは、ダクネスの家はこの国でも有数のお金持ちと言う事で…………

そも娘が無防備に目の前に……これはチャンスですよね。

私が思わず口元に笑みを浮かべると……

 

「……ダスティネス家は倹約で知られている……余計なお金は持ってない……」

 

「そうですか、それは残念……あっ……」

 

「マナ、お前……今、ダクネスの誘拐を考えていただろう」

 

「そ、そんな事は考えている訳ないじゃないですか!もう、カズマは冗談が上手いですね」

 

み、皆の嘘を言えっと言った目がとても痛いです。

っと言うかルリはついに私の考えが読めるようになってきたのですね。

まあ、カズマにお前のお金に関する考え読むのは、生肉を目の前にした野獣の考えを読むのに等しいなんて言われてので、それほど難しい事ではないのでしょうね。

それを言った際に、近くにいた友人一同が頷いていましたし……

 

少し考えを読まれにくくしてみようっと決意をしていると、何者かに両肩を掴まれました。

急いで正面を見直すと、そこには若干息を荒くしているダクネスが居ました。えっと……私に何か用がありますか?

 

「マナ!実は父は私を溺愛していてな。私が誘拐をされたとなればきっと家にある物全てを売り払ってお金を用意するはずだ!!だから、私を誘拐して、それは口に出すのをおぞましい目に合わせて、あられもない姿の写真を……んっ……!!くっ……さぁ、早く私を誘拐して……!!」

 

「するか馬鹿!!この守銭奴を煽るんじゃねぇよ!この馬鹿は本当にやりかねないんだからな!!」

 

話を聞いた私が実行に移す前に、カズマはダクネスの頭を素早く叩きました。

ダクネスはそれに対して嬉しそうな表情を浮かべ……本当に手遅れですね、この変態。

それにしても、私はルリとめぐみんに押さえられてしまったので身動きが取れないのですが……いくら何でもそれはやり過ぎじゃありませんか?

流石にこんな犯人が丸分かりの所ではやりませんよ。やるならダクネスが一人離れた所を……ってこんな事を考えている時点で私に抗議する資格はありませんね。

 

「取りあえず、話は戻すが、ダクネスはそのダスティネス家って言う大きな貴族のお嬢さまなんだな。それにしてもララティーナか……可愛い名前をしてるな」

 

「ら、ララティーナと呼ぶな……っ!!」

 

ダクネスが涙目で顔を真っ赤に染めながら叫んでいます。

別にカズマの言う通り可愛い名前なので恥ずかしがる必要はないと思うのですが……

 

「まあ、大きな家の貴族だろうと、ダクネスは私達の仲間である事には変わりないので別に構いませんよ」

 

「めぐみん……分かった。これからもよろしく頼む……」

 

そう言って安心したように微笑むダクネス……

もしかして、今まで正体を明かした結果避けられたりしたのでしょうか?

正直、私はこの世界に来たばかりなので、貴族なんて良く分からないので避けたりはしないですがね。むしろ大貴族であるダクネスは良い金づるに……痛っ!?

か。カズマなんで私の足を踏んでいるんですか!?めぐみんとルリに押さえられているので身動き取れなくて、逃れられないのですが!?

 

「か、カズマ。その足が痛いのですが……」

 

「少しは自重をしろ、この守銭奴……」

 

ああ……やっぱり考えを読まれていたのですね。

カズマは心底呆れたような顔をした後に足を放してくれました。

 

とにかく、ダクネスの素性の話はこれまでにして、本題はどうやってダクネスのお見合いを断らせるかって話ですよね。

倹約をしてるって話を聞く限り、脅せるような真っ黒なところはなさそうですし……正当法なんてものもないでしょうし……

本当にどうしましょうか?

 

取りあえずカズマに相談をしようと思って……カズマの方を向いた私は、思わず顔を背けてしまいました。だって不気味な笑みを浮かべてるのですよ……きっとこれはろくでもない事を考えついたのでしょうね。

まあ、私にカズマを止められる訳なんてありませんし……今のは見なかった事にしましょう。それが最善手です。

 

 

 

 

 

 

 

 

「私はこれからゆんゆんとの約束があるので出掛けますが……ダクネスの事は頼みましたよ」

 

そう言って玄関にめぐみんは向かっていきますが……

こちらの事が心残りなのか、何度もこちらを振り返った後に出ていきました。

どうやら、カズマが何かしでかさないか不安のようですね……まあ、その心配は最もですが。

絶対にこの男は何かやらかしますよ……めぐみんが出ていくときにまた不気味な笑みをしていましたし……

 

「……それで……ダクネスのお見合い……どうする?」

 

「それなら俺に良い考えがある」

 

だから俺に任せろっと言い放つカズマ。

取りあえず聞いてみたのですが……要約すると、今回のお見合いを断ってもダクネスのお父さんはまた勝手にお見合いのセッティングを始めるだろう、だったらいっそのことお見合いをしてみないかっと言う考えでした。

勿論そのお見合いは成功させるわけではなく、ダクネスが家の名誉を傷付けない程度の暴れる事で相手の方から断らせるとの話です。

確かにそうなればダクネスのお父さんも慎重にならざるを得ないでしょう……何度もお見合いに失敗するようなら、そのうち変な噂がついてお見合いする相手が居なくなる事態になりかねませんからね。

そして、ダクネスだけをお見合いに行かせるのではなく、私とアクア、そしてカズマが使用人としてついて行って、さりげなく悪い方向にフォローするとのことです。

ちなみにルリは何人も連れて行くと怪しまれるので自宅に待機との話ですが……やっぱり怪しいですね。

だって、連れて行くのなら問題を起こしかねない私やアクアではなく……あれ?ダクネスを悪い方向に持っていくのならむしろ正解……

私の感じた不安は気のせいなのですか?

 

「よし、それで行こう!それが成功すれば、毎度親父の元に行って張り倒す必要がなくなる!!」

 

ダクネスは親を張り倒しているのですか?

ダクネスのお父さんが少しだけ不憫です。

ともかく早く準備を始めた方がよさそうですね。まだ嫌な予感が消えたわけではないのですが……

カズマの案には納得できたので、とりあえずは従っておくことにしましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

カズマside

 

俺の説明に納得できたのか、ダクネスとアクアは意気揚々とマナは訝しみながらも準備に取り掛かった。結構簡単な奴らだ。

俺が一回お見合いをさせて失敗させようと言ったものの、それはあくまで表向きの筋書きだ。俺の本当の目的はダクネスのお見合いを成功させること。

もし、ダクネスが結婚すれば、俺のパーティから問題児が一人消える事となり、さらにダクネスの親父さんも喜んでくれる。一石二鳥とはまさにこのことだ。

一番の障害になると思われるルリは言い訳を付けて排除……

 

「……それで……本当の目的は?」

 

「る、ルリ?何を言ってるんだ。俺はダクネスのお見合いを失敗……」

 

「……それは、口実……それが本当の目的なら不気味な笑い……カズマはしない……」

 

もしかして俺が笑ってたのを見ていたのか……

不味い、どうしよう。ルリが怪訝な目で俺を見つめているし……誤魔化しは通用しないだろうな。

もうこうなったら素直に話してしまう。ルリがどうしてもいやだと言うのなら、諦めざるを得ない。

 

「ルリの考えてる通り半分は厄介払いだが……」

 

「……半分は?」

 

「残りの半分は……ダクネスの親父さんの気持ちを考えて見ろ」

 

親父の気持ち?と少し首を傾げたものの、直ぐに俺の言いたい事を理解してくれたのか、ルリは何とも言えない微妙な表情となった。

まあ、ルリがそんな顔をするのは仕方がないと思う。俺だってダクネスの人生は彼女自身が決めるべきで親が手を出すべきではないと思ってるさ、思ってるけど……そのダクネスの冒険者を続けたい理由がな……

この事実を親父さんが知っているかまでは分からないが、もし知ってるとすれば止めようとして当たり前の事だからな。

ともかく、その話を聞いたルリは……

 

「………………ダクネスの件は……カズマに一任する……だから、後悔しない選択をしてね……」

 

そう言うと、スキルを使ったのか何処かに消えて行ってしまった。

後悔しない選択か……俺はあいつらの所為でいつも迷惑をしてるんだ。だからダクネスが居なくなったところで後悔なんてするわけがない。

それなのにどうしてだろう……いつまでのそのルリの言葉が耳の残ったのは……

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