この守銭奴に祝福を!   作:駄文帝

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閑話

カズマside

 

アクアの所為で莫大な借金を背負わされることになってから、数日たったある日のことだ。

俺は今、薄暗い洞窟の中を探索していた。なんでも、急にこの洞窟が現れたそうで、その洞窟を探索するクエストがギルドの掲示板に張っていたのだ。

できるだけ早く情報がほしかったのか、探索という割にはかなりの報酬がかけられており、借金を一刻も早く返したかった俺はこのクエストを受けたのだが……いつもとは違うことが少しあった。

 

「ねぇ、私のスキルではモンスターは見つからないけど、ルリは何か見つかった?」

 

「反応はない……でも油断は禁物……」

 

そう……いつものメンバーではなく。俺と同じパーティーのルリと俺に盗賊の様々なスキルを教えてくれたクリス、この二人と一緒に洞窟の探索をしているのだ。

 

一応、こうなったのには理由がある。昨日、何時ものように受けたモンスター退治のクエストの清算を終わらせて、仲間が待っているテーブルにつくといきなりアクアがこの中で誰が一番リーダーにふさわしいのかの言い始めたのだ。

すると、自分こそがリーダーに相応しいともめ始め、結果を言うと一日の間にリーダーを何回か交代して一番適格に指示をできた奴がリーダーだと話しが纏まってしまったのだ。

 

それで、あいつらの起こした問題のせいで頭を何度も下げてきた俺は自らリーダーを辞退して、リーダーにまったく興味を示さなかったルリを一緒にクエストを受けないかと誘ったのだ。あいつらがリーダーになったクエストについていくなんて命がいくらあっても足りないからな。あいつらも一回経験すればリーダーの面倒くささが分かって懲りるだろう。

 

まあ、そんなわけで、ルリと一緒にこのクエストを見つけたのだが二人では危険だという事になって諦めかけた時にちょうどよく現れたクリスを誘って今にいたるというわけだ。

 

俺たちは洞窟に入ってからは、ルリの隠密スキルを使って進んでいる。

この洞窟は辺り一面に薄く光る苔があるおかげである程度は視界はきいているが、真っ暗よりはマシといった程度で遠くには視界がきかない。だから細心の注意を払ってはいるんだが……

 

「クリス。隠密スキルを使ってて見つかることなんてあるのか?それに敵感知のスキルを使えば敵に合わないと思うが……」

 

「ああ……そういえば言ってなかったけ。敵感知のスキルと隠密スキルはね。ゴーレムとかの命のない生き物は通じないんだ。だからそれが出てきても大丈夫なように注意して進んでるんだよ」

 

「……潜伏スキルはアンデットにも通じない……覚えておいて……」

 

そういう大事な事は教える際に言ってほしかった……

もし俺がそれを知らないまま使ったら、アンデットやゴーレムに殺された可能性もありうるわけだ。

危なかっと俺が胸を撫で下ろしていると、クリスが懐かしむように口を開いてきた

 

「でもルリと一緒にクエストに受けるなんて久しぶりだね。何年ぶりかな?」

 

「……一年ぶりくらい……最後に一緒に受けたクエスト……今回とにたようなのだった……」

 

「それもそうだったね」

 

二人が知り合いなのはクリスと初めて会った時に知ったが、本当に仲が良さそうだな。

少し二人に昔何があったのか気になるな。このまま昔話でもされたら俺は完全に外野になってしまうし……二人の関係を聞いてみるか。

 

「二人とも仲がいいのはわかったんだが、一体どんな仲なんだ?」

 

「えっとね。あたしが冒険者になりたての頃に、冒険者のいろはを教えてもらたんだ」

 

教えてもらったってルリにだよな……いったい彼女は今何歳なんだ?

最低でも一年前を考えたら今よりも身長が低かったってことになるよな……よくそんな人の教えを受けようと思ったよな。

 

「……??」

 

「一体どうしたんだい?いきなりルリの顔をまっすぐと見つめて……彼女の顔に変な物でもついてるかな」

 

「あ、いや……ルリは一体幾つなのか少し気になってな」

 

「……十九歳……」

 

「へ?」

 

今、ルリはなんて言った。俺の記憶や耳が正しければ十九って…………いや、ありえないだろ!?

内のパーティーで二番目に身長が低いめぐみんが十三歳だと聞いたが、その彼女よりも身長が低いルリが俺よりも三歳上なんて……とてもじゃないが信じられない。

 

「その眼はルリの言ってることを疑ってるね。だったら彼女のギルドカードを見せてもらうといいよ。ギルドカードには嘘は書けないからね」

 

するとルリは俺に自らのカードを手渡してきた。俺はそれを受け取るとギルドカードの年齢の覧を確認するとそこには十九としっかりと書いてあった……どうやら本当の事のようだ。

正直まだ信じられないが、証拠がある以上は信じないわけにはいかないだろう。

 

「ルリ……疑って悪かった。それと敬語に変えたほうがいいか?」

 

「……問題ない……慣れてるから……敬語に変える必要もない……」

 

そういって特に気にも留めた様子ないルリに、俺はギルドカードを返した。

それにしても言われなれてるか……あんな体格をしていれば十歳前後くらいと誰でも思うよな。たぶん、他の仲間達も俺と同じことを考えているだろうし……帰ったら俺の方から彼女の年齢について皆に話しておこう。

 

「見た目で判断するなんてダメだよ。それで傷つく人もいるんだから。今後は注意した方がいいよ」

 

クリスにも注意されたが……なんか実感がこもってるんだが、一体彼女に何があったというのだろう。別にクリスが勘違いされそうなところなんて……

するとルリが俺に耳打ちをしてきた。

 

「……胸がゼロ……よく男と間違われる……」

 

「ああ……」

 

クリスはスレンダーな体系といえばいいのか、はっきり言って胸はまな板に等しいくらいにない。ルリみたいに小柄な体格をしていればそれも気にならないが、身長が高いにも関わらず胸がないと女性としては少し物足りないように思えてしまう。

それだけでなく、クリスは髪を短く切っているし、なにより顔も中性的だ。たぶん口元を隠すだけで男か女かわからなくなると思う。

 

だからきっと彼女は後ろ姿などで男性と見間違われることがあるのだろう。

実感がこもってた理由が理解できたよ……たしかに男性と見間違えられるなんて、女性からしたらこれ以上傷つくことはないだろう。

なんか、クリスの境遇を考えたら悲しく……

 

「キミ、どうしたの!?いきなり私に憐みの視線を向け始めて!?いったい私に何があったのっていうの?ねぇ、涙を流してないで答えてよ!!なんで私を見て泣いてるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一本道の洞窟を暫く進んでいたが、道中では一匹もモンスターを出会うことがなかった。

この洞窟にはモンスターが住んでいないのか?でもクリスやルリが言うには、何かしらの理由がない限りでもモンスターがこんな過ごしやすい洞窟に入らないということはないらしい。

 

だが俺達は一切モンスターと会っていない。考えられることとしてはこの洞窟がダンジョンでそのボスが何らかの理由でおいていないってことだ。一応二人にも話したのだが、二人共、どうしてモンスターを置かないのか理由はわからないがその可能性が高いと同意してくれた。

 

ダンジョンってのは、聞いた話によると、俺がゲームとかで抱いているイメージと同じで、強い力を持ったモンスターなどが様々な理由で建てるものらしい。そして、その作ったモンスターの実力によっては周りに住むモンスターがダンジョンに入ることがなく、いきなり出てきたと言う事も踏まえると可能性はかなり高い。

 

モンスターを一切置いていない理由まではわからなかったが、ともかくダンジョンの可能性もあるということでさらに細心の注意を払いながら進んでいった。

すると、門の様といえばいいのか、柵で先への道を分断されている場所にたどりついた。

 

「これでダンジョンで決まりだね。こんな人工的な物がただの洞窟にあるわけないし……どうする?ここで探索を止めて帰る?」

 

「もうちょっと……この門がなんなのかくらいは調べたほうが良いんじゃないのか……確か受付の人は調べれば調べられただけ追加の報酬を出すって言ってただろ」

 

今回受けたクエストの報酬は確定されている金額以外に、洞窟に深く潜って調べただけ追加の報酬が出る事になっている。だから危険がない範囲で調べられるだけ調べておきたいんだが……クリスが首をかしげている事を踏まえるとこれ以上は危険もあるのかも知れない。

この世界の常識を知らない俺としては彼女の判断にゆだねるしかないが……

 

「……門を調べるくらい……危険はない……」

 

「うん、それもそうだね。じゃあ、私とルリで罠とかないか調べるから少しキミはそこで待ってるといいよ」

 

ルリの意見を聞いたクリスはそう言うと、門のようなものをルリと一緒に探り始めた。

一方の俺はと言うと特にやる事もないので、適当な場所で胡坐をかいて二人の作業を見ていた。

罠の解除スキルを持ってない俺は特に役にたたないからな……というか今になって思うとこのクエストに俺は要らないんじゃないか。

深くは考えない事にしよう……心が折れる可能性がある。

 

俺が膝をついて軽く落ち込んでいると、二人が俺の方に戻って来た。

 

「特に危険な罠はないみたいだよ」

 

「それじゃあ、先に進むのか?」

 

「……それは……」

 

どうしたんだろ?急に二人とも言いよどみ始めて……この門に何かあるのか?

 

とりあえず危険はないそうなので、俺は門に近づいてその脇に張られたプレートの文字を読もうとしたのだが、俺がそこにたどり着く前に二人が道を遮って邪魔をしてきた。

 

一体どうしたんだ?

 

「そ、そこには何も書いてなかったよ。今のわたし達じゃ無理だから素直に帰ろうよ」

 

「……そのほうがいい……」

 

なんだろう……凄く気になる……

でも正面突破じゃルリの腕力には勝てないだろうし、クリスの方に行っても彼女が俺を止めているうちにルリに来られるだろうし……よし、ここは古典的な策でいこう。

 

「あ!?クリス後ろに虫が!!」

 

「え!?ドコ?ドコに……ああ!?ちょっと待って!本当に何もないんだってば!!」

 

「……待って……」

 

俺の言葉を真に受けたクリスが慌てて後ろを振り向いた隙を突いて、俺は門の脇に貼り付けられたプレートの前まで走り抜けた。

そして俺は二人に追いつくかれて、ここから引き離される前に、プレートに書かれた文字を読み解いていく。

 

えっと、なになに、この門を女性と共に通りたき者、何者かのパンツをケモノに捧げよ……でいいんだよな。

つまりこの門を女性と通りたい場合はケモノ……たぶんプレートに側にあるライオンの石像にパンツを捧げればいいのか……

なるほど。だから二人は俺にこれを見せたくなかったのか。

 

俺は後ろに振り向くと、俺の方に駆け寄っていた二人は急に立ち止まり、後ろに一歩退いた。

二人と顔が真っ青になって冷や汗も流してるようだが、どうしたんだろ?俺はまだ何も言ってないぞ。

 

「ねぇ。そのプレートに書かれてるの……読んだの?」

 

「ああ」

 

「……帰ろう……私達には無理……」

 

「ああそうだな。確かにパンツを脱ぐなんて無理だよな」

 

俺ががそう言うと、二人は愛想笑いをしながらうんうんと頷いてくれた。

俺も鬼じゃない、さすがに二人にパンツを脱げだなんてことは言えない、だから……

 

「二人とも、なんも心配もしなくていいぞ……俺には『スティール』があるから」

 

脱げないのならしょうがない……奪い取ればいいだけだ。

普段ならこんな事は考えもしなかっただろ、でも今は借金のせいでお金が必要なのだ。二人には悪いが俺の借金返済のために犠牲になってもらおう。

 

俺が手を突き出すと二人は慌ててこの場から逃げようとするが、すでに手遅れだ。

 

「『スティール』ッッッ!!」

 

「ひぃ!?」

 

「……あ!?」

 

俺がスキルを発動させるとの同時に突き出した両手には、布の柔らかな感触を感じた。どうやら俺の『スティール』は成功したらしい。本当は広げてちゃんと確認しておきたいが、今は時間が惜しい。

早くこのパンツをどうにかしないと、我に戻った二人がこれを取り返しにくるだろ。クリスならまだしもルリの腕力で押さえつけられたら、何もすることも出来なくなってしまう。

 

俺はすばやくライオンの石像まで駆け寄ると、その口の中に手に中にある二つの布を放り込んだ。

すると、先ほどまで開いていたライオンの口が閉じて、それと同時に先に行く事を封じていた策が地中へと消え去った。

 

「よし。これで先に進めるぞ!二人とも大丈夫か?」

 

「大丈夫か?じゃないよ!!こうなるのが分かってたから読ませたくなかったのに…………これでキミに剥ぎ取られるのは二度目だよ!今度剥ぎ取ったら裁判に訴えるからね!絶対に許さないからね!!」

 

「……ひどい……」

 

俺は地面に膝をついて抗議するクリスの言葉を聞き流しながらも、先に進む……ってルリの隠密スキルがないと危険だったのを忘れてた。俺を慌てて後ろを見るとそこには人影ひとつない地面……

 

俺はその後、俺を除いて使った隠密スキルによって姿が見えなくなった彼女達に土下座をして謝ることになり、二度と彼女達には『スティール』を勝手に使わないと約束させられるはめになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、さっきの門以外はこれといって何もないな。ここって本当にダンジョンなのか?」

 

「でもダンジョンじゃなかったらあんな門が出来立ての洞窟にあるなんて説明がつかないよ。ダンジョンなのは確かだと思うけど……」

 

「……目的……理解不能……」

 

ルリの言う通り、こんなダンジョンを作った理由が分からないんだよな。

クリスとルリに聞いた話では、目的として自らの溜め込んだ財宝を守る為だったり、単純に大きいダンジョンを作って有名なりたいなどや、酷い話では入ってくる侵入者がもがき苦しんで死ぬを眺めるためだとか、様々な理由があるのだが、このダンジョンはそのどれにも当てはまらない。

 

なぜなら、ダンジョンはどんな理由で作るにしても、侵入者を撃退するという共通の役目を持っているからだ。しかしこのダンジョンはどうだろうか?

先ほど門以外に罠や仕掛けは一切ないし、モンスターすら一匹もいないなど、ダンジョンの役目を一切果たしていないといっても過言ではない。もしかしたら、なにもないことで、不気味に思わせ侵入者を撃退するとの発想で作ったのかもしれないが、それならば先ほどの門すら不要だ。

 

「考えて分からないことを考えて仕方ないだろ。先に進めば多少は手掛かりでもつかめるんじゃないか?」

 

「確かに考えてしかたないよね。とりあえずいける所まで……どうしたのルリ?急に立ち止まって?」

 

「また……門……」

 

そう言ってルリが指差すところを見ると、先ほどと同じような作りの門がぼんやりと見える。

また何か命令でも書いてあるのだろうか?

とりあえず二人は何も見ていないに身構えるのはやめてくれ。先ほどの事はちゃんと反省してるから。

 

「今回はついていってもいいか?さっきは暇だったんだよ」

 

「……別にいい……けど……」

 

「前と同じようなものがあっても取ったりしないよね?」

 

「当たり前だ。ちゃんと反省したんだ……今度は同意の上で取る……」

 

「絶対同意しないからね!!絶対だからね!」

 

クリスの言葉にうんうんと頷くルリ。

まあ、流石に俺も先ほどで懲りた。仮にもし同じような事があったら諦めるしかないだろう。

 

俺たちはゆっくると罠がないかどうか確認しながら門のそばに近づいていくと先ほどの門と同じようにその脇にプレートが取り付けられていた。どうやらまた命令があるらしい。

先ほどのがよほどトラウマになっていたのか、顔を真っ青にしている二人を横目に俺がプレートのそばまで駆け寄った。

 

「えっと、この門を女性と共に通りたき者、何者かの身に着ける全ての服をケモノに捧げよ……」

 

俺がプレートの文字を読んだ瞬間、空気が凍りついた。

その場に誰もが一言も話さない沈黙、それが数十秒ほど続く。そしてその沈黙を破ったのはクリスの叫び声だった。

 

「このダンジョンはどうなってるのさ!?なんでこんな破廉恥な仕掛けしかないの!?ここ作った奴の頭、絶対にどうにかしてるでしょ!!」

 

激し同意だ……

しかしどうしよう?一応服を脱げば通して貰えるみたいだが……

俺個人としてはぜひとも脱いでほしい、借金的な意味と、目の保養的な意味の両面で。

 

「クリス……どうするんだ?此処に書かれてる通りなら服を脱ぐだけで先に進めるみたいだが……」

 

「そんな期待に満ち溢れた目をしても脱がないよ!!そんな残念そうな顔しない!さすがにお金が入るっていても全裸には耐えられないよ!」

 

そうか……

ルリも涙目でそれだけは無理と訴えてるし……さっき約束したのもあるが、パンツならまだしも女性を全裸にできるほど俺は鬼畜じゃない。

マナにはヘタレとよく言われたけど。

 

ともかくここまでの一本道で他に調べられる場所がない以上、ここから帰ってギルドに方向するしかないだろう。俺はクリスに目を向けると彼女は無言で頷いた……どうやら彼女も同意見のようだ。

 

俺とクリスがルリに隠密スキルを使って貰うために、いまだにプレートの前に突っ立っている彼女のそばに行こうとしたその時だった。ルリが小声でボソッと呟いたののが聞こえてきた。

 

「……女とは書いてない……」

 

「ルリ?一体どうしたの?そのプレートに何か書いてあったの?」

 

「……このプレートに女性の服とか書いてない……」

 

えっと、確か書いてあったことは、何者かの身に着ける全ての服をケモノに捧げよだったよな。確かに何者かとは書いてあるがそれが女性でないとダメだとは一言も書いてない……つまり男性でもいいわけで……

 

俺がクリスに顔を向けるとそこには、ニコッと笑みを浮かべたクリスがこちらに歩み寄ってきた。

おい……冗談だよな、俺を全裸にするとかはないよな……

 

「よく考えてみたらさ……あたし達だけ仕掛けを解くって不公平だよね……世の中は公平じゃなくちゃいけないと思うんだけど……キミはどう思う?」

 

「いや、そんなことを気にしなくいいぞ。俺はそんなことで腹を立てる男じゃない。それに世の中は不公平なものだ……ほら、よく考えてみろ、明日の生活に困らない裕福な人もいれば、明日どころか今日を生きるのにすら困難な人もいるじゃないか」

 

「確かにそうだね……でもね。目の前に自分よりも裕福な人がそれを見せびらかしてたらさ……イラッてくるでしょ?あたしもね……このままキミが何も犠牲を払わずにいることに我慢ならないんだよ」

 

そう言いながら一歩、また一歩と俺の方に近づいてくるクリス。

 

まずい……ここから早く逃げないと真っ裸にになるまで剥ぎ取られてしまう可能性が高い。

俺は急いで振り返って逃げようと……振り返れない!?一体どうなってるんだ!?まるで後ろかにものすごい力で掴まれたように体がびくともしない。

 

どうなってるんだ?後ろから誰かが近づいて来たら敵感知のスキルでわか……あれ?よく見るとルリの姿が消えて……

 

「ルリなのか!?離せって!もしかしてパンツを剥いだことまだ怒ってるか!?悪かった!後で好きなものを買ってやるから、それで許してくれ!」

 

「……簡単に許せない……」

 

俺がルリから逃れようと必至にもがいているうちに、クリスは俺の手と鼻の先にまで近づいていた。

先ほど変わらず笑顔を浮かべているが目が全然笑ってない……その目を例えるなら、復讐という名の炎でメラメラと燃え上がっていると言えばいいのだろうか。

とりあえずその目で分かった事があった……こいつら本気だ。

 

「よく考えてみろ……俺を裸にしたら、この洞窟を出て街に行くまで、見たくもない所が丸見えになんだぞ。そんなのいやだろ?」

 

「……我慢する……」

 

「リルの言う通り、それくらいは我慢するから気にしなくてもいいよ……それじゃあ覚悟はいいね?」

 

「本当にやめろ!おい!あっ…………いやぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい……こっち見ろよ……」

 

俺の声に二人はピックと反応するだけで俺に目を合わせるどころか、俺の方を向こうともしない。

 

俺はあの後、クリスとルリの手によって衣服を全て剥ぎ取られる事となり、その衣服を先ほどと同じようにライオンの口に放り込んだ所、なんと門の柵が動き出し、先に進めるもうになったのだった。

まあ、そこまではよかった……いや、よくはないのだが俺も一回は彼女達から剥ぎ取ってるんだし、これでおあいこって事で心の折り合いをつけることにした。何時までもいじけても仕方ないな。

 

ともかく、そこから先に進んでいくと再び門があったのだ。もう悪い予感しかせず、全員がこの場から帰りたかったのだが、一応見ておこうとプレートに書かれた文字を読んだのが不味かった。

そこには、要約するとこの先に行きたかったらこの服を着ろと書いてあって、その隣には所々にフリルがあしらわれたゴスロリ衣装があった。

俺はそれを見てすぐさまその場から逃げ去ろうとしたのだが、クリスの『バインド』に捕まってしまい、ちょうど服を着ていないのだからよかったじゃないかと、嫌がる俺をよそに無理やり着せられてしまったのだ。

しかも悪乗りした二人に、ルリの持っていた変装用のウィッグと、クリスが持っていた胸パッドまで着せれれてしまった。

 

こうして俺は今、女装しているのだが、それ以来二人とも顔を合わせてくれない。

 

「おい、なんか言えよ……なんでこっちを見向きもしないだよ」

 

まあ、こんな風にさっきから尋ねてるわけだが理由はわかる。

だって、普通の人なら化け物なんかと目を合わせたくないないだろ?

 

よくテレビや雑誌なんかでは女性と見間違えるほど綺麗な女装した男性を見かけるが、あんなことを出来るのはごく一部の限られた人間だけだ。

あれを、普通の人間がやれば見るに堪えない化け物が出来上がる。事実かどうか知りたいのなら、大きな鏡を用意いてその前で女装をしてみるといい、きっと吐き気を催すはずだ。

ともかく俺はあんなテレビ出るような人と同じだとは思ってない。きっと俺が見るに堪えないのだろう。

 

でもな……

 

「嫌がる奴に無理やり着せてその反応はないだろ……こっちを向かないなら俺はにも考えあるぞ。冒険者ギルドに入った瞬間にお前らノーパンだって……」

 

「わかった!見る!ちゃんと見るから!!」

 

慌てたように俺に振り向くクリス、その隣では涙目になりながらもルリも振り向いてくれた。

たっく、最初からこっちを見てくれれば脅す必要なんかなかったのに手間をかけさせやがって。

 

それにしても、そこまで見たくないとは俺は今、どれだけ化け物じみた格好になってるだ?

少し気になるな……場合によって心が傷つく可能性もあるが、聞いてみることにしよう。

 

「それで俺の姿はどんなんだ?お前らが着せたんだから、感想くらい言ってくれよ」

 

「えっと、その……だね……」

 

「別にいい評価ではないのはわかってるよ。正直に言ってくれ」

 

「……わかった……」

 

すると二人は意を決したようで、俺の目を真っすぐと見据えると、大きく息を吸い込んで二人同時に、俺が全く予想だにもしなかった言葉を放った。

 

「「似合ってる」」

 

「は?」

 

似合ってるて……いやいや、ちょっと待て、それは俺の女装が似合ってるって意味だよな。

俺が女装が似合ってるって、そんなわけがないよな。だいいち、それなら俺をから目を背ける理由がないじゃないか。きっと想像を絶するくらいに俺が醜いから彼女たちが俺に気を利かせてくらたのだろう。

そうに決まっている……っと言うかそうじゃないと別の意味で心が折れそうだ。

 

「じょ、冗談だよな。それが本当だったら、俺から目を背けないだろ。気を利かせなくていいんだ。だから言ってくれよ!冗談だと言ってくれ!!」

 

「それはね……その、ものすごく似合っててすごく美人になってると言うか……」

 

「……女性としての誇り……失いそうだった……」

 

二人とも顔を俯かせ気まずそうに、そう答えた。

 

うそだろ?

俺が女装するとそんなに美人になるのか……正直この世界に来てから最も傷ついた事実だ。

だって、俺は男だぞ、可愛いなんて言われてもこれっぽちも嬉しくねぇよ。これなら、鏡を使って自分を見た際に思わず吐いてしまう程の化け物の方がまだましだよ。

 

なんでこんな知りたくもなかった事実を知らなきゃいけないんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、俺はクリスやリルに励まされなまらも、永遠と続くのではないかと思わせる程に続いているこの一本道を進んでいくと、ようやく終わりが見えてきた。

そこは今までとの柵で進めなくなっていた門とは違って、木の大きな扉があった。

 

「ここにダンジョンマスターがいるのは間違いないね」

 

クリスの言った言葉に俺とルリは頷いた。俺の敵感知のスキルがこの扉の先に何かしらのモンスターがいる事を示している。それはクリスもルリも同じなのだから間違いないと言ってもいいだろう。

 

しかし問題はこれからどうするかだ……

 

「どうすんだ?敵の判別スキルではあんまり強くはないみたいだが……」

 

「……アンデットナイトと同じくらい……」

 

ルリがそう言って俺に同意を示すように頷く。

しかしクリスはあまり気が進まないのか、少し悩みこんでいる。

もしダンジョンマスターを倒したとなればそれなりの報酬を期待出来るだろうから、倒せるなら倒して方がいいと思うのだが……

 

「ダンジョンマスターは戦う場所を自分の得意な場所にすることはできるんだよ。例えば毒のきかないアンデットだったら、自分の部屋に猛毒のガスをまき散らしているとかね。だから単純な強さじゃ比較できない部分があるんだよね。でも今回はかなり弱い部類みたいだし……」

 

なるほど、そう言うこともあるのか、確かにお金はほしいがそれで死んでだら目も当てられないことになる。

冒険者という、命懸けの職業についている以上は、慎重すぎるくらいがちょうどいいのだろう。だが俺は借金を一刻も早く返したいのだ……ここは少し危険な道を通るのを覚悟するしかないだろう。俺はまだ悩み続けているクリスを説得しようと声をかける。

 

「クリス、慎重なのはいいんだが、俺は出来るだけ早急にお金が欲しいんだ。危険に見えたならすぐに引き返しばいいし、こんなチャンスを見逃したらもう二度と来ないだろ?」

 

「それもそうだけど……わかったよ。少し様子を見て危険そうだったら撤退しよう。ルリもそれでいいね」

 

「……わかった……」

 

俺たちは扉に近づき、クリスとルリが入念に扉に罠が仕掛けられたないか確認した後に、扉の取っ手を俺が掴んだ。

そして、音を立てないように慎重に、そして何があってもいつでも逃げ出せるように、少しずつ扉を開いていくと、天蓋付きの大きなベットが見えてきた。そしてその上のものを見て思わず俺たちは声が上げてしまった。

 

「げぇ!?」

 

「「ひぃ!!」」

 

その声に反応してベットに横たわっていたもの、おそらくダンジョンマスターだろうが、そいつが起きてしまったがそれもしょうがないだろ。だって……

 

「あら?お客さん、ならサービスしちゃうわ」

 

そこには今の俺と同じようにゴスロリを来た……筋肉ダルマがいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、このダンジョンは同性愛者というか、オカマのダンジョンマスターがいい筋肉が付いているであろう、男性の冒険者を捕らえるために作ったダンジョンだったのか。女性が共に来ることを禁じているような仕掛けの意味がようやく理解できたよ」

 

「……すごく納得できた……でも女性だけで来た時……どうしたんだろ?……」

 

「女性の冒険者は男性と比べれば多くはないからね。女性だけのパーティを考えてなかったんじゃないかな」

 

「……納得……」

 

「お前ら!のんびりとこのダンジョンの事を考察している暇ががあるんだったら!俺を助けろ!!」

 

「待ってダーリン!そんな逃げないで!!」

 

「ダーリンって呼ぶな!鳥肌が立つだろ!!」

 

今現在、俺は自分のことを追いかけてくる、ゴスロリ筋肉ダルマから必至に逃げ回っていた。

あの後、俺が女装してるせいもあってか、三人ともが女子だと勘違いをしたこいつが、急にやる気を失ったかのように地面に倒れしまったのだ。

 

なんでも男性の冒険者が来る事を期待していたのに、俺たちを見て拍子抜けしたらしい。するクリスが俺のことを男性だと言った瞬間……

 

「待って!私の体の性別と心の性別の両方を満足させられる人なんて初めてみたの!これは運命なのよ!!きっと赤い糸で結ばれた者どうしなのよ!!」

 

今、耳で聞こえるようなことを言い出した、俺に襲い掛かろうとしたのだ。

もちろん俺はそんなのは御免なので、こうして逃げ回っているわけだ。

 

「だれも赤い糸だなんて結ばれてねぇよ!それはお前の目の錯覚だ!!」

 

俺はそんな事を叫びながら、必死に前に進む……もし足を止めたら後ろで舌を舐めずり回してる化け物によって俺の純潔は散らされることになるだろう。

それだけはやだ。死んでもやだ。と言うか、やられるくらいなら死ぬ。

 

「お前ら俺と違って余裕があるだろ!なんとかしてくれよ!!」

 

俺と後ろの化け物は必死に走っているいるのだが、クリスとルリはステータスが俺達よりも高いのか、まだ余裕がある。だからさっきからこの化け物をどうにかするように頼んだいるのだが……

 

「ごめんね。流石にあの怪物には近づきたくないかな……」

 

「……今までで……一番怖い生き物……」

 

それはごもっともな意見だろうけどさ!!

その生き物に狙われている俺のことも考えてくれ!!

 

とにかく、何かしないと不味い、もう息が辛くなってきたし、心臓も痛いほどバクバクと鼓動を鳴らしている。後ろから追っかけてきている化け物はまだまだ余裕そうだ。

このままだと出口に着く前に俺の体力が切れるだろう。その前になんか策を考えないと……

 

そんなことを頭で考えながら走っていたからだろうか。俺は足元にあった石に気づかず、足を踏む外しその場に転んでしまった。

 

「……!?カズマ!?」

 

ルリの声が聞こえるがそれどころではない。俺の目の前に化け物がそびえ立っていたからだ。

 

「ふふふ、ようやく捕まえたわ。さてどうしましょう?あなたは私に喰われるのがいい、それとも私を喰うのがいい?」

 

「どっちもお断りだ!!」

 

身体くねくねの気持ち悪い動きをした後に化け物は俺に伸し掛かると、唇をタコのように突き出して俺の顔に近づけてきた……まさか……おい、やめろ……冗談だろ?

 

「こめんさいね。興奮してすっかり忘れてたわ。まずはキスから始めないとね、順序ってのを忘れかけた私を許してね」

 

そんなことは誰もいってない!!

もうだめだ……このまま目の前の化け物に喰われるくらいなら自決を……

そんな事を考えた時だった。

 

「『バインド』ッ!」

 

物の怪の後ろからロープが襲い掛かり、一瞬で化け物の体に巻き付いその動きを止める。そのロープの先を見るとルリがいつの間にかに俺たちの後ろに立っていた。

 

「あら?人の営みを邪魔するの……ばっ!?」

 

そして化け物が後ろに向きなおろうとした瞬間、化け物は気の抜けた声と共に白目をむいて気を失った。

何事かとその後ろをよく見るとそこにはナイフの柄を振りかぶったクリスの姿が……

 

「大丈夫!?怪我とかはしてないみたいだけど……って、どうしたの!?私にいきなり抱き着いてきて!そこ胸だよ!そんな所に顔をうずめないでよ!聞い……もしかして泣いてるの?」

 

クリスが困ったような声を上げる中、ルリは俺に近づいて、俺の頭を優しく、愛おしむかのように撫でながら、耳元で囁いた。

 

「……よしよし……怖いもの……もうないよ……」

 

その後、俺は怖くて一人で歩くことすらままならず、街のそばに着くまで彼女たちに胸を貸してもらった。

彼女たちはそれに苦笑を浮かべるだけで、一切文句は言ったりはしなかった。それどころか俺の頭を撫でて慰めてくれたくらいだ。

初めて人の優しさというものを身に染みて実感することができた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

マナside

 

これはどうしたらいいのでしょうか?

 

私達は今、ギルドの酒場の一角で椅子に座っているのですが、そこは気まずい雰囲気が包み込んでいました。

私たちは注文を頼まないどころか、一言も話すことはなく、互いを互いに不安そうにちらちらと見つめるばかりで、それ以外の事は何もしようともしません。

この状態が先ほどから三十分以上続いています。

 

なぜこうなっているかと言うと、今日受けたクエストが原因です。今日は誰がリーダーであるのが相応しいを決めるために指示をする人を次々と変えながらクエストをやってみたのですが……正直、増長し過ぎました。リーダーを辞退したカズマが付いて来なかったのですが、それでもどうなかなると、皆が甘く考えていたのが失敗でした。

まさかカズマが必要不可欠である事に気づかされるとは、思ってもみませんでしたよ。

 

ともかく、カズマが来たらどうにかして誤魔化さなくては、私がそう決意すると、ちょうどカズマの声が聞こえて来ました。

 

「此処にいたのか?」

 

「……探した……」

 

「そ、そうですか?いつも通りにしてたと思ったのですが」

 

今回私たちと受けたクエストの報酬であろう、かなり大きめの包みを左手に持ったカズマは私たちの席に座り、ルリもそれに続きました。

なぜか、カズマは着ている衣服が今朝までとは少し違っていたり、目元に泣いた痕のような赤い腫れがあったのですが、私を含めた誰もがその理由を聞くことはありませんでした。

正直な話、そんな事を聞いている余裕がありませんでした。

 

「いつも色々と五月蠅いだろ?だから人声がする辺り探してたんだよ」

 

「そ、そうなんですか」

 

「どうしたんだ?なんか誰も話してないし気まずそうだが……っま、そんな事はどうでもいいか。それで今日のクエストはどうだったんだ?誰がリーダーに相応しいのか決まったのか?」

 

「……気になる……」

 

クエスト……その言葉を聞いた瞬間、皆の肩がビックと跳ね上がりました。

 

ま、まずいです。平常心、平常心……私たちがギルドに来てから考えたことをそのまま言えば何とかなるはずです。そうに決まっています。てか、そうならなかったらお終いです。

 

私はアクア達に確認を取るかのような目を向けると、彼女達は覚悟を決めたようで、私に少しだけ顔を頷かせました。

後はうまくいくことを祈りながら実行に移すだけですね。

 

「それが、クエストですが失敗してしまって……」

 

「私の爆裂魔法を正しく使いこなせるのがカズマだけだと再認識させられましたよ」

 

「ああ、私が自分を虐めようとしても上手くいかなくてな、私を上手に虐められるのはカズマ。お前だけだ」

 

「ってことで、リーダーは今まで通りカズマさんにすることにしたの。昨日は皆で騒ぎ立ててごめんね。今日は私達がおごるから、一緒に食べましょう」

 

笑顔を必死で作りながら私達はそう言いました。

皆、事前決めていた通りの事を言えたようですね。これで後は祈るだけです。

私達が必死に上手くいくように祈っていると、その祈りは無情にもカズマの一言で打ち砕かれました。

 

「なんか怪しいな……お前ら何か隠してないか?」

 

そう言ってカズマは私達に怪訝そうな視線を向けました。

 

な、なんでこの男はそう言ったことに鋭いのですか!!

最近ラノベで流行りの鈍い主人公のように、聞き流してくれといいじゃないですか!!

ともかく、失敗してしまったものは仕方がありません。こうなったらどうにか言い包めてあの事実だけには気づかないようにしないと……

 

「か、カズマさん!!気のせいに決まってるでしょ!決してめぐみんの爆裂魔法で新た借金を作ったってことはないから、なにも心配しなくてもいいわよ!!」

 

「そ、そうです!私がそんな目に見えた失敗をすると思っているのですか!そんなこと、私の爆裂魔法の被害を頭に入れられない、アクアみたいなバカが指示でもしない限りありませんよ!」

 

それは何が起きたが言っているようなものじゃないですか!!馬鹿なのですか!?馬鹿なのでしょう!!馬鹿だと自己申告してください!!

これじゃ、アクアの指示に従っためぐみんの爆裂魔法が辺り一面を吹き飛ばして、新たな借金を積み上げた事実を隠せないじゃないですか!!

ただでさえ、カズマは最近はお金のことに五月蠅いのです。こんな事実が知れたら……

 

「ひぃ!!」

 

カズマの顔を見た私は、声を張り上げて、椅子から転げ落ちてしまいました。

だって!!キャルを冒険者に投げ込もうとした時と同じ、菩薩のような顔になってるんですよ!!

アクア達もカズマの顔を見たのか、ひぃっと悲鳴を上げて黙り込みました。そして怯えながらもカズマを見つめています。

 

「どれくらいだ……」

 

「はい?」

 

「どれくらい新しい借金を作ったんだ……ちなみ請求書は俺の所に来るんだからな。嘘を言ったらどうなるか……分かるよな?」

 

その脅しような言葉に私達は素直にコクコクと頷きます。

カズマが本気で切れたら公然の前で全裸など生ぬるいと思わせるような罰を食らうでしょう。

なにせ彼は中学で怒らせたら怖い人ランキキングでぶっちぎりの一位を取ったこともあるのです。近隣の不良がカズマだと知った瞬間に、有り金を全部置いて、泣いて謝ったこともあるのです。

 

正直彼は怒らせるのだけは絶対にしたくないです。

 

「わかったなら、言ってみろ」

 

「その、だな……ご……五百万エリスだ」

 

ダクネスが私たちが新たに作った謝金を告げた瞬間、カズマはとてもいい笑顔でニコッと笑いました。

ああ……ダメですねこれ。カズマは笑っているのは顔だけで目が全然笑っていません。冷徹な視線で私達を見下ろしています。完全にぶち切れます。

 

すると、めぐみんは椅子から飛び上がると、ギルドの入り口に向かって走り始めました。

 

「めぐみん!!どこに行くつもりですか!?」

 

「すいません!急用を思い出しました!なので私はこれで失礼させてもらいますね!!」

 

「ず、ずるいわよ!めぐみん!!ここから逃げるなら私も連れていきなさい!一人だけ逃れるんて許されると思ってるの!!」

 

ここから逃げ去ろうとするめぐみんを見て慌てて私達もそれに続こうとした時でした……

 

「『スティール』ッ!『スティール』ッ!『スティール』ッッッ!!」

 

「ひぃ!?」

 

カズマが腕を突き出し、逃げようとしためぐみんに容赦なく『スティール』を食らわせました。

カズマの『スティール』によって、帽子と眼帯、そしてパンツを剥ぎ取られためぐみんは腰を抜かしてしまい、その場に倒れこんでしまいました。

 

それを見た私達は、逃げようとした態勢のまま固まって動きを止めてしました。だってカズマの『スティール』ですよ。一番最初に女性のパンツを剥ぎ取る『スティール』ですよ。めぐみんは服こそ奪い取られませんでしたが、私達も同じだと言う保証はどこにもありません。

 

私達が身動きできないでいると、カズマは手を突き出したまま、私達にこう語りかけました。

 

「逃げる……全裸になるまで『スティール』……OK?」

 

頷く以外の答えはありませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私達が新たに作った借金自体は、カズマ達の受けていたクエストの報酬で帳消しになったため、カズマがこれ以上の借金を背負う事はなかったのですが、私達はカズマとルリ……そしてカズマから報酬の分け前を貰いに来たクリスも途中参戦して、一昼夜に及ぶ説教を食らいました。軽いどころか重大なトラウマになりましたよ。

勿論罰が説教だけで済むわけもなく、私達は反省文十枚の提出と、二度と自分がリーダーになると言いませんと契約書まで書かせられました。

確かに私達が悪かったとは思いますが、ここまでする必要はないじゃないですか。

 

ともかく、この事件の結果として、私達にはもう二度と借金を増やすような真似はしないとの、共通の認識が生まれることになりました。それほど今回のカズマは恐ろしかったです。




これで書き終っていた分の投稿は終了です。
どうだったでしょうか?感想や質問などがあれば感想に書いてもらえると嬉しいです。

今後の予定ですが、もうすぐ期末考査があるため、暫くの間は更新はできないと思います。期末考査が終わり次第、執筆はしますがそれでも次の投稿は二月の中ごろになると思います。長い間お待たせする事になりますが、待ってもらえると嬉しいです。
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