街の中央の通りに位置する場所の建てられた巨大な建物、ダスティネス邸。
あの後、準備を終えた私達はダクネスによってそこまで連れて来られたのですが……
「ララティーナ、本当か!?本当に、今回のお見合いは受けてくれるのか!!」
そう言って興奮気味にダクネスの両手を掴むのは彼女のお父さんです。
大貴族って話だったので厳しい人かと想像してたのですが……これを見る限りは娘には甘いようですね。
「本当です、お父様。このララティーナ、この度のお見合い、お引き受けしようと思います」
(おい、今ダクネス自分の事をララティーナって言ってたぞ)
(本当にあの名前なのね。それにしてもあの言葉遣い……)
(ふ、二人とも笑っちゃ駄目ですよ。ダクネスは今お父さんと話を……)
(マナ、お前が一番笑いを堪えてるじゃないか……)
だ、だって仕方がないじゃありませんか。
あのダクネスが、何時もとは違ったお嬢様じみた言葉遣いを使っているのですよ。
正直声をあげないように堪えるので限界です。
しかし、ダクネスには私たちのそんな様子が見えてしまったようで、顔を真っ赤に染めてうつむいています。
「ララティーナ、此処にいる三人は」
「わたくしの冒険者仲間です。今回のお見合いにメイドと執事として同伴させようかと」
「しかし……」
ダクネスの言葉にお父さんは顔をしかめています。
たぶん、執事やメイドとしての訓練を受けていない私達が同伴し不備を起こされて、ダクネスや家の名が傷つくことを恐れてるのですね。
でも今回はそれが目的ですし……どうやって説得をしたものか……
取りあえず、アクアは戦力外なので私とカズマ、そしてダクネスで何か良い理由を考えないと……
私がそう思って相談しようとした矢先でした……何か考えているのかカズマが前に一歩出たのです。
そして……
「初めまして、私は日頃からララティーナお嬢様のお世話になっている冒険者のサトウカズマと申します。今回の件ですが、もしお嬢様が結婚となれば、一介の冒険者に過ぎない私達は、二度と顔を合わせることは出来なくなってしまうでしょう。ですから、お嬢様の仲間として、どのような方と結婚なされるのかこの目で拝見したいのです。無理な望みとは承知しておりますが、どうかお願い存じ上げます」
そう言って丁寧な動作で頭を下げるカズマ……
えっと……あなたは一体誰ですか?偽物じゃありませんよね?
あの後、ダクネスとの同伴が許される事となった私達は、衣服を見繕っている間、応接間で待たされることとなりました。
それにしても、大貴族だけあって部屋には高価そうなものが所狭しと置いてありますね。
例えばこの絨毯、私の見立てでは五万くらいはあるんじゃないでしょうか。他にも高そうな物があるなかで……
「マナ、この絵画はどれくらいの値段がするんだ?」
そう言ってカズマが指をさすのは、ちょうど私が気になっていた絵でした。
なぜその絵が気になったのかと言えば……ここにある物なかで唯一高そうな気配を感じないんですよね。そのため、高価な物で並べられたこの部屋では異質に見えてしまいます。絵自体も落書きのような感じですからね。
ともかく、私の言葉を待っているカズマに答えを教えましょう。
「全くお金の気配がないですね。ただの落書きだと思いますよ。ただ額縁などが良いものなので五千エリスといったところじゃないでしょうか」
「なるほどな……いわゆる前衛芸術かと思った」
いや……カズマには悪いですが、絵心のあまりない私が見ても、それはただの落書きだと思いますよ。
たぶん、思い出の品なので飾ってるだけだと思います。
「ねぇ、それが唯の落書ってのは私も同意見なんですけど……マナの言った値段まですんなりと信じて大丈夫なの?私的にはもうちょっと安いと思うんですけど」
「それは心配ない。マナは物の値段を見極めるのを特技にしていてな、こいつの鑑定は数百円単位まで正確に当てる事が出来る。実際に骨董品を百パーセントの確率で本物と偽物を見極めているからな」
珍しくアクアが私を感心したような面持ちで見つめていますね。
まあ、この能力にはかなり助けられていますからね。よくやった話では安く売られている本物の骨董品を手に入れて、それを高値で売り飛ばしたりしました。これが結構な儲けになったんですよね。
後はなんか噂が広がったようで、有名なある番組からプロでも見分けられなかった偽物の鑑定を依頼されたり、偽ブランドを取り締まってるところにスカウトもされました。
まあ、私のは知識とかではなくて、勘みたいなものなんですが……なぜか外した事がないんですよね。
って昔の事を思い出しているとダクネスが部屋に入ってきました。
「すまない、少し待たせてしまったな……って三人とも、どうしてその絵をまじまじと見つめてるのだ。それは私が幼い頃に描いた物で……恥ずかしいからそんなに見ないで欲しい」
なるほど、可愛い娘の描いた絵だから飾っていたのですね。
もしかしてダクネスのお父さんて子煩悩なのでしょうか?ダクネスの幼い頃の絵をこんな目の付く場所に飾ってますし、先程お見合いを承諾した際もとても嬉しそうにしていましたし……
ともかく服はまだかと待っていると、すぐに執事服とメイド服を持ったメイドさんが部屋に入ってきました。
「こちらがメイド服と執事服です。カズマ様はお隣の部屋で、アクア様とマナ様はこちらの部屋でお着換えください」
メイドから執事服を受け取ったカズマは隣の部屋に行ったので、私達はメイド服を受け取って着替え始めました。
うん、どこからどう見ても普通のメイド服ですね。カズマの持っていたものはもっと露出が多かったような気がしますが……たぶんあれはメイドカフェとかで使ってる物だからでしょうね。
特にスカートなんかは異様な短さでしたからね……って言うかカズマ、あれを誰に着せるつもりで買ったのでしょうか?
まさか私ではないですよね?まあ、お金を貰えるのであれば、やぶさかではありませんが……
何度か、巫女とかのコスプレをしたことがありますし……
って、そんな事を考えてるうちに着替えたカズマが帰って来ましたね。
「二人とも、似合ってるじゃないか」
私達の姿を見たカズマはそう言って珍しく褒めたたえますが……その目からは中身も伴っていれば良いのにっと言う意思が感じ取れます。
まあ、否定のしようがないので突っ込まない事にしましょう。
それよりも執事服を来たカズマなのですが……正直に言ってしまうと微妙です。似合っていないと言うわけではないのですが、では似合っているかと言われると素直に頷くことも出来ず……
非常に感想に困る装いです。
「これで準備は出来たので行く事にしましょうか……確かお見合いはこの家でやるのですよね」
「ああ、そうなっている。三人とも手はずは分かっているな?変な事はしでかさないようにしてくれ。流石に庇いきれないないからな」
まあ、相手はこの地域の領主の息子ですからね。
流石の私でも相手を選んで金を奪い取りますよ。まあ、欲が勝った時は分かりませんが……お見合いでそんな事はないでしょう。
ともかく、頷いた私達はダクネスに連れられて玄関に行く事にしたのですが……なんか沢山の使用人を引きつれて歩くダクネスを見ると、改めてお嬢様だって事を認識しざるを得ません。
アクアが女神だったり、めぐみんが学園でトップだったり、ダクネスがお嬢様だったり、このパーティ意外性があり過ぎませんか?
この調子だとルリとかも思いがけない正体がありそうで怖いですよ。
まあ、私の考えすぎだとは思いますが。
「これは、なかなかの物のようね……」
アクアが廊下に置かれていたツボの一つをまじまじと見つめています。
確かに他のツボとは違って高そうな気配がするツボですね。
「そんなに高いのか?マナ、これはどれくらいするんだ?」
あっ、カズマ。
そう言う高いものを不用意に持ち上げない方が良いと思いますよ。
高価なものはほんの少し欠けただけでも、馬鹿みたいに値下がりするんですよ。
「あまりツボに触れないでくれ。これは父が大切にしているツボで……」
そう言って、ツボにある取っ手に手を伸ばすダクネス。
そしてカズマから奪い取ろうと……ポキッ!!
い、今凄く嫌な音がしませんでしたか?なぜかダクネスの手には取っ手だけがあるように見えたのですが……これって非常にまずいですよね?私の見立てでは百万エリスはするツボですし。
まあ、私やアクアの作った借金と比べれば些細な額とは思いますが……
取りあえず、私とアクアはそっと二人から距離を取ります。
だって、私達は何を悪くありませんよね。巻き添えを喰らうのはごめんです。
「どどど、どうしよう!これは父の物なのに……!!」
「落ち着け、こうなったら案は三つだ!一つはお見合い相手が来た時に打ち明ける、お客さんの前だからそれほど怒られないはずだ!!二つ目は米粒とかを使って一時的な修復をしつつ、あとで親父さんが触った時に落とすような場所に配置換えだ。そして最後にして一番安全と思われる案だが、マナに金を積んで責任を被ってもらおう!!ただしこの場合はツボ以上のお金が必要となる!!」
「流石カズマ、こういった悪知恵だけは頼もしいな!!よし、お見合い相手の前で打ち明けても帰った後に怒られる可能性がある!それにマナの方はそんなお金を今すぐには用意できない!此処は米粒を使って修復しよう!!」
折角、お金を貰えるかと思ったのに残念ですね。
取りあえず、私たちの隣に控えていたメイドさんが言いたいことがありそうにしていますね。
カズマとダクネスが米粒で取っ手をくっつけて配置換えをしている最中についに限界が来たのか、ついに一言を言いました。
「あの……お嬢様に変な事を教え込まない様……」
取りあえず私が一言だけ返すとすれば、目の前にいるお嬢様はすでに手遅れになってると思います。
今屋敷の玄関には使用人が並び、その中央にはダクネスとそのお父さんが立っています。
私達はそのそばに居るのですが……まさかこういった光景を実際に目にする機会があるとは思いませんでしたよ。見たことがあるのなんて映画とか漫画の中くらいでしたからね。
流石、異世界と言えば良いのか……いや、異世界でもチートを持ったわけではない私は見る機会なんてないと思ってましたからね。
ともかく、このままお見合い相手が来るのを待っていた時でした。
「しかし……お前がお見合いを受け入れてくれるなんて嬉しいよ。アルダープの奴からお見合いの話を持ちかけられた時は何事かと思ったが、あいつはともかく、息子のバルターは本当に良い男だ。きっとお前を幸せにしてくれるはずだ」
そんな事を言いながらダクネスににこやかな笑みを浮かべるお父さん。
それに対して、顔を俯かせているダクネスはプルプルと肩を震わせています。
あの……まさかダクネスは今此処で化けの皮を剥ぐつもりじゃ……
「いやですわね、お父様。わたくしはお見合いを受けると言いましたが、結婚するなんて一言も申しておりませんわ。今更止めようとしても遅い。ふっふっふっ、ぶっ壊してやる!二度と私にお見合い相手が出来ないように、滅茶苦茶に引っ掻き回してやる!!」
完全に暴走してますね、このお嬢様。
家の名前には傷つけないっと言う目標は頭の中から消えているみたいです。
ダクネスのお父さん、この世の終わりのような表情をしてますよ。少しはお父さんの気持ちを考えて、やんわりと断られる程度に収めてくださいよ。
って、そんなこんなしてる内にお見合い相手が来たようで、玄関がゆっくりと開かれようとしています。それに対して、ダクネスは何を考えているのか腕を構えて仁王立ちをしています。
このお嬢様、本当に何を考えてるのですか!?
「バルターよ、よく来たな!私の名はダスティネス・フォード・ララティーナ、これからはダスティネス様と呼ぶが……」
流石にこれは限界だ。
そう感じた私とカズマがララティーナの後ろ首に手刀を落として、強制的に言葉を遮りました。
私とカズマが強制的にダクネスを止めた後、私達はダクネスが初めてのお見合いっと言う事で緊張しているようなので、少し落ち着かせる時間が欲しいと言って隣の部屋にダクネスを連れて行きました。
ちなみに、待たせる事となっているお見合い相手の方はダクネスのお父さんが対応しています。
「二人とも、どうして邪魔をするんだ!あともう一歩でお見合いをご破算にできたのだぞ!!二人は私に協力してくれるのではなかったのか!?」
「あのまま続けたら、お見合いの失敗どころの話じゃありませんでしたよ」
「最悪、勘当されてもおかしくなかったな」
「それがどうしたのだ。もし勘当されたとしても、むしろ本望だ。仮に父から勘当をされれば、行き先が不安となり無茶なクエストをやって敵に捕まるかもしれない……いや、奴隷として売り飛ばされ、クズなご主人様にとても口では言えない命令を受けて……んっ!!ともかく、私はそんな人生を送りたいのだ」
「もう駄目だこいつ。おいアクア、女神の力でこいつの病気を治せないのか?癒しの女神なんだろ?」
「流石の私でも、これを直すのは不可能だと思うの。たぶん人生をやり直すくらいはしないと……」
ダクネスの業はそこまで深いものなのですね。
ダクネスのお父さんに聞いてみたいのですが、どんな育て方をしたらこんな娘に育つ……
いえ、たぶんこれは親は関係ないと思いますね。むしろそんな事を言ったら泣き出す可能性があります。
カズマの両親もどこで育て方を間違ったのかと涙を流していましたからね。
その一因に私が迷惑を掛けたことがあると思うと、いたたまれなかったですよ。
それにカズマが「本当にお見合いを止めようと思った、俺が間違いだったか?」と小さく呟いていますが、本当にとか言ってるって事は本来の目的が別にあったんですね。
私の嫌な予感が的中しましたよ。取りあえず後でとっちめることにしましょう。
「それに、あの男は私のタイプではないのだ。父がお見合いを持ってくる男にはロクでもない奴しかいなくてな」
「あの男が、そんなに駄目でしたか?話を聞いた限りではすごく良い人らしいんですが……ダクネスはどのあたりが気に入らないのですか?」
まあ、私は話を聞いただけなので、その人の本質まで分からないと思いますが、それはダクネスも同じはずですよね。
本当に何が気に入らないのでしょうか?
私もカズマもそれが分からず、首を傾げていると彼女はその理由を語ってくれました。
「まず写真から分かる通り、顔がいまいちだな」
そうですか?
これでいまいちなら、この世の全てのイケメンがいまいちになると思いますよ。
「それに、評判も全く駄目だ。聞く話ではとても人当たりが良く、平民だからと言って差別はせず、こちらに非があれば素直に頭を下げ、家臣が失敗しても怒らずに、一緒に失敗の原因を考える変わり者らしい」
………………………
なんか、ダクネスの言いたいことが読めてきました。
「また、剣術にも優れ、頭も良い。まるで絵に描いた理想のような貴族だ。先日の水害にあった者に配給を施したとも聞いている」
その水害ってアクアのやったやつですよね。
まさかそんな事をやっていようとは……ともかく、なんでダクネスがあのバルターと言う男とのお見合いを拒絶しているか分かりました。
でも、それって……
「ねぇ、ダクネス。聞く限りだとすごく良い男に見えるんだけど、どこが不満なの?」
アクアには分からなかったようですね。
凄く簡単な事なのに……
ともかく、その言葉を聞いたダクネスは力説を始めました。
「どこが?だと!!全てが不満に決まっているだろ!!平民に頭を下げるとはなんだ!?そこは男であったらそく拷問!綺麗な女であったら、ベッドに連れて行き手籠めにするところだろう!!それに家臣にも怒らないとはなんだ!家臣は怒られたくて失敗をしているのだぞ!!怒らなくてどうするのだ!!あいつは馬鹿なのか!!」
「馬鹿はお前だ!!」
ゴツンっと本気でダクネスの頭を叩くカズマ……
しかしダクネスの身体が硬すぎたため、手を痛めたのか涙目になって抑えてますね。
たぶん私でもああなると思うので、これからはダクネスを不用意に叩かないように気をつけないと……
「それに私の好みタイプはあのように、出来る男とは違うのだ!!私の身体をじろじろと舐めるような視線を向けるスケベ心は必須条件であるし、出来るなら他の女にホイホイと飛んでいく意志の弱さがあればなお良い!!後は日頃から仕事をしたくないと言いのたまっている、人生を舐めきった心と、何か悪い事があれば世間が悪いという、自分の責任を絶対に認めようとしない心は必須だ。私はそんな男の元に嫁いで、……んっ!!くぁ……ッ!!」
「「そんな男なら、ここに居るじゃない」居るじゃありませんか」
「今のは俺に喧嘩を売ったって事で良いんだよな?」
「冗談なので、その構えはやめてください!!」
「謝るから!!二人そろって頭を下げるから、それだけはやめて!!」
カズマが『スティール』の構えをしたのを見て、私とアクアは必死に頭を下げます。
なにせ今は、メイド服に着替えたばかりで余計な物は一切持っていません。そんな状態でカズマの『スティール』を受ければ数回で全裸まで剥がれてしまいます。
私達が必死に謝ると許してくれたのか、カズマは構えを解いてくれました。
ちなみにその間ダクネスは確かにっと納得したような顔をしていましたが、すぐにその表情を変えます。
「ともかく、お前達が私の邪魔をするなら、私自身の力でお見合いをぶち壊してやる」
そう言って部屋から出ていくダクネス。
部屋に残される事となった私達は、早速カズマに尋ねてみることにしました。
「カズマ……それでどうするのですか?」
「どうするって……」
「先ほどの呟き聞こえてましたよ。何か別の目的があってこの計画を立てたのでしょう」
「聞こえてたのか……実は最初はダクネスをパーティから出すことを目的としてたんだが……」
「最初って事は、今は違うの?」
そう首を傾げながら問うアクア。
確かに最初にって事は少なくとも今は違うって事ですからね。
「最初は手の掛かる四人のうち一人が省けるって思ってたんだが……ルリに忠告されて少し考え直してみてな。それで、迷惑を掛けられるのはマナの所為で慣れてるからな。仲間が居なくなるのは寂しいって思ってお見合いを破断させようと思ってたんだが……」
「今のダクネスを見て揺らぎ始めてるって訳ですね……」
まぁ、しょうがないのかもしれません。
だって本人の願望があれですからね。とっとと結婚でもして、馬鹿をやらかさないように夫に首輪でもつけて貰った方が良いんじゃないかと思えてしまいました。
欲に率直なのは私と同じですが、その欲がひどすぎると思います。
「それで……カズマは結局どうしたいのよ?」
本当にどうすれば良いですかね?
アクア、貴方は女神なんですから、この迷える子羊を導いてくださいよ。
責任の全てを押し付けますから。
結局、あの後三人の話し合いで、私達のすることはダクネスが家の名前まで傷つけそうになった際のフォロー、それ以外は事の成り行きに任せ、私達は一切関与しないっと言う結論に達しました。
一種の責任逃れのような気がしますが、カズマをもってしてもこれ以上の案が出なかったのですよね。
だって、ダクネスの希望通りのお見合い相手なんて連れていたら、させるものかと相手をぶん殴ってしまう自信がありますよ。
ともかく、一つの結論を出した私達は、部屋に入ってダクネスのフォローを始めたのですが……
「勝負はどちらかが根をあげるまで!この私に参った許してくださいと言わせられるなら、言わせてみろ!もし、言わせられたのなら何でも言う事を聞いてやる!!」
木刀を片手にそう宣言するダクネス。
そしてそれに向かい合うのはダクネスのお見合い相手であるバルター。
どこからどう見ても決闘ですよね。でもお見合いで決闘って普通は父親とかとやるものなんですけどね。娘が欲しいのなら私を倒してみろとか言って……
まあ、そんな事よりもどうしてこんな状況となってしまったかっと言う事ですよね。
実は私達は先ほど通り、ダクネスがとんでもないことをした時だけ止めようとしてたのですが、あのお嬢様、止められるような事しかしなかったのですよね。
それで何度も止められたことで、我慢の限界に達したダクネスが暴走。その結果今の状況となっています。
「えっと……ララティーナ様、僕は騎士です。女性相手に手なんて上げらせません」
バルターはそう言いながら、どうしたものかと髪をかいてますが……
本当にこの男は、絵に書いたような貴族ですね。カズマだったら、知ったことかと平然と攻撃できますよ。本人は男女平等とか言ってますが、流石にそれは違うのではないかと思います。
まあ、カズマは鬼畜であることは置いておくとして、痺れを切らしたダクネスはバルターに突撃を始めましたね。
それを見てバルターもようやく決心がついたのか、木刀を構えなおします。そしてダクネスの振り下ろした木刀を容易にかわすと、手に持った木刀を腹の辺りに叩きつけました。
そしてホッと息を吐くバルター……これで終わったと思っているのでしょうね。ですがそれは甘いと言わざるを得ません。
だって、あのダクネスですよ。きっと……
「どうした、その程度か?この程度で私を降参させられるなんて、夢にも思わない事だな!!」
ほら、ダクネスはピンピンしてるじゃないですか。
って言うかこれってもう出来レースになってますよね。取りあえず、早く終わらせてくださいね。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
息を荒くして膝を地面につけたのは、バルター。
まあ、予想通りと言ったところですね。だって相手はダクネスですよ。アホみたいな硬さと馬鹿みたな体力を持ったダクネスです、木刀程度では倒せるわけがありません。
現にダクネスは全く応えてなく、それでどころか木刀で何度も叩かれたことに興奮して喜んでいます。
「どうした、これでお終いか?私はまだまだ大丈夫だぞ?」
うん、この場面だけ見たらダクネスが圧倒しているように思えるのですが……実態はバルターの攻撃を受け続けてるだけ、一切の反撃は出来ていませんからね。
流石はノーコンと言えば良いのか、疲れて動きが鈍くなっているバルターに一切当てられませんでしたからね。
ともかく、これでお見合いは破断と言う結果で終わりそうですね。
「……この程度で終わりか、詰まらんな。カズマ、次はお前の外道さをこの男に見せてやれ」
そう言って、木刀をカズマの方に放り投げるダクネス。
もしかして、散々行動を止められて事を根に持っているのですが?でもカズマは見た感じ乗り気ではなさそうですよ。なにせ、カズマが受けたところでなんの利益もないですからね。
ゆんゆんが言った言葉を借りるのであれば、決闘には対価が必要って感じですね。
しかし……
「ララティーナ様が認める男の力、僕も見て見たいな……」
バルターがそう呟きました。
なんかその言葉によって決闘を受けなければいけない雰囲気が出来て……カズマも面倒くさげな顔をしながらも木刀を手に取りました。
「ダクネス良いのか?外道を見せろとか言って、そんな事言ったら俺は一切の手加減をしないぞ?」
「それで構わない!むしろそうしてくれ!!さぁ、お前の全力を私にぶつけてくれ!!」
顔を真っ赤にして自分を虐めろと宣言する変態……本当、どうして彼女がお嬢様なのでしょうか?
漫画とかの読み過ぎたと言われるかもしれませんが、貴族のお嬢様ってお淑やかなものですよね?いくら何でも、これは酷いと思いますよ。
ともかく、カズマは片手を突き出して……
「『クリエイト・ウォーター』ッ!!『フリーズ』ッ!!」
うわぁ……
剣での勝負で魔法を使ってますよ。しかも真冬に水と冷気という鬼コンボ……
アクアやバルターのカズマを見る目が厳しくなっていますよ。しかもダクネスはドレス一枚だから水で透けて下着が丸見えになってますし……
でも丸見えに関してはカズマも予想外だったみたいで顔を真っ赤にしていますね。
「こんな真冬の中に女性を水浸しにするなんて……」
「ギルドの中じゃ、カスマやクズマって言われてる男よ。敵が相手ならこんなもんじゃ済まないわよ」
アクアの余計な一言の所為で、カズマに恐れを含んだ視線を向けるバルター……
アクア……後でとっちめられることになっても、私は知りませんからね。現に余計な事を言いやがってと顔に書いてあるカズマが貴方の事を見つめていますよ。
「……くっ!!やるではないか、カズマ!!こんな真冬に水浸しにした挙句に、こんな辱めを与えるなんて……だ、だが私の心はこんな事で屈しないぞ!!」
そうですね、喜んでますし。
嬉しい事で屈する馬鹿はそうそういないと思いますよ。
ともかく、それからは普通に木刀を使った近接戦に移ったのですが……これはバルターの時とさほど変わりなく、ダクネスの攻撃は全てかわされて、逆にカズマの攻撃は全て当たっていますね。
ですがこのままだとカズマは確実に負けると思います。だって徐々にカズマが疲れてきてますし……
カズマもそれが分かってるのか、徐々に焦りが見え始めます。
それにしても二連戦でも余裕なダクネスってどんな体力を…………なるほど、カズマはそうするつもりなのですね。では私も準備を……
「カズマ、息が上がってるぞ?それがお前の限界なのか?」
「何を言ってるんだ余裕、全然余裕だ。それよりもお前も息が上がってるんじゃないのか?」
確かにダクネスをよく見ると、木刀に叩かれた興奮によるものだけではなく、疲労からくる苦しみによる荒い息をしていますね。流石のダクネスは二人連続で木刀に叩かれ続けるのには応えるみたいですね。
おまけに今はカズマの魔法の所為で寒さにも耐えなければいけませんしね。
ともかく、私としては準備完了ですね。
「ダクネス。本音を言うとな……俺はもう限界だ。だから、次の一撃に全てを込める!!」
「来い!貴様の全てを受けきってやる!!」
両手を広げ、やれるものならやってみろとカズマの攻撃を正面から受ける意志を見せるダクネス。
それを見たカズマはダクネスに不敵な笑みを浮かべた後に、手に持った木刀を握り直し正面へと構えてから一気に突っ込みました。
そして……ダクネスは倒れました。
…………………………私による後ろからの木刀による一撃によって。
それを見たアクアとバルターはあんぐりと口を開けて信じられないと言った目で私を見ますが……アクアはこれで見るのは二回目じゃないですか。
ちなみに理由も前回と同じお金を貰えるからです。
「ふはははははっ、ダクネス、お前は馬鹿なのか?俺が宣言した後に正面から戦うわけがないだろうが!!短くない付き合いなんだから、それくらいは理解しろよ!」
「ちょっとカズマ!今のは流石にないと思うんですけど!!なんであんたはそんな人でなしな行動が平然とできるのよ!?って言うかマナはいつ指示を貰ったのよ!?」
たぶん、人の血が通ってないからじゃないですか?
ちなみに指示はハンドサインを通して貰いました。私にとっては目や他の動きからカズマの指示を受け取るのは造作もない事ですからね。
これでも幼稚園からの付き合いですからね。
それよりも、帰ったら早くカズマからお礼を……
「さ、流石カズマ……油断していたぞ……まさか一対一に見せかけてマナを使うとはな。だがそれでこそカズマだ。さぁ、二人纏めて掛かってくるんだ!!」
ちょ、このお嬢様どれだけ硬いんですか!?
結構強めの一撃を後頭部に入れたんですよ。それなのに平然と立ち上がってくるとは……もう、木刀じゃ倒せないんじゃないですか?私もカズマと一緒に疲れ果てる未来しか見えませんよ。
本当にどうしてものか……カズマも頭を悩ませているみたいですね。
って、何かいい案を思いついたのか私に手招きをしています。私はダクネスが突っ込んでこないか警戒しながらカズマの元に駆け寄りました。
(カズマ、何かいい案が思いついたのですか?)
(ああ、いい案が思いついた。だかそれにはマナの協力が必要になるんだが……)
(まあ、ここまでやっておいて一人逃れられるとは思ってないので好きにしていいですよ。それでどうするんですか?)
(その作戦なんだがな…………こうするんだよっ!!」
「きゃ!?……か、カズマ?いきなり何をするんですか!?」
カズマがいきなり右腕で私の首を絞めてきたのですが……一体何なのですか?
なぜか胸元の方には硬く冷たい感触を感じますし……
私が自分の胸元に視線を向ければナイフ(いざと言うときに隠し持っていた物)を持ったカズマの左腕が……
こ、この男は私に何をするつもりなのですか!?私は一応味方のはずでしたよね!?ま、まさかこの男は……
「ダクネス!マナの姿が見えるか!お前が馬鹿な事をすればどうなるか……言わなくても分かるよな?」
「な、なんだと……っ!!」
やっぱりこのクズ!そう来ましたか!!
本当にこの男の頭の中はどうなっているのですか!?よく、先ほどまで仲間だった人を平然と人質に使えますよね!!もう人間じゃなくて、悪魔の生まれ変わりとかじゃないんですか!?
アクアやバルターのカズマを見る目が非常に痛いものになってますよ!
って、私が慌ててる内にダクネスが突っ込んできました!良いです、そのままこのクズの頭を木刀でぶっ叩いてください!!
ってなんか、胸元が涼しくなったような……
「ダクネス、止まれ!!マナがどうなっても良いのか!?このままだとはマナは人目のある中で大変な場所をさらす事になすぞ!!」
「なっ、カズマ少し待て!私はどうでも良い、だからマナのそこを晒すのはやめてくれ!動くのを止める!カズマの指示があるまで身動きをしない!!だから、そのナイフをそれ以上動かすな!!」
えっと……私の何かが大変なことになってるのですか?
私が再び胸元を見れば、そこにはナイフで切り裂かれてブラが見える寸前にまで至ったナイフが……
って、この男は本当に何をやってるのですか!?あと少しで丸見えなのですが!!ほんの少し動いただけで私の大切なところが丸見えになるのですが!!
後で絶対にとっちめてやります!!このクズ男!!
「さぁ、早く木刀を捨てるんだ。そして土下座してまいりましたカズマ様、もう二度と逆らいませんと誓うんだ!!」
この男、本題から少しずれていませんか!!少し調子に乗り始めていませんか!?
「くっ……したくはない、本心ではないのだが……仲間の為だ仕方がない!!ただ身体は好き勝手出来ても、私の心までは好きに出来ると思わない事だ!!」
そう言ってダクネスは木刀を捨てると、土下座をして先ほどカズマの言ったセリフを大声で読みあげます。正直に今のダクネスはカッコイイと思います……本望だと言わんばかりの顔をしていなければなお良いのですが……
ともかく、これでダクネスは降参したので終わりと……
「ダクネス、まさかこれで終わりだなんて思ってるんじゃないよな?お前には日頃から言いたいことが沢山あったんだ。この機会だ……俺の気が済むまで好きにさせてもらうぞ!!」
「な、なんだと!!やめろ、約束を果たしたではないか、今すぐマナを放すんだ!!」
「誰が放すものか、こいつは大事な人質だからな」
「くっ……カズマ、貴様私に一体に何をするつもりなのだ!!」
「とても口では言えない事だよ……」
「く、口では言えない事だと……っ!!そんな辱しめ受けるわけには、受けるわけにはいかないが、マナが人質に取られては仕方がない!さぁ、それを私にやってみろ!!」
ダクネス、口調の割には意外とのりのりですね。
って言うかアクアはカズマの事を人でなしって目で見てないで、一言突っ込んでください。調子に乗っているだけなので冷静な一言を言えば収まります。ちなみにバルターは顔を真っ赤にしてこちらから目を背けているので論外です。
ちなみになんで私がこんな冷静でいられるかと言うと……ちょっと考えてみたのですが、カズマはヘタレなので事故でもない限りはこれ以上私の服を切り裂く心配はないんですよね。
この男、調子に乗ったり怒ったりしていなければ、基本的に超えてはいけない一線は守りますからね。今のカズマは確かに調子に乗ってますが、一線を越えるほどのものではありません。
ともかく、この茶番に飽きてきた私はカズマの右手を手に取りました。
そして、そのまま……
「いつまでふざけてるのですか!この変態!!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉおおお!!」
「なぁ!?」
背負い投げの要領でカズマを正面に投げ飛ばしてやりました。
正面に投げ飛ばされたカズマはそのまま、正面に立っていたダクネスと衝突。当たり所が悪かったのかカズマ共々気を失ってしまいました。
「全くこの男は……」
「マナ、カズマを投げ飛ばした時に服が破れて胸元が丸見えになってるから、早く隠した方が良いと思うの。それとそこのクズはどうするの?マナが良いって言うのなら私が道端にでも捨ててくるけど……」
「ふぇ!?ほ、本当に丸出しになってますね…………取りあえず、そこの男は放って置いて良いですよ。この男はヘタレなので、私の胸元が丸見えになるまで切り裂く意志はなかったと思いますし……何より、この男との付き合いは長いので多少は慣れました」
本当にカズマはヘタレですからね。
以前帰るのが遅くなってしまって。ふざけてカズマのベッドで寝た際は一切手を出さず、律儀に床で寝ていましたからね。別に変な事をしなければ一緒に寝るくらいは良かったのですが……
あの頃からカズマには数え切れないくらいの恩がありましたからね。
って言うかこの丸見えの胸は早く隠した方が良いですよね。取りあえず手で隠して……
カシャン!!
んっ!?
今の音は何ですか?何かが地面に落ちたような……
私がそちらの方向を向けば、そこには口を広げて呆然としているダクネスのお父さんと使用人一同が……そして彼らの視線の先にはボロボロとなったダクネスの姿が……
これは非常にまずいですよね?取りあえず私は……
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
悲鳴をあげながら、私は地面へとへたりこむと瞳からは涙を流し、まるで暴漢に襲われたような演技を開始します。カズマの所為で胸元が破れているので、事情を知らない人にはそうにしか見えませんからね。
一方、アクアの方をちらりと見ると、カズマの介抱をしていた(ダクネスはすでに終わってる様です)のを利用して「カズマ……なんであんな無茶をしたのよ……」っとまるでカズマが暴漢に立ち向かって負けてしまったという演技を始めています。
もうここまで来たらもう打ち合わせる必要はありませよね。だって暴漢になりうる男なんて一人しかいません。
私とアクアは同時にバルターに指をさしました。
「「こ、この男が!!」」
「よし、今すぐ処刑しろ」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
広大な中庭にバルターの悲鳴がこだましました。
別に私は間違っていませんよね?半分くらいは事実ですし。
あの後、バルターの必死の説得と意識を取り戻したカズマの説明によって事なきを得た後、私達は再び応接間に通されていました。
ちなみにバルターにはすでに私達が使用人じゃないとバレており素性を隠す必要もないため、私達は普段着に着替えています。
ちなみにダクネスは直ぐに気がついたカズマとは違って未だに気を失っています。
たぶん、気を失う前に木刀でボコボコにされていた所為だと思いますが……こうして黙っていれば綺麗なお嬢様と言った感じなんですがね……本当に性癖が残念でならないです。
ともかく、しばらく寝息を立てているダクネスを見つめていると、ようやく気がついたみたいで目をゆっくりと開きます。
「ここは……応接間か?私は……」
「ようやく気がついたのですね?えっと、気を失う前の事は覚えてますか?」
「ああ、確かカズマにマナを人質にされて……はぁ!!まさかは私をカズマに口では言えないいかがわしく卑猥な事を……!!」
「してねぇよ!何もしてねぇから!!マナに投げ飛ばされた俺が当たって気を失ったんだよ!!」
「そ、そうなのか……」
この変態……
今、絶対残念がってましたよね。なんかシュンって肩を落としてますし……本当に手遅れとなってますね。一体何が彼女をこんな風に変えてしまったのかを知りたいですよ。
ともかく、気を取り戻したダクネスはお父さんの事を真っ直ぐと見据えます。そして……
「お父様。バルター様。どうか今回のお見合いはなかった事にでてください。実はこのカズマと言う男は夜になると見境なく女性を襲う変態でして、すでに私もカズマの手に……そしてこのお腹には子供が……」
「変な捏造をしてんじゃねぇよ!!」
「そうですよ。この肝心なときにヘタレる童貞がそんなだいそれた事が出来るわけありませんよ。もし本当に子供が出来たとしたら、ダクネスのお父さんの前に顔なんか見せずに逃げます」
「お前も喧嘩を売ってるのか!?」
べ、別に事実を言っただけだと思うんですがね?
だって、カズマ。女四人の中に男一人なんて非常に望ましい状況のくせして、やることなんて精々薄着の私達を凝視するか、洗濯中か脱衣所の置いてある下着を見つめているくらいです。
まあ、カズマには恩があるので、やり過ぎない分には無視してますが……もしかして気づいてないとでも思ってるのでしょうか?皆知ってますよ。
「そうか、お腹の中にカズマ君の子がいるのなら仕方ないですね。では私は帰ることにしましょう。お見合いは私から断ったいう事にしておきますね。その方が都合が良いでしょう」
そう言って爽やかな笑みを浮かべながら立ち上がるバルター……
凄く良い人ですよね。もう本当にこの人と結婚した方が良いんじゃないですか?ここまで良い人なんてそうそう見つかりませんよ。普通の人なら結婚なんて言われたら喜ぶと思います。
ともかく、バルターは部屋を出て行きましたし、私達も……
「ま。まままマナ!!私どうすれば良いの!?ダクネスに手を出してるのなら私にだって……子供が出来てたらどうすれば良いの!?私、女神なのよ!!人間との間に子供が出来たらどうすれば良いのよ!?」
「それだけは絶対にない。俺にだって選ぶ権利ってのがあるんだ」
「なんですって!?それってどういう事よ!!」
「ま、孫。わ、私の娘に子供が……!!」
どうするんですか、ダクネス。
貴方の所為でとてもカオスな空間が出来上がってるじゃないですか。
そんな助けを求めるような目を私に向けても、私は何もしませんよ。自分でやったことの責任くらい自分で取ってください。
私はカズマではないので絶対に助けませんからね…………お金をくれるのであれば話は別ですが。
あの後、無事にダクネスがお父さんの誤解を解くことに成功。
お見合いも当初の目論見通り破断となったため、ダクネスと一緒に家への帰路についていました。
「これなら、最初から素直にお見合いを断った方が良かったではないか」
「お前のやる事が凄すぎて、親父さんの気持ちを考えると止めざるを得なかったんだよ」
まあ、それに関してはカズマの言う通りですね。
ダクネスがやろうとしたことは、完全に家の名前とか彼女自身も栄誉を失いかねないものでしたから……
まあ、終わり良ければ総て良しってことわざがある通り、最終的な目的の達成は出来たので良かったことにしましょう。
これで一段落着いた……そう私が安心していると……
「ねぇねぇ、ダクネスが負けたらなんでも言う事を行くって言ってたけど……あれはカズマに対しても有効なの?」
えっ?
確かにそんな事を言っていたような気がしますが……どうなのでしょう?
私も答えが分からなくなったので、二人の方を見つめますが……この二人もアクアに指摘されて気づいたらしく、そう言えばそうだった言うような顔をした後に、二人で見つめ合い顔を真っ赤にしていますね。
「だ、ダクネス!あれはバルターに対してだったんだろ?だったらあれはノーカンだよな!!」
「そ、そうだな!お前と決闘する際はそんな宣言はしていなかったからな!!」
「でもゆんゆんって娘の言葉を借りるなら、決闘には対価が必要なのよね?ダクネスはカズマに対して何を用意するの?」
アクアの言葉によって顔を真っ赤にしてうつむいている二人。
あ、アクア悪意はないのが分かりますが……的確に二人を追い詰めていますね。
ないよりも恐ろしいのは悪意のない言葉……その事実を改めて確認する事が出来ましたよ。