この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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この魔王軍幹部と邂逅を

「カズマ、最近この街の近くにある古い城に魔王の幹部が来たそうですよ」

 

「へ~、なんかざわついていると思ったらそんな事があったのか」

 

ジャイアローチの討伐から数日後、私とカズマは二人きりでギルドの酒場でくつろいでいました。他のメンバーは次の依頼を決めるため掲示板の方に行っています。

次のクエストはじゃんけんで私の次に負けたダクネスが決める事になっていますが、彼女一人で行くと討伐不可能なモンスターを選んでくる可能性があるのでめぐみんやルリが見張りにいっています。

 

「しっかし、ダクネスのノーコンはどうにかならねぇのかな……」

 

「そんなに当てられないのですか?」

 

自分から当てられないと言っていたとは思いますが、激しく動く相手には当てられないとの意味だと思っていたのですが……

カズマが頭を痛そうに抱えているのを見ると違うみたいですね。

 

「止まってる奴に外した……」

 

「は!?」

 

いや、止まっているのに外すって、私が戦闘に関して初心者だった、カエル地獄の時ですらもしませんでしたよ。もはやそこまでいくと、それはある意味才能といえるかもしれません。

 

「私やカズマの取っている片手剣スキルのようなスキルはクルセイダーにないんですか?それを取っていればどんなに不器用でも一通りは使えるようになると聞いたのですが……」

 

「あるにはあるらしいが……取りたくないんだとさ……」

 

「取りたくないってどんな理由があって……あっ!!すいません、言わなくていいです。なんとなく理解できました……」

 

「攻撃の当たらないほうが、必死に戦っている感じがして興奮するんだとさ……」

 

やっぱりそれですか!?

なんとなくそうだとは思ったので、言わなくてもいいといったのに……この男は……

 

カズマの事は置いておくとして、これで普通に敵にダメージを与えられるのは私とカズマだけですね。もう私達が頑張って彼女達のフォローをしていくしかないのでしょう。

 

それにしてもこの男はよくもまあこんなに問題のある人ばかりを集めますね……運がないんじゃないですか。ステータスでは運がとても高かったそうですが、それを疑ってしまいますよ。

 

「はぁ……移籍も考えるかな……」

 

「カズマ……するなら私も連れて行ってくださいよ……」

 

カズマは分かったとやる気がなさそうに返事をすると、机の上に顔をつけ寝てしまいました。

精神的にかなりまいっているようですね。このパーティのリーダーともなればそうなってしまうのも無理はありませんが……

 

話し相手を失った私は暫くの間、何もせずただ座ってダクネス達が帰って来るのを待っていると、先ほどまでキャルと楽し気に会話をしていたアクアがこちらに帰ってきました。

 

「カズマ、どうしたのそんなところに伏せて?まさか昼間から寝る気じゃないでしょうね。これだからニートは駄目ね。ほら起きなさい!こんな所で寝そべっててもしょうがないでしょ!」

 

「アクア、カズマは疲れているので、そっとしておいて上げてください」

 

アクアはカズマの姿を見ると机に突っ伏す彼の身体を揺らして起そうとしますが、私はそれを止めようとします。

彼が疲れている原因の一人であるアクアには少なくとも起す権利がないと思ってのことです……おそらくですがこのパーティで彼を起す権利があるのはルリくらいでしょう。

私は不本意ですが何度かカズマに残念なものを見る目をされたので、たぶん彼に取ってはアクアと同じ部類に分類させていると思います。

 

「あっ!めぐみんにダクネス、それにルリも……受ける依頼は決まったのですか?」

 

依頼が決まったのか、ダクネス達がこちらに来ました。

でもどうしたのでしょうか……心なしか困惑しているように見えますが……

 

「……依頼……受けてない……」

 

どうしたでしょか?依頼を受けに行って受けてない?

強いモンスターなら話は別になりますが、弱いモンスター……例えばカエルのようなのは毎日にように張り出されていると聞いたのですが……

強いモンスターじゃないと駄目だとダクネスが駄々をこねたのでしょうか?

 

すると私が質問するよりも早くめぐみんが答えてくれました。

 

「それが、魔王の幹部が近くに現れたそうで、弱いモンスターは全部隠れてしまったみたいなのですよ」

 

「私やめぐみんとしては強いモンスターでも構わないのだが……ルリに猛反対されてな……」

 

「私達の能力……超えているのばかり……ジャイアローチはそう言ったのに鈍い……残ってたけどやめておいた……」

 

取り合えず私はルリに近づくとその頭を撫でました。本当によくやってくれましたこの子は……

あのゴキブリは暫くはやりたくありませんし、強いモンスターなど論外です。

 

それとダクネスとめぐみんは強いのでもいいって……ダクネスは強いモンスターに蹂躙されたいから、めぐみんは自分の爆裂魔法の威力を試したいからですよね。

ダクネスの理由は論外として、めぐみんの魔法を当てれば、おそらくですがその強い敵を倒せるかも知れません。でも敵を魔法を使って大丈夫な場所に誘き出したり、それを外さないように様々な手段を講じるのは、おそらくカズマまかせになるのでしょうね……

 

「二人共……私もあれなのであまり強くいえませんが、少しは自分の欲求を抑えたほうがいいですよ……でないと先ほど言っていたこのパーティからの離脱が冗談にならなくなってしまいますよ。 」

 

離脱……その言葉を聞いた瞬間、ダクネスとめぐみんの肩が軽くビクッと震えました。

まあ、ここら辺で爆裂魔法しか使えない魔法使いや防御しか出来ないクルセイダーとパーティを組もうと考える人はあまりいないでしょうしね。

 

私が後ろを振り向くとそこには何処からか取り出したマジックで寝ているカズマの顔に落書きしているアクアの姿が……怖いもの知らずがここに居るとは……

 

「プークスクス!みんな見なさいよこの顔、真昼間から寝ているヒキニートにぴったりの顔じゃない!これで少しは……」

 

「アクア、散々脅された仕返しをしているみたいですが、起きた後に謝ったほうがいいですよ」

 

「?」

 

首を傾げるアクア……

ああ……彼女はカズマが怖くないのではなくて、この男の本当の恐ろしさを知らないのですね。まあ、謝らなければすぐにそれを身をもって知ると思いますよ。

でもどんな事が自らの身に起きる事になっても私は知りませんが……

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、お髭男爵になったカズマは起きた後、鏡を見て自分の状態に気づきました。私に犯人を聞いてきたのでアクアと正直に答えた結果、翌日ギルドにアクアとカズマの姿が見えませんでした。

 

受ける依頼もないのでギルドで待っているとカズマが号泣したアクアを連れて帰ってきました。アクアの話を聞くと朝起きたら、何時も寝ている馬小屋ではなく、あの屋敷の中にいて大量のジャイアローチに囲まれていたそうです。

あれは動いたり声を上げるものに襲い掛かる習性があるそうですが……おそらく潜伏スキルを使ったカズマが寝ているアクアを屋敷の中に移動して放置したのでしょう。その後、彼女は襲い掛かるジャイアローチから必死に逃げて、逃げ場を失った所でカズマが助けにきてくれたそうです。たぶんあの男、潜伏スキルを使ってアクアが逃げ惑うのを見て、ほくそ笑んでいたのでしょうね……

 

ともかく、これを聞いためぐみんは顔を真っ青を通りこして真っ白になっていましたよ。え?ダクネスは?……聞く必要がありますかそれ?一言だけ言うのなら何時も通りでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日が経過したある日、ようやく収穫したキャベツが売りに出され、捕獲した冒険者にその報酬が支払われる事になりました。

朝早くギルドの受付に並んで報酬を受け取った私達は椅子に座って話し合っていました。

 

今回の報酬はアクアの発案でおのおのの出来高にすることになりました。

彼女はキャベツに襲撃される前や、襲撃後も私とは別の場所でキャベツを集めていたのもあってか、数を教えてくれなかったカズマとルリを除けばこのパーティでは二番目にキャベツを集めていました。

そしてモンスターに囲まれていたダクネスと爆裂魔法の使用で前半しか捕まえられなかっためぐみんとの差はかなりありましたから、できるだけの多くのお金を手に入れるためにそういったのでしょう。まあ、自分の捕まえたお金を他人に渡さないといけないのは嫌ですから私も賛成しましたのですけどね。

 

「カズマ、見てくれ。報酬が良かったから、修理された鎧を強化してみたのだが……どう思う?」

 

「成金の貴族がつけている鎧みたいだな」

 

カズマの心無い発言に珍しくダクネスがしゅんと落ち込んでいますね。もしかして先日のカズマのパーティ離脱の件を気にして強化したのでしょうか?

だったら素直に両手剣スキルを取ったほうが手っ取り早いような気がしますが……彼女の性癖がそれを許さなかったのでしょうね。

 

「そういえば、ルリは何か買ったのですか?」

 

「……巨大モンスター用のロープ……残りは貯金……」

 

暗殺が出来ない彼女は相手をロープで縛る『バインド』が主力ですから、それを強化するのは必然なのでしょうが……彼女は職業をアサシンにしないで、攻撃をほとんどしないプリーストなんかになったほうが役に立てるのではないかと思います。

まあ、職業の適性もありますから、きっとプリーストの適性がなかったのでしょうね。

 

後は聞いてないのカズマとめぐみんだけですが……正直今のめぐみんには関わりたくありません。彼女は、マナタイトと呼ばれる魔法の威力を上げる効果を持った鉱石を混ぜられた杖を買うのに報酬を使ったようなのですが、さきほどからその杖を頬ずりしています。

その目はとても正気とは思えず、息も相当荒く、この世にドMクルセイダー以上の変態がいると気づかされた瞬間でした。

上には上がいるものなのですね……こんな事でこの言葉を実感したくありませんでしたが……

 

私が深いため息をついた時でした、受付の方からアクアの叫び声が響いてきました。

そういえば、彼女だけがまだ報酬を受け取っていなかったと思いますが……何かあったのでしょうか?

 

「嘘でしょ!!どうしてたった五万しかないのよ!十や二十できかない数を捕まえたのよ!」

 

「それが……アクアさんの捕まえたキャベツのほとんどがレタスで……」

 

「どうしてレタスなんかが混じってるのよ!!」

 

あの中にレタスなんか混じっていたのですか……まったく気づきませんでした。

でも紛らわしいから、混じらないように対策とかをした方が良いとは思いますが、しないのでしょうか?植え付けをずらすだけでも一定の効果はあると思いますが……

 

「……植え付けの時期……ずらしたりしてる……でも毎年三十個くらい混じる事がある……」

 

私の疑問にルリが答えてくれました。

三十個ですか……もしそれだけの数が混じっていたとしたらそのほとんどがアクアが捕まえたって事ですよね……

ある意味幸運ですね……本人は全く嬉しくはないでしょうが……

 

その後も暫くはアクアは駄々をこねていましたが、後ろで待っている冒険者達の無言の圧力によって、早々に諦めてこちらに方に戻ってきました。

 

「カズマさん……貴方はどれくらい貰ったのかしら?」

 

「二百万ちょいだな」

 

な!?

二百万って私がキャルを使って稼いだ60万の三倍を超えているじゃありませんか!?どうやってそんな金を手に入れたのですか!?

確かキャルがキャベツを集めていた際には遠くから眺めているだけだったはずなのに……

 

そういえばルリと一緒に捕まえた言ってましたよね……つまり彼女も……

 

「……私は百万……」

 

私が尋ねる前にルリが自ら申告してくれました。

百万ですか……カズマほどではないものの物凄い量ですね……めぐみんもダクネスも二人の稼ぎのよさに驚愕して固まってしますよ……

取り合えず私のする事は決まったので実行するとしますか。

 

「カズマ様……前から思ってたんだけど、貴方ってそこはかとなくかっこいいわよね」

 

「カズマ、昔からですが、貴方のお金を集める才能に惚れていました……結婚しましょう。大丈夫です。すぐに離婚して慰謝料を請求しますので……」

 

「アクア、誉める言葉ないなら無理すんな。俺は誉められた程度じゃ金を貸さないぞ……それとマナ、お前はもう少し本音を隠す訓練をしとけ、そんなんで堕ちる奴なんていないだろ……」

 

やっぱり、失敗しましたか……どうしても金を目の前にすると本音出てしまうのですよね……

金を効率よく集めるためにはやはり嘘をつく必要もあるのでしょうが……カズマの言う通り訓練が必要ですね。今度からは人を上手くだます練習をすることにしましょう。

 

カズマに断られたアクアは笑顔でこちらにクルリと振り向きました。

 

「マナ……あなたはまだお金を使ってなかったわよね……」

 

「貸すのは良いですけどトゴしますよ」

 

それを聞いた瞬間アクアは両手を地面につけて絶望しています。

それにしてもどうして彼女はそんなにお金を欲しがっているのでしょう?

少し考えて見ると、彼女が最近金遣いが荒かったのを思い出しました……おそらくキャベツの報酬をあてにして借金までしたのでしょうね。

 

「なあ、めぐみん。トゴとは初めて聞くのだが……」

 

「トイチと同じようなものですよ。トイチが十日で一割の利子が付くのに対して、トゴはその五倍……五割の利子をつけることです……と言う私も、知ってるだけで吹っかける人は初めて見ましたが……」

 

「マナの金に関する執着心をなめるな……昔に金を借りたまま返さない奴の家に深夜侵入して血の催促状を枕元に置いた事がある人間だぞ……」

 

それを聞いためぐみんとダクネスが後ずさって私から距離を取りました。

その言い方はずるいと思います。確かに実行したのは私ですが、その案を考えたのはカズマじゃないですか……あの後、お金を泣きながら返しに来たことを告げたら、本当にやったのかと驚かれましたが……

 

ともかく、アクアは利子を聞いて私から金を借りる気が失せたようで最後の頼み綱であるルリに頭を下げて頼み込み始めました。

 

「ルリ!お願いお金を貸して!!キャベツの報酬をあてにして十万くらいのツケがあるの!お願い!!」

 

私が想像していた事が見事に当たりましたね……さすがに十万は予想外でしたが……

それを聞いたルリは椅子から降りるとアクアの前に行きました。

 

「……少なくとも報酬を待てばよかった……計画性がない……それに報酬で欲を出して失敗……欲を少し抑えた方がいい……そして自分の失敗を正すのをすぐに他人に頼るとしないほうがいい……友達をなくす……」

 

「うう……そ、それは……」

 

ルリに淡々と感情のこもっていない言葉で批判されたアクアは涙目になっています。ルリは普段は人を批判したりしないため、批判される立場になったアクアは精神的に堪えたのでしょう。

しばらく、アクアが希望にすがりつくようにルリの事を見つめていると、ルリは大きくため息をついた後に答えました。

 

「……今回だけ……」

 

その答えを聞いたアクアは涙目から一転して笑顔を浮かべ彼女に抱きつきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから数日後、私はカズマを連れてある場所に向かっていました。

 

「別に受けなくていいじゃねぇか。キャベツの報酬を貰ったばかりだろ?」

 

「それはそうですが、お金はあって困る事はありません。稼げるなら稼いでおきたいのですよ。それに理由が理由とは言え、毎日、昼間から働きもせず、中年と一緒に酒場で飲んだくれるのもあれですし」

 

私達がそんな会話をしながら歩いていると、目的地であるジャイアローチの住処になっている屋敷が見えてきました。今回受けたクエストもジャイアローチの討伐です。

あの巨大ゴキブリは女性だけでなく、男性すらも受けたくないらしく、掲示板にたった一つだけある雑魚モンスターの依頼なのですが、私達以外はだれも受けていないようです。

 

私は他に依頼がなかったために覚悟を決めてこの依頼を受けて、暇にしているカズマを誘って討伐しにきました。

他の仲間も誘ったのですが、アクアはカズマにやられた復讐によってトラウマになったらしく、借金があるのにも関わらず拒絶してきました。めぐみんは室内では爆裂魔法を使えないのと、あれが苦手のようでアクアと同じく拒否、ダクネスは実家に帰っているので参加できず、ルリは雑魚の討伐依頼がなくなったためにダンジョンに潜る冒険者が増えているらしく、クリスに先に誘われていたため今回は無理との事で、カズマ以外は誰も一緒に来ていません。

 

「カズマ……二人きりだからと言って襲わないでくださいね……」

 

「お前を襲ったら法外的な慰謝料を請求されるのが目に見えてるからな。絶対にしないから安心しろ」

 

どんな目で私を見ているのですがこの男は……

さすがの私でも………………すいません。良く考えてみると法外的な慰謝料を請求しそうです。カズマの意見正しいです。まあ長い付き合いなので他人よりは安くしますが。

 

「そういえば、最近めぐみんと一緒に出かけてますよね?どこに行ってるのですか?」

 

「めぐみんの奴が一日に一回、爆裂魔法を打たないと死んでしまうって五月蝿くてな……郊外で打った後あいつを背負って帰ってきてるんだよ」

 

そんな事をやっていたのですか。

それにても一日に一回とは、もはや、めぐみんにとって爆裂魔法とはなくてはならない存在のようですね。正直こちらとしては他の上級ないし中級魔法を習得して欲しいものなのですが……たぶん言っても無駄でしょうね。諦めも肝心でしょう。

 

「話し合いはここまでにしてささっと終わらせようぜ。早くギルドに帰りたいし」

 

「帰っても寝てるか飲んだくれてるだけじゃないですか……とにかく、まだ私が駄目だったようでしたら、その時はお願いしますね」

 

わかったよっと言いながら屋敷に入っていくカズマの後を追って、私も屋敷に入っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、無事にジャイアローチを討伐し終えた私達は、それからの数日は特にやる事もなく酒場で暇をもてあましていました。

ギルドの受付に聞いた話だと国から腕利きの冒険者や騎士が討伐しに来るそうですが、それまで一ヶ月程かかるそうです。つまりそれまではクエストはあの巨大ゴキブリしかない……またカズマでも連れていきますかね。

 

「あ……帰ってきたのですか?」

 

「それ以外の何に見えるんだ?」

 

私が何か注文しようとした時にめぐみんを背負ったカズマが帰ってきました。

 

彼はめぐみんが爆裂魔法を放った後、動けなくなる彼女を街まで連れ戻す役割をやっているのですが、何回も爆裂魔法を見たためでしょうか。ここ最近は爆裂魔法のよしあしが分かり点数がつけられる程になったそうです。

正直なにも役に立たない技能ですが、私もジャイアローチの討伐以外やる事もありません……暇つぶしについて行くのも良いかもしれませんね。

 

「今日は何点だったのですか?」

 

「今日は60点ってところだな」

 

「悔しいですがカズマの言う通りです。今日はあまり調子が出なくて、爆発の範囲、爆音、それに大地を揺るがす響き、どれをとってもいまひとつの爆裂魔法でした。爆裂魔法を愛する魔法使いとして一生ものの恥ですよ」

 

恥とかは気にしなくていいと思いますよ。めぐみん以外に爆裂魔法を愛する人などいないと思いますから。

 

その後も、軽い雑談をした後、昼飯の注文をしようとした時でした。

 

『緊急!緊急!全冒険者の皆さんは、至急街の門に武装して集合してください!』

 

またキャベツのようなクエストでしょうか?でもそれならば武装は必要ないと思います。

辺りに視線を向けると冒険者たちも首を傾げながら準備していますし……本当の緊急クエストなのでしょうか?

 

「……皆……大変……」

 

「ひゃあ!?……なんだルリですか……急に声を掛けないくださいよ……」

 

本当に驚きました。

ルリは驚かす意図はなかったのでしょうが、彼女は隠密スキルを使わなくても気配がほとんどないために、後ろから声を掛けられ驚いてしまうのですよね。

 

「どうしたんだ?クリスと一緒にダンジョンに行ってたんじゃなかったのか?」

 

「……それは終わった……それよりも……大変な事になってる……」

 

「大変とはなんでしょうか?まさか魔王の幹部が攻めてきたなんて話は……」

 

「……そのまさか……」

 

めぐみんの話を遮っていったルリの一言が信じられませんでした。

どうして魔王の幹部がこんな初心者の冒険者しか居ないちんけな街を狙うのでしょうか?最初からこの街に用があったにしては遅すぎますし……考えても分かりませんね。

 

取り合えず私はそれを聞いて一目散に逃げようとしているカズマの首元を掴み上げると、そのまま街の門の方へと向かい始めました。

 

 

 

 

 

 

 

 

私達が街の門に到着するとそこは物々しい雰囲気に覆われていました。そしてその中心に首のない……正確には身体と離れ離れになった首を持ったモンスター、デュラハンがそこに居ました。

そのモンスターの周囲には無数の冒険者達が囲い息を呑んで見守っています。普通なら街にモンスターが入ったとなれば、それを対峙すべく攻撃を加えるのですが、この場で目の前のデュラハンに手を出そうと思う冒険者は一人もいません。

それはこのモンスターの放つ威圧感と言えばいいのでしょうか?それに押されてしまっています。

 

「……俺は先日、この近くの城に引っ越してきた魔王軍の幹部だが……」

 

体がプルプルと震わせています。

その様子は溜めに溜め込んだものを噴出す寸前の火山といえばいいのでしょうか?何かを溜め込んでいたものを目の前のデュラハンはここで吐き出そうとしている事はわかりました。

 

「まままままま、毎日、やめる事もなく俺の城に爆裂魔法を放ってく頭のおかしい大馬鹿者は何処のどいつだぁぁぁぁああああ!!」

 

……爆裂魔法って……

私はデュラハンが地団駄を踏んでいる姿を横目にカズマとめぐみんを見ると二人とも冷や汗を流してその場で固まっていました……彼らがやったみたいですね……

 

(ななな、なにやってるのですか!?魔王の幹部に喧嘩を売りに行くなど馬鹿のすることじゃないですか!!どうするんですよ!?)

 

(し、しかたねぇだろ!あの城に魔王の幹部が住んでると思わなかったんだよ!そもそも、元をたどるとめぐみんが駄々をこねるからだ!!)

 

(私ですか!?私一人を悪者にする気ですか!?カズマはリーダーですよね!?だったらメンバーの起した事件の責任を取ってくださいよ!!)

 

(……争ってる場合じゃない……)

 

ルリに指摘されて集まった冒険者達の視線が私達に向いている事に気づきました。爆裂魔法を使う人なんて限られてますから、すぐにわかりますよね。

しかもその視線に気づいたデュラハンの視線までこちらに向いていますし、言い逃れは出来そうにない雰囲気です。

 

すると意を決したのか、めぐみんが前に出てデュラハンと一体一で向き合い始めました。

 

「ききき、貴様が爆裂魔法を放ってくる大馬鹿者か!!なぜこんなことをする!いじめにしては陰湿すぎるだろう!私と戦いたいのなら、正々堂々と向かってこんか!戦う勇気がないのなら街に引きこもっておらんか!なぜこんな事をするのだ!!」

 

「貴方がこんな場所に来るから、私の爆裂魔法を放つ相手が居なくなってしまったのですよ!ならばその責任を取って私の爆裂魔法を一身で引き受けてください!!」

 

「そんな、責任の引き受け方があるか!!お前の魔法のせいで私は、何時爆裂魔法が来るかと怯える日々を送っているのだぞ!大体爆裂魔法など放たなければいいだろうが!!」

 

「それは私に死ねといっているのですか!!」

 

めぐみんとデュラハンの口論がヒートアップしていくなか、後ろから聞きなれた声が聞こえて来たので、後ろを振り返ってみるとそこにはアクアがいました。

しかしメイド服を着ている事が少し気になりますが……そういえばルリに借りれたのは借金返済のためのお金だけで、生活費を稼ぐためにちょくちょくバイトをしているのでしたね。

 

「随分遅かったな……一体なにやってたんだ?」

 

「バイトよバイト……あの店主、ギルドの招集が掛かってるって行っても全然取り合ってくれなかったのよ」

 

「それは大変でしたね。ジャイアローチの依頼を受ければすぐにお金が貯まりますが……やりますか?」

 

「いいい、いやよ……あ、あんなもの視界の端にも入れたくないわ……」

 

顔を真っ青にして身体を守るように両手を抱えぷるぷると震わせています。

よほどあの巨大ゴキブリがトラウマになったみたいですね。カエルも同じくらいのようなトラウマになっているみたいですし、そのうちゾンビメーカーの討伐の際に言っていたワームがトラウマになるのではないのでしょうか……

 

「そ、それよりも、あのデュラハンは一体なによ?倒しても良い奴なの?」

 

「魔王軍の幹部だそうだ。別にやっても……アクア?」

 

「そう……魔王軍の幹部ね……つまりアイツがこの近辺に現れたせいで、私はクエストを受けられずバイトをするハメになってるってわけね……アンデットの分際で女神である私にあんな目にあわせるなんて……良い度胸してるじゃない……」

 

小言でブツブツとそんな事を言いながらデュラハンの事を憎しげに見つめるアクア。

 

突っ込みませんけど、一番の原因はアクアの計画性と運のなさだと思いますよ。言ったら面倒な事になりそうなので言いませんけど……

 

そんな事を考えている間にもアクアは足を前に歩みだし、めぐみんの隣に並びました。

 

「とにかく私の城で爆裂……なんだお前は?」

 

「私にあんな目にあわせておいて、のこのことやって来るなんて、これは浄化してくださいと言っているようなものよね。覚悟しなさい!」

 

アクアはデュラハンに啖呵を切ると、片手を前に突き出して魔法を発動させる準備をします。

ルリが魔王軍の幹部クラスと評したウィズにすらダメージを与えたアクアなら、十分に目の前のデュラハンにダメージを与えられる可能性があります。

 

「プリースト……ではなくアークプリーストか。しかし、いくら上級職とはいえ、こんな駆け出し冒険者ばかりの街の者の攻撃が効くと思っているのか。……まあいい、ここは聞き分けのない娘に苦しみを与えてやろう」

 

デュラハンは、アクアが魔法を発動するよりも早く、めぐみんに手を振りかざし声を上げました。

 

「汝に死の宣言を!お前は一週間後に死ぬだろう!」

 

呪いの一種でしょうか?それをめぐみんに掛けようとした時、めぐみんはひょいと身体を捻らせ、デュラハンの突き出した手の先から逃れました。

そしてその手はちょうどめぐみんの後ろにいた私……

 

「えい!」

 

「な、お前!!」

 

危ない危ない……隣に居たカズマを盾にしたのですが、彼の身体が黒く光ったところを見ると彼に呪いが掛かったようですね……発動まですこしタイムラグがあるみたいですが助かりかした。

 

カズマは私を憎しげに睨んでいますが彼は私を盾にしたことが一回あるのです……これでおあいこ……でも復讐が恐いので後で何かしらのお詫びをしておきましょう。カズマは鬼畜なわりにちょろいので誠意を持って謝れば大概の事は許してくれます。

 

「カズマ!大丈夫ですか!痛い所とかありませんか!?」

 

「大丈夫!?」

 

こちらに駆け寄って来ためぐみんと隣にいたルリがカズマを心配そうに眺めています。

普段は物静かなルリも珍しく声を荒らげて動揺しています。

 

一方の呪いを掛けられたカズマは自分の身体をペタペタと触って以上がないかどうか確認しています。

 

「ああ……特になんともない……」

 

口調も顔色も普段と普段と変わっていないようですね……でも黒く光った事を考えると呪いに掛かったのには間違いなののでしょうが……

一体どのような呪いなのでしょう?

 

「その呪いは今はなんともない。しかし、一週間後にその男は死ぬ事になるだろう。どうする頭のおかしい爆裂娘よ。お前が私の言う事を素直に聞かないからその男は死ぬ事になるのだ……その男が死んだその時お前はあの時言う事を聞かなかったことを一生後悔して生きる事になるだろう」

 

つまり、今はなにも問題なさそうに見えるカズマが一週間後に急に死んでしまうと言う事ですか……これは……

 

「カズマ!!」

 

「ど、どうしたんだ!」

 

「今から保険を掛けに行きましょう!!大丈夫です!一週間後に死ぬ事が確定しているのならどんな法外的な保険料を掛けられていても問題にはなりません!大儲け出来ますよ!さあ今すぐ……」

 

……妙に静かになりましたね。

辺りを見渡してみるとアクアやめぐみんやルリ、集まっていた冒険者達、そしてなぜか敵であり呪いを掛けた本人であるはずのデュラハンまでもがカズマに同情の視線を向けていました。

なにかそこまでする事はあったでしょうか?

 

「どうして貴方に皆は同情しているのですか?」

 

「それを俺に聞くのか!?てかお前はわかんないのか!?」

 

「一体なぜだか分かりません?お金を稼ぐ事の何がいけないのでしょうか?お金はこの世でなによりも大切なものだと思いますよ」

 

「地獄に堕ちるぞお前……」

 

地獄の沙汰も金次第と言う言葉を知らないでしょうか?金があればこの世のほとんどの事はどうにかなるのですよ。

 

それにしても、さっきまでカズマに同情している思ったら、今度は皆して私から後ずさり、私を中心にして冒険者の輪が出来ています。先ほどまでのデュラハンと私の立ち居地が変わったと言えばいいのでしょうか。なにもそこまでする必要はないと思いますが……

一応自分のやった事を思い返して見ましょう。カズマを身代わりに使って、そのカズマの掛かった死の呪いで金儲けしようとしている私……

 

「カズマ!!私の言ったことが想像だにしない程の外道だったのですが、どうすればいいでしょうか!?」

 

「俺に聞くな!この守銭奴が!!」

 

痛いっ!

この男、乙女の頭を拳でぶん殴りましたよ!

まあ、ギャラリーがそれを咎めるような視線を送っていない事を考えると私が悪いのでしょうが……私自身も若干そう思いますし……

 

「と、ともかくだ!その男に掛けた呪いを解いて欲しければ、私の城まで来るがいい!私の部屋までたどり着く事が出来たのならその呪いを解いてやろう!しかし、私の部屋までには配下のアンデットがうようよといる……はたしてお前達がたどり着けるかを楽しみに待っているとしよう!!」

 

そう声を上げるとデュラハンは門の外に待機さしていた首なしの馬に乗って意気揚々と城に帰っていきまいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「めぐみん何処に行くのですか……」

 

「ちょっと街の外に散歩しに行って来るだけです」

 

そんなまる分かりな嘘に騙される人なんていると思いますか……力強く杖を握り締めて悲痛な表情をしてるめぐみんを見れば何をしようとしているか誰にでも分かります。

カズマが呪い掛けられた原因はめぐみんによるところが多いでしょう……でも彼を盾に使った私にも原因はあります。

 

「なら私も散歩についていきます……いいですよね?」

 

「いいんですか?お金の事……」

 

「別にいいですよ。冗談半分でしたし……」

 

先ほどは大金が手に入るかも知れない事実に興奮してあんな事を言ってしまいましたが、そんな事を出来るほど私は外道になった覚えはありません。さすがに人を殺して金を手に入れるのは躊躇しますよ。

 

「わかりました……では……」

 

「『セイクリッド・ブレイクスペル』ッ!」

 

後ろからアクアの声が聞こえて来たので二人でそちらに振り向くと、カズマに手をかざしたアクアが何かしらの魔法を使ったみたいです。

そしてカズマは淡い青色に光に包まれました。

 

隣でそれを見ていたルリがホッとしたため息をつくのと同時にアクアが誇らしげに言ってきました。

 

「私にかかればこの程度の呪いを解くのなんてお茶の子さいさいよ!どうよ!私だって、たまにはプリーストぽいでしょ?」

 

つまり今のでカズマの呪いは解けて……つまりデュラハンの城に行く必要はない訳で……

 

カズマが物凄く申し訳なさそうな顔でこちらを向いて……

 

「その……ありがとな、気持ちは嬉しいよ……」

 

あ、穴が有ったら入りたい気分です……

アクア……もう少しだけ空気を読んで下さい……

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