ナイトメア・オブ・ライ   作:兜割り

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『復活のルルーシュ』企画スタート……だと……!?

えっ、マジ!?クローンや平行世界の別人とかじゃなくて『本人』が復活するの!?
この十年生存説や死亡説が議論されてきたが、まさか公式で復活させるなんて……!?

正直言うと心境は複雑だ。『反逆のルルーシュ』は、ルルーシュが死んでこそ綺麗に収まり、感動を与えてくれる作品だった。私もルルーシュの最後を初見した時は涙を零した。その最後をぶち壊すような物語にするのは勘弁して欲しい。だが、やっぱり嬉しいと思う気持ちはもちろんある。寧ろその気持ちの方が強い、強いのだ。

ようするに言いたいことは。

オール・ハイル・ルルーシュッ!

オール・ハイル・コードギアスッ!


それはそうと今回は、独自解釈の強いお話です。

それでは皆さんメリークリスマス。


つながりし者

「シャルル皇帝のギアスによって、僕はアッシュフォード学園に迷い込むところから先の記憶を封じられた。そして、意識を失い、ギアス嚮団で目覚めた僕は――暴れた」

「暴れた?」

「なぜ目覚めている?自分は永遠に眠るはずだったのに。なぜ生きている?もう母も妹もいないのに。それらが痛みとなって僕を暴れさせ苦しめた。亡くした家族の、過去の失敗が痛みとなっていつまでも疼いた。まるで呪いのように……」

 

 

ライは学生服の上から胸に手を当て、振り絞るようにして声を出した。記憶を取り戻した今でも、いや記憶を取り戻してからこそ過去の喪失の痛みが激しくなっている。

 

 

「そのまま暴れて研究員を何人か殺したところで、あのピーターパンと顔を合わせてねえ」

「ピーターパン?」

「君の叔父さん」

「…………」

 

 

叔父という言葉にピーターパンと呼ばれた人物を特定したルルーシュは顔をしかめた。

 

ナナリーを誘拐し、後一歩のところで成功しようとしたブラックリベリオンをひっくり返した童子の皮を被った怪物。滅ぼしたギアスの源。

 

 

「あのピーターパン――V.V.の容姿と声が特に僕と契約したコードユーザーに似ていてね。顔を合わせた瞬間に首の骨を折って殺したよ」

「だが死なない。コードユーザーは不老不死だからな」

 

 

ライはルルーシュの言葉に軽く頷き、

 

 

「実のところ言うと僕の契約者はギアスを授けた時と眠らせる時の二回しか接触してこなかったんだ。皇帝時代、コードユーザーは不老不死だって事実を知らなかったし伝えられていなかった。そもそもギアスっていう名前も現代で知ったんだ」

「碌な説明も、ギアスの危険性すらも伝えなかったのか。暴走について知っておけばお前の人生も変わったかもしれんのにな。そもそも、急に宮廷に入り込んだ奴だろ。ギアスを手に入れた後、捕らえるなりなんかできなかったのか?」

 

 

その言葉にライは再び首を横に振った。

 

 

「無理だ。僕の前に現れた時と同じく煙のように消えていったよ。……本当、どうやって消えたんだろう?ブラックリベリオンの時だってV.V.はどんな魔法を使ってアッシュフォード学園からナナリーを誘拐して神根島に行ったんだ?」

 

 

ギアスの遺跡の扉で『黄昏の間』を通って移動したのか?あれは扉をくぐり、『Cの世界』を経由することで世界中にある扉の場所へと渡れる。

 

だが、アッシュフォード学園のあるトウキョウにギアスの遺跡はない。本当にどうやって移動したのだろうか。だが、その本人は既に死んでそれを知る方法はない。……『Cの世界』で聞くには聞くことは出来るが、あんな奴と話すのは金輪際御免だ。ルルーシュにとっても、ライにとっても、印象は最悪の一言だけだ。

 

少々ずれてしまった話を戻すため、ライは軽く咳払いをした。

 

 

「殺したと思って、そのまま背を向けたのがいけなかった。起き上がった途端、手を触れられて――トラウマをほじくり返された」

「コードの利用による、他人との精神結合を行う感応現象か。奴はお前にショックイメージを送り込み無力化をした。不幸にもお前には再起不能レベルのトラウマがあるからな」

 

 

ルルーシュの言葉にライは意外といった表情を浮かべた。

 

 

「……精神感応のこと知ってたのか。C.C.から、いや彼女がその能力について教えるとは思えないけど、一体どこで?」

「詳しいことは壊滅させる際に、回収したギアス嚮団の資料で把握した。だが、C.C.が時々それをやっていたのを見たことがある。初めて見たのはナリタで俺を追ってくるスザクを無力化する時だった」

 

 

ルルーシュとしても何度か経験がある。あれはきつい。何せ視覚でも聴覚でもなく、脳内で情報が激流となって人格を押し流してくるのだから。目を逸らそうとも、逸らせない。閉じようとしても、閉じれない。耳を塞ごうとしても塞げない。そんな状態で過去のトラウマを見せられたりすれば――。

 

 

「トラウマ――母と妹の死を思い出させられて、簡単に無力化されたよ。そのまま暫く実験対象(モルモット)生活、酷い時には一週間近くスパゲッティ症候群にされたよ。そして、とある素質が今までのモルモットの中で抜きんでていたことが判明した」

 

 

ライはうんざりしたようにその素質の名を口にした。

 

 

「その名前は――『つながりし者(ワイアード)』」

 

 

つながりし者(ワイアード)』。その呟いたライの顔が、嫌悪に歪んだ。

 

 

「契約もなしにギアスを行使する者。世界の源である『集合無意識』、またの名を『Cの世界』、『根源』、『座』、『真理』、『阿頼耶』、『イデア』、『ヴァルハラ』、『フレーム』と呼ばれる『神』と繋がる者。――多次元の俺とナナリーがその能力者として目覚めていたな」

 

 

つながりし者(ワイアード)』とは、一言でいうのなら天然ギアスユーザーのことである。

 

『神』と呼ばれる存在と無意識にアクセスし、強靭な肉体を、不屈の精神を、高潔たる魂を宿した――大英雄、救世主、あるいは魔王といった存在がその三つを極めることで、その素養にあった能力(ギアス)――ワイアードギアスを行使できる。

 

壊滅させる際に回収し、封印又は消去したギアス嚮団の膨大な研究資料にも、その程度のことが残るだけでその存在に関する情報は殆ど残されていない。……かつて嚮団の嚮主であったC.C.すらも、平行世界で知るまで知らなかったのだ。

 

平行世界のルルーシュとナナリーは、諸々の出来事によって『つながりし者(ワイアード)』に、そして『ザ・ゼロ』というワイアードギアスに覚醒していた。

 

つながりし者(ワイアード)』のギアス――ワイアードギアスは、コードユーザーとの契約によるギアスが『催眠術』とするなら、正に一線を画す『超能力』。

 

それによって、『つながりし者(ワイアード)』となったルルーシュは――

 

 

「完全に『魔王』になっていたよね……。ランスロットの蹴りをくらってぴんぴんしてるし、素手で(ナイト)(メア)(フレーム)も破壊してた。あれは僕でも“ゼロ様”って呼びたくなっちゃうよ」

「やめろ。確かにあれは俺だが、あくまで平行世界の存在だ。あんな規格外と比べないでくれ」

 

 

笑うライにルルーシュは頭痛を抑えるように頭に手を当てた。

 

平行世界のルルーシュは、『つながりし者(ワイアード)』と『魔王C.C.』との契約によって、この世界のルルーシュの肉体とは正反対の筋肉モリモリのマッチョマンになっていた。

 

そんな彼が戦場で暴れ回る姿を、ルルーシュは愕然と、ライは爆笑し、C.C.も顔を背けながら肩を笑いで震わせていた。

 

 

「僕はその『つながりし者(ワイアード)』の素質を、現代ではもうないほど色濃く持っていた。極めればワイアードギアスを発動する可能性があるほどに……」

「お前は数百年前の人間――それもブリタニア皇族と日本皇族のハーフとかいうとんでも存在だ。現代では絶えている『つながりし者(ワイアード)』の因子。持っていてもおかしくはない」

 

 

ライはため息を吐き、

 

 

「ギアス嚮団の研究員は僕が『つながりし者(ワイアード)』であり、その高い素質からワイアードギアスを発現する存在になり得ることに驚喜した」

「元々、ギアス嚮団は世界中に存在するギアスの遺跡を中心にしてその先にある『ナニカ』を解き明かすために生まれた集団だ。ギアスの研究も、その『ナニカ』がギアスであると考えてのことではなく、『ナニカ』を解き明かすための鍵として行っていた。……現代に蘇った『つながりし者(ワイアード)』であるお前を新たな研究のアプローチとしたんだな」

 

 

ライはうんざりと首を振った。

 

 

「そこで研究員共はどうやってワイアードギアスを発現するまでに高めるか考えた。そして辿り着いた方法が……」

「方法が?」

 

 

問い掛けにライは深々とため息を吐いた。

 

 

「とある一定の環境に過ごさせることで、その素質を引き上げようとしたんだ。その環境っていうのがどんな場所か解る?」

「一定の環境……」

 

 

ルルーシュは形の良い顎に手を当てて考え込む。

 

眠れる才能を開花するのに相応しい環境……。少なくとも平時ではない。平時などの安定した環境で才能の開花には時間がかかる。ならばその逆。常に異常であることを求められ続ける環境。

 

――極限であることを求められる環境と言えば……。

 

 

「――戦場か」

 

 

確信を持って呟かれた言葉にライは、正解と口にした。

 

 

「『つながりし者(ワイアード)』は英雄や偉人と呼ばれるような存在が当てはまる。だから、彼らのような存在が生まれ易い――戦場に送れば目覚めると思ったんだ」

「拒否は出来なかったのか?」

「無理だ。V.V.の奴が僕の祖国……滅びもう跡形もない地を人質ならぬ跡質にしてくれた。逆らえば荒らす、死んでも荒らすと脅してくるんだ。……あの地で眠った、母や妹、国民の眠りを妨げたくないためには従う他に方法はない」

 

 

ライは当時を思い出したのか苦虫を噛み潰したような顔を浮かべた。

 

 

「そして僕はブリタニア軍人として、当時は激戦区と呼ばれた白ロシア戦線に投入された」

 

 

吐息。

 

 

「僕が派遣された当時はロシアの西側はブリタニアの植民地支配下にあったけど、E.U.の勢力が強かった東側は未だにロシアの支配下。純粋に戦力はブリタニア側が倍ほどあった。けれど総司令官がね……」

「確かブリタニアの総司令官は……第四皇子のブラン兄上だったな。幼い頃何度か顔を合わせたことがあるが、特権階級意識――いや皇族至上主義で庶民出身の母を持つ俺たち兄妹を蔑視していた」

 

 

司令官として問題もあった、とライは呟いた。

 

 

「良く言って勇猛果敢、悪く言って猪突猛進。……熟語で表せば聞こえはいいが、兵士たちの命を軽視しているとしか思えない突撃しか命じていなかった」

「そう言えばチェスといった遊びを馬鹿にしていたのを覚えている」

 

 

そして、ライは白ロシア戦線で経験したことを語り始めた。

 

 

――初陣はヴォルガ河渡河作戦。

 

(ナイト)(メア)(フレーム)版ノルマンディー上陸作戦と評され、史上最大規模の(ナイト)(メア)(フレーム)部隊を三方向から渡河させ、E.U.とロシア連合軍地域を一気に侵攻して突破口を開き制圧する、完全に力押しな渡河作戦。

 

ライに与えられたサザーランドは、部隊の水中戦特化のポートマン、水中戦に改装したサザーランドと違い、脱出機能をオミットした以外は通常と変わらぬ機体だった。部隊に突如組み込まれ、改装なしの機体を与えられたライを部隊員たちは嘲笑した。

 

しかし、そのお蔭でライは助かった。

改装なしであったため、浸水による機体トラブル、関節部に泥が入り込むなどトラブルが多発し、ライのサザーランドは満足に動けない状態になった。お蔭で前進突撃し無残にも迎撃される味方機に遅れ、残骸となった機体群を盾にすることで目立った損傷もなかった。

 

結果としてはブリタニア軍の勝利に終わったがそれは渡河作戦によってもたらされたものではなく、アヴァロン級航空戦艦から派生した量産型航空戦艦による空からの奇襲によってのものだった。ライを含めた(ナイト)(メア)(フレーム)部隊は囮だったのだ。

 

 

「酷い作戦だな。ただの鋼と命の消耗。お粗末に過ぎる」

「本当にね。ヴォルガ河は正に三途の川になったよ。敵軍の迎撃が激し過ぎて、思った以上に前に進めず、速過ぎる後続の投入で(ナイト)(メア)(フレーム)の渋滞が起こってた」

「“ただ勝てば良いという勝ち方は、軍率いる者に相応しからず”。ブラン兄上はそう告げられ、総司令の座も皇位継承権を剥奪され――自害した」

「百害あって一利なしだよ」

 

 

作戦終了を迎えたライは、出来得る限り生存者を――自身を嘲笑した隊員も――救助し、向こう岸まで運ぼうとしたが、仕掛けられた対(ナイト)(メア)(フレーム)地雷を救助した同隊隊長のサザーランドが踏み抜いてしまい、結果救助した隊長を含めた救助した者は全員死亡。ライもその衝撃で腕の骨に罅が入るなど重傷を負った。

 

 

――その後、傷も癒えぬうちに、最前線基地に配属される。

 

次の作戦までの束の間の休息を味わう暇もなく、謎の襲撃者――後に分かったことだが嚮団が派遣した刺客、それもギアス能力者――に何度も襲われ、更に同基地にいた懲罰大隊が嚮団とライの命を奪うことに成功すれば罪を帳消しという内容で裏取引をし、幾とどなく襲われ眠れぬ夜を過ごすことになった。

 

 

――味方からの襲撃から生き延び、与えられた作戦は敵軍の要塞攻略。

 

新たに組み込まれた分隊でブリタニア軍本隊の通過のため、防衛するロシア要塞の攻略を命じられた。何度も味方から襲われるライに隊員たちの信頼はなかった。

 

そして深夜、闇夜に紛れて要塞に奇襲をかけるも隊員の一人が敵を討ち漏らしてしまい、要塞が起動。移動していた本隊を捕捉、攻撃を開始してしまう。

 

ライは自分以外の分隊が全滅したのを機に、ギアスを使用し要塞を無効化するも本隊は少なくない被害を受け、進軍を中止することになった。

 

 

「よくギアスを使ったな。暴走の危険性やトラウマを抱えているのに……」

「使うつもりは全然なかったんだ。もう二度と使わないと決めていたんだ。僕以外味方がやられた時、詰んだと思って一思いに死のうとすら頭に浮かべていた。……けど、あの悪童。僕が死んだら死んだで故郷を荒らすとほざいていたから、死ぬに死ねなくて。それと……」

「?」

「いや、何でもない……」

 

 

――奇跡的に基地に生還したライを待っていたのは、怨嗟と監視の目だった。

 

生存率が限りなく少ない作戦で二度も生還、それも部隊が全滅したった一人生き残ったこと、無傷であること、軍内で登録されたプロフィールに改竄の経歴があったことで基地の司令、副指令からスパイ疑惑を。……元々、上層部(嚮団)から監視の命令もあり、ライの存在にあった疑問も膨らんでいたらしい。

 

基地に所属する軍人たちからは、要塞攻略に遅れ、本隊に被害を出したことで敵意を向けられた。嫌がらせもあり、サザーランドに仕込むエナジーフィラーを細工され、生身でありながら至近で爆発させられたこともある。

 

懲罰大隊の襲撃もより激しくなった。そして遂に、その部隊員を――あくまで防衛、殺害の意思はなく、相手は殆ど事故だったが――死なせてしまい反乱、軍規違反と見なされ、反逆者に仕立てられてしまった。

 

合法的な処刑をされそうになり基地中を逃げ回った。

 

司令部から派遣された軍警察、仲間を殺された軍人たち、罪帳消しのチャンスを逃したくない懲罰部隊、嚮団から派遣されたギアスユーザーである刺客、それら全てに追われた。

 

追い詰められた末に逃げ込んだのが流体サクラダイトタンク施設。

 

爆発の危険性が極めて高い流体サクラダイト。それが溜めこまれた施設に逃げ込めば追っ手も火器を使うことも出来ず、ライはそれを生き延びるための盾とした。

 

だが、基地司令はこれまでのライの異常さから確実に殺すために、タンク施設の爆破を決定した。下手をすれば基地そのものも吹き飛びかねない、狂気の沙汰だった。

 

タンク施設の爆破を最小限に留めるために徹底的に閉鎖するのを見て、司令の思惑を知ったライは、爆発物を取り付ける工作員たちにギアスをかけ、爆発から命からがら逃げ延びた。

 

その後、ブリタニア上層部(嚮団)から派遣された使者によって、ライ包囲網は停止され、ライはまた別の戦場へと連れていかれた。

 

ちなみに、その基地にいた全ての人間はライという人間をもう覚えていない。

 

全員が嚮団のギアスユーザー複数人によってライにまつわる全ての記憶を消去、または封印された。無論、データベースといった記録媒体からもライの存在は残らず消去して。

 

 

「その後は、すっかり愛機になったサザーランドに乗って転戦したよ。基地に向かう途中、輸送機が墜落したり、特殊部隊に追われたりしてもう大変だった……。極め付けは戦闘中に降ってきた、超寒気団が放つ零下二百度の下降噴流(ダウンバースト)……」

「待てっ。ダウンバーストとは何だ……!?」

「え?えーと……積雲や積乱雲が減衰期に入ると――」

「いやっ!ダウンバーストの意味を聞いているんじゃない!――お前はそれを、マイナス二百度のダウンバーストを受けたのかっ!??」

「うん。直撃した」

 

 

まるでもう夕飯は食べたというように、あっけからんとした口調にルルーシュは口をあんぐりと開けるだけだった。

 

 

「ロシア軍と相手している最中に雲が渦のような形になったんだ。元々の原因は、これまで環境を兵器で無茶苦茶にしたせいで、怒った天はそれはもう凄い迫力だった。敵味方全員が攻撃を止めてただただ見入っていたよ。僕は計器が上空の気圧の変化を感知して、慌ててコックピット内の暖房を全開にした」

「マイナス二百度のダウンバーストだぞ。(ナイト)(メア)(フレーム)の空調機能などで助かるはずがない。人間どころか機体そのものが凍り付く」

「けど何もしないよりはマシでしょ。それで、ダウンバーストの直撃を受けて、敵も味方も全員が機体ごと氷漬けに。僕も一時、凍ったけど……」

「けど……どうやって助かった?」

「なに暖房に助けられたよ。実は戦闘中被弾していてね。その箇所が動力部で、動力のエナジーフィラーが破損、暖房機能に過負荷をかけさせてコックピット内を蒸し風呂状態にさせてくれたおかげで助かったんだ」

「…………」

 

 

当時の死に瀕した時、恵まれた幸運をライは何のことなく話すが、ルルーシュはそこまでの出来事を経験しながら五体満足、名を且つ諦めることなく今も生きていることが信じられなかった。

 

 

「ライ。お前は『つながりし者(ワイアード)』ではなく、その……『不死の生命体』じゃないのか?言うならば『異能生……」

「いや、違うからね。死ぬから。普通に頭とか撃ち抜かれれば死ぬから。血もちゃんと赤いし、流し続ければ死ぬから」

 

 

手をひらひらと振り、苦笑を浮かべるライ。その様子から本当に言ったような死地をくぐり抜けたのか怪しい。いや、くぐり抜けたのは間違いないだろう。しかし、それらの死地がどれも特別にキツイと感じていないのだ。

 

彼にとっては皇族時代の蛮族との戦い、黒の騎士団の活動もどれも同じ戦場、規模の差はあれど質は同じとしか見ていない。

 

 

「そこまで戦ったんだ。結果としてお前はワイアードギアスに目覚めたのか?」

 

 

そう、研究の目的は、あくまでライを英雄が生まれるような極限戦闘地域に送り込み、ワイアードギアスに目覚めさせること。

 

ライは自身の掌を見つめ、

 

 

()()()()

 

 

ポツリと、まるで呼吸するように軽い、空虚な響きの声だった。

 

 

「そこまでして……そこまでしたのにワイアードギアスは目覚めなかったのか?」

()()()()()()

 

 

広げた掌を閉じて、また広げてを繰り返す。

そして、何も起こらない自身にため息をついた。

 

 

「ここまでしてワイアードギアスの兆候は何も見られなかった。研究員は再び激戦区に送り込もうとしたけど、V.V.が時間の無駄だとして中止、計画は凍結された」

「不可解だな。奴は嚮団のトップだろ?ならばギアスの研究にもっと積極的になってもおかしくないのに、なぜ中止する?」

「V.V.の目的はあくまで『ラグナロクの接続』だからね。行う方法も、材料も足りている。別に今更、『つながりし者(ワイアード)』なんて対して興味なかったんだろ」

「ならなぜ、お前で実験を行うことを認めた?」

「簡単だよ。――暇つぶし、さ」

 

 

ライはまだ記憶を封じられ嚮団の狗となっていた頃。

飼い主であるV.V.が、その少女のように美しく整った顔に、物憂げな笑みを浮かべて語ったことを喋った。

 

 

 

『長生きの最大の敵がなんだか知っているかい?すべてに退屈してしまうことだよ』

 

『もう、人間が思いつく限りの楽しみは知りつくしちゃった。面白いのはどれも最初のうちだけなんだ。でも――たったひとつだけ、例外がある。何だかわかるかい?』

 

『人間を壊すんだ。ただし、ほんのちょっとだけね。そうすると人間は狂っていく。その変化のバリエーションは無限だよ。これだけは見飽きることがないんだ』

 

 

 

語られたV.V.の『暇つぶし』を耳にしたルルーシュは嫌悪を露わに大きな舌打ちをし、

 

 

「――悪趣味な」

 

 

そう言って吐き捨てるだけだった。

 

 

「自分で言うのもなんだけど、いかなる理不尽、かつ、不条理な状況下でも泣き言も言わなく、諦めずに戦う僕はV.V.の『暇つぶし』にならない。そんなわけで実験は中止にされたんだ」

 

 

そして白ロシア戦線、最後の戦場はロシア最後の――そして最大の要塞攻略作戦。

 

今まで乗ってきたサザーランドにランスロット系列のパーツを組み込み、敵を退けながら要塞最深部にまで潜り込むまで成功した。だが流石に最深部ともあって、強化型のサザーランドでも撃墜されかかるが、途中参戦した『ナイトオブラウンズ』――ルキアーノ・ブラッドリー、枢木スザクの活躍で助かり、要塞攻略も成功。ロシアに止めを刺した。

 

 

「…………」

「…………」

 

 

白ロシア戦線の体験が語り終えると二人の間に沈黙が落ちた。

 

ライはもう既に冷めてしまったコーヒーを含んで、渇いた口内を潤わせた。冷めてもなお、強い苦みは健在で顔を顰めた。

 

時計は既に三時は過ぎ、ピザはもう一箱分しか残っていない。

 

 

「そこまでやっておいて……得るものは無し。骨折り損のくたびれ儲けだな」

「いや、得る物はあったよ。今となってはかけがえのない物をね」

「?」

 

 

首を僅かに傾げるルルーシュに、ライは背後に手だけを後ろに向けた。

 

ライとルルーシュがいる空間は地下にある。

 

かつて第二次トウキョウ決戦、ブリタニア軍と黒の騎士団本隊、最精鋭部隊が繰り広げる戦闘の中に戦略兵器『フレイヤ』が枢木スザクの手によって放たれた。

 

発した破壊力は堅牢を誇った総督府を溶かし、死者だけで一千万人を超え、二次被害による死傷者だけでも二千五百万人を飲み込んで、巨大なクレーターを作り上げた。

 

それから数ヶ月、文字通り世界を征服したルルーシュが、日本を皇帝直轄領とした今、正に暴君として貴族から奪った財産、国民から絞り上げた税金で壊滅したトウキョウ租界を急ピッチで修復。その地下に自身専用の極秘大型シェルターを作らせた。

 

しかし、それは表向き。

 

本当の目的は世間では『死亡』しているライが、『ゼロレクイエム』の最終段階まで身を隠すために作らせたのだ。

 

そして、その大型地下シェルターにはルルーシュとライの人間二人しか存在していない。だが、人型で数えれば四つとなる。二人以外の人型は無論、人間ではない。大体、四メートルを超す人間などいるはずもない。

 

肩を合わせて揃う二体はライにとっての分身であった。その思い入れは騎手が自身の愛馬を愛すよりも深い。

 

それら二体は先程も言った通り四メートルを超す巨体、透き通るような光沢に包まれている、蒼いKMF(ナイトメアフレーム)だった。

 

そのプロポーションは、第五世代KMF(ナイトメアフレーム)が、出来損ないのブリキ人形にしか見えなくなるほど人間に近く、有機的だ。それでいて現在ブリタニア軍の主力として配備されている第七世代KMF(ナイトメアフレーム)、次世代型飛行ユニット《エナジーウィング》を搭載したことでより洗練したフォルムを持つ第九世代KMF(ナイトメアフレーム)がひ弱なマネキンに見えるほどの剛性、強靭さを誇っている。

 

戦うためにのみ鍛え上げられた戦士の、その筋肉を模した《マッスルフレーミング》を備えた全身の姿は、機体の裡に秘められた爆発的なエネルギーを示すかのように逞しく、されど決して優美を損なわせない鋭さを兼揃えた二機の蒼いKMF(ナイトメアフレーム)

 

 

 

頭部から主人の髪と同じ色を持つ、毛髪に似た装備を垂らした、異形の左腕を持った――かつては《月下・先行試作型》、《蒼月》と呼ばれた――機体。

 

名は《蒼月墮天九極型》。

 

頭部にそそり立つ蒼い角を持つ、騎士の姿をとり、左腕に大型の盾を備えた――かつては《サザーランド》、《ランスロット・クラブ》、《ランスロット・クラブ・クリーナー》と呼ばれた――機体。

 

名は《ランスロット・クラブ・ベルゼルガ》。

 

 

この二機こそが最新最強と謡われた第九世代KMF(ナイトメアフレーム)、《紅蓮聖天八極式》、《ランスロット・アルビオン》を打ち破り第十世代KMF(ナイトメアフレーム)として君臨する機体。ライを世界最強足らしめる愛機。

 

 

「最強の機体か。性能はどうなんだ?」

「性能ね」

 

 

ライがクスリと笑った。

 

 

「スピードは?」

「速いよ」

 

 

また、ライが笑った。

 

 

「出力は、どんなものだった」

「凄かったよ」

「それでは答えになっていないぞ」

「でも、そうとしか答えようがないんだ」

 

 

体ごとルルーシュに振り向いたライの顔には浮かんでいた笑みは消え、真顔で言う。

 

 

「ルルーシュ、覚えてる?君が神聖ブリタニア帝国第九十九代皇帝になってすぐ、ナイトオブラウンズ候補だった騎士二名が病院送りになったこと、ジェレミア卿が緊急メンテナンス送りになったことを」

 

 

ルルーシュは頷いた。貴族たちの反乱鎮圧に向かわせるとして、信頼できる人間――ジェレミアに頼もうとしたが、その本人が身体から煙を吹かして無理に出撃しようとしたのを覚えている。

 

コーヒーに顔を歪めながら飲むライが後ろの二機に再び視線を向ける。

 

 

「その三人には、この機体のテストをしてもらったんだよ。だけど、ラウンズ候補の二人は肋骨を数本折る結果に。ジェレミア卿は流石サイボーグ、二人よりはマシだったんだけど、なんか体内の細かい部品が負荷に耐えられなくて異常を来たしてね」

「そんな、ハードなテストだったのか」

「いや、全開加速のテストだけさ。それも全員フルスロットルにまで持っていけなかった。これだけの情報でこの二機が途方もない機体、規格外の性能を持っている証明だろ」

 

 

愛機たちを自慢するライの顔には、喜悦に溢れた笑顔があった。




・白ロシア戦線

ライ「幾夜うなされたか知れない悪夢。目の前、僅かな一跨ぎ。それが出来ない戦場の中で僕は喘ぐ。身に絡みつく過去を振り解こうとして」

研究員「ぶっ潰しても、切り刻んでも、焼くなど手段は問わない。時に利己的に、時に利他的に、取り巻く環境を変えてまで生き延びる。そう、それが『つながりし者(ワイアード)』の因子だ。証明して見せろ、己の異常さを!己の正体を!チェック!この戦争で覚醒するはずだ。――ゴキブリめ!蛆虫め!這いずり回り、のた打ち回り、五臓六腑を撒き散らしてでも覚醒してみせろ!」(ただし、ワイアードギアスに覚醒したらしたらでまた実験動物に)

ギアスがあるので難易度は若干下がるが、使うたびにライのメンタルがゴリゴリ削れていく。

大体そんな感じ。……うん、詳しくは元ネタで!


・《蒼月墮天九極型》

Q.何この名前ダサくない?
A.名づけるのに作者を最も苦しめた。一応、《紅蓮聖天八極式》の対極、凌駕するという意味を込めました。『型』は《月下・先行試作型》の名残。

改造したはいいけど、『ブリタニア側でこいつを使うのはおかしい』として、初陣を迎えることなくずっと倉庫番させられた可哀そうな奴。
改造前の《蒼月》も一度しか戦ったことがないからとことん不憫。


・《ランスロット・クラブ・ベルゼルガ》

Q.何でブリタニア製なのにドイツ語入ってんの?
A.開発班の主任がドイツ人だから。メタ的に言えば、作者が某青騎士物語好きだから。

無論、装備してる盾はパイルバンカー。“ギアス伝導回路”のエネルギーをほんのちょっと注いで一撃を放ったらダモクレスのブレイズルミナスを砕いた。

最終決戦後、ルルーシュに逆らう者たちをこいつに乗って虐殺。更にはパイルバンカーで国を文字通り割るなど暴虐の限りを尽くして、ルルーシュ権威の象徴になっている。

近い未来、KMF(ナイトメアフレーム)博物館が出来てもイメージが悪すぎて展示されない。

二機とも最強最速最高の性能を誇っているけど、負担もヤバく、身体能力に優れた『つながりし者(ワイアード)』のライだからこそ乗れる機体。

ちなみに開発班はギアス嚮団から派遣された人物たち。ブリタニア人だけでなく国際色豊か。ギアスの研究でKMF(ナイトメアフレーム)の発展の可能性を考えてるマッド共。嚮団の壊滅後もライよりも《ランスロット・クラブ》についてきたマッドな奴ら。
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