私が第二次改装から更なる改装を受けたという事は他の艦娘にもすぐに知れ渡った。
第二次改装、改二からの更なる改装はあるドイツ艦娘が行ったので全く前例のないことではなかったが、それでも珍しいことだった。
何よりも件のドイツ艦との違いは、改装した後も通常の改二の状態へと戻せるという点だった。
これによって戦況に応じて二つの形態を使い分けることが出来、戦術の幅が大きく広がるという点がこの特殊改装の利点だった。
通常の第二次改装状態ではバランスの取れた、多数の艦載機による汎用性に優れた形態、更なる改装、便宜上では改二甲状態では何と飛行甲板が装甲化された装甲空母へと艦種が変化する。
この形態では艦載機の搭載数は減少してしまうものの、防御力が向上し継戦能力に優れるだけでなく、単純に火力が増すという利点がある。
更にはカタパルト搭載や今までよりも長い弓を使うことで射程を飛躍的に伸ばすことに成功しており、アウトレンジ戦法に特化した形態と言える。
私にとって最もメリットを感じる改装はやはり後者で、射程外からの攻撃、つまり先制攻撃が決まれば此方の損害を減らせる。
もしも敵が此方の攻撃を掻い潜って来たとしても、私の防御力ならば盾になることだって出来るかもしれない。
そう、
改装から数日が経ち、いよいよこの力を発揮する最初の機会が訪れる。
以前から計画されていたとある海域の最深部攻略作戦が発動させられたのだ。
大規模作戦に匹敵する海域攻略作戦には各鎮守府でも主力中の主力が投入される。
この鎮守府でも歴戦にして各分野で最も秀でた戦績を誇る艦が集められた。
正規空母からは私と瑞鶴、戦艦からは金剛さんと長門型の二人、軽空母からは瑞鳳さんが選抜される。
何れも大規模作戦時には艦隊編成に組み込まれる強者揃いだった。
正直、今までは正規空母が私達五航戦しかいなかった、という部分もあったが今回はそれを払拭する好機だ。
瑞鶴は俄然やる気を見せ、それは私も同じで体の奥底から抑えられない衝動が溢れ出し、突き動かそうとしている。
「翔鶴姉ったら、大丈夫?」
視界に不意に手が映し出されて、私は面食らう。
どうやら出撃直前、瑞鶴に何度も声を掛けられていたらしい。
「ええ、ごめんなさい。大丈夫よ」
「改装されてから初めての出撃だから緊張するよね、でも翔鶴姉なら大丈夫だよ!
あれから何度も演習や鍛錬をこなしたんだから。それに私だって、瑞鳳だって一緒だしね!」
「そうね、三人で一緒に機動部隊の新しい船出に乗り出しましょう!」
私を心配してくれる瑞鶴の言葉が、どれだけ暖かく感じたことか。
纏った新しい艤装は装甲化された分、以前の艤装よりも重くなったが軽くなった気がした。
眼前に広がるのは、今はまだ穏やか鎮守府正面海域の見慣れた穏やかな海。
その遥か先にある攻略海域を睨んで、私達は鎮守府を出発した。
攻略海域までは、艦娘を載せた専用輸送船で向かう。
鎮守府正面海域にも未だに深海棲艦は棲み付き、一定期間ごとに潜水艦が跋扈している。
そんな中を攻略艦隊がそのまま出撃してしまえば、要らぬ戦闘をして消耗を強いられることになってしまう。
それを解消する為に、専用の輸送船が用意され攻略隊とは別の艦娘がそれを途中まで護衛することになっていた。
それ程までに入念にしなければ、この海域は攻略が出来ないと提督も大本営も判断したのだろう。
海域の近辺に到着し、輸送船と護衛艦隊を残して私達攻略艦隊は水面にその足を下ろした。
通常ならば青い海が、まるで血のような真っ赤な色に発光しているのが眼前に広がる。
そこにはありとあらゆる生命の気配が無く、とても静かな海となっていた。
各々の艦娘の表情に緊張の色が浮かぶ、適度な緊張ならば戦闘に支障はなく寧ろ良いものだが、過剰な緊張は判断力や身体を鈍らせる。
「Hey,皆さん!これから私達は深海棲艦の活動拠点にカチコミを決める訳デスが何て事はアリマセーン」
そんな中、旗艦の金剛さんが口を開く。声音には緊張の色は無く、努めていつもの調子で喋っていた。
「ただチョーット相手の玄関先に来て強引に扉を抉じ開けて、kitchenから上等な紅茶の茶葉をかっぱらうだけデース」
「いや、それではただの紅茶強盗だろう」
「ナガモンは真面目デスネー」
「そもそもそんな口上でやる気を出すのはお前ぐらいのものだ」
「
「え!?えーと……あの、そのー……」
急に話題を振られて頭の中が真っ白になってしまう。
「わ、私は何方かというと緑茶の方が」
「まさか、お前は緑茶の茶葉の方がやる気が出るのか!?」
ホワイトアウト状態になった思考で必死に出したのは、我ながら呆れる様な回答だった。
長門さんも驚きの為か、若干思考が支離滅裂なものとなってしまっているようだが。
「そういう事じゃないんじゃないの?長門も翔鶴も、もうちょっとリラックスして」
素っ頓狂なやり取りに緊張がほぐれた陸奥さんが、含み笑いをしながら宥める。
会話の内容はどうあれ、皆の極度な緊張状態が緩和されたのは好ましい。
当の本人の金剛さんが本気で言っているのか、冗談で言っているのかはわからないが。
「楽しいお喋りは終わりみたい、偵察機より入電!三時の方角より敵影を発見!!
重巡二隻、軽巡一隻、駆逐艦二隻の水雷戦隊と思われます!」
私達のやりとりをクスクスと笑っていた瑞鳳さんが叫ぶ。
三時の方角には肉眼ではまだ見えないものの、深海棲艦がやって来ている。
「全艦、輪形陣を維持しつつ進軍!
空母のお三方は、第一航空隊の発艦をお願いしマース!!」
旗艦の金剛さんが先ほどまでの楽し気な声音から、勇ましい声音で号令する。
私と瑞鶴、瑞鳳さんは頷いて敵艦隊の方角へと弓を構える。
矢を番えて、弦をはち切れんばかりに引き絞って神経を研ぎ澄ます。
風、波、音、五感に訴えて来る情報を頭の中で整理し、計算し、最適な状況を狙って渾身の矢を放つ。
私の放った矢は、他の二人の矢よりも速く、遠くまで飛んで行きやがて複数の艦載機へと姿を変化させる。
私達空母はこの艦載機を通して、戦艦等の水上艦では知覚できない広範囲をあたかも自らの目で見るかのように知覚することが出来る。
当然、本来の目で見る部分も見えているので、私達空母へとフィードバックされる情報量は凄まじいものがある。
特に飛ばす距離が長くなればなるほど範囲は広大となるので、新しく飛距離が増した私への負担は改装前よりも大きくなっていた。
必死に頭の中をフル回転させて情報を処理する、艦載機達が敵艦隊を捕捉する。
敵の艦隊が対空兵器で此方を撃ち落としに掛かるのが
私の流星改が海面スレスレまで高度を落とし、彗星一二甲が敵艦隊の上空から空爆を開始した。
駆逐艦と重巡に爆弾が命中し、断末魔とも取れない声を上げて炎上し海に呑み込まれていくように沈んでいく。
更に艦攻隊の魚雷が放たれ、敵の残りの駆逐艦の横っ腹に命中する。
サメに食い破られたように、腹を抉られた駆逐艦は燃料なのか火薬に引火したらしく、誘爆して海に沈む前に爆散した。
やがて、遅れてやって来た瑞鶴と瑞鳳さんの艦載機が(結果として)第二波となり、敢え無く敵艦隊は全滅した。
「敵水雷戦隊、沈黙しました。周囲に敵影を認めず。これで先に進めますね」
空母の第一次攻撃のみで敵艦隊を撃滅、この報告に此方側の士気は高まった。
金剛さん達からの称賛も、瑞鶴の喜び、やっと五航戦が名実共に一航戦を継ぐ高揚感よりも
私の体を支配していたのは、
翔鶴達が艦載機を放って数分、私こと長門は艦載機を飛ばしている間、ほぼ無防備な空母の護衛として翔鶴の傍に控えていた。
他に瑞鶴は陸奥、瑞鳳は金剛に護衛として付いていて貰っている、お互い距離を取って万が一の時に備えて一気に壊滅させられないようにしている。
よって翔鶴の声は他の面子には聞こえておらず、
艦載機を飛ばしている間、空母の意識はそちらに集中しているので、本来ならばこんなことは滅多にない。
だが、私は彼女の声を聞いてしまった。
―沈メ、沈メ―
最初は、此方の索敵を掻い潜った深海棲艦の声だと思った。
もし、そうだとしたら人語を解するのは鬼や姫級の相手となる。
冷や汗を額に一気に零しながら私は周囲を見回し、視覚だけでなく電探でも周囲を確認するがやはり敵艦は見えない。
まさかと思い、翔鶴を見やるとその口は動いていた。
「沈め、沈め、沈め」
まるで、壊れたレコーダーの様にただその単語のみを呟き続けている。
普段の、たおやかで優しく慈しみに溢れた彼女からは想像できないほどの、暗く冷たい声だった。
その様は彼女の美しい白銀の髪と相まって、まさに深海棲艦の様だったが、私が想起したのはそれだけじゃない。
私は、この状況を過去に何度か経験している、
翔鶴の状態は、敵艦隊を撃滅するまで続いたが、艦載機から意識を離した後にはいつもの彼女に戻っていた。
私は、折を見てこの事を旗艦である金剛、陸奥にも報告しなければならない。
「あの時のような悲劇を繰り返さない為にも」
私達三人のアウトレンジ戦法は大成功を収めた。
あの水雷戦隊を撃滅してから何度か敵艦隊との交戦はあったが、その悉くが私達空母による先制攻撃に為す術なく蹂躙されていた。
翔鶴姉の新しい門出、それを華々しい戦果で彩る為に私は何時も以上に気合を入れて決戦に臨んでいる。
普段から手を抜いている訳ではないが、それでも今回の作戦には注力をせざるを得なかった。
今までひよっこ扱いされながらも地道に戦績を重ねて来た、それが漸く実を結ぼうとしている。
だって、これで本気にならなければ私達の中でのこれまでの事が、全て嘘になってしまうだろう。
海は相変わらず、今までの犠牲者の血で染め上げられた様に赤く発光しているが、私達の前途は明るいものだった。
此方の損耗は少なく、金剛と長門さんと瑞鳳が小破状態になっているぐらいで継戦は十分に可能だった。
もうすぐ、敵の主力艦隊と接敵することが予想される。私と瑞鳳は索敵機を放ち、周囲の警戒を行った。
意識を艦載機に集中していると、突然それが遮断される。
「八時の方向に敵艦隊と思われる襲撃あり!全艦警戒を急いで!!」
索敵機が敵機に撃墜された!私は弾かれるように僚艦達に向かって無線で叫ぶ。
金剛の号令がそれに応える、敵艦隊の編成は不明な為、陣形は様々な状況に対応しやすい複縦陣が選ばれる。
やがて、索敵機が撃墜された方角辺りに視認できるぐらいの距離に敵艦隊が見えた。
もはやアウトレンジ戦法は使えない、私達空母は陣形を組む際に予め発艦させていた第一次攻撃隊を敵艦隊に向けて飛ばした。
敵艦隊からも無数の小さな赤い火の玉のような物体がこちら側に放たれるのが見える。敵艦隊の艦載機だ。
少なくとも敵も空母を擁する機動部隊であることが考えられる。こうなってしまっては負けられない。
私の中で闘志が燃え上がり、身を焦がすほどの炎を体の内から放つ感覚を覚える。
「こんなところで負けていられない。この作戦を成功させて皆に、あの澄まし顔の鉄仮面に認めさせるんだからぁ!!」
私の激情に応える様に艦載機が次々と敵艦隊の防空網に突っ込んで行く。
艦戦に守られるとは言え、敵主力艦隊の防空網は苛烈で攻撃部隊の半数が海に落ちる。
それでも一部の攻撃部隊は潜り抜けて、果敢に敵艦隊に肉薄する。当然、そこから更に対空火器からの妨害があった。
敵の軽巡、異形の両腕をしたツ級と呼ばれる個体の対空火器の性能は高く、攻撃部隊の更に半数は奴の餌食となる。
「届けぇぇぇええええええ!!」
私の意識の全てを艦載機に向ける、まるで艦載機を直接操る様な感覚に陥った。
文字通り、自分の手足の様に動く攻撃部隊はツ級の対空火器の作りだす防衛圏を突き破り、ツ級に爆弾を命中させる。
ツ級は言葉にならない悲痛な叫び声を上げて水面にその姿を沈めていった。
次の瞬間には視界が暗転して、私の意識は空母瑞鶴へと戻っていた。
「瑞鶴!敵の砲撃の射程内に入ったわ!第二次攻撃部隊の発艦を急いで!!」
「りょ、了解!」
先程までの感覚に疑問を覚える暇など無く、瑞鳳の怒号が耳に飛び込んで来る。
敵の艦載機は、こちらの対空火器に阻まれて本格的な攻撃は出来なかったようだが、金剛が被弾して中破状態となった様だった。
すぐに短弓を構えて矢を番えて敵艦隊を睨む、気付けば敵艦隊の陣容がもう目視でわかる距離だった。
先ほど沈めたツ級を除き、空母ヲ級改が一隻に駆逐二級の後期型が二隻、更に戦艦棲姫が一隻だった。
敵空母の艦載機が再び此方に向かって来る、金剛、長門さん、陸奥さんの主砲が敵艦載機を睨み、その口径から榴弾が放たれ敵艦載機の編隊をズタズタに引き裂く。
先ほどは間に合わなかったが、三式弾を装填しており敵の艦載機はほぼ攻撃力を失った。
航空戦力を有する此方が有利となり、第二次攻撃部隊の準備も整った。
私と翔鶴姉、瑞鳳の艦載機は編隊を組んで敵艦隊へと突撃を開始する。
敵も榴弾等で抵抗をするが、何とかそれを掻い潜って肉薄する。
深海棲艦の瞳が艦載機を睨んでいるが、既に為す術はなかった。次々と爆弾、魚雷が投下されて方々で大きな水柱を巻き起こす。
それが収まって、海の上には静寂が戻っていた。霧散した海水が霧の様になり敵艦隊の様子は窺い知れない。
霧が晴れる頃には、深海棲艦の残骸の一部が水面に無残に晒されていた。
勝利を確信した私は、緊張状態を解いてしまう。だが、それは今思えば間違いだった。
私が翔鶴姉の所へ戦勝祝いを述べに行こうと思った時、足元の海中から大きな黒い影が突如として現れた。
人型の艤装を失った、戦艦棲姫の化け物の形をした艤装が狂った様に此方に向かって来る。
横に薙いだ巨大な腕が私を思いっきり打ちのめそうと近づいて来る。
咄嗟の事で何も出来なかった私は体を強張らせて目を瞑ってしまう。
次の瞬間には体が強い力で押し退けられる。死を覚悟したが、不思議と思ったほど衝撃は無かった。
恐る恐る目を開くと、私の眼前には装甲化された飛行甲板を盾にして怪物の一撃を防ぐ翔鶴姉の姿があった。
翔鶴型の出力は16万馬力とあの大和型を凌駕するが、それでもこの怪物の一撃を防ぐには至らず、翔鶴姉の右肩にある甲板は砕け、右腕はあらぬ方向へと曲がってしまった。
しかし、翔鶴姉はただ攻撃を食らっただけではなかった。空いた左手で持った矢で怪物の首筋を貫く。
怪物はその場の空気を揺るがすほどの雄叫びを上げて、翔鶴姉を振り解いた。
海面に叩き付けられた翔鶴姉目がけて止めを刺そうと、怪物の砲口が向けられた。
だが、その砲口が火を噴くことはなかった。
「これ以上好き勝手は許しマセーン!」
怪物の死角から金剛が飛び掛かり、脳天に向けてその拳を振り下ろす。
高速戦艦の速力と、体重を載せた強烈な一撃に怪物は身じろぎして後退した。
「ナガモン、ムッツー!旗艦命令で近接戦闘を許可しマース!思いっきり暴れて下サーイ!」
言われるや否や、長門さんと陸奥さんは海面を蹴って跳躍し、二人揃って飛び蹴りを怪物の腹部に繰り出す。
それでも怪物の体は仰け反らないが、蹴りを入れた長門さんはすかさず怪物の懐に飛び込み、ボクサーのように強烈なパンチを何度も繰り出した。
その隙に陸奥さんは背後に回り込み、反対側から怪物の背中に腰を落としてからの強烈な右ストレートを打ち込んだ。
怪物の背骨にあたる部分が軋んだ音を上げて、潰れた音がはっきりと聞こえるまでに破砕される。
次に二人はそれぞれの右足を一歩後ろに下げ、左足を軸にして怪物の首に目がけてハイキックを繰り出した。
二人の右足はギロチンの様に怪物の首を跳ね飛ばし、怪物の首から油のような、血のような体液が噴水の様に勢いよく噴き出している。
ただ、それでも怪物の動きは止まらなかった。それどころか両腕を振り回し始めるので二人は怪物から距離を取った。
「しつこい相手ね、私と長門の攻撃を食らってまだ動けるなんて」
「全くだな、大抵の姫クラスなら機能停止するものを、金剛お前も見てないで手伝え!」
金剛は了解デースと応えて、頭を失い最後の足掻きと出鱈目にその巨大な両腕を振り回す怪物に近付く。
両腕の攻撃は金剛の艤装の船体を模したシールドが、まるで意思があるかのように動いて尽く弾き、その強烈な一撃は一度も金剛に触れることはなかった。
ある程度近付いた金剛は右の手を握る。
「バーニング、ラァァァアアアアアブ!!」
その掛け声と共に右の握り拳から、何と炎が噴き出す。
余りの出来事に、私は自分の目を疑った。そんな馬鹿な、長門型二人の戦い方も戦艦としては出鱈目だが、金剛の場合はもはや人体としても出鱈目だった。
金剛の右腕が怪物の胸を貫くと、怪物は動きを止めて糸が切れた人形の様に海上に崩れ落ちた。
「相変わらずお前の格闘は出鱈目だな」
「これも修行の成果ネー」
「艦娘としての修行としては間違っている気がするわ」
長門型の二人も若干引いた反応を示すも、金剛は意に介していなかった。
余りの出来事に呆然としていた私だったが、すぐに翔鶴姉の元に駆けつける。
海面に叩きつけられた後、近くにいた瑞鳳に介抱してもらっており、彼女の肩を借りて何とか立っていられる状態だった。
「翔鶴姉、大丈夫!?」
「ええ、右腕以外は平気よ」
気絶していても不思議ではないぐらいだったが、翔鶴姉は気丈に振る舞っていた。
折角改装した飛行甲板も、見るも無残な姿になってしまっていた。
「それにしても、良く瑞鶴の危機に間に合ったね。私はもう駄目かと思ったんだけど」
ほっとしたように瑞鳳は胸を撫で下ろしていた。
だが、確かに本来なら私の危機に間に合わないぐらい陣形の距離は空いているのに、どうして翔鶴姉は間に合ったのだろうか?
「私、いつでも瑞鶴の危機に間に合うように気を配ってたから」
「いつでも?」
「ええ、それにこの飛行甲板も装甲化したおかげで今回も守ることが出来たわ。やっぱり装甲空母に改装してもらって良かったわ」
「それって……本当なの!?」
私の怒気が籠った声に翔鶴姉も瑞鳳も驚いて表情が凍り付く。
何事かと金剛や長門さん、陸奥さんも此方を見ているが、それでも私の気持ちは収まらなかった。
「私の為に?そりゃあ、確かにさっきは私が悪かったけれども私の為に翔鶴姉は危険かもしれない改装を受けたっていうの!?」
「そうよ、瑞鶴がもう
「私は何時までも弱いままの私じゃない!
今まで翔鶴姉と一緒に加賀さんの鍛錬にも耐えて強くなったのに……
翔鶴姉は私の成長を認めてはくれないの?!」
「違うわ、瑞鶴。そういう訳じゃないの」
「違わない!私は何時までも翔鶴姉に守られるだけの空母じゃない!翔鶴姉なんてもう大ッキ」
次の瞬間には、私は言葉を紡げなかった。左の頬に衝撃を受けたからだ。
正確には、金剛にビンタをされたからだったのだが、何が起こったのか理解するのに時間が掛かった。
「それ以上は言ってはいけマセーン。折角の作戦成功なのですから、早く帰投しマース」
これ以上は、私は一切言葉を発しなかった。
確かに、あのまま言おうとした事を言ってしまったら、最悪の結末になったかもしれない。
だが、素直に金剛に感謝の気持ちを抱くことも出来ず、やり場のない怒りのせいで私は黙ることしか出来なかった。
ただ、五航戦が作戦を成功に導いたという輝かしい戦績が残ったが、それが今ではまるで他人事のようにどうでもいい事の様に思えた。
すみません、艦隊戦の描写を入れたらいつもの倍以上の文字数になってしまいました。
前書きに書かせて頂きましたが、現実の艦隊戦闘ではなくゲームを基準に書かせてもらってます。
え?ゲームとも一部かけ離れているだろう?
本当にすみません、流石に肉弾戦は調子に乗り過ぎてしまいましたが、今後二度と艦隊戦は書かないと思うので大目に見て頂けると幸いです。
次回から加賀さんにも出番ありますので、タイトル詐欺とは言わないで!